NISA個別株の選び方と銘柄選定基準|成長投資枠活用法

公開日: 2025/10/20

NISA個別株を始めたいけれど、選び方がわからず困っていませんか?

2024年から新NISA制度がスタートし、成長投資枠で年間240万円まで個別株に投資できるようになりました。配当金・売却益が無期限で非課税となるため、個別株投資との相性は非常に良いとされています。

しかし、「どの個別株を選べばいいのか」「日本株と米国株のどちらがいいのか」「リスク管理はどうすればいいのか」といった疑問を持つ投資家は少なくありません。

この記事では、NISA成長投資枠での個別株投資の基礎知識、銘柄選定基準、日本株・米国株の比較、そして注意点について詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • NISA成長投資枠では年間240万円まで個別株投資が可能(非課税保有期間は無期限)
  • 日本株の配当は完全非課税、米国株は米国で10%課税(日本では非課税)
  • 個別株の選び方は配当利回り・財務健全性・成長性を基準にする
  • NISA口座では損益通算ができないため、慎重な銘柄選定が必要
  • 初心者は投資信託との併用でリスクを管理することが推奨される

NISA個別株投資の基本

NISA個別株投資とは、新NISA制度の成長投資枠を使って個別企業の株式に投資することです。従来のNISAでは非課税保有期間が5年間でしたが、新NISAでは無期限となり、長期的な資産形成がより効率的に行えるようになりました。

NISA個別株投資のメリット:

  • 配当金が非課税: 通常20.315%課税される配当金が非課税に(日本株の場合)
  • 売却益が非課税: 株式売却時の利益が非課税
  • 株主優待を受け取れる: 日本株の株主優待はNISA口座でも受け取り可能
  • 長期保有が有利: 非課税保有期間が無期限のため、長期保有するほど節税効果が大きい

一方で、個別株投資には企業固有リスク(業績悪化、倒産等)があり、投資信託と比較してリスクが高い点も理解しておく必要があります。

(出典: 金融庁「新しいNISA制度」https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html)

NISA成長投資枠の制度概要

(1) 年間投資上限240万円と生涯投資枠1,800万円

NISA成長投資枠の投資上限は以下の通りです。

項目 金額
年間投資上限 240万円
生涯投資枠(全体) 1,800万円
生涯投資枠(成長投資枠のみ) 1,200万円
つみたて投資枠(年間) 120万円

つみたて投資枠と併用すれば、年間最大360万円まで非課税投資が可能です。ただし、生涯投資枠の1,800万円のうち、成長投資枠で使えるのは最大1,200万円までとなっています。

(2) つみたて投資枠との違い

NISA成長投資枠とつみたて投資枠の主な違いは以下の通りです。

比較項目 成長投資枠 つみたて投資枠
年間投資上限 240万円 120万円
購入方法 一括・積立の両方可 積立購入のみ
対象商品 個別株・ETF・投資信託 金融庁指定の投資信託のみ

成長投資枠では一括購入が可能なため、タイミングを見て個別株を購入したり、高配当ETFに投資したりすることができます。

(3) 非課税保有期間の無期限化

新NISAの最大の特徴は、非課税保有期間が無期限になったことです。従来のNISAでは5年間、つみたてNISAでは20年間の期限がありましたが、新NISAでは期限がありません。

無期限化のメリット:

  • 長期保有を前提とした投資戦略が立てやすい
  • 配当金を再投資し続けることで複利効果が最大化される
  • ロールオーバー(非課税期間延長手続き)が不要

これにより、高配当株や連続増配株を長期保有する戦略がより有効になりました。

個別株の選び方と銘柄選定基準

(1) 配当利回りと配当継続性

配当金を重視する場合、配当利回りだけでなく配当継続性も確認しましょう。

配当利回り:

  • 計算式: 年間配当金 ÷ 株価
  • 日本株の目安: 3〜5%が高配当
  • 米国株の目安: 2〜4%が標準的

配当性向:

  • 計算式: 配当金 ÷ 純利益
  • 目安: 30〜60%が持続可能、80%以上は減配リスクあり

連続増配実績:

  • 過去5〜10年の配当推移を確認
  • 増配を続ける企業は配当政策が安定している傾向

注意点: 配当利回りが高すぎる(7%以上)銘柄は、業績悪化による株価下落の可能性があるため、財務状況を慎重に確認する必要があります。

(2) 財務健全性(自己資本比率・営業利益率)

個別株を選ぶ際は、企業の財務健全性を確認することが重要です。

確認すべき財務指標:

自己資本比率:

  • 計算式: 自己資本 ÷ 総資産
  • 目安: 40%以上が健全、60%以上が優良
  • 自己資本比率が高いほど倒産リスクが低い

営業利益率:

  • 計算式: 営業利益 ÷ 売上高
  • 目安: 10%以上が優良(業種により異なる)
  • 利益率が高いほど収益性が高い

ROE(自己資本利益率):

  • 計算式: 純利益 ÷ 自己資本
  • 目安: 10%以上が優良、15%以上が高水準
  • 自己資本を効率的に利益に変えているかを示す

これらの指標は、企業の決算短信や有価証券報告書で確認できます。また、SBI証券・楽天証券などのスクリーニング機能を使えば、条件に合う銘柄を簡単に絞り込めます。

(3) 成長性の評価基準

長期的なリターンを狙うなら、企業の成長性も重要です。

確認すべき成長性指標:

売上成長率:

  • 過去3〜5年の売上高の年平均成長率
  • 目安: 年率5〜10%以上の成長が望ましい

EPS成長率:

  • 1株当たり純利益の成長率
  • 成長株の目安: 年率10〜20%以上

業界トレンド:

  • 成長業界(AI、クラウド、再生エネルギー等)に属する企業は成長余地が大きい
  • 衰退業界(紙媒体、石炭火力等)は長期的に成長が期待しにくい

日本株・米国株の比較と活用法

(1) 日本株のメリット(完全非課税配当・株主優待)

日本株の最大の特徴は、NISA口座での配当金が完全非課税になることと、株主優待制度です。

日本株のメリット:

  • 完全非課税: 配当金に対する税金が完全にゼロ
  • 株主優待: 企業が株主に自社製品や割引券等を提供(NISA口座でも受け取り可能)
  • 為替リスクなし: 円建て資産のため、為替変動の影響を受けない
  • 情報収集が容易: 日本語で決算情報や企業IRが確認できる

日本株の高配当銘柄の例(あくまで例示、推奨ではありません):

  • KDDI、三菱商事、三菱UFJフィナンシャル・グループ等

ただし、日本株は成長性で米国株に劣る傾向があります。日本経済の成長率が低いため、株価の大きな上昇は期待しにくいという側面があります。

(2) 米国株のメリット(高成長・グローバル企業)

米国株は成長性の高さとグローバル企業への投資機会が魅力です。

米国株のメリット:

  • 1株から購入可能: Apple、Microsoft、Tesla等を1株から購入できる
  • 高成長企業が多い: GAFAMなどのテクノロジー企業は高い成長率
  • 連続増配企業が多い: コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン等は60年以上連続増配
  • グローバル分散: 世界中で事業展開する企業に投資できる

米国株の注意点:

  • 為替リスクあり(円高時は評価額減少)
  • 米国株の配当は米国で10%課税(後述)
  • 為替手数料がかかる

(3) 配当課税の違い(米国株は10%課税)

米国株の配当金には、NISA口座でも米国で10%の源泉徴収があります。

税金の種類 日本株(NISA) 米国株(NISA)
日本での課税 0%(非課税) 0%(非課税)
米国での源泉徴収 - 10%
合計税負担 0% 10%

重要な注意点:

  • NISA口座でも米国株の配当金は米国で10%課税される
  • 日本での20.315%は非課税となるが、米国での10%は避けられない
  • 外国税額控除もNISA口座では適用されない

それでも、日本での20.315%が非課税になるメリットは大きいため、米国株をNISA口座で保有する意義は十分にあります。

NISA個別株投資の注意点とリスク

(1) 損益通算ができない仕組み

NISA口座での投資には、税制上の注意点があります。

損益通算ができない:

  • NISA口座で損失が出ても、他の課税口座(特定口座・一般口座)の利益と相殺できません
  • 例: NISA口座で50万円の損失、課税口座で100万円の利益 → 課税口座の100万円に対して約20万円の税金がかかる

繰越控除ができない:

  • NISA口座での損失は、翌年以降に繰り越して利益と相殺することもできません

このため、NISA口座では長期的に成長が期待できる安定銘柄を選ぶことが推奨されます。

(2) 企業固有リスクと分散投資

個別株投資の最大のリスクは、企業固有リスクです。

企業固有リスクの例:

  • 業績悪化、赤字転落、減配・無配
  • 不祥事、会計不正、経営陣の問題
  • 競争激化、代替製品の登場
  • 規制変更、税制変更

リスク管理のポイント:

  • 最低5〜10銘柄に分散投資(1銘柄の比率は全体の10〜20%以内)
  • 異なる業種・セクターに分散
  • 日本株・米国株の両方に投資し、地域も分散

(3) 為替リスク(米国株)

米国株投資では、為替変動によるリスクがあります。

為替リスクの例:

  • 購入時: 1ドル=150円で100ドルの株を購入 → 15,000円
  • 売却時: 株価変わらず100ドル、為替が1ドル=130円 → 13,000円
  • 為替差損: 2,000円(約13%減少)

為替リスクへの対策:

  • 長期保有を前提とすれば、為替変動は平準化される傾向
  • ドル建て資産を保有することで、円安時には資産価値が上昇(分散効果)

まとめ:NISA個別株投資を始める前に

NISA成長投資枠での個別株投資は、配当金・売却益が無期限で非課税になる大きなメリットがあります。日本株の配当は完全非課税、米国株は米国で10%課税されますが、それでも日本での20.315%が非課税になる恩恵は大きいと言えます。

個別株の選び方は、配当利回り、財務健全性(自己資本比率・ROE)、成長性を基準にスクリーニングすることが重要です。また、NISA口座では損益通算ができないため、慎重な銘柄選定とリスク管理が必要です。

次のアクション:

  • 証券会社でNISA口座を開設する
  • つみたて投資枠と成長投資枠の配分を決める
  • スクリーニングツールで候補銘柄をリストアップ(配当利回り3%以上、自己資本比率50%以上等)
  • 少額から分散投資を始める(5〜10銘柄に分散)
  • 定期的に決算短信をチェックし、業績動向を確認

初心者の方は、まず投資信託で分散投資を行いつつ、個別株の比率を徐々に増やしていくことをおすすめします。投資判断は自己責任で行い、不明点は証券会社や専門家に相談しましょう。

よくある質問

Q1NISA個別株の年間投資上限はいくらですか?

A1成長投資枠で年間240万円まで投資できます。つみたて投資枠(年間120万円)と合わせて年間360万円、生涯投資枠は1,800万円(成長投資枠は最大1,200万円)です。

Q2NISA個別株の配当金は完全非課税ですか?

A2日本株の配当金は完全非課税です(通常20.315%課税)。米国株の配当は日本での課税は非課税となりますが、米国で10%の源泉徴収があり、これは避けられません。

Q3NISA個別株の選び方のポイントは何ですか?

A3配当利回り3%以上、自己資本比率50%以上、連続増配実績などをスクリーニング基準にすることが推奨されます。また、企業の成長性(売上成長率、EPS成長率)も確認しましょう。

Q4NISA個別株で損失が出たら損益通算できますか?

A4できません。NISA口座での損失は、他の課税口座(特定口座・一般口座)の利益と相殺できないため、慎重な銘柄選定とリスク管理が重要です。

Q5NISA個別株は投資信託より有利ですか?

A5高配当や成長性に魅力がありますが、個別株は企業固有リスクが高く、投資信託より変動が大きくなります。初心者はまず投資信託で分散投資を行い、徐々に個別株の比率を増やすことが推奨されます。

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