個別株が危険と言われる理由|米国株の5つのリスクと対策

公開日: 2025/10/20

米国株個別銘柄投資はなぜ「危険」と言われるのか

「米国株の個別株に投資したいけれど、リスクが心配...」そう感じている方は少なくありません。SNSでは成功体験が目立つ一方、「個別株は危険」「初心者には向かない」という声もよく耳にします。

実際、米国株の個別銘柄投資には確かに固有のリスクがあり、適切な知識と対策なしに始めると大きな損失を被る可能性があります。しかし、リスクを正しく理解し、適切な対策を取れば、過度に恐れる必要はありません。

この記事では、米国株個別銘柄投資の主要リスク、初心者が陥りやすい失敗パターン、そしてリスクを軽減する具体的な方法を解説します。

この記事のポイント:

  • 個別株は企業固有リスクがあり、倒産で投資資金がゼロになる可能性がある
  • 集中投資(1〜2銘柄への投資)は損失を拡大させる主な原因
  • 米国株は為替リスクと企業リスクの二重リスクがある
  • 分散投資、損切りルール、長期保有でリスクを大幅に軽減できる
  • 初心者はインデックスファンドから始め、慣れたら個別株に挑戦するのが推奨

個別株投資の主要リスク5つ

米国株の個別銘柄投資には、以下の5つの主要リスクがあります。それぞれ具体的に見ていきましょう。

(1) 企業固有リスク(業績悪化・不祥事・倒産)

**企業固有リスク(Company-Specific Risk)**とは、特定企業の業績悪化、不祥事、倒産によって株価が急落するリスクです。

例えば、過去には以下のような事例がありました:

  • エンロン(2001年倒産):会計不正で株価が99%以上下落
  • リーマン・ブラザーズ(2008年倒産):金融危機で株式価値がゼロに

Investopediaの分析によれば、個別株投資では、企業が倒産した場合、投資金額の100%を失う可能性があります。これがインデックスファンド(市場全体に分散投資)と最も異なる点です。

(2) 為替リスク(円ドルレート変動)

米国株はドル建てで取引されるため、円ドルレートの変動が投資成果に大きく影響します。

具体例:

  • 株価が10%上昇しても、円高が15%進めば、円換算では損失になる
  • 逆に、株価が横ばいでも、円安が10%進めば、円換算では利益になる

為替リスクは、個別株だけでなくインデックスファンドにも共通しますが、個別株では企業リスクと為替リスクの二重リスクを抱えることになります。

(3) 税制の複雑さ(外国税額控除、確定申告)

米国株の配当金には、米国で10%、日本で20.315%の二重課税がかかります。外国税額控除を受けるには確定申告が必要で、初心者にはやや複雑です。

また、売却益も課税対象となり、一般口座では確定申告が必須です。特定口座(源泉徴収あり)を利用すれば確定申告は不要ですが、税制の仕組みを理解しておくことは重要です。

(4) 情報格差リスク(英語の決算書、機関投資家との情報差)

米国企業の財務情報(10-K、10-Q)は英語で公開されており、日本人投資家には言語の壁があります。また、機関投資家(プロの運用会社)と個人投資家の間には、情報入手速度や分析能力に大きな差があります。

Morningstarの調査では、プロの運用者でも長期的に市場平均を上回るリターンを出し続けるのは難しいとされており、個人投資家がプロに勝つのはさらに困難です。

(5) ボラティリティリスク(価格変動の激しさ)

個別株は、インデックスファンドと比べて価格変動(ボラティリティ)が激しい傾向があります。例えば、決算発表の翌日に株価が10〜20%動くこともあります。

短期的な価格変動に耐えられるリスク許容度がないと、狼狽売りによって損失を確定させてしまうリスクがあります。

初心者が陥りやすい失敗パターン

実際に、米国株個別銘柄投資で初心者が失敗する典型的なパターンを4つ紹介します。

(1) 過度な集中投資(1〜2銘柄に全額投資)

「この銘柄は絶対上がる!」と確信して、全資金を1〜2銘柄に集中投資するのは非常に危険です。楽天証券のリスク管理ガイドでは、集中投資は分散効果がなく、1銘柄の急落で大きな損失を被ると注意喚起しています。

リスク軽減策: 最低5〜10銘柄に分散し、1銘柄あたりの投資比率は全資産の10〜20%以内に抑えましょう。

(2) 感情的な売買(高値掴み・狼狽売り)

SNSで話題の銘柄を高値で買い、少し下がったら怖くなって売る(狼狽売り)という行動は、損失を拡大させる典型的なパターンです。

リスク軽減策: 事前に投資理由と目標価格を書き出し、感情に流されず機械的に判断しましょう。

(3) 損切りできない(塩漬け株の増加)

「いつか戻るだろう」と期待して損切りせず、塩漬け株(長期間含み損を抱える株)を増やすのも危険です。

リスク軽減策: 購入価格から-10%など、事前に損切りルールを決めておきましょう。

(4) 詐欺的銘柄への投資(高配当を謳う低品質株)

「配当利回り20%!」などと謳う銘柄は、実際には倒産リスクが高い可能性があります。高配当の裏には必ず理由があり、安易に飛びつくのは危険です。

リスク軽減策: 企業の財務状況(負債比率、営業キャッシュフロー)を確認し、配当の持続可能性を判断しましょう。

個別株とインデックスファンドのリスク比較

個別株とインデックスファンド、どちらを選ぶべきか?以下の表で比較します。

項目 個別株 インデックスファンド
リスク 企業固有リスク高(倒産で全損の可能性) 分散効果で低リスク
リターン 高リターンの可能性(銘柄次第) 市場平均に収束
必要なスキル 財務分析、業界知識 ほぼ不要
為替リスク あり あり
分散効果 自分で複数銘柄購入が必要 自動的に数百銘柄に分散
コスト 売買手数料 信託報酬(年0.03〜0.1%程度)

Vanguardの調査では、分散投資はリスク低減の最も効果的な手段とされており、初心者にはインデックスファンドが推奨されます。

リスクを軽減する具体的な対策

個別株投資のリスクを軽減する5つの対策を紹介します。

(1) 分散投資(最低5〜10銘柄、業種・国も分散)

最低でも5〜10銘柄、理想的には20〜30銘柄に分散しましょう。また、業種(テクノロジー、ヘルスケア、金融など)や地域(米国、欧州、アジア)も分散すると効果的です。

(2) 損切りルールの設定(-10%で売却等)

購入価格から-10%下落したら機械的に売却するなど、事前にルールを決めておきましょう。感情的な判断を避けるため、自動売却注文(逆指値注文)を活用するのも有効です。

(3) 長期保有(短期売買はリスクが高い)

短期的な価格変動に一喜一憂せず、5年以上の長期保有を前提に投資しましょう。歴史的に、米国株市場は長期的には右肩上がりで成長しています。

(4) 少額から始める(最初は全資産の10%以内)

最初は全資産の10%以内で個別株投資を始め、経験を積んでから投資比率を増やしましょう。

(5) 情報源の見極め(一次情報と信頼できるメディア)

企業の公式情報(IR資料、決算書)やInvestopedia、Morningstarなどの信頼できるメディアを参照し、SNSの匿名情報は鵜呑みにしないようにしましょう。

まとめ:リスクを理解して適切に対策しよう

米国株の個別銘柄投資は確かにリスクが高いですが、リスクを正しく理解し、適切な対策を取れば、過度に恐れる必要はありません。特に、分散投資と損切りルールの徹底は、リスクを大幅に軽減できる基本戦略です。

次のアクション:

  • 初心者の方:まずインデックスファンドから始め、米国株投資に慣れる
  • 個別株に挑戦したい方:少額(全資産の10%以内)から始め、5〜10銘柄に分散する
  • すでに個別株を保有している方:損切りルールを設定し、感情的な売買を避ける

投資は自己責任ですが、リスクを理解した上で、あなたのリスク許容度に合った投資スタイルを見つけましょう。

よくある質問

Q1個別株投資で最大いくら損する可能性がある?

A1企業が倒産した場合、投資金額の100%を失う可能性があります。例えば、エンロン(2001年倒産)やリーマン・ブラザーズ(2008年倒産)では、株式価値がゼロになりました。このリスクを軽減するには、最低5〜10銘柄に分散投資し、1銘柄あたりの投資比率を全資産の10〜20%以内に抑えることが推奨されます。

Q2個別株は何銘柄持てばリスクが分散できる?

A2最低5〜10銘柄、理想的には20〜30銘柄への分散が推奨されます。また、業種(テクノロジー、ヘルスケア、金融など)や地域(米国、欧州、アジア)も分散すると、さらに効果的です。ただし、銘柄数が増えると管理が難しくなるため、管理が難しい場合はインデックスファンドの活用も検討しましょう。

Q3損切りはどのタイミングでするべき?

A3購入価格から-10%など、事前にルールを決めておくのが推奨されます。感情的な判断を避けるため、機械的に実行することが重要です。自動売却注文(逆指値注文)を活用すると、設定した価格で自動的に売却されるため、感情に流されずに損切りできます。

Q4個別株とインデックスファンド、どちらが安全?

A4インデックスファンドの方が分散効果で安全性が高いと言えます。インデックスファンドは自動的に数百銘柄に分散投資するため、1社の倒産が全体に与える影響は限定的です。個別株は高リターンの可能性がある一方、企業固有リスクが高くなります。初心者はまずインデックスファンドから始め、経験を積んでから個別株に挑戦するのが推奨されます。

関連記事