米国個別株やらない選択は正解?投資信託・ETF比較

公開日: 2025/10/20

「個別株をやらない」は合理的な選択肢

米国株投資に興味はあるけれど、「個別株を選ぶ自信がない」「どの銘柄を買えばいいのかわからない」と感じている方は多いでしょう。実際、SNSや投資情報サイトでは個別株投資の成功体験が目立ち、「個別株をやらない=負け組」のように感じてしまうこともあるかもしれません。

しかし、個別株を選ばず投資信託やETFで米国株市場に投資する選択は、決して消極的ではなく、極めて合理的な戦略です。この記事では、個別株と投資信託・ETFの違いを比較し、あなたに合った投資スタイルを見つけるためのヒントをお伝えします。

この記事のポイント:

  • 個別株投資は高リターンの可能性がある一方、銘柄選定のスキルと時間が必要
  • 投資信託・ETFは分散投資で米国株市場全体に投資でき、低コストで手間がかからない
  • どちらも正解・不正解はなく、投資家の目的・リスク許容度による
  • 初心者は投資信託・ETFから始め、慣れたらコア・サテライト戦略で併用するのが効果的
  • 投資信託・ETFも価格変動リスクがあり、元本保証ではない点に注意

個別株投資のメリット・デメリット

個別株投資は、特定の企業(例:Apple、Microsoft、Tesla)の株式を直接購入する方法です。まずは個別株のメリット・デメリットを整理しましょう。

(1) メリット:高リターンの可能性と銘柄選びの楽しさ

個別株の最大の魅力は、成長企業を早期に見つけることで、市場平均を大きく上回るリターンを得られる可能性です。例えば、過去10年でAppleやNvidiaに投資していた場合、S&P 500の平均リターンを大幅に超える成果が得られました。

また、自分が応援したい企業に投資できる楽しさや、企業分析・業界研究を通じてビジネスへの理解が深まる点も、個別株投資ならではの魅力です。

(2) デメリット:銘柄選定の難しさと分散不足のリスク

一方で、個別株投資には以下のようなデメリットがあります。

銘柄選定の難しさ
企業の財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を読み解き、業界の成長性や競合状況を分析するには、相応のスキルと時間が必要です。Morningstarの調査によれば、プロの運用者でさえ、長期的に市場平均(S&P 500)を上回るリターンを出し続けるのは難しいとされています。

分散不足のリスク
個別株に集中投資すると、その企業の業績悪化や不祥事で大きな損失を被る可能性があります。例えば、1社に資産の50%を投じた場合、その企業の株価が半減すれば、あなたの資産も25%減少します。

時間とスキルが必要
個別株投資では、決算発表やニュースを定期的にチェックし、投資判断を更新し続ける必要があります。本業が忙しい方には、この時間的負担が大きいでしょう。

投資信託・ETFのメリット・デメリット

投資信託・ETF(上場投資信託)は、複数の銘柄をまとめて購入できる金融商品です。例えば、S&P 500に連動するETFを1口買えば、米国の主要500社に分散投資できます。

(1) メリット:分散投資、低コスト、手間がかからない

分散投資によるリスク低減
投資信託・ETFは数十〜数百の銘柄に分散投資するため、1社の業績悪化が全体に与える影響は限定的です。米国証券取引委員会(SEC)も、分散投資はリスク低減の基本戦略として推奨しています。

低コストで市場全体に投資
近年、低コストのインデックスファンド(例:Vanguard S&P 500 ETF、VOO)が普及し、信託報酬(年間運用コスト)は0.03〜0.1%程度まで低下しています。個別株の売買手数料と比べても、長期保有ではコスト優位性があります。

手間がかからない
一度購入すれば、銘柄入れ替えはファンドが自動で行うため、投資家自身が定期的に銘柄をチェックする必要がありません。積立設定をすれば、毎月自動的に買い付けることも可能です。

(2) デメリット:リターンの平均化と信託報酬

リターンの平均化
投資信託・ETFは市場全体に投資するため、リターンも市場平均に収束します。つまり、個別株のように「10倍株(テンバガー)」を狙うことは難しくなります。

信託報酬のコスト
低コストとはいえ、信託報酬は長期では無視できない金額になります。例えば、信託報酬0.1%と1.0%の差は、30年で数十万円の差になる可能性があります(執筆時点の一般的な水準)。

(3) NISA活用のポイント

日本では、NISA(少額投資非課税制度)を使えば、投資信託・ETFの売却益や配当金が非課税になります。つみたて投資枠(年間120万円)は金融庁が指定した低コスト投資信託・ETFに限定されており、長期の資産形成に適しています。成長投資枠(年間240万円)では個別株も購入可能です。

注意:投資信託・ETFも価格変動リスクがあり、「安全」ではありません。 市場全体が下落すれば、投資信託・ETFも下落します。元本保証ではない点を理解した上で、長期・分散・積立の基本を守りましょう。

個別株と投資信託・ETFの比較表

以下の表で、主な違いを整理します。

項目 個別株 投資信託・ETF
リターン 高リターンの可能性(銘柄次第) 市場平均に収束
リスク 銘柄集中リスク高 分散投資でリスク低減
必要なスキル 財務分析、業界知識 ほぼ不要
必要な時間 定期的な銘柄チェック必要 ほぼ不要(積立設定可)
コスト 売買手数料(証券会社による) 信託報酬(年0.03〜2%程度)
NISA対応 成長投資枠のみ つみたて投資枠・成長投資枠
為替リスク あり(円ドルレート) あり(円ドルレート)

※為替リスクは、個別株・投資信託・ETFのどちらも影響を受けます。円高になれば、ドル建て資産の円換算評価額は下がります。

自分に合った投資スタイルの選び方

では、どちらを選べばいいのでしょうか?ここでは、投資経験やリスク許容度に応じた選び方を紹介します。

(1) 初心者向け:投資信託・ETFから始める

投資経験が浅い方、投資に時間をかけたくない方は、まず投資信託・ETFから始めるのが推奨されます。SBI証券や楽天証券の米国株投資ガイドでも、初心者には低コストのインデックスファンドを勧めています。

具体的なステップ:

  1. NISA口座を開設する(つみたて投資枠を活用)
  2. 低コストのS&P 500連動ETF(例:VOO、IVV)や全米株式インデックスファンド(例:VTI)を選ぶ
  3. 毎月一定額を積み立てる(ドルコスト平均法)

(2) 中級者以上:コア・サテライト戦略(併用)

投資経験がある方は、コア・サテライト戦略が効果的です。これは、資産の大部分(例:80%)を投資信託・ETF(コア)で運用し、残り(例:20%)を個別株(サテライト)で運用する戦略です。楽天証券の解説によれば、この方法で分散投資によるリスク低減と、個別株による高リターンの追求を両立できます。

コア・サテライト戦略の例:

  • コア(80%):S&P 500連動ETF
  • サテライト(20%):成長期待の個別株(例:AI関連銘柄、ヘルスケア企業)

(3) 判断基準:リスク許容度と投資に使える時間

以下の質問で、あなたに合った投資スタイルを見つけましょう。

  • 投資の目的は? → 老後資金なら投資信託・ETF、短期的な高リターン狙いなら個別株
  • 価格変動にどれだけ耐えられる? → 大きな下落が不安なら投資信託・ETF
  • 投資に週何時間使える? → 週1時間未満なら投資信託・ETF、週5時間以上なら個別株も選択肢
  • 企業分析は楽しい? → Yesなら個別株、Noなら投資信託・ETF

まとめ:目的とリスク許容度で判断しよう

「個別株をやらない」選択は、決して消極的ではなく、投資家としての自己理解に基づく合理的な判断です。投資信託・ETFは、プロでも難しい銘柄選びを回避し、米国株市場全体の成長を取り込む有効な手段です。

次のアクション:

  • 初心者の方:NISA口座を開設し、低コストのS&P 500連動ETFから始める
  • 中級者以上の方:コア・サテライト戦略で、投資信託と個別株を併用する
  • どちらの場合も、長期・分散・積立の基本を守り、為替リスクを理解した上で投資する

投資の目的は資産形成であり、「個別株を選ぶこと」自体が目的ではありません。あなたのライフプランに合った投資スタイルを選び、無理のない範囲で米国株投資を楽しみましょう。

よくある質問

Q1初心者は投資信託・ETFから始めるべき?

A1はい。分散投資で個別株の銘柄集中リスクを回避でき、低コストで米国株市場全体に投資できます。NISAのつみたて投資枠(年間120万円)も活用可能で、売却益・配当金が非課税になります。まずは低コストのS&P 500連動ETF(VOO、IVVなど)から始めるのが推奨されます。

Q2個別株は上級者向け?

A2財務分析(損益計算書、貸借対照表の読み方)や業界知識が必要なため、初心者には難易度が高いと言われています。ただし、少額(例:1万円程度)から実践し、経験を積むことも有効です。失敗を許容できる範囲で、学びの一環として個別株に挑戦するのも良いでしょう。

Q3個別株と投資信託・ETFを併用すべき?

A3コア・サテライト戦略が推奨されます。資産の大部分(例:80%)を投資信託・ETF(コア)で運用し、残り(例:20%)を個別株(サテライト)で運用すると、分散投資によるリスク低減と、個別株による高リターンの追求を両立できます。この戦略は、楽天証券などの投資ガイドでも紹介されています。

Q4投資信託・ETFは「安全」なの?

A4投資信託・ETFにも価格変動リスクがあり、元本保証ではありません。市場全体が下落すれば、投資信託・ETFも下落します。個別株よりリスクは低いですが、「安全=元本保証」ではない点を理解しましょう。長期・分散・積立の基本を守り、短期的な価格変動に一喜一憂しないことが重要です。

Q5個別株と投資信託・ETFで、為替リスクの違いはある?

A5為替リスク(円ドルレートの変動)は、個別株・投資信託・ETFのどちらも同様に影響を受けます。円高になれば、ドル建て資産の円換算評価額は下がります。為替リスクを抑えたい場合は、為替ヘッジ付きの投資信託を選ぶこともできますが、ヘッジコストがかかる点に注意が必要です。

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