新NISAで米国株は買える?制度の基本と購入方法
2024年から新NISA制度が始まり、「米国株を非課税で買えるのか?」という疑問を持つ投資家の方が増えています。新NISAでは成長投資枠で米国個別株やETFを購入でき、つみたて投資枠では米国株投資信託を積み立てることができます。
この記事では、新NISA制度における米国株の対応状況、購入方法、証券会社比較、注意点を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 新NISAの成長投資枠で米国個別株・ETFを年240万円まで購入可能
- つみたて投資枠では米国株投資信託(S&P500等)を年120万円まで積立可能
- NISA口座でも米国での配当課税10%は免除されない(日本の20.315%は非課税)
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券が主要3社(取扱銘柄数・手数料で比較)
- 為替リスクと外国税額控除が使えない点を理解した上で活用を
1. 新NISAで米国株は買える?制度の基本
(1) 新NISAの2つの枠(成長投資枠・つみたて投資枠)
新NISA制度には、2つの投資枠があります:
項目 | 成長投資枠 | つみたて投資枠 |
---|---|---|
年間投資上限額 | 240万円 | 120万円 |
生涯投資上限額 | 1,200万円(うち成長投資枠は最大1,200万円) | 合計1,800万円(成長投資枠+つみたて投資枠) |
対象商品 | 上場株式、ETF、投資信託(一部除外銘柄あり) | 金融庁指定の投資信託・ETF |
米国株対応 | 米国個別株・ETF購入可能 | 米国株投資信託のみ購入可能 |
※生涯投資上限額は1,800万円で、成長投資枠はそのうち最大1,200万円まで使用可能です。
(2) 米国株対応状況の概要
新NISAでは、以下の形で米国株投資が可能です:
成長投資枠:
- 米国個別株(Apple、Microsoft、Teslaなど)
- 米国上場ETF(VOO、QQQ、VTIなど)
- 年間240万円まで購入可能
つみたて投資枠:
- 米国株インデックスファンド(S&P500連動、全米株式等)
- 金融庁指定の投資信託のみ
- 年間120万円まで積立可能
2. 新NISA成長投資枠での米国株購入方法
(1) 個別株・ETFの購入が可能(年240万円まで)
成長投資枠では、米国の証券取引所に上場している個別株・ETFを購入できます。主な対象銘柄:
米国個別株(例):
- Apple (AAPL)
- Microsoft (MSFT)
- Amazon (AMZN)
- Tesla (TSLA)
- NVIDIA (NVDA)
米国ETF(例):
- VOO: バンガードS&P500 ETF
- QQQ: インベスコQQQトラストシリーズ1(ナスダック100連動)
- VTI: バンガードトータルストックマーケットETF
※証券会社により取扱銘柄数は異なります(SBI証券約5,600銘柄、楽天証券約5,000銘柄)。
(2) 購入対象銘柄の確認方法
証券会社のNISA口座サイトで、購入可能な米国株を検索できます:
SBI証券の場合:
- 外国株式 → 米国株式 → NISA対応銘柄検索
- ティッカーシンボル、企業名で検索可能
楽天証券の場合:
- 外国株式・海外ETF → 米国株式 → NISA対応
- セクター別、ランキングからも検索可能
(3) 買付手順と決済方法
米国株の買付手順:
- NISA口座開設(証券会社の総合口座開設後、NISA口座を申込)
- 外国株式口座開設(米国株取引には外国株式口座が必要)
- ドル転または円貨決済(下記参照)
- 銘柄検索・注文(成行、指値、逆指値が選択可能)
- 約定後、NISA枠消費(購入金額分の非課税枠が消費される)
(4) ドル転と為替手数料
米国株購入には、ドルでの決済が必要です。証券会社により2つの方法があります:
方法1: ドル転(日本円→米ドル両替)
- 事前に日本円を米ドルに両替
- 為替手数料: 片道0.25円/ドル程度(証券会社により異なる)
- SBI証券の住信SBIネット銀行連携で0.02円/ドルまで下げられる
方法2: 円貨決済
- 買付時に証券会社が自動的に円→ドル両替
- 為替手数料が高め(片道0.25円/ドル程度)
長期的に米国株投資を続けるなら、ドル転の方が為替手数料を抑えられます。
3. つみたて投資枠での米国株投資(投資信託)
(1) 米国株インデックスファンドが対象
つみたて投資枠では、金融庁指定の投資信託が対象です。米国株関連では、以下のような投資信託が人気です:
主な米国株投資信託:
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTI)
- iFree S&P500インデックス
これらはすべて米国株に投資する投資信託で、つみたて投資枠で購入可能です(個別株は購入不可)。
(2) S&P500連動ファンドの活用
S&P500指数は、米国を代表する大型株500銘柄で構成される株価指数です。S&P500連動ファンドに投資すれば、米国の主要企業に分散投資できます。
S&P500の主な構成銘柄(2024年末時点の目安):
- Apple: 約7%
- Microsoft: 約6%
- Amazon: 約3%
- NVIDIA: 約5%
- その他496銘柄
※構成比率は市場動向により変動します。
(3) 全世界株式ファンドとの違い
全世界株式ファンド(オール・カントリー)は、米国株約60%、その他先進国約30%、新興国約10%の比率で分散投資します。
選び方の目安:
- 米国株特化: 米国経済の成長を重視する場合
- 全世界株式: 世界全体に分散してリスクを抑えたい場合
どちらもつみたて投資枠で購入可能です。
(4) 積立設定と自動買付
つみたて投資枠では、毎月定額を自動買付する設定が可能です:
積立設定例:
- 毎月10万円をeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)に積立
- 年間120万円(10万円×12ヶ月)の枠を使い切る
- 証券口座から自動引落、自動買付
4. 証券会社別の米国株取扱状況と手数料比較
(1) SBI証券の特徴と手数料
SBI証券の強み:
- 米国株取扱銘柄数: 約5,600銘柄(国内最大級)
- 為替手数料: 住信SBIネット銀行経由で片道0.02円/ドル(業界最安水準)
- 売買手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- NISA口座での買付手数料: 無料(2023年12月以降)
向いている人:
- 取扱銘柄数を重視する
- 為替手数料を最小限に抑えたい
(2) 楽天証券の特徴と手数料
楽天証券の強み:
- 米国株取扱銘柄数: 約5,000銘柄
- 楽天ポイント: 投資信託の積立で楽天ポイントが貯まる、使える
- 売買手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- NISA口座での買付手数料: 無料
向いている人:
- 楽天経済圏を活用している
- 楽天ポイントで投資したい
(3) マネックス証券の特徴と手数料
マネックス証券の強み:
- 米国株取扱銘柄数: 約5,000銘柄
- 銘柄スカウター: 米国株の財務分析ツールが充実
- 売買手数料: 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- NISA口座での買付手数料: 無料
向いている人:
- 米国株の銘柄分析を重視する
- 財務データを詳しく調べたい
(4) NISA口座開設の流れ
NISA口座開設の一般的な流れ:
- 証券会社の総合口座を開設(本人確認書類、マイナンバー提出)
- NISA口座申込(金融機関変更の場合は変更手続きも必要)
- 税務署審査(2〜3週間程度)
- 外国株式口座開設(米国株取引用、同時申込可能)
- NISA口座開設完了(米国株購入可能)
※NISA口座は1人1口座のみ、金融機関変更は年1回まで可能です。
5. 新NISAで米国株を買う際の注意点
(1) 配当金の米国源泉徴収10%は免除されない
新NISA口座で米国株を保有している場合、配当金には以下の課税があります:
課税の仕組み:
- 米国での源泉徴収: 10%(日米租税条約により適用)
- 日本での課税: 0%(NISA口座のため非課税)
計算例:
- 配当金100ドル受取の場合
- 米国で10ドル源泉徴収 → 手取り90ドル
- 日本での課税なし
- 実質的な税率: 10%
一般口座(課税口座)の場合、米国10% + 日本20.315% = 約30%の税率ですが、NISA口座では10%に抑えられます。
(2) 外国税額控除はNISA口座では使えない
一般口座(課税口座)で米国株を保有している場合、外国税額控除を使って米国で課税された10%を日本の所得税から差し引けます。
しかし、NISA口座では日本で非課税のため、外国税額控除は適用されません。米国での10%課税は避けられません。
(3) 為替リスクと円高・円安の影響
米国株は米ドル建て資産のため、為替リスクがあります:
円安の場合(円の価値が下がる):
- ドル建て株価が変わらなくても、円換算評価額は上昇
- 例: 1ドル=130円 → 150円なら約15%のプラス効果
円高の場合(円の価値が上がる):
- ドル建て株価が変わらなくても、円換算評価額は下落
- 例: 1ドル=150円 → 130円なら約13%のマイナス効果
長期投資前提なら為替変動は平準化される傾向がありますが、短期的な変動には注意が必要です。
(4) 非課税メリットの計算例
新NISAで米国株を保有した場合の非課税メリット:
前提条件:
- 成長投資枠で240万円の米国株購入
- 年間配当利回り: 2%(年4.8万円の配当)
- 20年保有、株価2倍に成長(評価額480万円)
課税口座の場合:
- 配当課税: 年4.8万円 × 約30% = 年1.44万円の課税
- 20年間で約28.8万円の課税
- 売却益: 240万円 × 20.315% = 約48.8万円の課税
- 合計約77.6万円の課税
NISA口座の場合:
- 配当課税: 米国10%のみ(年0.48万円、20年間で9.6万円)
- 売却益: 非課税
- 合計9.6万円の課税(約68万円の節税効果)
※簡易計算例です。実際の税額は個別の状況により異なります。
6. まとめ:新NISAで米国株投資を始めるべき人
新NISAでは、成長投資枠で米国個別株・ETFを年240万円まで、つみたて投資枠で米国株投資信託を年120万円まで購入できます。NISA口座でも米国での配当課税10%は免除されませんが、日本の20.315%は非課税のため、長期的には大きな節税効果があります。
新NISAで米国株投資が向いている人:
- 米国経済の長期成長を期待している
- 非課税メリットを最大限活用したい
- 為替リスクを理解し、長期保有できる
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券などで口座を開設済み・検討中
次のアクション:
- 証券会社のNISA口座を開設する(未開設の場合)
- 成長投資枠で個別株、つみたて投資枠で投資信託を組み合わせる
- 為替手数料・売買手数料を比較して証券会社を選ぶ
- 長期的な資産形成計画を立てる
新NISA制度を活用して、非課税で米国株投資を始めましょう。投資判断は自己責任で行ってください。