外国株が下落すると焦ってしまう...どう対処すればいい?
米国株をはじめとする外国株に投資している日本人投資家の多くが、相場下落時に不安を感じています。「損失が膨らんでいくのが怖い」「今すぐ売った方がいいのでは?」という焦りは、投資家なら誰もが経験するものです。
しかし、過去の暴落事例を見ると、多くの場合、市場は時間をかけて回復してきました。この記事では、外国株下落時の正しい対処法と、避けるべき行動について、過去のデータをもとに詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 過去の暴落(リーマンショック・コロナショック)は数ヶ月~数年で回復している
- 下落時はドルコスト平均法の継続、リバランスの検討が有効
- パニック売りや感情的な売買は避けるべき
- 損益通算・繰越控除を活用すれば税制面でのメリットあり
- NISA口座の損失は損益通算の対象外なので注意
外国株下落時に投資家が直面する不安
(1) なぜ外国株は下落するのか
外国株、特に米国株が下落する主な要因は以下の通りです。
- 金融引き締め: 米連邦準備制度(FRB)が利上げを行うと、株式の相対的な魅力が低下
- 景気後退懸念: GDPの成長鈍化や雇用統計の悪化で、企業業績への不安が広がる
- 地政学リスク: 戦争、貿易摩擦、選挙の不確実性
- 市場心理: 投資家の恐怖心が広がり、売りが売りを呼ぶ「パニック売り」
これらの要因は単独ではなく、複合的に絡み合って下落を引き起こすことが多いと言われています。
(2) 下落局面での典型的な心理状態
下落局面では、投資家は以下のような心理状態に陥りやすいことが知られています。
- 損失回避バイアス: 利益よりも損失を強く感じ、冷静な判断ができなくなる
- 群集心理: 周囲が売っていると自分も売らなければと焦る
- 後悔の恐怖: 「あのとき売っておけば」という後悔を避けるため、底値で投げ売りしてしまう
金融庁も、市場下落時には冷静な判断とリスク管理の重要性を呼びかけています。
過去の暴落事例から学ぶ回復パターン
(1) リーマンショック(2008-2009)の下落と回復
2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻を契機とした金融危機では、S&P500指数は約57%下落しました。しかし、その後約4年間で下落前の水準を回復し、長期投資家は損失を取り戻すことができました。
(出典: Federal Reserve Economic Data (FRED) - S&P 500 Historical Drawdowns)
(2) コロナショック(2020年)の急落と急回復
2020年3月、新型コロナウイルスのパンデミックでS&P500指数は約34%急落しましたが、わずか約5ヶ月で元の水準に回復しました。これは史上最速の回復ペースとされています。
(3) 市場調整の頻度と規模のデータ
J.P. Morganの市場分析によると、10%以上の「市場調整」は平均して1~2年に1回程度発生すると言われています。20%以上の「弱気相場(ベアマーケット)」は数年に1回程度です。
つまり、下落は株式市場では「通常の出来事」であり、長期投資家にとっては想定内の現象と言えます。
(4) 下落後の回復期間の傾向
過去のデータによれば、下落幅が大きいほど回復に時間がかかる傾向にありますが、多くの場合、数ヶ月から数年で元の水準に戻っています。バンガード社の調査でも、長期的には株式市場は右肩上がりの傾向が確認されています。
(出典: Vanguard - How to Invest During Market Volatility)
下落時にやるべきこと
(1) 冷静な状況分析と投資計画の再確認
まずは冷静に現状を分析しましょう。
- 自分の投資目的(老後資金、子供の教育費など)は変わっていないか?
- ポートフォリオ全体のリスク許容度は適切か?
- 保有銘柄の企業業績に根本的な問題はないか?
投資計画そのものに問題がなければ、慌てて売る必要はありません。
(2) ドルコスト平均法の継続
下落時こそ、ドルコスト平均法(定期的に一定額を投資する手法)の真価が発揮されます。
- 価格が下がっているときに多くの株数を購入できる
- 平均取得単価が下がり、回復時の利益が大きくなる
- 底値を予測する必要がない
楽天証券の解説でも、積立投資を継続することで下落時の買い増し効果が得られると紹介されています。
(3) リバランスの検討
下落によりポートフォリオの資産配分が崩れた場合、リバランス(元の配分に戻す調整)を検討しましょう。
例えば、株式60%・債券40%の配分だったのが、下落で株式50%・債券50%になった場合、債券の一部を売却して株式を買い増すことで元の配分に戻せます。
(4) ディフェンシブ銘柄への分散
下落相場では、景気変動の影響を受けにくいディフェンシブ銘柄が比較的安定すると言われています。
- 生活必需品セクター: P&G、コカ・コーラなど
- ヘルスケアセクター: ジョンソン・エンド・ジョンソン、ファイザーなど
- 公益セクター: 電力・ガス会社
ただし、これは「情報提供」であり、個別銘柄の推奨ではありません。投資判断は自己責任で行ってください。
(出典: Morningstar - Bear Market Survival Guide)
下落時に避けるべき行動
(1) パニック売りの危険性
底値で売却してしまうと、その後の回復時の利益を逃してしまいます。日本証券業協会も、パニック売りを避け、長期視点を持つことの重要性を強調しています。
(2) レバレッジ取引のリスク
信用取引や先物取引では、下落時に強制決済(追証)が発生するリスクがあります。下落局面では、レバレッジを効かせた取引は避けるべきと言われています。
(3) 感情的な売買判断
「もう下がり続けるに違いない」という恐怖や、「今すぐ損失を確定させたい」という焦りは、合理的な判断を妨げます。投資判断は感情ではなく、データと計画に基づいて行いましょう。
(4) 短期的な値動きへの過剰反応
日々の株価変動に一喜一憂せず、長期的な視点を保つことが大切です。バンガード社の研究でも、短期的なタイミング投資よりも、長期保有の方がリターンが高いとされています。
税金対策と損失活用の方法
(1) 損益通算の仕組み
外国株で損失が出た場合、同じ年の他の株式譲渡益と相殺できます。
例えば、A株で100万円の利益、B株で50万円の損失が出た場合、課税対象は50万円になります。
(2) 損失繰越控除(3年間)の活用
その年の損失が利益を上回った場合、損失を翌年以降3年間繰り越して、将来の利益と相殺できます。
ただし、確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)でも、繰越控除を受けるには確定申告をする必要があります。
(出典: 国税庁 - 損失の繰越控除制度)
(3) NISA口座での注意点
NISA口座での損失は、損益通算や繰越控除の対象外です。非課税のメリットと引き換えに、税制上の優遇措置は受けられません。
長期投資前提のNISA口座では、短期的な損失を気にせず保有を継続することが一般的です。
まとめ:長期投資家としての心構え
外国株の下落は投資家にとって避けられない試練ですが、過去のデータを見ると、多くの場合、市場は回復してきました。
次のアクション:
- 投資計画を再確認し、長期的な視点を保つ
- ドルコスト平均法での積立投資を継続する
- 損益通算・繰越控除を活用して税負担を軽減する
- 感情的な売買を避け、冷静に対処する
下落時こそ、長期投資家としての冷静さと忍耐が試されます。焦らず、データに基づいた合理的な判断を心がけましょう。