配当貴族ファンドでつみたてNISAを活用したいけれど...
新NISAのつみたて投資枠で米国株に投資したい。しかも、安定した配当収入を得たい――そんな要望を持つ日本人投資家にとって、「配当貴族(Dividend Aristocrats)」という言葉は魅力的に映るでしょう。25年以上連続で増配している優良企業群に投資できるファンドは、長期的な資産形成の有力な選択肢です。
この記事では、野村アセットマネジメントが運用する「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」について、配当貴族の特徴、ファンドの運用方針、コスト、つみたてNISAでの活用法、他のファンドとの比較まで詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 配当貴族はS&P500構成銘柄のうち25年以上連続増配している企業群
- 野村の配当貴族ファンドはS&P500配当貴族指数に連動するインデックスファンド
- つみたてNISA対象可否は金融庁リストで要確認。対象なら配当金が非課税になる
- 信託報酬は年率0.5%前後で、eMAXIS Slimシリーズより高め
- 配当重視のため、S&P500連動ファンドより成長性は劣る可能性がある
配当貴族(Dividend Aristocrats)とは
(1) 25年連続増配の基準
配当貴族(Dividend Aristocrats)とは、S&P500構成銘柄のうち、25年以上連続で増配している企業を指します。この基準は極めて厳しく、リーマンショックやコロナショックなど、数々の経済危機を乗り越えて増配を続けてきた企業のみが選ばれます。
(2) S&P500配当貴族指数の構成
S&P500配当貴族指数は、25年以上連続増配という基準をクリアした企業で構成されます。2025年時点では約60銘柄程度が構成銘柄となっており、セクター分散も考慮されています。
主な構成銘柄には、生活必需品、ヘルスケア、資本財などのディフェンシブセクターが多く含まれます。ただし、構成銘柄は定期的に見直され、増配が途絶えた企業は指数から除外されます。
(3) 配当貴族投資のメリットとデメリット
メリット:
- 安定した配当収入が期待できる
- 経済危機に強い優良企業に分散投資できる
- 長期保有に適した高品質ポートフォリオ
デメリット:
- 成長性の高いテクノロジー株などは含まれにくい
- S&P500全体と比べてリターンが劣る場合がある
- 過去の増配実績が将来の増配を保証するものではない
野村インデックスファンド米国株式配当貴族の概要
(1) ファンドの運用方針
野村アセットマネジメントが運用する「野村インデックスファンド・米国株式配当貴族」は、S&P500配当貴族指数に連動することを目指すインデックスファンドです。パッシブ運用のため、アクティブファンドのような高い信託報酬はかかりません。
(2) ベンチマークと投資対象
ベンチマークはS&P500配当貴族指数(円換算ベース)です。米国株式に投資するため、為替リスクがあります。円高になると基準価額が下がる可能性がある点には注意が必要です。
(3) 主な構成銘柄
構成銘柄は約60銘柄で、セクター別では以下のような分散が一般的です:
セクター | 比率目安 |
---|---|
生活必需品 | 20-25% |
資本財 | 20-25% |
ヘルスケア | 15-20% |
一般消費財 | 10-15% |
その他 | 20-30% |
※構成銘柄・比率は定期的に見直されます。最新情報は野村アセットマネジメントの目論見書をご確認ください。
運用実績とコスト(信託報酬・手数料)
(1) 信託報酬の水準
野村インデックスファンド・米国株式配当貴族の信託報酬は年率0.5%前後です(※商品により異なる場合があります。最新情報は目論見書をご確認ください)。
これは、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の信託報酬0.09%程度と比べると高めです。コストを重視する投資家にとっては、この差は長期的に無視できない要素となります。
(2) 過去のパフォーマンス
配当貴族指数は、長期的に見るとS&P500全体と同程度か、やや下回るリターンを示すことが一般的です。配当重視のため、成長性の高いテクノロジー株(Apple、Microsoft、Amazon等)が含まれにくく、キャピタルゲイン(値上がり益)はS&P500に劣る傾向があります。
一方で、市場の下落局面では、ディフェンシブセクター中心の構成が下落耐性をもたらすことがあります。
(3) トラッキングエラー
インデックスファンドにとって、ベンチマークとの乖離(トラッキングエラー)は重要な評価指標です。野村のファンドは、運用期間や市場環境によりますが、年率0.2-0.5%程度のトラッキングエラーが想定されます。
つみたてNISAでの活用法と非課税メリット
(1) つみたてNISA対象可否の確認
重要: 野村インデックスファンド・米国株式配当貴族がつみたてNISA対象商品かどうかは、金融庁の「つみたてNISA対象商品リスト」で必ず確認してください。
つみたてNISA対象商品となるには、信託報酬が一定水準以下であること、純資産額が一定以上であることなど、金融庁の基準をクリアする必要があります。
(2) 配当金が非課税になるメリット
つみたてNISA対象商品の場合、最長20年間、配当金(分配金)と売却益が非課税になります。
通常、米国株式ファンドの配当金には以下の税金がかかります:
税金の種類 | 税率 |
---|---|
米国での源泉徴収 | 10% |
日本での課税(所得税+住民税) | 20.315% |
つみたてNISA口座なら、日本での課税20.315%が非課税になります。ただし、米国での源泉徴収10%は避けられません。
配当重視の投資戦略を取る場合、この非課税メリットは大きな魅力です。
(3) 積立設定の方法
つみたてNISAでの積立設定は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などの主要ネット証券で簡単に行えます。
積立設定の手順:
- 証券口座でつみたてNISA口座を開設
- 野村インデックスファンド・米国株式配当貴族を検索
- 積立金額(月額100円〜)と積立日を設定
- 積立開始
つみたて投資枠の年間上限は120万円(月額10万円)です。
他の米国株式ファンドとの比較
(1) eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)との比較
野村の配当貴族ファンドとeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を比較してみましょう。
項目 | 野村配当貴族 | eMAXIS Slim S&P500 |
---|---|---|
ベンチマーク | S&P500配当貴族指数 | S&P500指数 |
構成銘柄数 | 約60銘柄 | 約500銘柄 |
信託報酬 | 年率0.5%前後 | 年率0.09%程度 |
配当重視 | ○ | △ |
成長性 | △ | ○ |
(2) 配当重視 vs 成長重視の違い
配当重視の野村配当貴族ファンドは、安定した配当収入を求める投資家に向いています。一方、成長重視のeMAXIS Slim S&P500は、キャピタルゲイン(値上がり益)を重視する投資家に向いています。
配当重視が向いている人:
- 定期的な配当収入が欲しい
- 市場の下落局面でも安定した企業に投資したい
- ディフェンシブセクター中心のポートフォリオを好む
成長重視が向いている人:
- 長期的な資産成長を最優先したい
- テクノロジー株などの成長株にも投資したい
- コストを最小限に抑えたい
(3) リターンとリスクの違い
長期的なリターンは、S&P500全体の方が配当貴族指数を上回ることが一般的です。これは、S&P500にはApple、Microsoft、Amazon、Tesla、NVIDIAなどの高成長企業が含まれるためです。
一方、市場の下落局面では、配当貴族指数の方が下落耐性を示すことがあります。ディフェンシブセクター中心の構成が、リスク低減に寄与するためです。
まとめ:野村配当貴族ファンドが向いている人
野村インデックスファンド・米国株式配当貴族は、25年以上連続増配している優良企業に分散投資できるファンドです。つみたてNISA対象商品であれば、配当金の非課税メリットを享受できます。
野村配当貴族ファンドが向いている人:
- 安定した配当収入を重視する
- ディフェンシブセクター中心のポートフォリオを好む
- つみたてNISAで配当重視戦略を取りたい
- 市場の下落局面でも安定した企業に投資したい
向いていない人:
- 長期的な資産成長を最優先したい
- コストを最小限に抑えたい(eMAXIS Slimの方が低コスト)
- テクノロジー株などの成長株にも投資したい
次のアクション:
- 金融庁のつみたてNISA対象商品リストで対象可否を確認する
- 野村アセットマネジメントの目論見書で最新の信託報酬・運用実績を確認する
- 証券会社で積立設定を行う(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)
ご自身の投資目的とリスク許容度を踏まえて、最適なファンドを選びましょう。投資判断は自己責任で行ってください。
※本記事は2025年10月時点の情報に基づいています。最新情報は各金融機関の公式サイトをご確認ください。