外国株の日本上場と米国上場の違いを理解していますか?
米国株投資に関心のある日本人投資家の多くが、「外国株 上場」というキーワードで検索する際、実は2つの異なる仕組みを混同していることがあります。それは「東京証券取引所に上場している外国株(東証外国株)」と「米国市場で直接取引する外国株」です。
この記事では、これら2つの仕組みの違いを明確化し、取引時間・為替手数料・税制・流動性・銘柄数を比較しながら、日本の投資家にとってどちらが適しているのかを解説します。
この記事のポイント:
- 東証外国株は円建て取引が可能だが、銘柄数は約10銘柄程度と限定的
- 米国市場での直接取引(ADRを含む)は数千銘柄にアクセス可能だが、ドル建て取引のため為替手数料が発生
- 取引時間は東証が日本時間9:00-15:00、米国市場は22:30-翌5:00(米国夏時間は21:30-翌4:00)
- 配当の税制は両方とも二重課税が発生するが、外国税額控除で一部調整可能
- NISA口座では両方とも取引可能(日本の税金は非課税)
1. 外国株の「上場」とは?日本市場と米国市場の違い
(1) 上場とは何か(株式市場で取引可能になること)
「上場」とは、企業の株式が証券取引所で一般投資家に売買できるようになることを指します。上場企業は取引所の定める基準(時価総額、株主数、財務状況など)を満たす必要があり、定期的な情報開示義務が課されます。
日本の投資家が「外国株」を購入する場合、以下の2つの経路があります:
上場場所 | 取引通貨 | 銘柄数 | 取引時間(日本時間) |
---|---|---|---|
東京証券取引所(東証外国株) | 円建て | 約10銘柄 | 9:00-15:00 |
米国市場(NYSE・NASDAQ) | ドル建て | 数千銘柄 | 22:30-翌5:00(夏時間21:30-翌4:00) |
(2) 東証外国株と米国市場上場株の違い
東証外国株は、外国企業が東京証券取引所に直接上場している株式で、円建てで取引できます。しかし、上場企業数は韓国・台湾・中国企業を中心に約10銘柄程度と限られています。
一方、米国市場で取引する外国株には、米国に直接上場している企業のほか、ADR(米国預託証券)という仕組みで取引される外国企業も含まれます。銘柄数は数千に及び、世界中の主要企業にアクセスできる点が大きな利点です。
2. 東証に上場している外国株の仕組み(東証外国株)
(1) 東証外国株とは(円建て取引の外国株)
東証外国株は、外国企業が日本の投資家向けに東京証券取引所に上場している株式です。円建てで取引できるため、為替手数料が発生しない点が特徴です。ただし、株価自体には為替変動が反映されるため、為替リスクがゼロになるわけではありません。
(2) 主な上場銘柄(韓国・台湾・中国企業等)
2025年10月時点で、東証外国株として取引可能な主な銘柄には以下のようなものがあります:
- 韓国企業(サムスン電子など)
- 台湾企業(TSMC関連企業など)
- 中国企業(一部の大手企業)
※銘柄数は変動するため、最新情報は日本取引所グループ(JPX)の公式サイトでご確認ください。 (出典: 日本取引所グループ https://www.jpx.co.jp/)
(3) 取引時間と流動性
東証外国株の取引時間は、日本株と同じく平日9:00-15:00(昼休み11:30-12:30を含む)です。しかし、流動性(売買の活発さ)は米国市場と比べて低いため、希望する価格で売買できない可能性がある点に注意が必要です。
3. 米国市場で直接取引する外国株との比較
(1) 米国市場での直接取引の仕組み
米国市場(NYSE・NASDAQ)で取引される外国株には、米国に直接上場している企業と、ADR(米国預託証券)として取引される企業があります。日本の証券会社(SBI証券、楽天証券など)を通じて、ドル建てで購入できます。
(2) ADR(米国預託証券)とは
ADR(American Depositary Receipt)は、外国企業の株式を米国市場で取引するための仕組みです。外国企業の株式を米国の銀行が預かり、その証券を米ドル建てで発行します。
例えば、英国のユニリーバ、スイスのネスレ、日本のトヨタなどはADRとして米国市場で取引されています。ADRは流動性が高く、米国株と同じ感覚で取引できる点がメリットです。
(出典: SEC「Initial Public Offering (IPO) Guide」 https://www.sec.gov/education/smallbusiness/goingpublic)
(3) 取扱銘柄数の違い(東証vs米国市場)
市場 | 銘柄数 | 主な企業 |
---|---|---|
東証外国株 | 約10銘柄 | 韓国・台湾・中国企業 |
米国市場(ADR含む) | 数千銘柄 | 世界中の主要企業(欧州・アジア・南米など) |
米国市場では、世界中の企業にアクセスできるため、分散投資の選択肢が圧倒的に広がります。
4. 取引時間・為替手数料・税制の違い
(1) 取引時間の比較(東証9:00-15:00 vs 米国市場22:30-翌5:00)
市場 | 取引時間(日本時間) | 備考 |
---|---|---|
東証外国株 | 9:00-15:00 | 日本株と同じ時間帯 |
米国市場 | 22:30-翌5:00 | 米国夏時間は21:30-翌4:00 |
東証外国株は日本の昼間に取引できる一方、米国市場は日本時間の深夜〜早朝に取引が集中します。
(2) 為替手数料の扱い(円建てvsドル建て)
東証外国株(円建て):
- 為替手数料は不要
- ただし、株価には為替変動が織り込まれる
米国市場(ドル建て):
- 為替手数料が発生(証券会社により異なる、片道0.25円/ドル程度)
- 円をドルに替えて購入、売却時はドルを円に戻す
為替手数料を抑えたい場合は、住信SBIネット銀行などの外貨サービスを利用して、事前にドルを用意する方法もあります。
(出典: SBI証券「外国株式 取扱銘柄」 https://www.sbisec.co.jp/)
(3) 配当・売却益の税制(二重課税・外国税額控除)
配当の課税:
課税対象 | 東証外国株 | 米国市場の外国株 |
---|---|---|
現地での源泉徴収 | 企業の本国で課税(国により異なる) | 米国で10%源泉徴収 |
日本での課税 | 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%) | 20.315% |
外国税額控除 | 利用可能 | 利用可能 |
売却益の課税:
- 東証外国株・米国市場ともに日本で20.315%課税
- NISA口座なら日本の税金は非課税(ただし現地の源泉徴収は避けられない)
外国税額控除を利用すれば、現地で課税された分を日本の所得税から差し引けます。確定申告が必要です。
(出典: 国税庁「外国税額控除」 https://www.nta.go.jp/)
5. 日本から外国株を購入する方法(証券会社別)
(1) SBI証券・楽天証券での取扱状況
SBI証券:
- 米国株: 約5,000銘柄以上
- 東証外国株: 取扱あり
- 為替手数料: 片道0.25円/ドル(住信SBIネット銀行経由なら0.04円/ドル)
楽天証券:
- 米国株: 約5,000銘柄以上
- 東証外国株: 取扱あり
- 為替手数料: 片道0.25円/ドル
(出典: 楽天証券「外国株式 米国株」 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/foreign/us/)
(2) 東証外国株と米国株の購入手順の違い
東証外国株:
- 日本株と同じ口座で取引
- 円建てで注文(為替手続き不要)
- 取引時間は9:00-15:00
米国株:
- 外国株取引口座を開設
- 円をドルに両替(為替手数料発生)
- ドル建てで注文
- 取引時間は22:30-翌5:00(夏時間は21:30-翌4:00)
(3) NISA口座での購入可否
つみたて投資枠:
- 東証外国株・米国株ともに対象外
成長投資枠:
- 東証外国株: 購入可能
- 米国株: 購入可能(配当・売却益が非課税)
NISA口座なら、日本での税金(20.315%)が非課税になります。ただし、米国株の場合は米国での源泉徴収10%は避けられません。
(出典: 金融庁「NISA特設サイト」 https://www.fsa.go.jp/)
6. まとめ:日本上場と米国上場、どちらを選ぶべきか
(1) 銘柄数重視なら米国市場、円建て取引なら東証
米国市場を選ぶべきケース:
- 世界中の企業に分散投資したい
- 流動性の高い市場で取引したい
- ADRを活用して欧州・アジア企業にも投資したい
東証外国株を選ぶべきケース:
- 為替手続きを避けたい(円建て取引)
- 日本の昼間に取引したい
- 特定の韓国・台湾・中国企業に投資したい
(2) 長期投資なら為替リスクを理解して米国市場も選択肢
長期的な資産形成を目指すなら、米国市場での外国株投資は有力な選択肢です。ドル建て資産を保有することで、円安局面では為替差益も期待できます。ただし、円高局面では為替差損が発生するリスクもあるため、分散投資を心がけましょう。
次のアクション:
- SBI証券・楽天証券で外国株取引口座を開設する
- NISA口座での非課税枠を活用する
- 為替リスクを理解した上で、米国市場も検討する
外国株投資の仕組みを理解し、自分の投資スタイルに合った市場を選びましょう。
※2025年10月時点の情報です。最新の税率・制度は国税庁・金融庁のウェブサイトをご確認ください。