新NISA成長投資枠で米国個別株を買うメリットとは
新NISAが2024年1月にスタートし、成長投資枠で米国個別株を非課税で購入できるようになりました。しかし、「成長投資枠で個別株を買うべきか、それとも投資信託にすべきか」と迷っている方も多いのではないでしょうか。
米国個別株投資には、高い成長性が期待できる一方で、為替リスクや税制の複雑さといった不安要素もあります。この記事では、新NISA成長投資枠での米国個別株投資の仕組み、税制メリット、証券会社の選び方、そして投資信託との使い分けまで、実践的な情報を網羅的に解説します。
この記事のポイント:
- 成長投資枠は年間240万円まで、つみたて投資枠と併用すれば年間360万円まで投資可能
- 売却益は完全非課税だが、配当金には米国で10%の源泉徴収がかかる
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券の主要3社で米国株取引手数料が無料化
- 個別株はハイリターンを狙えるが、初心者には分散投資できる投資信託がおすすめ
- 外国税額控除は新NISA口座では使えないため、配当重視なら特定口座も検討
新NISA成長投資枠の制度概要
新NISA制度は、従来のつみたてNISAと一般NISAを統合し、より柔軟で使いやすくなった制度です。成長投資枠は、その中でも個別株やETFに投資できる枠として注目されています。
(1) 年間投資上限240万円と生涯投資枠1,200万円
成長投資枠の年間投資上限は240万円です。ただし、つみたて投資枠(年間120万円)と併用する場合、合計で年間360万円まで投資できます。
また、生涯投資枠は1,800万円で、そのうち成長投資枠として使えるのは1,200万円までとされています。この制約により、長期的な資産形成を計画的に行う必要があります。
金融庁の公式サイトでは、新NISA制度の詳細が公開されており、投資枠の計算方法や対象商品について確認できます。
(2) つみたて投資枠との違いと併用方法
つみたて投資枠は、金融庁が指定したインデックスファンドなど、長期・積立・分散投資に適した投資信託のみが対象です。一方、成長投資枠では、米国個別株やETF、アクティブファンドなど、より幅広い商品に投資できます。
両方の枠を同時に活用することで、安定的な資産形成(つみたて投資枠)と積極的なリターン追求(成長投資枠)をバランスよく組み合わせることが可能です。
(3) 非課税保有期間の無期限化
旧NISA制度では非課税保有期間が5年(一般NISA)や20年(つみたてNISA)に限定されていましたが、新NISA制度では非課税保有期間が無期限になりました。
これにより、長期保有を前提とした米国個別株投資がより有利になりました。ただし、売却した際の非課税枠の復活は翌年以降となるため、頻繁な売買には向きません。
米国個別株の購入方法と証券会社比較
新NISA成長投資枠で米国個別株を購入するには、証券会社で新NISA口座を開設する必要があります。ここでは主要な証券会社での購入手順と特徴を比較します。
(1) SBI証券での購入手順
SBI証券では、新NISA口座を開設後、外国株式取引口座も併せて開設することで、米国個別株の取引が可能になります。
購入手順は以下の通りです:
- SBI証券で総合口座と新NISA口座を開設
- 外国株式取引口座を開設
- 日本円を外貨(米ドル)に両替
- 成長投資枠の設定で「米国株式」を選択
- 銘柄を検索して購入
SBI証券の新NISA成長投資枠では、米国株の売買手数料が無料化されており、コスト面でのメリットが大きいと言えます。
(2) 楽天証券・マネックス証券の比較
楽天証券とマネックス証券も、米国株取引手数料の無料化を実施しています。
項目 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 |
---|---|---|---|
米国株手数料 | 無料 | 無料 | 無料 |
為替手数料 | 片道25銭 | 片道25銭 | 買付時無料 |
取扱銘柄数 | 約5,000銘柄 | 約4,700銘柄 | 約4,500銘柄 |
アプリの使いやすさ | ○ | ◎ | ○ |
楽天証券は楽天ポイントが貯まる点、マネックス証券は為替手数料が買付時無料である点が特徴です。自分の投資スタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。
(3) 手数料無料化のメリット
従来、米国株の売買には約定代金の0.45%(上限22ドル)の手数料がかかっていましたが、主要証券会社の無料化により、コストを気にせず少額から投資できるようになりました。
例えば、100ドル(約15,000円)の株を購入する場合、従来は約68円の手数料がかかっていましたが、現在は無料です。この差は長期的に大きな影響を与えます。
米国個別株の税制メリットと注意点
新NISA成長投資枠での米国個別株投資には、税制面で大きなメリットがありますが、注意すべき点もあります。
(1) 売却益の完全非課税
新NISA成長投資枠で購入した米国個別株を売却した際の利益は、完全に非課税です。通常、特定口座で米国株を売却すると、売却益に対して20.315%の税金がかかりますが、新NISA口座ではこれがゼロになります。
例えば、100万円で購入した米国株が200万円になって売却した場合、利益100万円に対して:
- 特定口座: 約20万円の税金 → 手取り80万円
- 新NISA口座: 税金ゼロ → 手取り100万円
この差は、長期投資においてリターンに大きな影響を与えます。
(2) 配当金の税制(米国10%課税の注意点)
米国個別株の配当金については、日本の税金(20.315%)は非課税となりますが、米国での源泉徴収10%は避けられません。
例えば、100ドルの配当金が支払われる場合:
- 米国で10ドルが源泉徴収される
- 手元に届くのは90ドル
- 日本での税金はゼロ(新NISA口座のため)
一方、特定口座の場合は米国10%、日本20.315%の二重課税となりますが、外国税額控除を使えば米国分の一部を取り戻せます。
(3) 外国税額控除が使えない理由
新NISA口座では、そもそも日本での課税がないため、外国税額控除を適用することができません。
配当金を重視する投資スタイルの場合、特定口座で外国税額控除を使った方が、実質的な税負担が軽くなるケースもあります。投資の目的に応じて、新NISA口座と特定口座を使い分けることが重要です。
個別株と投資信託の使い分け
新NISA成長投資枠では、個別株と投資信託の両方に投資できます。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分に合った投資方法を選びましょう。
(1) 個別株投資のメリット・デメリット
メリット:
- 高成長企業に集中投資でき、大きなリターンが期待できる
- 配当金を直接受け取れる
- 企業分析を通じて投資スキルが向上する
デメリット:
- 個別企業のリスクが高い(倒産リスク、業績悪化リスク)
- 銘柄選定に専門知識が必要
- 分散投資が難しく、ポートフォリオ管理が複雑
(2) ETF・投資信託との比較
米国株投資信託やETFは、複数の銘柄に分散投資できるため、リスクを抑えながら米国株市場全体の成長を取り込めます。
例えば、S&P500に連動する投資信託を購入すれば、米国の代表的な500社に分散投資したのと同じ効果が得られます。
一方、個別株は自分で銘柄を選ぶ楽しみがあり、成長性の高い企業に集中投資することで、市場平均を上回るリターンを狙えます。
(3) どちらを選ぶべきか
投資経験や目的に応じて選択することが大切です:
投資信託がおすすめな人:
- 投資初心者で銘柄選定に自信がない
- 分散投資でリスクを抑えたい
- 手間をかけずに長期投資したい
個別株がおすすめな人:
- 企業分析が好きで、投資に時間をかけられる
- 高リスク・高リターンを狙いたい
- 投資経験があり、リスク管理ができる
多くの投資家は、つみたて投資枠で投資信託を積み立てながら、成長投資枠で気になる個別株に投資するという併用スタイルを取っています。
まとめ:新NISA成長投資枠での米国個別株投資を始める前に
新NISA成長投資枠を活用すれば、米国個別株の売却益を非課税で受け取ることができ、長期的な資産形成に大きなメリットがあります。
ただし、配当金には米国で10%の源泉徴収がかかること、外国税額控除が使えないこと、個別株特有のリスクがあることを理解した上で投資する必要があります。
次のアクション:
- 証券会社で新NISA口座を開設する(SBI証券・楽天証券・マネックス証券を比較)
- つみたて投資枠と成長投資枠の配分を決める(安定重視か成長重視か)
- 投資信託と個別株のバランスを考える(初心者はまず投資信託から)
- 為替リスクや税制を理解し、長期保有を前提に投資する
投資判断は自己責任で行い、無理のない範囲で米国株投資を始めてみましょう。