なぜARM Holdings株が注目されるのか
スマートフォンを手に取るとき、その中に搭載されているチップの設計技術がARM Holdingsによって提供されている可能性は非常に高いです。2023年9月にNASDAQへ再上場したARM Holdings(ティッカー: ARM)は、モバイルCPU設計でほぼ独占的な地位を築き、AI・自動運転分野への展開も期待される半導体関連銘柄として、日本人投資家からも注目を集めています。
一方で、「ARMは英国企業なのになぜ米国市場に上場しているの?」「ソフトバンクグループとの関係は?」「日本から買えるの?」といった疑問も多く聞かれます。この記事では、ARM株の基礎知識から購入方法、税金、リスク要因まで、日本人投資家に必要な情報を整理してお届けします。
この記事のポイント:
- ARM Holdingsは英国企業だが、NASDAQ上場の米国株として取引される
- モバイル・AI向けチップ設計のライセンスビジネスで収益を上げる独自モデル
- ソフトバンクグループが大株主(約90%保有)で、2023年に再上場を実施
- 日本の主要証券会社(SBI・楽天など)で購入可能、新NISA成長投資枠にも対応
- 新規上場株のため株価変動が大きく、高バリュエーションに注意が必要
ARMの事業モデルと収益構造
ARM Holdingsは半導体メーカーではなく、半導体設計の「設計図」を提供するライセンスビジネスを展開しています。
(1) チップ設計のライセンスビジネス
ARMは自社で半導体を製造せず、チップ設計のアーキテクチャを他社にライセンス提供します。Apple、Qualcomm、Samsungなどの大手企業がARMの設計をベースに独自のチップを開発しています。ライセンス料とロイヤリティ(出荷数に応じた収益)が主な収益源です。
(2) モバイル・AI分野での独占的地位
スマートフォン向けCPUでは、ARMのアーキテクチャが世界シェアの95%以上を占めると言われています。iPhoneに搭載されるApple独自のAシリーズチップもARM設計ベースです。近年はAI推論処理や自動運転向けチップへの展開も加速しており、成長が期待される分野です。
(3) ロイヤリティ収入の仕組み
ARMの特徴は、ライセンス契約時の一時金に加えて、ARMベースのチップが出荷されるたびにロイヤリティ収入が発生する点です。スマートフォンやIoTデバイスの普及に伴い、継続的な収益が見込める仕組みです。
(4) 主要顧客(Apple・Qualcomm等)
ARM IRや決算資料によれば、Appleは最大顧客の一つとされており、その他にもQualcomm、Samsung、MediaTekなど、グローバルな大手半導体企業がARMのライセンスを利用しています。
2023年IPOの経緯とソフトバンクとの関係
ARMは2023年9月にNASDAQへ再上場しましたが、その背景にはソフトバンクグループの戦略があります。
(1) NASDAQ再上場の背景
ARMは元々ロンドン証券取引所に上場していましたが、2016年にソフトバンクグループが約3.3兆円で買収し、非公開化しました。その後、ソフトバンクの資金調達や投資戦略の一環として、2023年9月にNASDAQへ再上場が実現しました。
(2) ソフトバンクグループの持株比率
2025年1月時点で、ソフトバンクグループはARM株の約90%を保有する大株主です。IPOでは一部の株式のみが市場に放出されました。このため、ソフトバンクグループの経営判断や株式売却方針がARM株価に影響を与える可能性があります。
(3) IPO後の株価推移
IPO時の公募価格は51ドルでしたが、上場初日には一時60ドル超まで上昇しました。その後は半導体市況やAI関連銘柄への期待感、ソフトバンクグループの動向などに応じて変動しています。最新の株価はYahoo FinanceやBloombergで確認できます。
(4) 今後の成長戦略
ARMはAI向けチップ設計やデータセンター向けCPU(Amazonが開発するGravitonなど)、自動運転分野での採用拡大を成長ドライバーと位置づけています。ただし、競合技術(RISC-V等)の台頭や、顧客企業の内製化(Appleの独自設計強化など)もリスク要因として挙げられます。
日本からARM株を購入する方法と税金
日本の個人投資家がARM株を購入する際の方法と税金について解説します。
(1) 証券会社の選び方(SBI・楽天)
ARM株はNASDAQに上場する米国株として取引されるため、米国株取引に対応した証券会社が必要です。SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券で取扱いがあります。各社で取引手数料や為替手数料が異なるため、比較検討が推奨されます。
(2) 購入手順とティッカーシンボル(ARM)
- 証券会社で口座開設(外国株式取引口座を申請)
- 円→ドルへの為替取引(両替)
- 米国株取引画面でティッカーシンボル「ARM」を検索
- 希望株数を指定して購入注文
ARM株は1株単位で購入可能です。執筆時点(2025年1月)の株価水準によりますが、数万円から投資できる可能性があります。
(3) NISA対応状況
新NISA制度(2024年開始)の成長投資枠(年間240万円まで)で、ARM株を含む米国株を非課税で購入できます。SBI証券、楽天証券などがNISA口座での米国株取引に対応しています。ただし、米国での源泉徴収(通常10%)は避けられません。
(4) 税金(譲渡益・配当)
- 譲渡益: 米国株の売却益には日本で20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課税されます。特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告不要です。
- 配当: 2025年1月時点でARMは配当を実施していません。将来配当が開始された場合、米国で源泉徴収(通常10%)された後、日本でさらに20.315%が課税されます。外国税額控除を利用すれば二重課税を一部軽減できます。
※最新の税制情報は国税庁のウェブサイトをご確認ください。 (参考: 国税庁「外国税額控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm)
ARM株投資のリスク要因
ARM株への投資を検討する際は、以下のリスク要因も理解しておく必要があります。
(1) 新規上場株の価格変動リスク
2023年9月に再上場したばかりのため、株価の変動が大きくなる可能性があります。IPO直後の銘柄は市場での需給バランスが安定しにくく、短期的な乱高下に注意が必要です。
(2) ソフトバンクグループの動向
ソフトバンクグループが約90%を保有する大株主であるため、同社の資金調達方針や株式売却計画がARM株価に影響を与える可能性があります。ソフトバンクグループの決算発表や経営方針にも注目が必要です。
(3) 半導体セクター全体の市況
半導体業界は景気循環の影響を受けやすく、需要の急増・急減が起こりやすいセクターです。スマートフォン販売の鈍化や、データセンター投資の減速などがARM株にも影響を及ぼす可能性があります。
(4) 競合(x86・RISC-V)の台頭
Intelのx86アーキテクチャはPC・サーバー分野で依然として強く、オープンソースのRISC-Vも注目を集めています。ARMのライセンス料が高いと判断されれば、顧客企業が代替技術へ移行するリスクもゼロではありません。
まとめ:ARM株投資の判断ポイント
ARM Holdingsは、モバイル・AI分野で独占的地位を築くチップ設計のライセンサーです。2023年9月にNASDAQへ再上場し、日本の主要証券会社で購入可能、新NISA成長投資枠にも対応しています。
ARM株投資を検討する際のポイント:
- 事業モデル(ライセンス+ロイヤリティ)の理解
- ソフトバンクグループとの関係と今後の売却方針
- バリュエーション(PERや時価総額が適正か)の確認
- 半導体セクター全体の市況と競合動向
次のアクション:
- ARM IRサイト(https://investors.arm.com/)で最新決算を確認
- 証券会社で米国株口座を開設し、新NISA活用を検討
- 半導体セクター全体のニュースや競合動向をフォロー
投資判断は自己責任で行い、ご自身のリスク許容度や投資目標に照らして慎重に検討してください。