外国株投資を始めたい初心者が知っておくべきこと
「つみたてNISAはやっているけど、外国株にも挑戦してみたい」「でも、何から始めればいいかわからない…」そんな悩みを持つ20-30代の投資初心者の方は少なくありません。
外国株投資は、日本株にはない成長企業へのアクセスや国際分散投資のメリットがある一方で、為替リスクや税金の仕組みなど、日本株とは異なる知識が必要です。「英語の情報が読めない」「税金計算が複雑そう」といった不安から、一歩を踏み出せない方も多いでしょう。
この記事では、外国株投資の基礎知識から証券口座の開設、実際の買い方、税金・為替の基礎まで、初心者が知るべきポイントを網羅的に解説します。
この記事のポイント:
- 外国株投資は1株数百円~数千円から始められる
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券が主要3社
- 税金は売却益・配当金に20.315%、米国株は二重課税に注意
- 為替リスクは長期投資とドルコスト平均法で分散
- 初心者は全米株式インデックス投資信託やETFから始めるのが無難
(1) 外国株投資が注目される理由
日本の株式市場は世界全体の約6%に過ぎず、残りの94%は海外市場です。米国株市場には、Apple、Microsoft、Tesla、NVIDIAといった日本にはない革新的企業が多数存在します。
金融庁も「外国株式投資の注意点」で国際分散投資の重要性を指摘しており、日本証券業協会の「外国株式投資の基礎知識」でも、リスク分散の観点から外国株投資が推奨されています。
(2) この記事でわかること
- 外国株投資の基礎知識(日本株との違い、メリット・デメリット)
- 証券口座開設の手順と主要証券会社の比較
- 実際の買い方(円貨決済 vs 外貨決済)
- 税金・為替の基礎知識
- 初心者向けのリスク管理と失敗回避法
外国株投資の基礎知識|日本株との違いとメリット
(1) 外国株投資とは何か
外国株投資とは、海外の証券取引所に上場している企業の株式を購入することです。日本の証券会社を通じて、米国株(ニューヨーク証券取引所、ナスダック等)、中国株(香港市場等)などを取引できます。
日本証券業協会の「外国株式投資の基礎知識」によれば、外国株投資には「現地約定」(現地市場で直接売買)と「国内店頭取引」の2種類がありますが、多くの証券会社では現地約定が主流です。
(2) 日本株との3つの違い(取引時間・手数料・為替)
項目 | 日本株 | 外国株(米国株) |
---|---|---|
取引時間 | 平日9:00-15:00(日本時間) | 平日23:30-翌6:00(日本時間、夏時間は22:30-翌5:00) |
手数料 | 無料~0.1%程度 | 0.45-0.495%程度(証券会社により異なる) |
為替 | 不要 | 円→ドルの両替が必要(為替手数料がかかる) |
※取引時間は米国東部時間9:30-16:00を日本時間に換算
(3) 外国株投資のメリットとデメリット
メリット:
- 成長企業へのアクセス: GAFAMやTeslaなど、日本にはない革新的企業に投資できる
- 国際分散投資: 日本市場のみに偏らず、リスク分散が可能
- 配当金: 米国企業は四半期配当が主流で、高配当銘柄も多い
デメリット:
- 為替リスク: ドル建て資産のため、円高時は円換算で損失が出る可能性
- 情報収集が難しい: 英語の財務情報、時差、決算発表タイミング
- 手数料がやや高い: 日本株に比べて売買手数料や為替手数料が高い傾向
Vanguardの「International Stock Investing Guide」でも、国際分散投資のメリットとして「地域・通貨リスクの分散」が強調されています。
外国株投資の始め方|証券口座開設から購入まで
(1) 外国株取引に必要な証券口座の種類
外国株投資には、以下の口座が必要です:
- 証券総合口座: 証券会社で開設する基本口座
- 外国株式取引口座: 外国株を取引するための専用口座(総合口座と同時開設可能)
- 外貨決済口座(任意): ドルで入金・決済する場合に使用
SBI証券の「外国株式投資 初心者ガイド」では、円貨決済(円から直接購入)と外貨決済(事前にドルを用意)の2つの方法が説明されています。
(2) 主要証券会社の比較(SBI・楽天・マネックス)
項目 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 |
---|---|---|---|
米国株取扱銘柄数 | 約5,600銘柄 | 約4,900銘柄 | 約4,700銘柄 |
売買手数料 | 0.495%(最低0ドル) | 0.495%(最低0ドル) | 0.495%(最低0ドル) |
為替手数料 | 片道25銭/ドル | 片道25銭/ドル | 買付時無料、売却時25銭/ドル |
NISA対応 | ○ | ○ | ○ |
初心者向けツール | △ | ◎(iSPEED等) | ○ |
※2025年10月時点。手数料は変更される場合があります。
選び方のポイント:
- 取扱銘柄数重視: SBI証券(最多5,600銘柄)
- 初心者向けツール: 楽天証券(アプリが使いやすい)
- 為替コスト削減: マネックス証券(買付時の為替手数料無料)
(3) 証券口座開設の手順(3ステップ)
- オンライン申込: 各証券会社のWebサイトから申込(本人確認書類をアップロード)
- 審査・口座開設完了: 最短翌営業日~1週間程度
- 外国株式取引口座の申込: 総合口座開設後、専用フォームから申込
SBI証券の初心者ガイドによれば、外国株式取引口座の開設は総合口座開設と同時に申し込むことも可能で、手続きが簡略化されます。
(4) 実際の買い方(円貨決済 vs 外貨決済)
円貨決済(初心者向け):
- 円のまま株を購入(証券会社が自動的にドルに両替)
- 為替レートを気にせず取引可能
- 為替手数料は売買時に自動的に加算
外貨決済(コスト削減重視):
- 事前にドルを購入しておき、ドルで株を購入
- 為替タイミングを自分で選べる(円高時にドル購入でコスト削減)
- やや手間がかかる
楽天証券の「米国株投資 入門講座」では、初心者には円貨決済が推奨されています。慣れてきたら外貨決済でコスト削減を検討するのが良いでしょう。
初心者が知るべき外国株投資の税金と為替の基礎
(1) 外国株の売却益・配当金にかかる税金
外国株投資では、以下の税金がかかります:
売却益(譲渡所得):
- 日本で20.315%課税(所得税15.315% + 住民税5%)
配当金(米国株の場合):
- 米国で10%源泉徴収
- 日本で20.315%課税(二重課税)
- 外国税額控除で米国分を一部調整可能(確定申告必要)
日本証券業協会の資料では、外国税額控除の計算式が詳しく説明されています。ただし、特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、確定申告は不要です(外国税額控除を受ける場合は確定申告が必要)。
(2) 為替リスクとは何か
為替リスクとは、ドル建て資産の価値が為替レートの変動で円換算時に増減するリスクです。
具体例:
- 1株100ドルの株を購入(1ドル=150円時) → 15,000円
- 株価が110ドルに上昇(1ドル=140円時) → 15,400円(株価+10%、為替-6.7%、実質+2.7%)
- 株価が110ドルに上昇(1ドル=160円時) → 17,600円(株価+10%、為替+6.7%、実質+17.3%)
金融庁の「外国株式投資の注意点」では、「為替リスクは長期投資で分散される傾向がある」と指摘されています。
為替リスクへの対処法:
- ドルコスト平均法: 毎月一定額を投資し、為替タイミングを分散
- 長期保有: 短期的な為替変動を気にせず、10年以上の長期で保有
- 円高時の買い増し: 円高時にドル資産を増やす(タイミングは難しいため無理は禁物)
(3) NISAで外国株投資はできるのか
つみたて投資枠(旧つみたてNISA):
- 外国株投資信託・ETFが対象(個別株は不可)
- 例: 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)等
成長投資枠(旧一般NISA):
- 個別の外国株も購入可能
- 年間240万円まで非課税
NISA口座での外国株投資では、日本の税金(20.315%)は非課税ですが、米国株の配当金は現地で10%源泉徴収されます。この10%は取り戻せません。
外国株投資で失敗しないための注意点とリスク管理
(1) 初心者が陥りやすい失敗パターン
① 個別株への集中投資
「AppleやTeslaに全額投資」といった集中投資は、企業の業績悪化や株価暴落時に大きな損失を被るリスクがあります。Morningstarの「How to Start Investing in Stocks」でも、分散投資の重要性が強調されています。
② 為替タイミングを読もうとする
「円安だから様子見」「円高になったら買おう」と待ち続けると、投資機会を逃します。楽天証券の入門講座でも、「為替タイミングを読むのは困難」として、ドルコスト平均法が推奨されています。
③ 情報不足での銘柄選定
英語の財務諸表を読まず、SNSの噂だけで銘柄を選ぶのは危険です。SECの「Investor Education」でも、投資前のリサーチの重要性が説かれています。
(2) 情報収集の方法(言語・時差の壁を乗り越える)
日本語で情報収集できるツール:
- 証券会社の銘柄情報ページ(楽天証券、SBI証券等)
- Yahoo!ファイナンス(米国株情報あり)
- 日本経済新聞の米国株ニュース
英語情報源(Google翻訳活用):
- SEC EDGAR(米国企業の決算書)
- 企業IR(Investor Relations)ページ
時差対応:
- 米国市場は日本時間23:30開始(夏時間22:30)
- 決算発表は日本時間早朝が多い → 翌日に確認でOK
(3) 分散投資の重要性(ETF・投資信託の活用)
初心者には、個別株よりも以下の分散投資商品が推奨されます:
全米株式インデックス投資信託:
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
ETF(上場投資信託):
- VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF): 米国株全体に分散
- VOO(バンガード・S&P500 ETF): S&P500指数に連動
Vanguardの国際投資ガイドでも、「初心者は低コストのインデックスファンドから始めるべき」と明記されています。ETFや投資信託なら、1本で数百~数千の銘柄に分散投資でき、リスクを大幅に低減できます。
まとめ|外国株投資は少額・分散投資から始めよう
外国株投資は、成長企業へのアクセスと国際分散投資のメリットがある一方、為替リスクや税金の仕組みなど、日本株とは異なる知識が必要です。
この記事の要点:
- 外国株投資は1株数百円~から始められる(つみたてNISAなら100円~)
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券が主要3社(目的に応じて選ぶ)
- 税金は売却益・配当に20.315%、米国株は二重課税に注意
- 為替リスクは長期投資とドルコスト平均法で分散
- 初心者は全米株式インデックス投資信託やETFから始めるのが無難
次のアクション:
- 主要証券会社(SBI・楽天・マネックス)で外国株式取引口座を開設する
- つみたてNISAで全米株式インデックス投資信託から始める
- 慣れてきたら成長投資枠で個別株に挑戦する
外国株投資の基礎知識を理解した上で、少額・分散投資から始めて、徐々にステップアップしていきましょう。投資判断は自己責任で行ってください。