外国株 為替リスク|円高・円安の影響と軽減策【完全版】

公開日: 2025/10/20

外国株(米国株)の為替リスクとは

米国株投資を始めたいけれど、「為替リスクって何?」「円高になったら損するの?」と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。米国株はドル建て資産のため、為替レートの変動が投資収益に大きく影響します。

この記事では、米国株投資における為替リスクの仕組みと、具体的な対策方法を初心者にもわかりやすく解説します。

この記事のポイント:

  • 米国株はドル建て資産のため、円高では円換算の評価額が減少、円安では増加する
  • 株価が上昇しても円高で相殺される可能性がある
  • 為替ヘッジ付き投資信託、ドルコスト平均法、分散投資で為替リスクを軽減できる
  • 長期保有により為替変動は平準化される傾向がある
  • 為替差損益は税務上、譲渡所得として課税される

(1) 為替リスクの定義

為替リスクとは、為替レートの変動により外貨建て資産の円換算価値が変動するリスクのことです。米国株はドルで取引されるため、日本円で投資する場合、必ず為替レートの影響を受けます。

例えば、1株100ドルの米国株を保有している場合、為替レートが1ドル=150円なら円換算で15,000円ですが、1ドル=140円の円高になると14,000円に目減りします。株価が変わらなくても、為替レートの変動だけで資産価値が変わるのが為替リスクです。

(2) ドル建て資産の特性

米国株はドル建て資産であるため、以下の特性があります:

為替の動き ドル資産への影響
円高(1ドル=150円→140円) 円換算の評価額が減少
円安(1ドル=140円→150円) 円換算の評価額が増加

円安は日本円の価値が下がることを意味しますが、ドル建て資産を持っている投資家にとっては、円換算での資産価値が増えるメリットがあります。逆に、円高はドル建て資産の円換算価値を減らします。

為替リスクの仕組み(円高・円安の影響)

(1) 円高時の影響(1ドル=150円→140円)

円高とは、円の価値が上がることです。例えば、1ドル=150円から1ドル=140円になった場合、同じ1ドルを得るために必要な円が減ります。これは円の価値が上がったことを意味します。

具体例:

  • 投資時: 1株100ドル × 1ドル=150円 = 15,000円
  • 円高後: 1株100ドル × 1ドル=140円 = 14,000円
  • 円換算で1,000円(約6.7%)の目減り

株価が変わらなくても、円高により円換算の評価額が減少します。

(2) 円安時の影響(1ドル=140円→150円)

円安とは、円の価値が下がることです。1ドル=140円から1ドル=150円になった場合、同じ1ドルを得るために必要な円が増えます。

具体例:

  • 投資時: 1株100ドル × 1ドル=140円 = 14,000円
  • 円安後: 1株100ドル × 1ドル=150円 = 15,000円
  • 円換算で1,000円(約7.1%)の利益

株価が変わらなくても、円安により円換算の評価額が増加します。

(3) 株価上昇でも円高で相殺されるケース

注意すべきなのは、株価が上昇しても為替が円高になると、円換算での利益が相殺される、または損失になる可能性がある点です。

具体例:

  • 投資時: 1株100ドル × 1ドル=150円 = 15,000円
  • 売却時: 1株110ドル × 1ドル=140円 = 15,400円
  • ドルベースで10%上昇も、円換算では2.7%の利益にとどまる

この例では、株価が10%上昇したにもかかわらず、円高により円換算の利益は2.7%にとどまっています。

(4) 過去の為替変動データ

過去の為替レートを見ると、ドル円は大きく変動してきました。例えば、2022年には1ドル=150円を超える円安となり、2024年には一時140円台の円高となりました。このような為替変動は予測が困難で、投資家にとって大きなリスクとなります。

為替変動が投資収益に与える影響

(1) 配当金の円換算額の変動

米国株から配当金を受け取る場合、配当金もドル建てで支払われます。円換算額は、配当金受取時の為替レートに依存します。

具体例:

  • 配当金: 100ドル
  • 円高時(1ドル=140円): 14,000円
  • 円安時(1ドル=150円): 15,000円

同じ100ドルの配当でも、為替レートにより円換算額が1,000円変わります。

(2) 売却時の為替差損益

米国株を売却する際、株価の変動だけでなく、為替の変動による損益(為替差損益)も発生します。

具体例:

  • 取得時: 1株100ドル × 1ドル=150円 = 15,000円
  • 売却時: 1株100ドル × 1ドル=160円 = 16,000円
  • 株価変動なし、為替差益1,000円

このケースでは、株価は変わっていませんが、円安により為替差益が1,000円発生しています。

(3) 為替差損益の税務上の取扱い

為替差損益は、税務上、株式の譲渡所得として扱われます。外国株式の取得価額と売却価額は、それぞれの約定日のTTB(電信買相場)レートで円換算します。

為替差益が発生した場合、株式の売却益と合算して20.315%の税率で課税されます。特定口座(源泉徴収あり)を利用していれば、証券会社が自動的に計算・納税してくれます。

(4) 為替手数料のコスト

円をドルに換える際、または配当金をドルから円に換える際には、証券会社の為替手数料がかかります。

証券会社 為替手数料(片道)
SBI証券 1ドルあたり25銭
楽天証券 1ドルあたり25銭
マネックス証券 1ドルあたり0銭(買付時)

為替手数料は往復で発生するため、頻繁に売買すると手数料負担が大きくなります。外貨決済(ドルのまま保有・取引)を利用すると、為替手数料を節約できます。

為替リスクを軽減する5つの方法

(1) 為替ヘッジ付き投資信託の活用

為替ヘッジ付き投資信託は、先物為替予約などの手法を使って為替変動リスクを軽減した商品です。円高・円安の影響を受けずに、米国株式市場の値動きだけを享受できます。

ただし、為替ヘッジにはコストがかかります。日米の金利差分(年1〜3%程度)がヘッジコストとして信託報酬に上乗せされるため、長期的にはリターンが目減りする可能性があります。

(2) ドルコスト平均法(定期積立)

ドルコスト平均法とは、定期的に一定額を投資する方法です。為替レートが高い時も低い時も定額で買い続けることで、平均取得単価を平準化できます。

メリット:

  • 為替レートのタイミングを気にしなくてよい
  • 円高時にはより多くのドル資産を取得できる
  • 長期的に為替変動リスクが分散される

(3) ドル建て資産と円建て資産の分散

すべての資産を米国株に投資するのではなく、日本株や日本の債券など円建て資産も保有することで、為替リスクを分散できます。

分散例:

  • 米国株(ドル建て): 50%
  • 日本株(円建て): 30%
  • 現金・債券(円建て): 20%

この配分なら、円高で米国株の評価額が下がっても、円建て資産が相対的に安定し、ポートフォリオ全体のリスクが軽減されます。

(4) 外貨決済の活用(ドルのまま保有)

外貨決済を利用すると、配当金や売却代金をドルのまま保有できます。次の米国株購入時にそのドルを使えば、為替手数料を節約できます。

また、ドルのまま保有することで、将来円安になった時に円転すれば為替差益を得られる可能性もあります。

(5) 長期保有で為替変動を平準化

短期的には為替は大きく変動しますが、長期的には平準化される傾向があります。10年、20年といった長期で保有することで、為替変動の影響を抑えられます。

長期投資と為替リスクの関係

(1) 短期的な為替変動vs長期的なトレンド

短期的には、為替レートは日々変動します。1日で数円動くこともあります。しかし、長期的に見ると、為替レートは経済のファンダメンタルズ(金利差、貿易収支など)に沿って動く傾向があります。

(2) 長期投資で為替リスクが薄れる理由

長期投資では、以下の理由で為替リスクが薄れます:

  • 為替は長期的に平均回帰する傾向がある
  • 配当再投資により、複利効果が為替変動を上回る可能性がある
  • 株価の成長が為替変動を相殺する可能性が高い

例えば、米国株が年率7%成長する場合、10年で約2倍になります。この成長が、短期的な為替変動の影響を上回る可能性があります。

(3) 為替予測の困難性

為替レートを正確に予測することは、プロの投資家でも困難です。短期的な為替変動を予測して売買するのではなく、長期的な視点で投資することが推奨されます。

まとめ:為替リスクと上手に付き合う

(1) 為替リスクは避けられないが管理可能

米国株投資において為替リスクは避けられませんが、適切な対策により管理できます。為替ヘッジ付き投資信託、ドルコスト平均法、分散投資などを活用しましょう。

(2) 分散投資と長期保有の重要性

為替リスクへの最も有効な対策は、分散投資と長期保有です。ドル建て資産と円建て資産をバランスよく保有し、定期的に積立投資を続けることで、為替変動の影響を平準化できます。

次のアクション:

  • 自分のリスク許容度を確認する
  • 為替ヘッジ付きファンドとヘッジなしファンドを比較する
  • ドルコスト平均法で定期積立を始める
  • ドル建て資産と円建て資産の割合を決める

為替リスクを正しく理解し、適切に対策することで、米国株投資の長期的なリターンを享受できます。

よくある質問

Q1為替リスクは投資収益にどのくらい影響しますか?

A1為替レートは短期間で10%以上変動することもあります。例えば1ドル=150円から1ドル=135円の円高になった場合、株価が変わらなくても円換算で10%目減りします。逆に円安になれば円換算の評価額は増加します。

Q2為替リスクを避ける方法はありますか?

A2為替ヘッジ付き投資信託を利用すれば為替変動の影響を軽減できますが、ヘッジコスト(年1〜3%程度)がかかります。ドルコスト平均法で定期的に積立投資を行う、ドル建て資産と円建て資産を分散する、長期保有で為替変動を平準化するなどの方法も有効です。

Q3ドル建て資産を持つメリットは何ですか?

A3円安時には円換算での資産価値が増加します。また、円とドルの分散投資により、通貨リスクをヘッジできます。円の価値が下落した場合でも、ドル建て資産を持っていれば資産全体の価値が守られる可能性があります。

Q4長期投資なら為替リスクは気にしなくていいですか?

A4長期保有により為替変動は平準化される傾向がありますが、リスクがゼロになるわけではありません。10年、20年といった長期では、米国株の成長が為替変動を上回る可能性が高いですが、分散投資と定期的な積立投資を組み合わせることが推奨されます。

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