米国株に投資したいけれど、個別株は難しそう...
米国株投資に興味があるものの、「Apple、Microsoft、Amazonなどの個別株を選ぶのは難しい」と感じている日本人投資家は少なくありません。銘柄分析に時間をかけられない、リスク分散が心配――そんな悩みを抱えながら、投資をためらっている人も多いでしょう。
この記事では、投資信託(ファンド)を使った米国株投資について詳しく解説します。インデックスファンドとアクティブファンドの違い、人気商品の比較、選び方のポイント、つみたてNISAでの購入方法まで、初心者にもわかりやすく紹介します。
この記事のポイント:
- 米国株式ファンドは個別株よりも手軽で分散効果がある
- インデックスファンドは低コストで指数に連動、長期投資に向く
- アクティブファンドは指数を上回る成果を目指すが高コスト
- 人気ファンドはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)、楽天・全米株式インデックス等
- 信託報酬は年率0.1%未満が目安(インデックスファンド)
なぜ米国株式ファンドが注目されているのか
(1) 米国株式市場の長期的な成長性
米国株式市場は、過去数十年にわたって長期的な成長を続けてきました。S&P500指数は、1980年代以降、平均年率約10%のリターンを示してきました(配当再投資込み)。
Apple、Microsoft、Amazon、Google、Teslaなど、世界をリードする企業が多数上場しており、イノベーションと成長性の高さが投資家の注目を集めています。
(2) 個別株投資よりも手軽で分散効果がある
個別株投資では、銘柄分析、財務諸表の確認、業界動向の把握など、多くの時間と知識が必要です。一方、米国株式ファンドは、プロが運用する投資信託に資金を預けるだけで、数百〜数千の企業に分散投資できます。
ファンド投資のメリット:
- 少額から投資できる(月100円〜)
- 自動積立設定で手間がかからない
- プロが運用するため銘柄選定不要
- 分散投資でリスク低減
米国株式ファンドの種類:インデックスとアクティブの違い
(1) インデックスファンド:指数に連動、低コスト
インデックスファンドは、S&P500、全米株式(CRSP USトータルマーケット)、NASDAQ100などの株価指数に連動することを目指すファンドです。
特徴:
- 信託報酬が低い(年率0.05〜0.15%程度)
- 指数と同じリターンを目指す(市場平均と同等)
- 長期的にはアクティブファンドをアウトパフォームする傾向
(2) アクティブファンド:指数を上回る成果を目指す、高コスト
アクティブファンドは、ファンドマネージャーが銘柄を選定し、指数を上回るリターンを目指します。
特徴:
- 信託報酬が高い(年率1〜2%程度)
- 指数を上回る成果を目指す(必ずしも達成できるわけではない)
- 短期的には高リターンを得る可能性がある
(3) どちらを選ぶべきか:長期投資ならインデックスが有利
多くの研究によれば、長期的にはインデックスファンドの方がアクティブファンドをアウトパフォームすることが示されています。理由は以下の通りです:
- コストの差: 信託報酬が低いほど、長期的なリターンに有利
- 市場の効率性: 米国株式市場は情報効率性が高く、プロでも市場平均を上回り続けるのは困難
- 手間がかからない: インデックスファンドは自動的に指数に連動するため、銘柄入れ替えの手間がかからない
主要な米国株式ファンドの比較(S&P500・全米株式・NASDAQ)
(1) eMAXIS Slim米国株式(S&P500):低信託報酬で人気
三菱UFJアセットマネジメントが運用する「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は、信託報酬の低さと純資産総額の大きさから、最も人気のある米国株式ファンドの1つです。
基本情報:
- ベンチマーク: S&P500指数
- 信託報酬: 年率0.09%程度(税込)
- 純資産総額: 約5兆円以上(2025年時点)
- つみたてNISA対象: ○
S&P500指数は、米国の大型株500社で構成されており、Apple、Microsoft、Amazon、Google、Teslaなどの主要企業が上位を占めています。
(2) 楽天・全米株式インデックス:全米市場をカバー
楽天投信投資顧問が運用する「楽天・全米株式インデックス・ファンド」は、米国株式市場全体(約4,000銘柄)に投資するファンドです。
基本情報:
- ベンチマーク: CRSP USトータルマーケットインデックス
- 信託報酬: 年率0.16%程度(税込)
- 純資産総額: 約1.5兆円(2025年時点)
- つみたてNISA対象: ○
S&P500と比べて、中小型株も含まれるため、米国市場全体に分散投資できます。
(3) SBI・V・S&P500:バンガードETF連動
SBIアセットマネジメントが運用する「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」は、バンガードのETF(VOO)に投資することでS&P500指数に連動します。
基本情報:
- ベンチマーク: S&P500指数
- 信託報酬: 年率0.09%程度(税込)
- 純資産総額: 約1.5兆円(2025年時点)
- つみたてNISA対象: ○
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)とほぼ同等の信託報酬で、同じくS&P500指数に連動します。
(4) フィデリティ・米国優良株ファンド:アクティブ運用の代表例
フィデリティ投信が運用する「フィデリティ・米国優良株・ファンド」は、アクティブ運用の代表例です。
基本情報:
- 運用方針: アクティブ運用(S&P500を上回る成果を目指す)
- 信託報酬: 年率1.65%程度(税込)
- 純資産総額: 約1,000億円(2025年時点)
- つみたてNISA対象: ×(信託報酬が高いため)
アクティブファンドは、ファンドマネージャーの手腕により、短期的には高リターンを得る可能性がありますが、長期的にはインデックスファンドに劣る傾向があります。
(5) 信託報酬・純資産総額・ベンチマーク比較表
ファンド名 | ベンチマーク | 信託報酬 | 純資産総額 | つみたてNISA |
---|---|---|---|---|
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) | S&P500 | 0.09% | 約5兆円 | ○ |
楽天・全米株式インデックス | 全米株式 | 0.16% | 約1.5兆円 | ○ |
SBI・V・S&P500 | S&P500 | 0.09% | 約1.5兆円 | ○ |
フィデリティ・米国優良株 | なし(アクティブ) | 1.65% | 約1,000億円 | × |
※数値は2025年時点の目安です。最新情報は各運用会社の公式サイトをご確認ください。
ファンド選びの5つのポイント
(1) 信託報酬:年率0.1%未満が目安(インデックス)
信託報酬は、ファンドの運用・管理にかかる年間コストです。長期投資では、信託報酬の差が大きなリターン差を生みます。
例:30年間積立投資の場合
- 信託報酬0.09%のファンド: 約1,800万円
- 信託報酬1.0%のファンド: 約1,500万円
- 差額: 約300万円
インデックスファンドなら年率0.1%未満、アクティブファンドでも1%以下を目安にしましょう。
(2) 純資産総額:100億円以上が安心
純資産総額が小さいファンドは、運用コストが割高になったり、繰上償還(ファンドの終了)のリスクがあります。純資産総額100億円以上のファンドを選ぶと安心です。
(3) ベンチマーク:S&P500 vs 全米株式の違い
S&P500指数:
- 米国の大型株500社で構成
- Apple、Microsoft、Amazon等が上位
- 市場全体の約80%をカバー
全米株式(CRSP USトータルマーケット):
- 約4,000銘柄で構成(大型・中型・小型株すべて)
- 市場全体の約100%をカバー
- 長期リターンはS&P500とほぼ同じ
どちらを選んでも長期的なリターンはほぼ同じです。好みで選んでOKです。
(4) つみたてNISA対象可否
つみたてNISA対象ファンドは、金融庁が定める基準(信託報酬の上限、純資産総額、運用期間等)をクリアしています。
対象ファンドなら、売却益・配当金が最長20年間非課税になります。金融庁の「つみたてNISA対象商品リスト」で確認してください。
(5) 為替ヘッジの有無(通常は為替ヘッジなし推奨)
為替ヘッジありのファンドは、円高リスクを回避できますが、ヘッジコストがかかります(年率1〜2%程度)。
長期投資なら、為替ヘッジなしのファンドを推奨します。ドル建て資産を持つことは、資産の分散という観点でも有効です。
つみたてNISAとiDeCoでの購入方法
(1) つみたてNISA対象ファンドの確認方法(金融庁リスト)
つみたてNISA対象ファンドは、金融庁の公式サイトで確認できます。
確認手順:
- 金融庁の公式サイトにアクセス
- 「つみたてNISA対象商品リスト」を検索
- 米国株式ファンドを絞り込み
(2) 証券会社での積立設定手順(SBI・楽天)
SBI証券・楽天証券での積立設定:
- 証券口座でつみたてNISA口座を開設
- ファンドを検索(例:「eMAXIS Slim米国株式」)
- 積立金額(月額100円〜10万円)と積立日を設定
- 積立開始
つみたて投資枠の年間上限は120万円(月額10万円)です。
(3) iDeCoでの米国株式ファンド選択
iDeCo(個人型確定拠出年金)でも、米国株式ファンドを選択できます。
iDeCoのメリット:
- 掛金が全額所得控除(年間最大81.6万円)
- 運用益が非課税
- 60歳まで引き出せない(強制的な長期投資)
iDeCoの取扱商品は証券会社により異なります。SBI証券、楽天証券、マネックス証券などで確認してください。
まとめ:自分に合ったファンドを見つけるために
米国株式ファンドは、個別株投資よりも手軽で分散効果があり、長期的な資産形成に適しています。
ファンド選びのまとめ:
- 長期投資ならインデックスファンド(信託報酬0.1%未満、つみたてNISA対象)
- 人気ファンド: eMAXIS Slim米国株式(S&P500)、楽天・全米株式インデックス、SBI・V・S&P500
- ベンチマーク: S&P500と全米株式のリターンはほぼ同じ。好みで選んでOK
- 為替ヘッジ: 長期投資なら為替ヘッジなし推奨
次のアクション:
- つみたてNISA口座を開設する
- 金融庁リストでつみたてNISA対象ファンドを確認する
- 少額から積立投資を始める
過去のパフォーマンスは将来の成果を保証しません。ご自身のリスク許容度と投資目的を踏まえて、最適なファンドを選びましょう。投資判断は自己責任で行ってください。
※本記事は2025年10月時点の情報に基づいています。最新情報は各運用会社・証券会社の公式サイトをご確認ください。