外国株の配当金に確定申告が必要な理由
米国株から配当金を受け取ったけれど、「確定申告は必要?」「二重課税って聞いたけどどういうこと?」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。外国株の配当金は、米国と日本で二重に課税されているため、確定申告で外国税額控除を受けることで税負担を軽減できます。
この記事では、外国株の配当金に対する確定申告の方法と外国税額控除の仕組みを、初心者にもわかりやすく解説します。
この記事のポイント:
- 米国株の配当金は米国で10%、日本で20.315%課税される(二重課税)
- 外国税額控除を受けるには確定申告が必要
- 特定口座(源泉徴収あり)でも外国税額控除を受けるには申告が必要
- e-Taxを使えば自宅から簡単に電子申告できる
- 申告しないと米国で源泉徴収された10%は取り戻せない
(1) 米国での源泉徴収(10%)と日本での課税(20.315%)
米国株から配当金を受け取ると、まず米国で自動的に10%が源泉徴収されます。これは日米租税条約により定められた税率です(条約がない場合は30%)。
例えば、100ドルの配当金が支払われる場合、米国で10ドルが源泉徴収され、手元に届くのは90ドルです。
その後、日本でさらに20.315%の税金がかかります。内訳は以下の通りです:
税目 | 税率 |
---|---|
所得税 | 15.315% |
住民税 | 5% |
合計 | 20.315% |
(2) 二重課税の仕組み
米国で10%課税された後、日本でさらに20.315%課税されるため、二重課税の状態になっています。
具体例(100ドルの配当金、為替レート150円/ドル):
- 米国で10%源泉徴収 → 10ドル(1,500円)
- 手取り90ドル(13,500円)
- 日本で20.315%課税 → 約3,047円
- 実質的な手取り: 約10,453円
このままでは、合計で約30%の税金がかかっていることになります。
(3) 外国税額控除で税負担を軽減
外国税額控除を利用すれば、米国で課税された10%を日本の所得税から差し引けます。確定申告をすることで、二重課税の一部を解消できるのです。
外国税額控除の仕組みと二重課税の解消
(1) 外国税額控除とは
外国税額控除とは、外国で課税された税金を日本の所得税から差し引ける制度です。これにより、国際的な二重課税を調整できます。
外国税額控除を受けるには、確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも、外国税額控除を受けるには確定申告をしなければなりません。
(2) 控除額の計算方法
外国税額控除の控除限度額は、以下の計算式で求めます:
控除限度額 = 所得税額 × (国外所得 ÷ 所得総額)
例えば、年間所得が500万円、米国株の配当が50万円、所得税額が50万円の場合:
控除限度額 = 50万円 × (50万円 ÷ 500万円)= 5万円
米国で源泉徴収された税額が5万円以下であれば、全額控除できます。5万円を超える場合は、5万円が控除限度額となります。
(3) 控除限度額と注意点
外国税額控除には上限があります。控除限度額を超える部分は控除できません。また、控除しきれなかった部分は、翌年以降3年間繰り越すことができます。
注意点:
- 控除限度額は所得税額に依存するため、所得が少ない場合は控除額も少なくなる
- 住民税からも一部控除できるが、所得税とは別に計算が必要
- 控除を受けるには「外国税額控除に関する明細書」の提出が必要
確定申告が必要なケース・不要なケース
(1) 特定口座(源泉徴収あり)の場合
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合、証券会社が自動的に税金を計算・納付してくれるため、通常は確定申告が不要です。
しかし、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。申告しなければ、米国で源泉徴収された10%は取り戻せません。
申告するかどうかの判断基準:
- 外国株の配当金が少額(年間数万円以下)の場合、申告の手間と還付額を比較する
- 配当金が多い場合(年間10万円以上など)は申告する価値が高い
- 他に確定申告が必要な所得がある場合は、まとめて申告すると効率的
(2) 特定口座(源泉徴収なし)・一般口座の場合
特定口座(源泉徴収なし)または一般口座を利用している場合、年間の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
外国株の配当金も所得に含まれるため、他の所得と合算して20万円を超える場合は、必ず確定申告をしてください。申告しないと、無申告加算税などのペナルティが科される可能性があります。
(3) NISA口座の場合
NISA口座で米国株を保有している場合、日本の税金(20.315%)は非課税です。ただし、米国での源泉徴収10%は避けられません。
NISA口座では外国税額控除を利用できないため、米国で源泉徴収された10%を取り戻すことはできません。これはNISA口座のデメリットの1つです。
具体的な確定申告の手順
(1) 確定申告の期間と期限
確定申告の期間は、毎年2月16日から3月15日です。この期間内に、前年1月1日から12月31日までの所得を申告します。
期限を過ぎると還付が遅れるだけでなく、無申告加算税が科される可能性があります。早めに準備して、期限内に申告しましょう。
(2) 申告書第一表・第二表の記入
確定申告書の第一表・第二表に、配当所得を記入します。
記入手順:
- 証券会社から受け取った「年間取引報告書」を準備
- 配当所得の金額を第一表の「配当所得」欄に記入
- 第二表の「所得の内訳」欄に、証券会社名と配当金額を記入
特定口座(源泉徴収あり)の場合、年間取引報告書に配当所得の金額が記載されているため、その数字をそのまま転記します。
(3) 外国税額控除に関する明細書の記入
外国税額控除を受けるには、「外国税額控除に関する明細書」を作成して提出する必要があります。
記入項目:
- 外国で課税された所得の種類(配当所得)
- 外国で課税された税額(米国で源泉徴収された10%)
- 控除限度額の計算
明細書の記入方法は複雑ですが、国税庁のウェブサイトに記入例が掲載されているため、参考にしてください。
(4) e-Taxでの電子申告
e-Taxを利用すれば、自宅から簡単に確定申告ができます。マイナンバーカードとカードリーダー(またはスマートフォン)があれば、24時間いつでも申告可能です。
e-Taxのメリット:
- 税務署に行く必要がない
- 還付金の振込が早い(紙の申告より1〜2週間早い)
- 申告書の計算ミスを自動チェックしてくれる
- 過去のデータを保存して翌年以降の申告に利用できる
初めてe-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードの電子証明書を取得する必要があります。詳しくは国税庁のe-Taxウェブサイトをご覧ください。
必要書類の準備と記入方法
(1) 年間取引報告書の取得
証券会社は、毎年1月中旬〜下旬に「特定口座年間取引報告書」を発行します。この報告書には、1年間の配当金や売却益、源泉徴収税額などが記載されています。
取得方法:
- 証券会社のウェブサイトからダウンロード
- 郵送で受け取る(証券会社により対応が異なる)
SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券では、ウェブサイトから簡単にダウンロードできます。
(2) 配当金の支払通知書
配当金を受け取るたびに、証券会社から「配当金の支払通知書」が発行されます。この通知書には、配当金額、米国での源泉徴収額、日本での源泉徴収額が記載されています。
年間取引報告書にすべての配当金が集約されているため、通常は支払通知書を個別に提出する必要はありませんが、念のため保管しておくと安心です。
(3) 外国所得税の証明(源泉徴収票)
外国税額控除を受けるには、米国で源泉徴収された税額を証明する書類が必要です。ただし、証券会社が発行する年間取引報告書に外国所得税の金額が記載されている場合、別途証明書を取得する必要はありません。
SBI証券、楽天証券などの主要ネット証券では、年間取引報告書に外国所得税が記載されているため、追加の書類は不要です。
まとめ:外国株配当の確定申告を正しく行うために
外国株の配当金は、米国で10%、日本で20.315%の二重課税がかかりますが、確定申告で外国税額控除を受けることで税負担を軽減できます。
特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合でも、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。申告しなければ、米国で源泉徴収された10%は取り戻せません。
次のアクション:
- 証券会社から年間取引報告書を取得する
- 配当金の金額と外国所得税の額を確認する
- e-Taxでの電子申告を検討する
- 申告期間(2月16日〜3月15日)内に申告する
- 不明点があれば税務署や税理士に相談する
確定申告は一度やれば翌年以降も同じ手順で簡単にできます。外国税額控除を活用して、賢く米国株投資を続けましょう。