外国株の配当金、確定申告しないと損をする?
外国株式から配当金を受け取っている日本人投資家の多くが、「確定申告は必要なの?」「どうすれば税金を取り戻せるの?」と疑問を抱いています。特に、米国株の配当金には米国と日本の両方で税金がかかるため、二重課税の問題が避けられません。
この記事では、外国株式配当金の確定申告と、外国税額控除を活用して二重課税を解消する方法を、2025年最新の情報をもとに詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 外国株の配当金は米国で10%、日本で20.315%の二重課税がかかる
- 外国税額控除を利用すれば、米国で課税された分を日本の税額から差し引ける
- 特定口座(源泉徴収あり)でも、外国税額控除を受けるには確定申告が必要
- NISA口座で受け取った配当は外国税額控除の対象外
1. 外国株式配当金の確定申告が必要な理由
外国株式、特に米国株の配当金は、米国と日本の両方で課税されます。日本の証券会社で米国株を保有している場合、配当金を受け取る際に以下のような税金がかかります。
- 米国での源泉徴収: 10%(日米租税条約による軽減税率)
- 日本での課税: 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
このままでは、実質的に約30%の税負担となってしまいます。しかし、外国税額控除を利用すれば、米国で課税された10%を日本の所得税から差し引くことができ、二重課税を軽減できます。
ただし、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。申告しなければ、せっかくの控除を受けられず損をしてしまいます。
2. 二重課税の仕組みと外国税額控除
外国株式の配当金がどのように課税されるのか、詳しく見ていきましょう。
(1) 米国での源泉徴収(10%)と日本での課税(20.315%)
米国企業が配当を支払う際、日本居住者には米国で10%の源泉徴収が行われます。本来、米国非居住者への配当には30%の源泉徴収が課されますが、日米租税条約により10%に軽減されています。
例えば、100ドルの配当が支払われる場合:
- 米国で10ドル源泉徴収 → 手取り90ドル
- 日本で約20ドル課税(100ドルに対して20.315%)
- 実質的な税負担: 約30ドル(30%)
この二重課税を軽減するのが外国税額控除です。
(2) W-8BENフォームと日米租税条約
日米租税条約の軽減税率(10%)を適用するには、証券会社にW-8BENフォームを提出する必要があります。多くの証券会社では口座開設時に自動的に提出されますが、未提出の場合は30%が源泉徴収されるため注意が必要です。
W-8BENフォームは3年ごとに更新が必要です。証券会社から更新案内が届いた際は、速やかに手続きを行いましょう。
(3) 外国税額控除の仕組み
外国税額控除とは、外国で課税された税金を日本の所得税・住民税から差し引ける制度です。
具体的な計算例:
配当金100ドル、為替レート150円/ドルの場合:
- 米国で10ドル源泉徴収(1,500円)
- 日本で20.315%課税(約3,047円)
- 外国税額控除を申告 → 最大1,500円を所得税から差し引ける
- 実質的な税負担: 約1,547円(約10%)
ただし、控除額には上限があり、所得税額に応じて計算されます。
3. 確定申告が必要なケース・不要なケース
外国株の配当金を受け取った場合、確定申告が必要かどうかは、口座の種類によって異なります。
(1) 特定口座(源泉徴収あり)でも外国税額控除には確定申告が必要
特定口座(源泉徴収あり)で配当金を受け取った場合、証券会社が自動的に税金を計算・納税してくれるため、基本的に確定申告は不要です。
しかし、外国税額控除を受けるには確定申告が必須です。申告しなければ、米国で源泉徴収された10%は戻ってきません。
申告のメリット:
- 米国で源泉徴収された税金の一部または全部を還付できる
- 配当所得が多い場合、税負担を大幅に軽減できる
申告のデメリット:
- 確定申告の手間がかかる
- 配当所得が少額の場合、還付額が手間に見合わない可能性がある
(2) NISA口座での配当は外国税額控除の対象外
NISA口座で外国株を保有している場合、日本の税金(20.315%)は非課税となります。しかし、米国での源泉徴収(10%)は免除されません。
さらに、NISA口座で受け取った配当は、そもそも日本で課税されていないため、外国税額控除の対象外です。つまり、NISA口座では米国の10%は取り戻せません。
(3) 申告不要制度との比較
配当所得は、確定申告せずに「申告不要制度」を選択することもできます。この場合、特定口座で源泉徴収された税金(20.315%)で課税関係が完結します。
申告不要制度を選ぶべきケース:
- 配当所得が少額で、確定申告の手間に見合わない
- 総合課税で申告すると税率が高くなる(高所得者)
外国税額控除を申告すべきケース:
- 配当所得が多く、米国の源泉徴収税額が大きい
- 総合課税で申告しても税率が低い(低所得者)
4. 外国税額控除の計算方法と控除限度額
外国税額控除には控除限度額があり、必ずしも全額控除できるわけではありません。
(1) 控除限度額の計算式
外国税額控除の控除限度額は、以下の式で計算されます。
控除限度額(所得税分) = その年の所得税額 × (国外所得金額 ÷ 所得総額)
例えば、年間の所得税額が10万円、国外所得(外国株の配当)が50万円、所得総額が500万円の場合:
控除限度額 = 10万円 × (50万円 ÷ 500万円) = 1万円
この場合、米国で源泉徴収された税額が1万円以下であれば全額控除できますが、1万円を超える場合は超過分は控除できません(翌年以降3年間繰り越し可能)。
(2) 年間取引報告書の見方
証券会社は毎年1月中に「年間取引報告書」を発行します。この報告書には、外国株の配当金額や外国で源泉徴収された税額が記載されています。
確認すべき項目:
- 配当金額(円換算)
- 外国所得税額(米国で源泉徴収された税額)
- 国内源泉徴収税額(日本で課税された税額)
この数値を確定申告書に転記します。
(3) 控除できる金額の目安
配当所得が年間10万円の場合、米国で約1万円が源泉徴収されます。所得税額が十分にあれば、この1万円が全額控除され、還付されます。
ただし、所得が少なく所得税額が低い場合は、控除限度額が小さくなり、全額控除できない可能性があります。
5. 確定申告書の書き方と必要書類
外国税額控除を受けるための確定申告の手順を解説します。
(1) 外国税額控除に関する明細書の記入方法
確定申告書に加えて、「外国税額控除に関する明細書」を提出する必要があります。
記入項目:
- 配当を支払った国(米国など)
- 外国で課税された所得の種類(配当所得)
- 外国所得税額(年間取引報告書から転記)
- 控除限度額の計算
国税庁の確定申告書作成コーナーを利用すれば、画面の指示に従って入力するだけで自動計算されます。
(2) e-Taxでの手続き
e-Tax(国税電子申告システム)を利用すれば、自宅から確定申告を完結できます。
手順:
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
- マイナンバーカードまたはID・パスワードでログイン
- 所得金額を入力(給与、配当など)
- 「外国税額控除」の項目を選択
- 年間取引報告書の数値を入力
- 控除額が自動計算される
- 電子申告完了
還付がある場合、通常1-2ヶ月で指定口座に振り込まれます。
(3) 必要書類(年間取引報告書、配当金支払通知書等)
確定申告に必要な書類は以下の通りです。
- 年間取引報告書(証券会社が発行)
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 配当金支払通知書(証券会社のマイページから取得)
e-Taxで申告する場合、書類の添付は不要ですが、5年間保管しておく必要があります。
6. まとめ:外国税額控除で二重課税を解消しよう
外国株式の配当金には米国と日本で二重課税がかかりますが、外国税額控除を利用すれば税負担を軽減できます。特定口座(源泉徴収あり)でも、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。
次のアクション:
- 証券会社から年間取引報告書を取得する(毎年1月中)
- 外国税額控除の控除限度額を計算する
- e-Taxで確定申告を行い、還付を受ける
確定申告の手間はかかりますが、配当所得が多い場合は数万円単位で還付を受けられる可能性があります。税制を理解し、賢く資産運用を進めていきましょう。