個別株の売り時はいつ?利益確定と損切りの判断基準を解説

公開日: 2025/10/20

株の売り時が難しい理由

米国株投資で含み益が出ているけれど、「今売るべきか、まだ上がるかもしれない」と迷っていませんか。逆に、含み損を抱えて「いつか戻るはず」と塩漬けにしていませんか。

株の売り時は、投資で最も難しい判断の一つです。この記事では、利益確定と損切りの判断基準について、具体的なルールとともに解説します。

この記事のポイント:

  • 完璧な売り時は存在しない。事前ルール設定が重要
  • 利益確定は目標株価(+20%等)やトレーリングストップで判断
  • 損切りラインは購入価格から-10%前後が一般的
  • 長期投資なら短期変動で売らない姿勢も重要
  • 売却時の税金(20.315%)も考慮に入れる

株の売り時が難しい理由

(1) 感情が判断を鈍らせる

Investopediaの調査によると、個人投資家の多くが感情的な売買で損失を拡大させています。

感情的な判断の例:

  • 恐怖: 少し下がっただけで慌てて売却(狼狽売り)
  • 欲望: 利益が出ているのに「もっと上がるはず」と売らない
  • 後悔: 「損を認めたくない」と塩漬けにする
  • 希望: 「いつか戻るはず」と損切りできない

これらの感情は、合理的な判断を妨げます。

(2) 完璧なタイミングは存在しない

株価の天井と底を正確に当てることは、プロでも不可能です。ウォーレン・バフェット氏も「完璧なタイミングを狙わない」と述べています。

重要なのは、「最高値で売る」ことではなく、「自分のルールに従って売る」ことです。

(3) 事前ルールの重要性

金融庁の投資教育資料では、事前に売却ルールを設定することを推奨しています。

事前ルールの例:

  • 購入価格から+20%で利益確定
  • 購入価格から-10%で損切り
  • 目標株価に到達したら段階的に売却
  • 投資理由が消失したら即座に売却

ルールを設定しておけば、感情的な判断を避けられます。

利益確定の考え方とタイミング

(1) 目標株価の設定(+20%等)

購入時に目標株価を設定しておくと、売り時の判断がスムーズになります。

目標設定の例:

  • 短期投資: +10〜20%で利益確定
  • 中期投資: +30〜50%で利益確定
  • 長期投資: 企業価値が割高になるまで保有

SBI証券の投資ガイドでは、初心者には+20%程度の目標設定を推奨しています。

(2) トレーリングストップの活用

トレーリングストップは、株価上昇に合わせて損切りラインを引き上げる手法です。

具体例:

  • 購入価格: 100ドル
  • 初期損切りライン: 90ドル(-10%)
  • 株価が120ドルに上昇
  • 新しい損切りライン: 108ドル(120ドルから-10%)

この方法なら、利益を守りながら上昇余地も残せます。

(3) リバランスによる利益確定

ポートフォリオ全体のバランスが崩れたら、値上がりした銘柄を一部売却します。

リバランスの例:

  • 当初の配分: A銘柄20%、B銘柄20%、C銘柄20%等
  • A銘柄が値上がりして30%に
  • A銘柄を一部売却して20%に戻す

年1-2回のリバランスで、自然に「高く売って安く買う」ことができます。

(4) 売るべき5つのサイン

Investopediaによると、以下の場合は売却を検討すべきとされています:

  1. 投資理由が消失: 競争優位性の喪失、経営陣の交代等
  2. 財務悪化: 売上減少、債務増加、キャッシュフロー悪化
  3. 株価が割高: PERが業界平均の2倍以上等
  4. より良い投資機会: 資金を別の銘柄に振り向けたい
  5. ポートフォリオ調整: リバランスや分散投資のため

損切りルールの設定方法

(1) 損切りラインの決め方(-10%等)

楽天証券の投資ガイドでは、購入価格から-10%前後を損切りラインとすることを推奨しています。

リスク許容度 損切りライン
保守的 -5〜7%
標準的 -10%
積極的 -15%

リスク許容度に応じて調整しますが、-15%を超えると損失が大きくなりすぎます。

(2) 塩漬けを避ける重要性

損失を認めたくないという心理から、損切りせずに保有し続けることを「塩漬け」と言います。

塩漬けのデメリット:

  • 資金が拘束され、他の投資機会を逃す
  • 精神的ストレスが続く
  • さらに株価が下落するリスク
  • 配当がない場合、何も生まない

Mornigstarの調査では、早期の損切りが長期的なリターン向上につながるとされています。

(3) 企業価値の変化を見極める

株価下落には2種類あります:

一時的な下落(買い増しのチャンス):

  • 市場全体の調整
  • 短期的な悪材料
  • センチメントの悪化

構造的な問題(売却を検討):

  • 競争力の喪失
  • 業績の長期低迷
  • 経営陣の問題
  • 産業構造の変化

企業価値が毀損している場合は、損切りを検討すべきです。

(4) 損切り後の次の一手

損切りしたら、その資金をどうするか事前に考えておきます。

選択肢:

  • より良い投資機会に振り向ける
  • 一旦現金化して市場を観察
  • インデックス投資に回す
  • ポートフォリオのリバランスに使う

損切りは「失敗」ではなく、「リスク管理」の一環です。

長期保有との使い分け

(1) 短期売買vs長期投資

投資スタイルによって、売り時の判断基準が変わります。

投資スタイル 保有期間 売却判断
短期売買 数日〜数ヶ月 +10〜20%で利確、-10%で損切り
中期投資 1〜3年 +30〜50%で利確、企業価値変化で判断
長期投資 5年以上 企業価値が割高になるまで保有

日本証券業協会の教育資料では、初心者には長期投資を推奨しています。

(2) 配当株の長期保有戦略

配当株は、基本的に長期保有が前提です。

売却を検討するケース:

  • 減配・無配に転落
  • 配当性向が80%超(持続可能性が低い)
  • 財務悪化で配当継続が困難
  • 企業価値が大きく毀損

保有を継続するケース:

  • 一時的な株価変動
  • 市場全体の調整
  • 配当が継続している
  • 企業の競争力が維持されている

配当貴族(25年以上連続増配)のような銘柄は、短期変動で売らない姿勢が重要です。

(3) 一時的な下落と構造的問題の区別

一時的な下落 構造的問題
市場全体の調整 競争優位性の喪失
短期的な悪材料 長期的な業績低迷
センチメント悪化 経営陣の問題
四半期決算ミス 産業構造の変化

一時的な下落なら、むしろ買い増しのチャンスです。構造的問題なら、早期の売却を検討すべきです。

売却時の税金と手取り額

(1) 譲渡所得税(20.315%)

米国株を売却して利益が出ると、日本で譲渡所得税が課されます。

税目 税率
所得税 15.315%
住民税 5%
合計 20.315%

計算例:

  • 購入価格: 100ドル
  • 売却価格: 150ドル
  • 利益: 50ドル(為替レート150円なら7,500円)
  • 税金: 7,500円 × 20.315% = 1,524円
  • 手取り: 7,500円 - 1,524円 = 5,976円

(2) 特定口座での源泉徴収

特定口座(源泉徴収あり)なら、証券会社が自動的に税金を計算・徴収してくれます。

メリット:

  • 確定申告不要
  • 損益通算が自動
  • 手間がかからない

デメリット:

  • 源泉徴収されるため、年内に再投資しにくい

(3) NISAでの売却メリット

NISA口座で保有している米国株なら、売却益が非課税です。

NISAのメリット:

  • 売却益が完全非課税
  • 年間360万円まで投資可能(成長投資枠)
  • 配当金も非課税(ただし米国での10%源泉徴収はあり)

短期売買を予定している銘柄は、NISA口座で保有すると税制メリットが大きくなります。

(4) 確定申告の要否

口座種類 確定申告
特定口座(源泉徴収あり) 不要
特定口座(源泉徴収なし) 必要
一般口座 必要
NISA口座 不要

複数口座で損益がある場合、確定申告で損益通算すると税金が還付されることがあります。

まとめ:売り時判断の成功法則

株の売り時に完璧な正解はありません。しかし、事前にルールを設定し、感情的な判断を避けることで、長期的なリターンを向上させることができます。

売り時判断の5つのポイント:

  1. 購入時に目標株価(+20%等)と損切りライン(-10%等)を設定
  2. トレーリングストップで利益を守りながら上昇余地も残す
  3. 投資理由が消失したら即座に売却
  4. 長期投資なら一時的な下落で売らない
  5. 税金(20.315%)も考慮に入れる

次のアクション:

  • 保有銘柄ごとに売却ルールを設定する
  • ポートフォリオ全体を見直してリバランス
  • 損切りラインを決めて指値注文を入れる
  • 年1-2回、投資理由を再確認する

売り時の判断は難しいですが、ルールに従って機械的に実行することが成功の鍵です。感情に流されず、長期的な資産形成を目指しましょう。

※投資判断は自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨ではありません。

よくある質問

Q1売り時の目安は?

A1目標株価や時間軸で事前設定することが重要です。一般的には、短期投資なら+10〜20%で利益確定、購入価格から-10%で損切りというルールが推奨されています。完璧なタイミングは存在しないため、感情的な判断を避けて事前ルールに従うことが成功の鍵です。

Q2損切りラインはどう設定する?

A2購入価格から-10%前後が一般的です。リスク許容度に応じて、保守的なら-5〜7%、積極的なら-15%まで調整できます。ただし、-15%を超えると損失が大きくなりすぎるため注意が必要です。設定したら厳守することが重要で、塩漬けを避けるために機械的に実行しましょう。

Q3配当株も売るべき?

A3配当株は基本的に長期保有が前提です。ただし、減配・無配に転落した場合や、配当性向が80%超で持続可能性が低い場合、財務悪化で配当継続が困難な場合は売却を検討すべきです。一時的な株価変動や市場全体の調整では売らず、配当が継続している限り保有を続けるのが賢明です。

Q4税金を考慮した売却戦略は?

A4特定口座(源泉徴収あり)なら自動的に20.315%が徴収され、確定申告不要です。NISA口座なら売却益が非課税なので、短期売買を予定している銘柄はNISA口座で保有すると税制メリットが大きくなります。また、年内の損益通算も考慮し、損失が出ている銘柄を年内に売却して利益と相殺することもできます。

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