個別株は新NISA積立枠で買える?成長枠との使い分け

公開日: 2025/10/20

新NISA積立投資枠で個別株は買えるのか

新NISAを活用して米国株に投資したいけれど、「積立投資枠で個別株は買えるの?」「成長投資枠との違いは?」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。

結論から言うと、新NISAの積立投資枠では個別株は購入できません。個別株を購入したい場合は、成長投資枠を利用する必要があります。この記事では、新NISA制度の仕組みと、米国株投資の最適な活用方法を解説します。

この記事のポイント:

  • 積立投資枠では個別株は購入不可(投資信託・ETFのみ)
  • 成長投資枠なら米国個別株を1株から購入可能(年間240万円まで)
  • 両枠併用で年間最大360万円まで非課税投資が可能
  • NISA口座では売却益が非課税だが、米国源泉税10%は課税される
  • 損失は損益通算できないため、リスク管理が重要

(1) 結論:買えない(投資信託・ETFのみ)

新NISAの積立投資枠で購入できるのは、金融庁が認めた長期・積立・分散投資に適した投資信託とETFのみです。米国株の個別銘柄(Apple、Microsoft、Teslaなど)は購入できません。

これは、積立投資枠が「長期・積立・分散投資」を推奨する制度設計になっているためです。個別株は値動きが大きく、長期・分散投資に適さないと判断されています。

(2) 個別株を買いたい場合は成長投資枠を利用

米国株の個別銘柄を購入したい場合は、成長投資枠を利用してください。成長投資枠では、米国個別株を1株から購入でき、年間240万円まで非課税で投資できます。

成長投資枠と積立投資枠は併用可能なので、例えば以下のような使い分けができます:

  • 積立投資枠(年120万円):米国株インデックスファンド(S&P500等)を積立
  • 成長投資枠(年240万円):米国個別株(高配当株、グロース株等)に投資

新NISA制度の仕組み(つみたて投資枠 vs 成長投資枠)

(1) つみたて投資枠(年間120万円、生涯1800万円)

つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資に適した投資信託やETFに投資できる枠です。

つみたて投資枠の特徴:

  • 年間投資上限:120万円
  • 生涯投資上限:1800万円
  • 対象商品:金融庁が認めた約280本の投資信託・ETF
  • 投資方法:積立のみ(一括購入不可)
  • 非課税期間:無期限

つみたて投資枠は、初心者が長期的に資産形成するのに適した設計になっています。

(2) 成長投資枠(年間240万円、生涯1200万円)

成長投資枠は、個別株や投資信託など、幅広い商品に投資できる枠です。

成長投資枠の特徴:

  • 年間投資上限:240万円
  • 生涯投資上限:1200万円
  • 対象商品:上場株式(米国株含む)、投資信託、ETF、REITなど
  • 投資方法:積立・一括購入どちらも可能
  • 非課税期間:無期限

成長投資枠は、より自由度の高い投資が可能です。米国個別株を購入したい方は、こちらを利用してください。

(3) 両方併用可能(年間最大360万円、生涯1800万円)

つみたて投資枠と成長投資枠は併用できます。年間最大360万円(つみたて120万円 + 成長240万円)まで非課税で投資できます。

ただし、生涯投資上限は1800万円です。成長投資枠だけで1800万円使うことも可能ですが、その場合つみたて投資枠は0円になります。

投資上限の例:

  • パターンA:つみたて1800万円 + 成長0円 = 合計1800万円
  • パターンB:つみたて600万円 + 成長1200万円 = 合計1800万円
  • パターンC:つみたて0円 + 成長1800万円 = 合計1800万円(※成長は1200万円が上限なので不可)

成長投資枠の上限は1200万円なので、パターンCは実際には「つみたて600万円 + 成長1200万円」となります。

(4) 非課税期間は無期限

新NISAでは、非課税期間が無期限です。旧NISAでは非課税期間が5年または20年でしたが、新NISAでは保有し続ける限り、売却益や配当が非課税となります。

これにより、長期的な資産形成がしやすくなりました。

積立投資枠の対象商品

(1) 長期・積立・分散投資に適した投資信託

積立投資枠の対象商品は、金融庁が認めた約280本の投資信託・ETFです。以下の基準を満たす商品のみが対象となります:

  • 販売手数料が無料(ノーロード)
  • 信託報酬が一定水準以下
  • 信託期間が無期限または20年以上
  • 分配頻度が毎月でない

これらの基準により、長期投資に適した低コストの投資信託が厳選されています。

(2) 米国株投資信託(S&P500、全米株式等)

積立投資枠で米国株に投資したい場合は、米国株インデックスファンドが人気です。

代表的な米国株投資信託:

ファンド名 指数 信託報酬
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) S&P500 0.09372%
SBI・V・全米株式インデックス・ファンド CRSP USトータルマーケット 0.0938%
楽天・全米株式インデックス・ファンド CRSP USトータルマーケット 0.132%

これらのファンドは、米国株市場全体に分散投資できるため、個別株のリスクを避けたい方に適しています。

(3) 米国株ETF(一部対象)

積立投資枠では、一部の米国株ETFも購入できます。ただし、すべての米国株ETFが対象ではなく、金融庁の基準を満たしたものに限られます。

対象となる主な米国株ETF:

  • なし(2025年1月時点では、米国上場ETFは積立投資枠の対象外)

日本上場の米国株ETF(例:1557 SPDR S&P500 ETF)は、成長投資枠でのみ購入可能です。

(4) 個別株は対象外

米国株の個別銘柄(Apple、Microsoft、Teslaなど)は、積立投資枠の対象外です。個別株を購入したい場合は、必ず成長投資枠を利用してください。

成長投資枠で米国個別株を買う方法

(1) 証券会社でNISA口座を開設

まず、証券会社でNISA口座を開設します。NISA口座は1人1口座しか開設できないため、証券会社選びは慎重に行いましょう。

米国株投資に強い証券会社:

  • SBI証券:取扱銘柄数が豊富、為替手数料が安い
  • 楽天証券:米国株の情報が充実、楽天ポイントが貯まる
  • マネックス証券:米国株の取引手数料が無料(買付時)

(2) 成長投資枠を選択

NISA口座を開設したら、成長投資枠を選択します。証券会社の取引画面で、「成長投資枠」を指定してください。

(3) 米国個別株を1株から購入可能

成長投資枠では、米国個別株を1株から購入できます。例えば、Apple株が1株180ドル(為替レート150円/ドルの場合27,000円)なら、27,000円から投資できます。

購入手順:

  1. 証券会社の米国株取引画面にアクセス
  2. ティッカーシンボル(例:AAPL)を入力
  3. 「成長投資枠」を選択
  4. 購入株数と注文方法(成行・指値)を指定
  5. 注文を確定

(4) 年間240万円までの投資が非課税

成長投資枠では、年間240万円までの投資が非課税となります。例えば、Apple株を10株購入(27万円)、Microsoft株を10株購入(40万円)といった投資が可能です。

年間240万円を超える投資をした場合、超過分は課税口座での取引となります。

NISA口座での米国株投資の税制メリットと注意点

(1) メリット①:売却益が非課税

NISA口座で米国株を売却した場合、売却益に対する税金がかかりません。通常、課税口座では売却益に20.315%の税金がかかりますが、NISA口座ではこれが非課税となります。

具体例:

  • 購入価格:100万円
  • 売却価格:150万円
  • 売却益:50万円
  • 課税口座:50万円 × 20.315% = 約10万円の税金
  • NISA口座:0円(非課税)

(2) メリット②:配当が非課税(ただし米国源泉税10%は課税)

NISA口座で受け取った配当金は、日本の税金(20.315%)が非課税となります。ただし、米国での源泉徴収10%は避けられません。

具体例(100ドルの配当):

  • 米国で10%源泉徴収 → 10ドル課税
  • 手取り90ドル
  • 日本での税金(20.315%)→ NISA口座では非課税

課税口座の場合、米国10% + 日本20.315%で二重課税されますが、外国税額控除により一部還付されます。NISA口座では外国税額控除が使えないため、配当戦略の場合は課税口座の方が有利なケースもあります。

(3) 注意点①:損失は損益通算できない

NISA口座で発生した損失は、課税口座の利益と損益通算できません。

具体例:

  • NISA口座:A株で50万円の損失
  • 課税口座:B株で50万円の利益
  • 損益通算不可 → 課税口座のB株利益50万円に対して約10万円の税金がかかる

課税口座同士なら損益通算で税金が0円になりますが、NISA口座の損失は使えません。

(4) 注意点②:米国源泉税10%は外国税額控除も不可

NISA口座で受け取った配当金は、米国で源泉徴収された10%について外国税額控除を利用できません。

高配当株戦略で配当金を重視する場合、課税口座で外国税額控除を利用した方が税負担が軽くなる可能性があります。

(5) 注意点③:NISA口座は1人1口座のみ

NISA口座は、1人1口座しか開設できません。複数の証券会社でNISA口座を開設することはできないため、証券会社選びは慎重に行いましょう。

年に1回、NISA口座を別の証券会社に変更することは可能ですが、手続きが煩雑なため、最初から自分に合った証券会社を選ぶことが推奨されます。

まとめ:個別株は成長投資枠で活用

新NISAの積立投資枠では、米国株の個別銘柄は購入できません。個別株を購入したい場合は、成長投資枠を利用してください。

推奨される活用方法:

  • つみたて投資枠(年120万円):米国株インデックスファンド(S&P500等)を積立投資
  • 成長投資枠(年240万円):米国個別株(高配当株、グロース株等)に投資

NISA口座では売却益が非課税になる一方、損失は損益通算できない、米国源泉税10%は外国税額控除不可といった注意点もあります。これらを理解した上で、自分に合った投資戦略を立てましょう。

次のアクション:

  • NISA口座を開設する(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)
  • つみたて投資枠で米国株インデックスファンドの積立を開始する
  • 成長投資枠で米国個別株への投資を検討する
  • 配当戦略の場合、課税口座との使い分けを検討する

新NISAを最大限活用して、長期的な資産形成を目指しましょう。

よくある質問

Q1積立投資枠で個別株は買える?

A1買えません。つみたて投資枠は長期・積立・分散投資に適した投資信託・ETFのみが対象です。米国株の個別銘柄(Apple、Microsoft等)を買いたい場合は、成長投資枠を利用してください。成長投資枠なら年間240万円まで個別株に非課税で投資できます。

Q2積立投資枠の対象商品は?

A2金融庁が認めた長期・積立・分散投資に適した約280本の投資信託・ETFです。米国株投資なら、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)、SBI・V・全米株式インデックス・ファンド、楽天・全米株式インデックス・ファンドなどが人気です。いずれも信託報酬が低く、長期投資に適しています。

Q3成長投資枠と積立投資枠の使い分けは?

A3つみたて投資枠(年120万円)で米国株インデックスファンドを積立投資し、成長投資枠(年240万円)で米国個別株(高配当株やグロース株等)や追加の投資信託に投資する使い分けが推奨されます。両枠を併用することで、年間最大360万円まで非課税投資が可能です。

Q4NISA口座での米国株配当の税制は?

A4日本の税金(20.315%)は非課税ですが、米国での源泉徴収10%は課税されます。また、NISA口座では外国税額控除が適用できません。高配当株戦略で配当を重視する場合、課税口座で外国税額控除を利用した方が税負担が軽くなる可能性があります。

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