米国株の確定申告、本当に必要?
米国株の個別銘柄で配当や売却益を得ている日本人投資家の多くが、「確定申告は必要なの?」「外国税額控除ってどうやって受けるの?」と悩んでいます。特に、特定口座(源泉徴収あり)で取引している場合、確定申告が不要だと思い込んでいる方も少なくありません。
この記事では、米国株の個別銘柄にかかる確定申告の方法、外国税額控除の仕組み、損益通算の活用法まで、2025年最新の情報をもとに詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 特定口座(源泉徴収あり)でも、外国税額控除を受けるには確定申告が必要
- 米国株の配当金は米国で10%、日本で20.315%の二重課税がかかる
- 複数証券会社で取引している場合、損益通算で節税できる
- e-Taxを使えば自宅から簡単に確定申告が完結する
1. 米国株の確定申告で迷う投資家の悩み
米国株の個別銘柄への投資が身近になった一方で、税務手続きに不安を感じる投資家は増えています。特に以下のような疑問を抱える方が多いです。
- 「特定口座なら確定申告は不要だと聞いたけど本当?」
- 「配当金にかかる二重課税を取り戻したい」
- 「損失が出たけど、どうやって損益通算するの?」
- 「e-Taxの使い方が分からない」
これらの疑問を一つずつ解消していきましょう。
2. 米国株の確定申告が必要なケース
米国株の確定申告が必要かどうかは、口座の種類や取引状況によって異なります。
(1) 特定口座(源泉徴収あり)でも申告が必要な理由
特定口座(源泉徴収あり)で米国株を取引している場合、証券会社が自動的に税金を計算・納税してくれるため、基本的に確定申告は不要です。
しかし、以下のケースでは確定申告が必要、または有利になります。
- 外国税額控除を受ける場合: 米国で源泉徴収された10%を日本の税額から差し引きたい
- 損益通算をする場合: 複数の証券会社で取引しており、損益を通算したい
- 損失の繰越控除を受ける場合: 損失を翌年以降3年間繰り越したい
特に外国税額控除は、申告しなければ還付を受けられないため、配当所得が多い場合は申告をおすすめします。
(2) 一般口座・NISA口座の場合
- 一般口座: 自分で損益計算をして確定申告が必須
- NISA口座: 譲渡益・配当ともに非課税のため、確定申告は不要。ただし、損失が出ても損益通算や繰越控除は利用できない
(3) 複数証券会社で取引している場合
複数の証券会社で取引している場合、各口座の損益を合算して確定申告することで、損益通算が可能です。例えば、A証券で利益10万円、B証券で損失5万円が出た場合、確定申告すれば課税対象は5万円となり、税負担が軽減されます。
3. 配当所得の申告と外国税額控除の仕組み
米国株の配当金には二重課税がかかるため、外国税額控除を理解することが重要です。
(1) 米国株の配当にかかる二重課税
米国企業が配当を支払う際、日本居住者には以下のように課税されます。
- 米国での源泉徴収(10%): 日米租税条約により、本来30%のところ10%に軽減
- 日本での課税(20.315%): 所得税15.315% + 住民税5%
例えば、100ドルの配当が支払われる場合:
- 米国で10ドル源泉徴収 → 手取り90ドル
- 日本で約20ドル課税(100ドルに対して20.315%)
- 実質的な税負担: 約30ドル(30%)
この二重課税を軽減するのが外国税額控除です。
(2) 外国税額控除の計算方法
外国税額控除とは、外国で課税された税金を日本の所得税・住民税から差し引ける制度です。
具体的な計算例:
配当金100ドル、為替レート150円/ドルの場合:
- 米国で10ドル源泉徴収(1,500円)
- 日本で20.315%課税(約3,047円)
- 外国税額控除を申告 → 最大1,500円を所得税から差し引ける
- 実質的な税負担: 約1,547円(約10%)
ただし、控除額には上限があり、所得税額に応じて計算されます。
控除限度額(所得税分) = その年の所得税額 × (国外所得金額 ÷ 所得総額)
(3) 年間取引報告書の見方
証券会社は毎年1月中に「特定口座年間取引報告書」を発行します。この報告書には、配当金額や外国で源泉徴収された税額が記載されています。
確認すべき項目:
- 配当金額(円換算)
- 外国所得税額(米国で源泉徴収された税額)
- 国内源泉徴収税額(日本で課税された税額)
この数値を確定申告書に転記します。
4. 譲渡所得の申告と損益通算
株式の売却益や売却損についても、確定申告で適切に処理することで節税できます。
(1) 譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、売却価格から取得価格と手数料を差し引いて計算します。
譲渡所得 = 売却価格 - (取得価格 + 手数料)
特定口座(源泉徴収あり)の場合、証券会社が自動的に計算・納税してくれますが、複数口座で取引している場合は確定申告で合算します。
(2) 損益通算で節税する方法
損益通算とは、利益と損失を相殺することです。例えば:
- A証券で譲渡益30万円
- B証券で譲渡損10万円
- 確定申告で損益通算 → 課税対象は20万円
これにより、税負担が軽減されます。
(3) 損失の繰越控除(3年間)
損失が利益を上回る場合、その損失を翌年以降3年間繰り越して控除できます。
例えば、2025年に50万円の損失が出た場合:
- 2026年に30万円の利益 → 損失と相殺して課税なし(残り繰越損失20万円)
- 2027年に20万円の利益 → 損失と相殺して課税なし
ただし、繰越控除を受けるには、損失が出た年から毎年確定申告が必要です。
5. e-Taxでの具体的な申告手順
確定申告はe-Tax(国税電子申告システム)を使えば、自宅から簡単に完結できます。
(1) 必要書類の準備
確定申告に必要な書類は以下の通りです。
- 特定口座年間取引報告書(証券会社が発行)
- 配当金支払通知書(証券会社のマイページから取得)
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- マイナンバーカード(またはID・パスワード)
(2) e-Taxでの入力方法(配当所得)
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
- マイナンバーカードまたはID・パスワードでログイン
- 「所得の種類」で「配当所得」を選択
- 年間取引報告書の数値を入力
- 「外国税額控除」を選択
- 外国所得税額を入力(年間取引報告書から転記)
(3) e-Taxでの入力方法(譲渡所得・外国税額控除)
- 「株式等の譲渡所得」を選択
- 年間取引報告書の譲渡損益を入力
- 複数証券会社の場合は、それぞれ入力
- 損益通算が自動計算される
- 外国税額控除の明細書を作成
- 控除額が自動計算される
(4) 確定申告の期限と提出
確定申告の期限は、翌年2月16日から3月15日までです。e-Taxなら24時間受付可能で、還付がある場合は通常1-2ヶ月で指定口座に振り込まれます。
期限を過ぎると無申告加算税が課される可能性があるため、早めの申告をおすすめします。
6. まとめ:米国株の確定申告で損しないために
米国株の個別銘柄で配当や譲渡益を得ている場合、特定口座(源泉徴収あり)でも確定申告を検討する価値があります。特に、外国税額控除や損益通算を活用すれば、税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
次のアクション:
- 証券会社から特定口座年間取引報告書を取得する(毎年1月中)
- 外国税額控除の控除限度額を計算する
- e-Taxで確定申告を行い、還付を受ける
- 損失が出た場合は繰越控除を活用する
確定申告の手間はかかりますが、配当所得や譲渡益が多い場合は数万円単位で還付を受けられる可能性があります。税制を理解し、賢く資産運用を進めていきましょう。