円安が外国株式投資に与える影響とは
「円安が進む今、外国株式を買うべきなのか、それとも様子を見るべきなのか」——このような悩みを抱える日本人投資家は多いのではないでしょうか。円安は、すでに外国株式を保有している投資家にとっては評価額の上昇というメリットをもたらす一方、新規購入を検討している投資家にとってはコスト増加というデメリットにもなります。
この記事では、円安局面における外国株式投資のメリット・デメリットを整理し、為替リスクを踏まえた投資戦略とリスク管理方法を解説します。
この記事のポイント:
- 円安は保有資産の円建て評価額を押し上げるが、新規購入コストも増加する
- 長期積立投資では、ドルコスト平均法により為替変動リスクが平準化される
- 為替ヘッジ付きファンドはリスク回避できるが、ヘッジコストが年0.5~1%かかる
- 為替タイミングを見極めるのは困難であり、長期投資では気にせず継続が基本
- 外貨決済を活用すれば、円転コストを抑えられる
(1) 円安とは(ドル円レートの動き)
円安とは、円の価値がドルに対して下がる(=ドルの価値が上がる)ことを指します。たとえば、1ドル=100円から1ドル=150円へと変化した場合、同じ1ドルを手に入れるために150円必要になるため、円安と呼ばれます。
(2) 外国株式への影響の仕組み
外国株式(特に米国株)はドル建てで取引されます。そのため、株価自体が変わらなくても、円安になれば円換算の評価額は上昇します。
計算例:
- 米国株100ドル保有、為替レート1ドル=100円 → 円換算評価額10,000円
- 米国株100ドル保有、為替レート1ドル=150円 → 円換算評価額15,000円
株価が変わらなくても、円安により評価額が5,000円増加します。
(3) 2025年の円安動向
2025年1月時点で、ドル円レートは140~150円台で推移していると言われています(執筆時点)。円安の背景には、日米金利差の拡大、日本の貿易収支、日銀の金融政策などが影響しています。今後の為替動向は、米国FRBの金利政策や日銀の政策変更次第で変動する可能性があります。
※最新の為替レートは日本銀行の公式サイトで確認できます。
(参考: 日本銀行「外国為替市況」https://www.boj.or.jp/statistics/market/forex/index.htm)
円安のメリット:保有資産の評価額上昇
円安は、すでに外国株式を保有している投資家にとって大きなメリットとなります。
(1) 為替差益の計算例
ケース1: 円高時に購入、円安時に売却
- 購入時: 1ドル=100円、100ドル分購入 → 10,000円
- 売却時: 1ドル=150円、100ドル分売却 → 15,000円
- 為替差益: 5,000円(株価が変わらなくても利益が出る)
(2) 配当金の円換算額増加
米国株から受け取る配当金もドル建てです。円安になれば、配当金を円に換算した際の金額が増加します。
計算例:
- 配当金10ドル受取、為替レート1ドル=100円 → 1,000円
- 配当金10ドル受取、為替レート1ドル=150円 → 1,500円
(3) 長期保有者へのメリット
過去10年、20年の長期で見ると、円安トレンドが続いてきました。早期に外国株式へ投資を始めた投資家は、株価上昇に加えて為替差益も享受できたことになります。
円安のデメリット:新規購入コストの増加
一方、これから外国株式を購入しようとする投資家にとって、円安はデメリットとなります。
(1) 購入時のドル転コスト
円をドルに換えて米国株を購入する際、円安になればより多くの円が必要になります。
計算例:
- 100ドル分の米国株を購入
- 為替レート1ドル=100円 → 10,000円必要
- 為替レート1ドル=150円 → 15,000円必要
同じ100ドル分の株を買うのに、5,000円多く必要になります。
(2) 為替手数料の負担
証券会社で円をドルに換える際、為替手数料がかかります。SBI証券では片道25銭(0.25円)、楽天証券では片道25銭などが一般的です(執筆時点)。円安時に大量に両替すれば、手数料負担も大きくなります。
(3) 一括投資のリスク
円安のピーク時に一括で大量購入すると、その後円高に転じた場合、為替差損が発生します。タイミングを見極めるのは非常に困難です。
円安時の投資戦略
円安局面でどのような投資戦略を取るべきか、具体的な方法を解説します。
(1) ドルコスト平均法での積立継続
為替タイミングを見極めるのはプロでも困難です。長期投資前提なら、**毎月一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」**が基本戦略となります。
- 円安時: 少ない株数を購入
- 円高時: 多い株数を購入
長期的には為替変動が平準化され、一括投資よりもリスクを抑えられます。
(2) 円高時の買い増し
円安時は少額にとどめ、円高に転じたタイミングで買い増しする戦略も有効です。ただし、円高のタイミングを正確に予測するのは困難であり、「待っている間に株価が上昇してしまう」リスクもあります。
(3) 為替タイミングを気にしない長期投資
10年、20年といった長期投資では、為替変動は平準化される傾向があります。短期的な為替水準に一喜一憂せず、淡々と積立を継続することが、多くの投資家にとって最適な戦略と言えます。
(4) 外貨決済の活用
証券会社によっては、売却時に円に戻さず、ドルのまま保有する「外貨決済」が可能です。円安時に売却してドルで受け取り、円高時にドルで再購入すれば、為替手数料を抑えられます。
為替リスクの管理方法
為替リスクを管理するための具体的な方法を紹介します。
(1) 為替ヘッジ付きファンドの選択
為替ヘッジ付きの投資信託やETFを選べば、為替変動リスクを回避できます。ただし、ヘッジコストが年0.5~1%程度かかるため、長期投資ではリターンが目減りする可能性があります。
為替ヘッジ付きファンドの特徴:
- メリット: 為替リスクを回避、円高時も評価額が下がらない
- デメリット: ヘッジコストがかかる、円安時も評価額が上がらない
(2) 分散投資(通貨・地域)
米国株だけでなく、欧州株、新興国株など複数の通貨・地域に分散投資すれば、特定の通貨リスクを軽減できます。たとえば、ユーロやポンド建ての資産を組み合わせることで、ドル円レートの変動リスクを分散できます。
(3) キャッシュポジションの確保
資産の一部を円建ての現金・預金として保有し、円高時に外国株式へ投資する余力を確保しておく戦略です。
(4) 為替予約の活用(上級者向け)
証券会社や銀行で為替予約を利用すれば、将来の為替レートを事前に固定できます。ただし、手数料やリスクがあるため、上級者向けの手法です。
まとめ:円安時代の外国株式投資
円安は、すでに外国株式を保有している投資家にとっては評価額上昇のメリットがある一方、新規購入を検討している投資家にとってはコスト増加のデメリットとなります。しかし、為替タイミングを見極めるのは非常に困難であり、長期投資では為替変動が平準化される傾向があります。
円安時の投資戦略まとめ:
- ドルコスト平均法で積立継続(為替タイミングを気にしない)
- 為替ヘッジはコストが高いため、長期投資では基本的に不要
- 外貨決済を活用して為替手数料を抑える
- 分散投資で通貨リスクを軽減
次のアクション:
- 証券会社で外貨決済の利用方法を確認
- 自分のリスク許容度と投資期間を再確認
- ドルコスト平均法での積立設定を検討
投資判断は自己責任で行い、ご自身のリスク許容度や投資目標に照らして慎重に検討してください。為替予測は不確実性が高く、実際の結果と異なる可能性があることをご理解ください。