個別株と投資信託の選択で悩む理由
米国株投資を始めたいけれど、「個別株を買うべきか、投資信託にするべきか」と悩んでいませんか?インデックスファンドで積立投資を始めた方の中にも、「配当株にも興味がある」「自分で銘柄を選んでみたい」と感じている方は多いはずです。
この記事では、投資信託と個別株の違いを、コスト・手間・自由度・税制の観点から徹底比較し、あなたに合った投資スタイルを見つけるヒントをお届けします。
この記事のポイント:
- 投資信託は「分散・低コスト・手間なし」が強み、個別株は「自由度・配当戦略・学習機会」が強み
- 信託報酬は年0.1%程度、個別株の取引手数料は証券会社により異なる
- 税制は投資信託の分配金も個別株の配当金も同じ20.315%課税(NISA活用で非課税化可能)
- コア・サテライト戦略で両者を併用するのが現実的
- つみたて投資枠で投資信託、成長投資枠で個別株という使い分けが有効
(1) 米国株投資の2つの方法
米国株に投資する方法は大きく2つあります。
**投資信託(インデックスファンド)**は、S&P500などの市場指数に連動する運用を目指す商品です。1つの商品で数百〜数千の銘柄に分散投資でき、銘柄選定や管理の手間がかかりません。
個別株は、アップルやマイクロソフトなど特定の企業の株式を自分で選んで購入します。配当の受け取り方や売却タイミングを自由に決められる一方、銘柄選定と管理は自分で行う必要があります。
(2) どちらを選ぶべきかの判断基準
どちらを選ぶかは、時間・知識・目的で判断します。
- 時間が限られている、投資初心者:投資信託
- 銘柄選定を楽しみたい、配当戦略に興味がある:個別株
- 両方のメリットを得たい:併用戦略(コア・サテライト)
投資信託のメリット・デメリット
(1) メリット:分散投資・手間なし・少額から可能
投資信託の最大のメリットは分散投資が自動でできることです。例えば、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は約500銘柄に分散投資でき、1銘柄が暴落しても影響は限定的です。
また、管理の手間がかからないのも魅力です。銘柄選定や分配金の再投資は運用会社が自動で行うため、投資家は積立設定をするだけで済みます。
少額から投資できる点も初心者に優しい特徴です。SBI証券や楽天証券では100円から積立投資が可能で、まとまった資金がなくても始められます。
(2) デメリット:信託報酬・自由度の低さ
一方、投資信託には信託報酬という年間コストがかかります。インデックスファンドなら年率0.1%前後ですが、アクティブファンドでは1-2%のものもあります。長期投資では、この差が大きなリターンの違いになります。
また、自由度が低い点もデメリットです。分配金の受け取り方や売却タイミングは基準価額の変動に左右され、個別の銘柄を選ぶこともできません。
(3) インデックスファンド vs アクティブファンド
投資信託には、指数に連動するインデックスファンドと、ファンドマネージャーが銘柄を選ぶアクティブファンドがあります。
S&P Dow Jones Indicesの「SPIVA Report」によれば、10年間でS&P500を上回るアクティブファンドは全体の約15%にとどまります。長期的には低コストのインデックスファンドが有利と言われています。
個別株のメリット・デメリット
(1) メリット:自由度・配当戦略・学習機会
個別株の最大のメリットは自由度の高さです。配当を再投資するか現金で受け取るか、売却タイミングをいつにするかなど、すべて自分で決められます。
配当戦略を実践できる点も魅力です。ジョンソン・エンド・ジョンソンやコカ・コーラなど連続増配銘柄を選べば、安定したインカムゲインを得られます。
また、銘柄選定を通じて企業分析のスキルが身につくのも大きなメリットです。決算書の読み方や業界動向の理解が深まり、投資の知識が広がります。
(2) デメリット:銘柄選定の難しさ・管理の手間
一方、銘柄選定は簡単ではありません。決算書の分析、業界の理解、競合との比較など、相応の知識と時間が必要です。
管理の手間もかかります。配当金の確認、ポートフォリオのリバランス、企業ニュースのチェックなど、継続的なメンテナンスが求められます。
(3) 個別株で勝てる投資家は少数
Morningstarの調査によれば、個人投資家が市場平均を上回るのは難しく、長期的には多くの投資家がインデックスに負けると言われています。銘柄選定に自信がない場合は、投資信託の方が無難です。
コストと税制の比較
(1) 投資信託の信託報酬(年0.1-1%)
投資信託には信託報酬が毎年かかります。主なインデックスファンドの信託報酬は以下の通りです。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):年率0.09372%程度
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド:年率0.0938%程度
100万円を30年運用する場合、信託報酬0.1%と1%では最終的なリターンに数十万円の差が出ます。低コスト商品を選ぶことが重要です。
(2) 個別株の取引手数料
個別株の取引手数料は証券会社により異なります。
- SBI証券:約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 楽天証券:約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- マネックス証券:約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
頻繁に売買しなければ、取引手数料の負担は投資信託の信託報酬より小さくなることもあります。
(3) 税制の違い(分配金 vs 配当金)
投資信託の分配金も個別株の配当金も、税制上は同じ扱いです。日本では20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が源泉徴収されます。
米国株の配当金には、米国で10%の源泉徴収が先に行われるため、二重課税となります。外国税額控除を使えば一部を取り戻せますが、手続きが必要です。
(4) NISA活用時の違い
NISA口座では日本での20.315%の課税が非課税になります。ただし、米国での10%源泉徴収は避けられません。
- つみたて投資枠:投資信託のみ対象(年間120万円まで)
- 成長投資枠:個別株・投資信託両方可能(年間240万円まで)
つみたて投資枠は金融庁が認めた低コスト商品に限定されるため、初心者でも安心して選べます。
併用戦略(コア・サテライト戦略)
(1) コア:投資信託で安定運用
コア・サテライト戦略は、ポートフォリオの大部分(コア)を投資信託で安定運用し、一部(サテライト)を個別株で積極運用する方法です。
コア部分は市場平均を確実に狙うため、インデックスファンドが適しています。S&P500連動型なら、米国市場全体の成長を取り込めます。
(2) サテライト:個別株で積極運用
サテライト部分では、配当株や成長株など自分の興味のある銘柄を選びます。ポートフォリオ全体の10-20%程度に抑えることで、リスクを限定しながら学習機会を得られます。
(3) つみたて投資枠と成長投資枠の使い分け
NISAを活用する場合、以下のような使い分けが現実的です。
- つみたて投資枠:インデックスファンドで毎月積立
- 成長投資枠:個別株を少額で購入、配当戦略を試す
こうすることで、両方のメリットを最大化できます。
(4) リバランスの考え方
年に1-2回、ポートフォリオ全体のバランスを見直します。個別株の比率が大きくなりすぎた場合は、一部を売却して投資信託に配分し直すことで、リスクをコントロールできます。
まとめ:自分に合った投資スタイルの選び方
個別株と投資信託は、それぞれに強みと弱みがあります。投資信託は分散・低コスト・手間なしが魅力で、個別株は自由度・配当戦略・学習機会が強みです。
次のアクション:
- 投資初心者は、まずつみたて投資枠でインデックスファンドを始める
- 慣れてきたら、成長投資枠で少額の個別株に挑戦する
- コア・サテライト戦略で両者のメリットを活かす
- 年1-2回のリバランスでリスクをコントロールする
投資信託か個別株か、という二者択一ではなく、自分の時間・知識・目的に合わせて柔軟に組み合わせることが、長期的な資産形成の鍵です。