円安時に外国株投資を検討すべき理由
「円安が進んでいるけれど、今外国株を買っても大丈夫?」「むしろ円高になるまで待つべき?」
為替レートが大きく動いている時期、このような疑問を持つ投資家は少なくありません。円安時の外国株投資には、保有資産の評価額が上昇するというメリットがある一方で、新規購入時のコストが増加するというデメリットもあります。
この記事では、円安時の外国株投資について、メリット・デメリットを両面から解説し、為替リスクを管理しながら投資を続けるための考え方を紹介します。
この記事のポイント:
- 円安時は保有株の円換算評価額が上昇するが、新規購入コストも増加する
- 為替タイミングの完璧な予測は専門家でも困難
- ドルコスト平均法で定期積立することで為替リスクを平準化できる
- 為替ヘッジ付き投資信託や外貨建てMMFも選択肢の一つ
- 長期分散投資を前提とすれば、一時的な為替変動に一喜一憂する必要はない
円安の基本:為替レートの仕組みと変動要因
外国株投資と為替の関係を理解するには、まず円安の基本を押さえておく必要があります。
(1) 円安とは何か:1ドル100円→150円の意味
円安とは、円の価値が下がることを指します。例えば、為替レートが1ドル=100円から1ドル=150円になった場合、これは円安です。
同じ1ドルを手に入れるのに、以前は100円で済んだのが、150円必要になるため、円の価値が下がったことになります。逆に、1ドル=150円から1ドル=100円になれば円高です。
(2) 為替レートが変動する主な要因(金利差・貿易収支・地政学リスク)
為替レートは常に変動しており、その要因は複雑です。主な要因として以下が挙げられます。
金利差: 日本と米国の政策金利の差が大きくなると、より高い金利を求めて資金が移動します。米国の金利が日本より高ければ、円を売ってドルを買う動きが強まり、円安が進みやすくなります。
貿易収支: 日本が輸入超過になれば、海外への支払いのために円を売ってドルを買う動きが強まり、円安圧力がかかります。
地政学リスク: 国際的な紛争や政治不安が高まると、安全資産として円が買われる傾向があります(リスクオフの円高)。逆に、リスク選好の局面では円安になることもあります。
円安時の外国株投資のメリット:保有資産の評価額上昇
円安が進行すると、既に外国株を保有している投資家にとっては大きなメリットがあります。
(1) 既存保有株の円換算評価額が増加する仕組み
外国株は基本的にドル建てで取引されます。そのため、株価自体は変わらなくても、円安が進めば円換算の評価額は上昇します。
例えば、100ドルの株を保有している場合、為替レートが1ドル=100円なら評価額は10,000円です。しかし、円安が進んで1ドル=150円になれば、同じ100ドルの株の評価額は15,000円になります。
(2) 具体例:1ドル100円→150円で評価額が1.5倍に
具体的な数字で見てみましょう。
- 保有株:米国株100ドル分
- 為替レート(購入時):1ドル=100円 → 評価額10,000円
- 為替レート(現在):1ドル=150円 → 評価額15,000円
株価が変わらなくても、円安が進んだだけで評価額が50%増加しました。これが円安時の外国株保有者にとっての大きなメリットです。
円安時の外国株投資のデメリット:新規購入コストの増加
一方で、これから外国株を買おうとする投資家にとっては、円安はデメリットになります。
(1) 同じ株を買うのに必要な円が増える
円安が進むと、同じドル建ての株を購入するのに必要な円が増加します。
例えば、100ドルの株を買いたい場合、為替レートが1ドル=100円なら10,000円で購入できます。しかし、1ドル=150円になれば、同じ株を買うのに15,000円必要になります。
(2) 具体例:100ドルの株が15,000円→22,500円に
さらに円安が進んだケースを見てみましょう。
- 購入したい株:米国株100ドル
- 為替レート(以前):1ドル=100円 → 購入コスト10,000円
- 為替レート(現在):1ドル=150円 → 購入コスト15,000円
同じ株を買うのに5,000円も余分にかかります。投資資金が限られている場合、購入できる株数が減ってしまうことになります。
為替リスクを管理する3つの方法
円安・円高のどちらに転んでも対応できるよう、為替リスクを管理する方法を知っておくことが重要です。
(1) ドルコスト平均法で為替変動を平準化
ドルコスト平均法とは、定期的に一定額を投資し続ける手法です。為替レートが円安でも円高でも、毎月一定額を投資することで、平均購入単価を平準化できます。
例えば、毎月30,000円ずつ外国株に投資する場合:
- 1ドル=100円の月 → 300ドル分購入
- 1ドル=150円の月 → 200ドル分購入
円高の時は多く買え、円安の時は少なく買うことになるため、為替タイミングのリスクを軽減できます。
(2) 為替ヘッジ付き投資信託の活用
為替変動の影響を避けたい場合は、為替ヘッジ付きの投資信託を選ぶこともできます。為替ヘッジとは、為替変動のリスクを回避する仕組みです。
ただし、為替ヘッジにはコストがかかります。ヘッジコストが運用益を圧迫する可能性もあるため、長期投資を前提とするなら、為替ヘッジなしで為替変動を受け入れることも選択肢の一つです。
(3) 外貨建てMMFで事前にドルを保有
外貨建てMMF(マネー・マーケット・ファンド)を利用すれば、円高の時にドルを購入しておき、外国株を買いたい時にドルのまま購入できます。
これにより、為替手数料を抑えつつ、為替タイミングをある程度コントロールすることが可能です。SBI証券や楽天証券などの主要証券会社で利用できます。
まとめ:為替タイミングより長期分散投資が重要
円安時の外国株投資には、保有資産の評価額上昇というメリットと、新規購入コスト増加というデメリットがあります。
しかし、為替レートを完璧に予測することは専門家でも困難です。「今が円安のピーク」「もっと円高になる」といった予測に基づいて投資タイミングを計ろうとすると、投資機会を逃すリスクがあります。
次のアクション:
- ドルコスト平均法で定期積立を始める(為替変動を平準化)
- 為替ヘッジ付き投資信託や外貨建てMMFを検討する
- 為替ではなく、投資先企業の本質的な価値に注目する
為替は循環するものであり、円安が永遠に続くこともなければ、円高が永遠に続くこともありません。一時的な為替水準に一喜一憂せず、長期的な視点で分散投資を続けることが、資産形成の王道と言えるでしょう。