NISA成長投資枠で米国個別株、本当にお得?
「新NISAが始まったけれど、成長投資枠で米国個別株を買っていいの?」「税金はどうなるの?」――2024年1月から始まった新NISA制度により、成長投資枠で年間240万円まで非課税で米国個別株に投資できるようになりました。
しかし、「NISA口座なら完全に税金がゼロ」と誤解されている方も多いのが実情です。実は、米国株の配当には米国で10%の源泉税が課税され、NISA口座でもこの税金は免除されません。
この記事では、新NISA成長投資枠で米国個別株を購入する具体的な方法、税制メリットと注意点、証券会社の選び方まで、初心者にも分かりやすく解説します。
この記事のポイント:
- 成長投資枠は年間240万円・生涯1200万円まで非課税投資可能
- 日本の税金(20.315%)は非課税、米国源泉税10%は課税
- 主要米国株(S&P500構成銘柄等)は成長投資枠の対象
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券が主要プレイヤー
- 為替リスクはあるが、長期保有で平準化される傾向
1. 新NISA成長投資枠とは:米国個別株も非課税対象
(1) 成長投資枠の基本:年間240万円・生涯1200万円
新NISA制度には2つの投資枠があります:
投資枠 | 年間上限 | 生涯上限 | 対象商品 |
---|---|---|---|
つみたて投資枠 | 120万円 | 1800万円(全体) | 金融庁指定の投資信託 |
成長投資枠 | 240万円 | 1200万円 | 上場株式・投資信託・ETF |
成長投資枠では、日本株だけでなく米国株などの外国株も購入できます。
(2) 対象商品:上場株式・投資信託・ETF
成長投資枠の対象商品は以下の通りです:
- 上場株式(日本株・米国株・その他外国株)
- 投資信託(公募株式投資信託)
- ETF(上場投資信託)
ただし、整理銘柄・監理銘柄・一部の高レバレッジ型ETNなどは除外されます。証券会社の銘柄検索で「NISA対象」を確認してください。
(3) 非課税保有期間:無期限
旧NISA(一般NISA)では非課税保有期間が5年でしたが、新NISAでは無期限になりました。長期投資に適した制度設計と言えます。
(4) 米国株も対象:主要上場銘柄は購入可能
S&P500構成銘柄など、主要な米国上場株式は成長投資枠の対象です。例えば、米国の大手テクノロジー企業や生活必需品企業の株式をNISA口座で購入できます。
2. 成長投資枠で米国個別株を買うメリット
(1) 配当金が非課税(日本の税金20.315%が免除)
NISA口座で米国株を保有すると、配当金にかかる**日本の税金(20.315%)**が非課税になります。
例えば、配当金100ドルを受け取る場合:
口座種別 | 米国源泉税 | 日本の税金 | 手取り |
---|---|---|---|
特定口座 | 10ドル | 約18ドル | 約72ドル |
NISA口座 | 10ドル | 0ドル | 90ドル |
NISA口座の方が約18ドル多く手取りが増えます。
(2) 譲渡益が非課税(売却益も非課税)
株式を売却して利益が出た場合、通常は20.315%の税金がかかりますが、NISA口座なら譲渡益も非課税です。
例えば、100万円で購入した株が200万円になり売却した場合:
- 特定口座: 利益100万円 × 20.315% = 約20万円の税金
- NISA口座: 税金0円
(3) 長期保有に適した制度設計
非課税保有期間が無期限のため、数十年にわたって保有し続けることができます。長期的な資産形成に向いています。
(4) つみたて投資枠との併用で年間360万円投資可能
つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用すれば、年間合計360万円まで非課税で投資できます。
3. 米国個別株の買い方:証券会社での購入手順
(1) NISA口座の開設(成長投資枠は自動設定)
新NISA口座を開設すると、つみたて投資枠と成長投資枠の両方が自動的に設定されます。開設手順:
- 証券会社公式サイトからNISA口座開設申込
- 本人確認書類(マイナンバーカード等)提出
- 税務署の審査(約1〜2週間)
- 口座開設完了
(2) 米国株取引口座の申し込み
NISA口座とは別に、米国株取引サービスの申し込みが必要な証券会社もあります。SBI証券・楽天証券・マネックス証券では、NISA口座開設時に米国株取引も同時に申し込めます。
(3) 円をドルに両替(為替手数料に注意)
米国株を購入する際は、円をドルに両替する必要があります。為替手数料は証券会社により異なります:
- SBI証券: 住信SBIネット銀行経由で1ドルあたり4銭
- 楽天証券: 1ドルあたり25銭(通常)
- マネックス証券: 買付時0銭キャンペーン(期間限定の場合あり)
(4) 銘柄検索と注文(成長投資枠対象か確認)
証券会社のサイトで銘柄を検索し、「NISA成長投資枠対象」であることを確認してから注文します。注文方法は日本株と同様、成行注文・指値注文が可能です。
4. 税制メリットと注意点:米国源泉税10%は課税される
(1) 日本の税金(20.315%)は非課税
NISA口座で米国株を保有すると、配当金・譲渡益にかかる日本の税金(所得税15.315% + 住民税5%)が非課税になります。
(2) 米国源泉税10%は課税される(完全非課税ではない)
ただし、米国株の配当金には米国で10%の源泉税が自動的に徴収されます。これはNISA口座でも免除されません。
完全に非課税になるのは日本株のみです。米国株はNISA口座でも「米国10%のみ課税」となります。
(3) 外国税額控除は適用不可(NISA口座の場合)
特定口座なら、米国で課税された10%を日本の所得税から差し引く「外国税額控除」を確定申告で受けられますが、NISA口座では外国税額控除は適用できません。
これは、NISA口座が日本で非課税のため、控除する所得税がないためです。
(4) 特定口座との税制比較:NISA口座の優位性
それでも、NISA口座の方が税制上有利です:
配当100ドルの場合 | 特定口座 | NISA口座 |
---|---|---|
米国源泉税10% | -10ドル | -10ドル |
日本の税金20.315% | -約18ドル | 0ドル |
外国税額控除 | +約10ドル | 適用不可 |
手取り | 約82ドル | 約90ドル |
NISA口座の方が約8ドル(約10%)多く手取りが増えます。
5. 証券会社比較:SBI・楽天・マネックスの違い
(1) 取扱銘柄数:SBI・楽天が充実
証券会社 | 米国株取扱数 | NISA対象 |
---|---|---|
SBI証券 | 約5,600銘柄 | 主要銘柄は対象 |
楽天証券 | 約4,700銘柄 | 主要銘柄は対象 |
マネックス証券 | 約4,500銘柄 | 主要銘柄は対象 |
(2) 手数料:NISA口座での米国株手数料無料化の有無
2024年以降、一部証券会社でNISA口座の米国株取引手数料が無料化されています。最新情報は各社公式サイトをご確認ください。
(3) 為替手数料:証券会社ごとの違い
証券会社 | 為替手数料(1ドルあたり) |
---|---|
SBI証券 | 4銭(住信SBI経由) |
楽天証券 | 25銭 |
マネックス証券 | 0銭(キャンペーン) |
長期投資では為替手数料が積み重なるため、低コストの証券会社を選ぶことが重要です。
(4) 取引ツール・情報提供の充実度
- SBI証券: 米国株スクリーナー、決算情報が充実
- 楽天証券: iSPEEDアプリで米国株取引可能
- マネックス証券: 米国株専門情報「TradeStation」提供
6. まとめ:成長投資枠を活用した米国株長期投資
新NISA成長投資枠を活用すれば、米国個別株への投資で日本の税金(20.315%)を非課税にできます。米国源泉税10%は課税されますが、それでも特定口座より税制上有利です。
次のアクション:
- NISA口座を開設し、成長投資枠を有効活用する
- 証券会社の為替手数料・取扱銘柄数を比較する
- 主要米国株(S&P500構成銘柄等)からNISA対象銘柄を選定する
- 長期保有を前提に、複数年にわたって成長投資枠を活用する
NISA制度は長期的な資産形成を支援する制度です。短期売買ではなく、長期保有を前提に活用することで税制メリットを最大化できます。投資判断は自己責任で行い、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
※2025年10月時点の情報です。税制・手数料は変更される可能性がありますので、最新情報は金融庁および各証券会社の公式サイトをご確認ください。