米国株、何銘柄持てばいいかわからない...
米国株の個別銘柄投資を始めたものの、「5銘柄だと少なすぎ?」「20銘柄は多すぎて管理できない」といった悩みを持つ投資家は少なくありません。
この記事では、学術研究やプロの投資家の見解をもとに、レベル別の推奨銘柄数、集中投資vs分散投資の考え方、セクター分散の重要性まで、米国株の最適なポートフォリオ構築法を解説します。
この記事のポイント:
- 学術的には20〜30銘柄で分散効果が最大化すると言われている
- 初心者は5〜10銘柄、中級者は10〜20銘柄、上級者は20〜30銘柄が目安
- バフェット流の集中投資(5〜10銘柄)と現代ポートフォリオ理論(20〜30銘柄)の両方を紹介
- 銘柄数よりもセクター分散の方が重要
- 過剰分散は管理負担が増え、パフォーマンス低下の可能性がある
なぜ保有銘柄数が重要なのか
(1) リスク分散の基本原理
投資において、複数の銘柄に分散することでリスクを低減できます。これは「卵を一つのカゴに盛るな」という格言の通りです。
1銘柄だけに投資すると、その企業が業績悪化した場合、資産全体が大きく目減りします。一方、10銘柄に分散すれば、1銘柄が下落しても他の銘柄でカバーできる可能性があります。
(2) システマティックリスクと非システマティックリスク
投資のリスクは2種類に分類されます:
- システマティックリスク(市場リスク): 市場全体に影響するリスク(景気後退、金利上昇など)。分散投資では回避不可。
- 非システマティックリスク(個別リスク): 特定企業のリスク(業績悪化、不祥事など)。分散投資で低減可能。
分散投資の目的は、非システマティックリスクを低減することです。
(3) 銘柄数とリスク低減効果の関係
銘柄数を増やすと、非システマティックリスクは低減しますが、一定数を超えるとその効果は限定的になります。
一般的に:
- 5銘柄: リスク低減効果は50%程度
- 10銘柄: リスク低減効果は70%程度
- 20〜30銘柄: リスク低減効果は90%程度
- 30銘柄以上: それ以上の分散効果は限定的
学術研究から見る最適な銘柄数
(1) 現代ポートフォリオ理論の見解(20〜30銘柄)
ノーベル賞を受賞したハリー・マーコウィッツの現代ポートフォリオ理論によると、最適な分散投資には20〜30銘柄が推奨されています。
この水準であれば、非システマティックリスクの大部分を低減しつつ、管理可能な銘柄数に収まります。
(2) 分散効果の限界(30銘柄以上は効果薄い)
複数の学術研究によると、30銘柄を超えるとリスク低減効果はほとんど変わらなくなると言われています。40銘柄、50銘柄と増やしても、リスクはほぼ同じです。
つまり、30銘柄以上は「過剰分散」になる可能性があります。
(3) 過剰分散のデメリット
銘柄数が多すぎると、以下のデメリットがあります:
- 管理負担の増加: 決算情報の確認、ニュースのチェックが追いつかない
- パフォーマンスの平均化: 市場平均に近づき、インデックスファンドと変わらなくなる
- 取引コストの増加: リバランス時の売買手数料が増える
個人投資家にとって、30銘柄以上の管理は現実的ではありません。
レベル別の推奨銘柄数(初心者〜上級者)
(1) 初心者(資産100〜500万円):5〜10銘柄
米国株投資を始めたばかりの初心者には、5〜10銘柄が推奨されます。
理由:
- 少額でも分散効果が得られる(米国株は1株から購入可能)
- 管理しやすく、各企業の動向を追える
- セクター分散も意識しやすい(テクノロジー2銘柄、金融2銘柄、ヘルスケア2銘柄など)
注意点:
- 5銘柄未満は個別リスクが高すぎる
- 同じセクターに集中しない
(2) 中級者(資産500〜2000万円):10〜20銘柄
投資経験が3年以上あり、米国株に慣れてきた中級者には、10〜20銘柄が適しています。
理由:
- 十分な分散効果を得られる
- 資金規模が大きくなっても管理可能
- セクターと地域の両方で分散できる
注意点:
- 定期的なリバランスが必要(年1〜2回)
- 銘柄が増えると情報収集の負担が増える
(3) 上級者(資産2000万円以上):20〜30銘柄
投資経験が豊富で、資金規模も大きい上級者には、20〜30銘柄が推奨されます。
理由:
- 学術的に最適な分散効果を得られる
- セクター、地域、企業規模(大型株・中型株・小型株)で多角的に分散可能
注意点:
- 30銘柄を超えると過剰分散になる
- 管理負担が大きいため、ポートフォリオ管理ツールの活用が推奨される
(4) 少額投資の場合の考え方(1株購入活用)
米国株は1株から購入できるため、少額投資でも分散投資が可能です。
例えば、10万円で10銘柄に投資する場合:
- 1銘柄あたり1万円(約70ドル前後)
- 1株単位で購入できる銘柄を選ぶ
少額投資のポイント:
- 証券会社の為替手数料を比較(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)
- ドルコスト平均法で毎月積立
集中投資vs分散投資(バフェット流vs現代ポートフォリオ理論)
(1) バフェット流集中投資(5〜10銘柄、深い企業分析)
著名投資家ウォーレン・バフェットは、少数の優良企業に集中投資するスタイルで知られています。
バフェット流のポイント:
- 「自分が理解できる企業」にのみ投資
- 5〜10銘柄に集中し、深い企業分析を行う
- 長期保有(10年、20年単位)
向いている人:
- 企業分析に時間をかけられる投資家
- リスクを取ってリターンを狙いたい投資家
- 投資経験が豊富で銘柄選定に自信がある投資家
(2) 現代ポートフォリオ理論の分散投資(20〜30銘柄)
一方、学術的に推奨される分散投資は、20〜30銘柄に投資してリスクを低減する方法です。
分散投資のポイント:
- 銘柄選定よりもリスク管理を重視
- セクター、地域、企業規模で分散
- 定期的なリバランス
向いている人:
- リスクを抑えたい投資家
- 企業分析に時間をかけられない投資家
- 長期的な資産形成を重視する投資家
(3) どちらを選ぶべきか(スキルと時間による)
どちらが正解ということはありません。自分のスキル、時間、リスク許容度に応じて選びましょう。
投資スタイル | 銘柄数 | 向いている人 |
---|---|---|
集中投資 | 5〜10銘柄 | 企業分析に自信がある、リスク許容度が高い |
バランス型 | 10〜20銘柄 | 中級者、適度な分散とリターンを狙いたい |
分散投資 | 20〜30銘柄 | リスクを抑えたい、企業分析の時間が限られる |
セクター分散の重要性(銘柄数より大切)
(1) セクター別の分散(テクノロジー、金融、ヘルスケア等)
銘柄数を増やしても、同じセクター(業種)に集中していると、分散効果は限定的です。
例えば、10銘柄すべてがテクノロジー株の場合、テクノロジーセクター全体が下落すると、ポートフォリオ全体が大きく下がります。
推奨セクター分散:
- テクノロジー:20〜30%
- 金融:15〜20%
- ヘルスケア:15〜20%
- 生活必需品:10〜15%
- エネルギー:5〜10%
- その他:10〜20%
(2) 10銘柄でも集中リスク(同じセクターはNG)
10銘柄に分散していても、セクターが偏っていると集中リスクが残ります。
良い例(セクター分散):
- テクノロジー:3銘柄(Apple、Microsoft、NVIDIA)
- 金融:2銘柄(JPMorgan、Visa)
- ヘルスケア:2銘柄(J&J、Pfizer)
- 生活必需品:2銘柄(P&G、Coca-Cola)
- エネルギー:1銘柄(ExxonMobil)
悪い例(セクター集中):
- テクノロジー:10銘柄(Apple、Microsoft、Google、Amazon...)
(3) 地域分散の考え方(米国だけでなく全世界も検討)
米国株だけでなく、欧州、アジア、新興国にも分散することでさらにリスクを低減できます。
ただし、米国市場は世界最大であり、米国企業の多くはグローバルに事業展開しているため、米国株だけでもある程度の地域分散効果があります。
まとめ:自分に合った銘柄数を見つけよう
米国株の最適な保有銘柄数は、投資家のスキル、時間、資金規模によって異なります。
銘柄数選びのポイント:
- 初心者は5〜10銘柄から始め、慣れたら増やす
- 中級者は10〜20銘柄、上級者は20〜30銘柄が目安
- 30銘柄以上は過剰分散の可能性がある
- 銘柄数よりもセクター分散を重視する
- 集中投資vs分散投資は、自分のスタイルに合わせて選ぶ
まずは5〜10銘柄から始め、自分の管理能力と相談しながら徐々に銘柄数を調整していきましょう。投資判断は必ず自己責任で行ってください。