個別株主通知とは|米国株の議決権行使とノミニー保有

公開日: 2025/10/20

米国株を保有しているけれど、株主としての権利はどうなっているの?

米国株の個別銘柄を長期保有している日本人投資家の中には、「議決権は行使できるのか?」「株主総会の案内は届くのか?」といった疑問を持つ方が少なくありません。

日本の証券会社を通じて米国株を購入した場合、株主名簿に直接記載されず、証券会社名義(ノミニー保有)で保有されることが一般的です。このため、株主権利の行使には特別な手続きが必要な場合があります。

この記事では、個別株主通知の仕組み、米国株の株主権利、議決権行使の方法を、日本人投資家の視点で詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 個別株主通知は実質株主が企業に自分の保有を通知する制度。日本の証券会社経由の米国株はノミニー保有が一般的
  • 米国株の株主権利は議決権・配当受取権・残余財産分配権の3つ。SECが法的枠組みを定めている
  • ノミニー保有では証券会社名義で保有され、実質所有者は投資家。企業からの直接通知は届かない
  • 議決権行使はプロキシー投票で可能。証券会社が議決権行使書を提供し、オンライン・郵送で投票
  • SBI・楽天・マネックス証券はサービス対応。手数料・申請方法・対象銘柄が異なるため事前確認が必要

1. 個別株主通知とは何か

個別株主通知は、実質株主が企業に対して自分の株式保有を通知する制度です。

(1) 個別株主通知の定義と目的

日本株を保有している場合、株主名簿に直接記載されるため、企業から株主総会の招集通知や配当金の通知が自動的に届きます。

一方、日本の証券会社を通じて米国株を購入した場合、通常は証券会社名義(ノミニー)で保有されます。このため、実質的な所有者である投資家の名前は、企業の株主名簿に直接記載されません。

個別株主通知は、実質株主が企業に対して「自分がこの株式を保有している」と通知することで、企業から直接情報を受け取れるようにする制度です。

(2) 日本株と米国株での違い

日本株の場合、証券会社を通じて購入しても、ほふり(証券保管振替機構)を通じて実質株主として登録されます。このため、株主総会の招集通知や配当金の案内が自動的に届きます。

米国株の場合、日本の証券会社を通じて購入すると、DTC(米国証券保管振替機構)を通じて証券会社名義で保有されることが一般的です。実質株主は投資家ですが、名義上は証券会社となります。

このため、企業からの直接的な株主通知を受け取るには、個別株主通知の申請が必要になる場合があります。

2. 米国株における株主権利の仕組み

米国株の株主には、法律で定められた権利があります。

(1) 株主が持つ基本的な権利(議決権・配当受取権・残余財産分配権)

米国株の株主は、以下の3つの基本的な権利を持っています。

権利 内容
議決権 株主総会で経営方針、取締役選任、重要事項について投票する権利
配当受取権 企業が配当金を支払う際に受け取る権利
残余財産分配権 企業が解散した際に、残余財産の分配を受ける権利

これらの権利は、株式を保有していれば原則として保有できます。ただし、ノミニー保有の場合、議決権の行使には証券会社を通じた手続きが必要です。

(2) SECによる株主権利の法的枠組み

SEC(米国証券取引委員会)は、株主権利に関する法的枠組みを定めています。

企業は、株主総会の前に委任状勧誘資料(Proxy Statement、Form DEF 14A)を株主に送付する義務があります。この資料には、株主総会の議案、取締役の報酬、監査報告などが記載されています。

SECの規制により、企業は株主の権利を尊重し、適切な情報開示を行う必要があります。

※出典: SEC - Shareholder Rights and Responsibilities https://www.sec.gov/spotlight/proxymatters.shtml

(3) 委任状勧誘資料(DEF 14A)の読み方

委任状勧誘資料(DEF 14A)には、以下の情報が記載されています。

  • 株主総会の日時・場所: いつ、どこで開催されるか
  • 議案: 取締役の選任、報酬制度の承認、定款変更など
  • 取締役の報酬: CEO、役員の報酬額と内訳
  • 監査報告: 会計監査人の報告
  • 株主提案: 株主が提出した議案(ある場合)

この資料は、SECのEDGARデータベースで無料で閲覧できます。議決権を行使する際は、この資料を読んで判断することが推奨されます。

3. ノミニー保有と実質所有者の違い

ノミニー保有とは、証券会社名義で株式を保有する方式です。

(1) ノミニー口座とは

ノミニー口座(Nominee Account)は、証券会社名義で株式を保有する口座です。実質的な所有者は投資家ですが、株主名簿には証券会社の名前が記載されます。

日本の証券会社を通じて米国株を購入すると、通常この方式で保有されます。証券会社が投資家の代わりに株式を保管し、配当金の受取や株式の売買を代行します。

(2) 実質所有者(Beneficial Owner)の定義

実質所有者(Beneficial Owner)は、名義上は証券会社ですが、実際に株式を保有している投資家を指します。

米国の法律では、実質所有者にも株主権利が認められています。ただし、議決権を行使するには、証券会社を通じた手続きが必要です。

(3) 日本の証券会社を通じた米国株保有の仕組み

日本の証券会社で米国株を購入すると、以下のような流れで保有されます。

  1. 投資家が証券会社に米国株の買付注文を出す
  2. 証券会社が米国市場で株式を購入
  3. 株式はDTC(米国証券保管振替機構)を通じて証券会社名義で保管される
  4. 証券会社が投資家の口座に「実質的な保有」として記録

このため、企業の株主名簿には証券会社の名前が記載され、投資家の名前は直接記載されません。

※出典: JASDEC(証券保管振替機構) - 外国株式の保管と決済 https://www.jasdec.com/system/foreign/index.html

4. 議決権行使(プロキシー投票)の方法

ノミニー保有でも、議決権を行使することは可能です。

(1) プロキシー投票の仕組み

プロキシー投票(Proxy Voting)は、株主総会に出席せずに、委任状を提出して議決権を行使する方法です。

米国企業の株主総会は、通常、米国内で開催されます。日本在住の投資家が現地に出席することは困難なため、プロキシー投票が主な議決権行使の手段となります。

証券会社が提供する議決権行使サービスを利用すると、オンラインまたは郵送で議決権行使書を提出できます。

(2) 議決権行使書の受取と提出方法

議決権行使書(Proxy Statement)は、株主総会の2〜3週間前に証券会社から送付されます。

受取方法は証券会社によって異なりますが、一般的には以下の方法があります。

  • オンライン: 証券会社のウェブサイトで閲覧・投票
  • 郵送: 紙の議決権行使書が自宅に届く
  • メール: PDFで議決権行使書が送られてくる

投票方法は、オンライン投票システムに賛成・反対を入力するか、紙の議決権行使書に記入して郵送します。

(3) 投票期限と注意点

議決権行使には期限があります。通常、株主総会の2〜3日前までに投票を完了する必要があります。期限を過ぎると、議決権を行使できません。

また、議決権行使サービスを利用するには、事前に証券会社への申請が必要な場合があります。株主総会の直前に申請しても間に合わないことがあるため、早めに手続きすることが推奨されます。

5. 証券会社別の議決権行使サービス比較

日本の主要証券会社は、米国株の議決権行使サービスを提供しています。

(1) SBI証券の議決権行使サービス

SBI証券は、米国株の議決権行使サービスを提供しています。

  • 対象銘柄: 米国主要取引所上場の株式
  • 手数料: 1回あたり数百円(詳細は公式サイトで確認)
  • 申請方法: オンラインで申請、議決権行使書はオンラインで受取
  • 投票方法: オンライン投票システムで投票

※出典: SBI証券 - 米国株の議決権行使サービス https://search.sbisec.co.jp/v2/popwin/info/home/pop6040_voting.html

(2) 楽天証券の議決権行使サービス

楽天証券も、米国株の議決権行使サービスを提供しています。

  • 対象銘柄: 米国主要取引所上場の株式
  • 手数料: 1回あたり数百円(詳細は公式サイトで確認)
  • 申請方法: オンラインで申請
  • 投票方法: オンライン投票システムまたは郵送

※出典: 楽天証券 - 外国株式の株主権利と議決権行使 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/foreign/us/voting.html

(3) マネックス証券の議決権行使サービス

マネックス証券は、米国株の議決権行使に積極的に対応しています。

  • 対象銘柄: 米国主要取引所上場の株式
  • 手数料: 一部無料、一部有料(詳細は公式サイトで確認)
  • 申請方法: オンラインで申請
  • 投票方法: オンライン投票システムで投票

※出典: マネックス証券 - 米国株の株主総会と議決権行使 https://info.monex.co.jp/us-stock/voting-rights.html

(4) 手数料と申請方法の違い

証券会社によって、手数料、申請方法、対象銘柄が異なります。

証券会社 手数料 申請方法 対象銘柄
SBI証券 有料(数百円) オンライン 米国主要取引所上場株式
楽天証券 有料(数百円) オンライン 米国主要取引所上場株式
マネックス証券 一部無料、一部有料 オンライン 米国主要取引所上場株式

※2025年10月時点の情報です。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。

少額保有の場合、議決権行使サービスを利用できない証券会社もあります。また、手数料がかかる場合、コストを考慮して利用を判断することが推奨されます。

6. まとめ:米国株投資家が知るべき株主権利

米国株を日本の証券会社を通じて保有している場合、株主名簿には証券会社名義で記載され、実質所有者は投資家となります。

株主権利には、議決権、配当受取権、残余財産分配権の3つがあります。配当金は自動的に受け取れますが、議決権を行使するには、証券会社を通じたプロキシー投票が必要です。

SBI証券、楽天証券、マネックス証券は、米国株の議決権行使サービスを提供しています。手数料、申請方法、対象銘柄が異なるため、事前に確認することが推奨されます。

次のアクション:

  • 保有している米国株の株主総会スケジュールを確認する
  • 証券会社の議決権行使サービスの内容を確認する
  • 議決権を行使したい場合、事前に証券会社に申請する
  • 委任状勧誘資料(DEF 14A)をSECのEDGARで確認する

株主としての権利を理解し、必要に応じて議決権を行使することで、長期投資家としての責任を果たすことができます。

よくある質問

Q1個別株主通知はどうやって受け取る?

A1証券会社に申請が必要です。ノミニー保有の場合、企業から自動的には届きません。SBI証券、楽天証券、マネックス証券などは申請フォームを提供しており、手数料がかかる場合もあります。事前に各証券会社の公式サイトで確認してください。

Q2米国株で議決権行使できる?

A2できます。証券会社がプロキシー投票サービスを提供している場合、議決権行使書(Proxy Statement)を受け取り、オンラインまたは郵送で投票できます。株主総会の2〜3週間前に議決権行使書が送付されるため、期限内に投票してください。

Q3証券会社による議決権行使サービスの違いは?

A3SBI証券、楽天証券、マネックス証券は対応していますが、手数料、申請方法、対象銘柄が異なります。一部の証券会社では少額保有の場合、サービスを利用できないことがあります。事前に各証券会社の公式サイトで確認することが推奨されます。

Q4議決権行使に手数料はかかる?

A4証券会社によります。SBI証券と楽天証券は1回あたり数百円の手数料がかかります。マネックス証券は一部無料、一部有料です。少額保有の場合、手数料とコストを考慮して議決権行使の利用を判断することが推奨されます。

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