導入
外国株への投資に興味はあるけれど、「どうやって始めたらいいの?」「税金や為替リスクが心配...」と躊躇している方は多いのではないでしょうか。
日本の株式市場だけに投資するよりも、米国株や欧州株、新興国株など海外の市場に分散投資することで、リスクを抑えながらリターンを狙える可能性があります。しかし、外国株投資には税制や為替リスクなど、国内株式とは異なる注意点があるのも事実です。
この記事では、外国株投資の基礎知識から、証券会社の選び方、税制・為替リスクの考え方、初心者向けの投資方法まで、日本の投資家が知っておくべき情報を包括的に解説します。
この記事のポイント:
- 外国株は米国・欧州・アジア・新興国など、日本以外の市場に上場する株式
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券などネット証券で手軽に取引可能
- 配当は現地課税+日本課税の二重課税だが、外国税額控除で一部調整できる
- 為替リスクは長期投資で平準化するか、為替ヘッジ付きファンドで対応
- 初心者は分散投資できる投資信託(インデックスファンド)から始めるのが無難
1. 外国株とは
(1) 外国株の定義
外国株式とは、日本以外の国の株式市場に上場している株式のことです。具体的には、米国のニューヨーク証券取引所(NYSE)やナスダック、欧州のロンドン証券取引所、アジアの香港証券取引所、新興国の市場などが含まれます。
日本の証券会社を通じて、日本にいながらこれらの外国株を購入・売却できる仕組みが整っています。
(2) 主要市場(米国・欧州・アジア・新興国)
外国株市場は大きく以下に分類されます:
- 米国株: 世界最大の株式市場。アップル、マイクロソフト、アマゾンなど世界的企業が上場
- 欧州株: イギリス、ドイツ、フランスなど先進国市場。高配当銘柄が多い傾向
- アジア株: 中国・香港・台湾・韓国・ASEANなど。成長性が高い一方、政治リスクもあり
- 新興国株: ブラジル、インド、南アフリカなど。高リターンが期待できるが流動性リスクも
世界の株式市場を代表する指数であるMSCI World Indexは、先進国23カ国の大型・中型株を対象にしており、米国が約70%、欧州が約15%、日本が約6%を占めています(2025年時点)。
(3) 国内株式との違い
外国株と国内株式の主な違いは以下の通りです:
項目 | 外国株 | 国内株式 |
---|---|---|
取引時間 | 現地市場の時間(米国は日本時間夜間) | 日本時間9:00-15:00 |
通貨 | 外貨建て(為替リスクあり) | 日本円建て |
税制 | 二重課税(現地+日本) | 日本のみ |
情報 | 英語情報が中心 | 日本語情報が豊富 |
2. 外国株投資の始め方
(1) 証券口座の開設
外国株投資を始めるには、外国株取引に対応した証券口座の開設が必要です。主要なネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)はいずれも外国株取引に対応しています。
口座開設は以下の流れで進みます:
- オンラインで申し込み(本人確認書類のアップロード)
- 審査完了後、口座番号が通知される
- 外国株取引口座を追加で開設(証券口座とは別に必要な場合が多い)
(2) 外貨決済と円貨決済
外国株を購入する際、決済方法には以下の2種類があります:
- 外貨決済: 事前に日本円を外貨(米ドルなど)に両替してから株を購入。為替手数料は1回のみ
- 円貨決済: 株購入時に自動で円から外貨に両替。手軽だが為替手数料が都度かかる
長期投資で複数回取引する場合は、外貨決済の方が為替手数料を抑えられます。
(3) 初心者向けの投資方法
外国株投資が初めての方には、以下の順序がおすすめです:
- 少額から始める: まずは数万円程度の少額で感覚をつかむ
- 分散投資を意識する: 1銘柄に集中せず、複数銘柄やETF・投資信託で分散
- 情報収集を習慣化: 英語の決算資料や四半期報告書(10-Q)に慣れる
3. 証券会社の選び方と比較
(1) SBI証券の特徴
SBI証券は国内最大級のネット証券で、外国株の取扱銘柄数が豊富です。
- 取扱国: 米国、中国、韓国、ロシア、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア
- 銘柄数: 米国株約5,600銘柄以上
- 手数料: 米国株は約定代金の0.495%(上限22米ドル)
- 為替手数料: 1米ドルあたり25銭(住信SBIネット銀行経由で4銭に削減可能)
(2) 楽天証券の特徴
楽天証券は米国株と中国株、ASEAN株に強みがあります。
- 取扱国: 米国、中国、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア
- 銘柄数: 米国株約5,000銘柄以上
- 手数料: 米国株は約定代金の0.495%(上限22米ドル)
- ポイント: 楽天ポイントで米国株が買える
(3) マネックス証券の特徴
マネックス証券は米国株の情報提供とツールの充実度で定評があります。
- 取扱国: 米国、中国
- 銘柄数: 米国株約5,000銘柄以上
- 手数料: 米国株は約定代金の0.495%(上限22米ドル)
- 情報ツール: 銘柄スカウター米国株(無料で米国企業の財務分析が可能)
(4) 手数料・為替手数料の比較
証券会社 | 米国株手数料(約定代金) | 為替手数料(1米ドル) |
---|---|---|
SBI証券 | 0.495%(上限22米ドル) | 25銭(住信SBIで4銭) |
楽天証券 | 0.495%(上限22米ドル) | 25銭 |
マネックス証券 | 0.495%(上限22米ドル) | 25銭(買付時無料キャンペーンあり) |
※2025年10月時点の情報です。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。
4. 税制と為替リスクの理解
(1) 配当課税(二重課税と外国税額控除)
外国株の配当金には、現地国と日本の両方で課税される「二重課税」が発生します。
米国株の例:
- 米国で10%源泉徴収
- 日本で20.315%課税(所得税15.315%+住民税5%)
ただし、確定申告で「外国税額控除」を申請すれば、米国で課税された10%を日本の所得税から差し引くことができます(上限あり)。詳しくは国税庁のウェブサイトをご確認ください。
(出典: 国税庁「外国税額控除」https://www.nta.go.jp/)
(2) 譲渡益課税
外国株を売却して得た譲渡益(売却益)には、日本で20.315%の税金がかかります。国内株式と同じ税率です。
特定口座(源泉徴収あり) を利用すれば、証券会社が自動で税金を計算・納付してくれるため、確定申告は不要です。
(3) 為替リスクの考え方
外国株はドルやユーロなど外貨建てで取引されるため、為替レートの変動が損益に影響します。
具体例:
- 購入時: 1ドル=140円で100ドル分の株を購入(14,000円)
- 売却時: 1ドル=150円で100ドル分の株を売却(15,000円)
- 為替差益 = 1,000円(株価が変動しなくても利益が出る)
逆に円高(1ドル=130円など)になれば、株価が上がっても為替差損で目減りする可能性があります。
対処法:
- 長期投資で為替変動を平準化: 10年単位で保有すれば為替リスクは緩和される傾向
- 為替ヘッジ付き投資信託: 為替変動リスクを避けたい場合は為替ヘッジ付きファンドを選択
5. 投資方法(個別株・ETF・投資信託)
(1) 個別株投資のメリット・デメリット
メリット:
- 企業の成長を直接享受できる
- 配当金が受け取れる(高配当銘柄も多い)
- 自分で銘柄を選ぶ楽しさがある
デメリット:
- 銘柄選択が難しい(財務分析・英語情報の読解が必要)
- 1銘柄に集中するとリスクが高い
- 情報の非対称性(日本語情報が限定的)
(2) ETF投資の特徴
ETF(上場投資信託)は、複数の銘柄をまとめて投資できる商品です。例えば、「S&P500 ETF」なら米国の主要500社に分散投資できます。
メリット:
- 分散投資が手軽にできる
- 個別株より値動きが安定
- 信託報酬が投資信託より安い場合が多い
デメリット:
- 配当金は米国で課税される(NISA口座でも米国課税は避けられない)
- 為替リスクは残る
(3) 投資信託(インデックスファンド)の活用
投資信託は、証券会社で購入できる非上場の分散投資商品です。外国株に投資するインデックスファンドは、初心者に最も適した投資方法と言われています。
おすすめポイント:
- 少額(100円から)投資可能
- 自動積立設定で手間いらず
- NISA口座なら日本の税金が非課税
注意点:
- 信託報酬(年率0.1%前後)がかかる
- 為替リスクは残る(為替ヘッジ付きファンドもあり)
6. まとめ:外国株投資を始める前に知っておくこと
外国株投資は、日本の市場だけに投資するよりも分散効果が高く、グローバル企業の成長を享受できる魅力的な選択肢です。しかし、税制・為替リスク・情報の非対称性など、国内株式とは異なる注意点があります。
次のアクション:
- まずは証券口座を開設する(SBI・楽天・マネックスなど)
- 初心者は投資信託(インデックスファンド)から始める
- 為替リスクを理解し、長期投資で平準化する姿勢を持つ
- 外国税額控除を活用して二重課税を軽減する
外国株投資の基礎知識をしっかり身につけた上で、自分に合った投資方法を選び、長期的な資産形成を目指しましょう。