個別株vs投資信託|米国株投資での選び方を徹底比較

公開日: 2025/10/20

個別株か投資信託か:投資家が悩む理由

米国株投資を始めようと考えたとき、多くの投資家が「個別株と投資信託、どちらが良いのか」という疑問に直面します。

「個別株は大きく儲かりそうだけど、リスクが心配」「投資信託は安全そうだけど、リターンが物足りない気がする」といった迷いは尽きません。実際には、個別株と投資信託にはそれぞれメリット・デメリットがあり、投資経験・時間・リスク許容度によって最適な選択は異なります。

この記事では、個別株と投資信託のリスク・コスト・手間・税制を徹底比較し、あなたに合った選び方を提案します。

この記事のポイント:

  • 個別株は高リターン可能性があるが、個別リスクが高く銘柄分析に時間が必要
  • 投資信託は分散効果と専門家運用のメリットがあるが、信託報酬がコストとなる
  • 税制はどちらも譲渡所得税20.315%、NISA口座なら非課税
  • 初心者は投資信託(インデックスファンド)、経験者は個別株、バランス重視ならコア・サテライト戦略
  • 併用することで、リスク分散と超過リターンの両立が可能

個別株投資のメリット・デメリット

(1) メリット:高リターン可能性、銘柄選定の自由度、配当収入

個別株投資の最大のメリットは、高リターンを狙える可能性です。成長株を見つければ、市場平均を大きく上回るリターンが期待できます。

個別株のメリット:

メリット 詳細
高リターン可能性 成長株を選べば市場平均を大きく上回る可能性
銘柄選定の自由度 自分の投資哲学・業種選好に合わせて銘柄を選べる
配当収入のコントロール 高配当株を選べば、安定的なキャッシュフローを得られる
議決権 株主総会で議決権を行使でき、企業経営に参加できる
銘柄選定の楽しさ 企業分析や市場調査を通じて、投資の面白さを体験できる

例えば、2010年代にAmazonやTeslaに投資していれば、10年で10倍以上のリターンを得られた可能性があります。また、高配当株(コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン等)は、年3~4%の配当利回りで安定的なキャッシュフローを提供します。

(2) デメリット:個別リスク高、分析に時間必要、分散困難

一方で、個別株投資には個別リスクが伴います。企業の業績悪化や倒産により、投資額の大半を失う可能性もあります。

個別株のデメリット:

デメリット 詳細
個別リスクが高い 企業の業績悪化・倒産で大きな損失を被る可能性
銘柄分析に時間が必要 決算書・業界動向・競合分析など、継続的な学習が必要
分散が困難 少額投資では十分な分散が難しい(目安:20銘柄以上で分散効果)
手数料が割高 少額取引では売買手数料の比率が高くなる
感情に左右されやすい 株価の変動で不安・欲が生じ、非合理的な判断をしがち

例えば、エンロン(2001年倒産)やリーマン・ブラザーズ(2008年倒産)に集中投資していた投資家は、資産の大半を失いました。また、銘柄分析には決算書(10-K、10-Q)の読解や業界調査が必要で、初心者には敷居が高いと言えます。

投資信託のメリット・デメリット

(1) メリット:分散効果、専門家運用、少額から可能(100円〜)

投資信託の最大のメリットは、分散投資と専門家による運用です。1つのファンドで数百〜数千銘柄に分散投資でき、個別リスクを軽減できます。

投資信託のメリット:

メリット 詳細
分散効果 1つのファンドで数百〜数千銘柄に分散投資し、個別リスクを軽減
専門家による運用 ファンドマネージャーが銘柄選定・売買タイミングを判断
少額から投資可能 100円〜投資でき、初心者でも始めやすい
自動積立・再投資 毎月一定額を自動積立し、分配金も自動再投資(ドルコスト平均法)
手間がかからない 銘柄分析・売買タイミングの判断が不要

例えば、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は、米国の主要500社に分散投資でき、信託報酬は年0.09372%以内と低コストです。楽天証券・SBI証券では100円から積立投資が可能で、初心者でも手軽に米国株に投資できます。

(2) デメリット:信託報酬、銘柄選定の自由度低、配当受取不可(再投資型)

投資信託のデメリットは、信託報酬(運用コスト)がかかることです。長期投資では、わずかなコスト差が大きなリターン差につながります。

投資信託のデメリット:

デメリット 詳細
信託報酬がかかる 年0.1~2%の運用コスト(低コストインデックスファンドは0.1%以下)
銘柄選定の自由度が低い ファンドが決めた銘柄・配分に従う必要がある
配当収入を受け取れない 再投資型の場合、配当はファンド内で再投資され現金化できない
超過リターンが期待しにくい インデックスファンドは市場平均に連動するため、大きく上回るリターンは期待できない
アクティブファンドの成績不安定 アクティブファンドの多くは、長期的にインデックスを下回る

例えば、信託報酬が年1%のアクティブファンドに30年間投資した場合、0.1%のインデックスファンドと比べて、最終リターンが20%以上減少することがあります(年率リターン7%の場合)。

個別株と投資信託の比較表:リスク・コスト・手間・税制

(1) リスク:個別株>投資信託(分散効果の差)

項目 個別株 投資信託
個別リスク 高い(1社の業績悪化で大損の可能性) 低い(分散投資により軽減)
市場リスク あり(市場全体の下落) あり(市場全体の下落)
分散の難易度 高い(20銘柄以上必要、資金が必要) 低い(1ファンドで数百〜数千銘柄)

投資信託は分散投資により個別リスクを軽減できますが、市場全体が下落した場合(リーマンショック、コロナショック等)は、投資信託も大きく下落します。

(2) コスト:個別株(売買手数料)vs 投資信託(信託報酬年0.1-2%)

項目 個別株 投資信託
売買手数料 取引ごとに発生(約定代金の0~0.5%程度) なし(購入時・解約時手数料は一部あり)
信託報酬 なし 年0.1~2%(インデックス0.1%以下、アクティブ1~2%)
為替手数料 あり(円→ドル交換時、片道0.25円/ドル程度) ファンド内で処理(実質コストに含まれる)

個別株は売買手数料が取引ごとに発生しますが、頻繁に売買しなければコストは抑えられます。一方、投資信託は信託報酬が毎年発生するため、長期投資では総コストが大きくなる可能性があります。

(3) 手間:個別株(銘柄分析必要)vs 投資信託(自動運用)

項目 個別株 投資信託
銘柄分析 必要(決算書・業界動向・競合分析) 不要(ファンドマネージャーが実施)
売買タイミング 自分で判断 不要(ファンドが自動調整)
リバランス 自分で実施 不要(ファンドが自動実施)

個別株投資は、銘柄選定・売買タイミング・リバランスをすべて自分で行う必要があり、時間と知識が必要です。投資信託は、これらをファンドマネージャーに任せられるため、手間がかかりません。

(4) 税制:どちらも譲渡所得税20.315%、NISA口座なら非課税

項目 個別株 投資信託
譲渡所得税 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) 20.315%(同左)
配当・分配金 米国10%+日本20.315% 分配金20.315%(再投資型なら課税繰延)
NISA非課税 あり(成長投資枠:年240万円) あり(つみたて投資枠:年120万円、成長投資枠:年240万円)

税制面では、個別株も投資信託もほぼ同じです。NISA口座を利用すれば、譲渡所得税・配当税が非課税になります。ただし、米国株の配当にかかる米国源泉徴収税10%は、NISA口座でも非課税にはなりません。

あなたに合った選び方:経験・時間・リスク許容度別

(1) 投資初心者・時間がない人:投資信託(インデックスファンド)

こんな人におすすめ:

  • 投資経験が浅い(1年未満)
  • 銘柄分析に時間を割けない(仕事・家事が忙しい)
  • リスクを抑えたい(市場平均程度のリターンで満足)

推奨ファンド例:

  • eMAXIS Slim米国株式(S&P500):信託報酬年0.09372%以内
  • 楽天・全米株式インデックスファンド:信託報酬年0.162%程度
  • SBI・V・全米株式インデックス・ファンド:信託報酬年0.0938%程度

投資方法:

  • つみたてNISAで毎月3~10万円を自動積立
  • ドルコスト平均法で、市場の上下を気にせず継続投資
  • 20~30年の長期投資で、年率7~10%のリターンを目指す

(2) 投資経験者・銘柄分析が好きな人:個別株(配当株・成長株)

こんな人におすすめ:

  • 投資経験が豊富(3年以上)
  • 銘柄分析・企業調査が好き
  • 市場平均を上回るリターンを狙いたい

推奨銘柄例(情報提供のみ、推奨ではありません):

  • 高配当株:コカ・コーラ(KO)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)、P&G(PG)等
  • 成長株:マイクロソフト(MSFT)、アップル(AAPL)、アルファベット(GOOGL)等

投資方法:

  • 成長投資枠(NISA)で、年240万円まで非課税投資
  • 20銘柄以上に分散投資し、個別リスクを軽減
  • 決算発表・業界動向を定期的にチェック

(3) バランス重視:コア(投資信託)+サテライト(個別株)

こんな人におすすめ:

  • リスク分散と超過リターンの両立を目指す
  • 投資経験は中程度(1~3年)
  • 時間はある程度割けるが、全資産を個別株にするのは不安

コア・サテライト戦略の例:

資産配分 投資対象 目的
コア(70%) インデックスファンド(S&P500等) 市場平均に連動し、安定的なリターンを確保
サテライト(30%) 個別株(高配当株・成長株) 超過リターンを狙い、配当収入も得る

具体例(年間投資額360万円の場合):

  • つみたて投資枠(120万円):eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
  • 成長投資枠(240万円):個別株20銘柄(高配当株10銘柄、成長株10銘柄)

この戦略により、市場平均のリターンを確保しつつ、個別株で超過リターンを狙えます。

まとめ:コア・サテライト戦略で併用も選択肢

個別株と投資信託は、それぞれメリット・デメリットがあります。初心者は投資信託(インデックスファンド)から始め、経験を積んだら個別株に挑戦するのが無難です。また、コア・サテライト戦略で両方を併用することで、リスク分散と超過リターンの両立が可能です。

次のアクション:

  • 自分の投資経験・時間・リスク許容度を整理する
  • 初心者ならつみたてNISAでインデックスファンドから始める
  • 経験者なら成長投資枠で個別株に挑戦する
  • バランス重視ならコア・サテライト戦略を検討する

どの方法を選ぶにしても、長期的な視点で資産形成を続けることが重要です。自分に合った投資方法を見つけ、着実に資産を増やしていきましょう。

よくある質問

Q1初心者は個別株と投資信託どちらが良い?

A1時間がないなら投資信託(インデックスファンド)を推奨します。少額(100円〜)から分散投資でき、専門家が運用してくれます。個別株は、決算書や業界動向の分析に時間と知識が必要なため、投資経験を積んでから挑戦するのが無難です。

Q2個別株と投資信託のリスクの違いは?

A2個別株は企業固有のリスク(業績悪化・倒産)が高く、1社の問題で大きな損失を被る可能性があります。投資信託は分散投資により個別リスクを軽減できますが、市場全体が下落した場合(リーマンショック等)は、投資信託も大きく下落します。

Q3税金の違いはある?

A3どちらも譲渡所得税20.315%(所得税15.315%+住民税5%)です。NISA口座なら非課税になります。個別株の配当は米国10%+日本20.315%が課税されますが、投資信託の分配金(再投資型)は課税が繰り延べられます。

Q4個別株と投資信託は併用できる?

A4可能です。コア・サテライト戦略で、コア(投資信託でインデックス70%)+サテライト(個別株で高配当・成長株30%)が推奨されます。市場平均のリターンを確保しつつ、個別株で超過リターンを狙えるバランスの良い戦略です。

Q5NISAはどちらに使うべき?

A5つみたて投資枠(年120万円)は投資信託限定です。成長投資枠(年240万円)は個別株・投資信託どちらも可能です。初心者はつみたて投資枠でインデックスファンド、経験者は成長投資枠で個別株という使い分けが一般的です。

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