米国株式インデックスファンドとは|S&P500・VTI選び方

公開日: 2025/10/20

米国株式インデックスファンドとは:初心者向け長期投資の定番

「米国株投資を始めたいけれど、どの銘柄を買えば良いか分からない」「個別株はリスクが高そうで不安」と感じている方は多いのではないでしょうか。

そんな投資初心者に最適なのが、米国株式インデックスファンドです。S&P500や全米株式指数に連動する運用を行い、低コスト・分散効果・長期リターンの3つを兼ね備えています。eMAXIS Slim米国株式(S&P500)や楽天・全米株式インデックスファンド(楽天VTI)は、つみたてNISAの定番商品として多くの投資家に選ばれています。

この記事では、米国株式インデックスファンドの仕組み・選び方を初心者向けに解説します。

この記事のポイント:

  • 米国株式インデックスファンドは、株価指数に連動するパッシブ運用の投資信託
  • S&P500は大型株500社、全米株式(VTI)は約4000社に分散投資
  • 信託報酬が低いほど長期リターンが大きくなる(eMAXIS Slim 0.09372%等)
  • つみたてNISAで月10万円までドルコスト平均法の積立が可能
  • 市場全体の下落リスク・為替リスクはあるが、長期投資で軽減される

インデックスファンドの仕組み:パッシブ運用とアクティブ運用の違い

(1) パッシブ運用:株価指数に連動する運用(低コスト)

パッシブ運用とは、株価指数(インデックス)と同じ動きを目指す運用手法です。ファンドマネージャーが銘柄を積極的に選定するのではなく、指数の構成銘柄をそのまま保有します。

パッシブ運用の特徴:

  • 目標:株価指数(S&P500、全米株式等)に連動すること
  • 銘柄選定:指数の構成銘柄をそのまま保有(または最適化サンプリング)
  • 売買頻度:低い(指数の構成変更時のみ)
  • コスト:低い(信託報酬0.1%前後)

例えば、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は、S&P500指数の構成銘柄500社をそのまま保有し、指数と同じリターンを目指します。

(2) アクティブ運用:市場平均を上回る運用を目指す(高コスト)

アクティブ運用は、ファンドマネージャーが独自の分析で銘柄を選定し、市場平均を上回るリターンを目指す運用手法です。

アクティブ運用の特徴:

  • 目標:市場平均(S&P500等)を上回るリターン
  • 銘柄選定:ファンドマネージャーの独自分析
  • 売買頻度:高い(銘柄の入れ替えが頻繁)
  • コスト:高い(信託報酬1~2%)

しかし、米国の調査では、アクティブファンドの約80%が10年後にはS&P500を下回るというデータがあります(S&P Dow Jones Indices調査)。高い信託報酬がリターンを圧迫するためです。

(3) インデックスファンドのメリット:低コスト・分散効果・長期リターン

インデックスファンドの3つのメリット:

メリット 詳細
低コスト 信託報酬0.1%前後(アクティブファンドは1~2%)
分散効果 S&P500なら500社、全米株式なら約4000社に分散投資
長期リターン 過去30年のS&P500年率リターンは約10%(配当再投資含む)

低コストで分散投資でき、長期的には市場平均のリターンを得られるため、初心者から経験者まで幅広く支持されています。

S&P500と全米株式(VTI)の違い:大型株500社 vs 全市場約4000社

(1) S&P500:米国大型株500社(時価総額加重平均)

S&P500指数は、米国の主要500社で構成される株価指数です。時価総額加重平均方式で算出され、米国株式市場の時価総額の約80%をカバーします。

S&P500の特徴:

  • 構成銘柄:米国大型株500社(Apple、Microsoft、Amazon等)
  • カバー率:米国株式市場の時価総額約80%
  • 指数算出:時価総額加重平均(大型株の影響が大きい)

主な構成銘柄(上位10社、2025年時点):

  1. Apple(AAPL):約7%
  2. Microsoft(MSFT):約6%
  3. Amazon(AMZN):約3%
  4. NVIDIA(NVDA):約3%
  5. Alphabet(GOOGL):約2%

大型株が中心のため、安定性が高く、米国経済全体の成長を享受できます。

(2) 全米株式(VTI):米国株式市場全体約4000社(中小型株含む)

**全米株式指数(CRSP USトータル・マーケット・インデックス)**は、米国株式市場全体をカバーする指数です。大型株だけでなく、中型株・小型株も含む約4000社で構成されます。

全米株式(VTI)の特徴:

  • 構成銘柄:米国株式市場全体約4000社(大型株・中型株・小型株)
  • カバー率:米国株式市場の時価総額約100%
  • 指数算出:時価総額加重平均

S&P500との違い:

項目 S&P500 全米株式(VTI)
構成銘柄数 約500社 約4000社
カバー率 約80% 約100%
中小型株 含まない 含む

中小型株を含むため、より幅広い分散効果が得られますが、実際のリターンはS&P500とほぼ同等です(大型株の比率が高いため)。

(3) 過去20年のリターン比較:ほぼ同等

過去20年の年率リターン(2005-2024年、配当再投資含む):

  • S&P500:約10~11%
  • 全米株式(VTI):約10~11%

中小型株の比率が約20%と小さいため、実際のリターンはほぼ同じです。分散重視ならVTI、シンプルさ重視ならS&P500を選ぶと良いでしょう。

主要ファンド比較:eMAXIS Slim・楽天VTI・SBI V全米株式

(1) eMAXIS Slim米国株式(S&P500):信託報酬0.09372%

**eMAXIS Slim米国株式(S&P500)**は、三菱UFJアセットマネジメントが運用する、つみたてNISAの人気No.1ファンドです。

基本情報:

  • ベンチマーク:S&P500指数
  • 信託報酬:年0.09372%以内(業界最低水準)
  • 純資産総額:約5兆円(2025年時点)
  • つみたてNISA対応:対応

特徴:

  • 業界最低水準の信託報酬(他社が引き下げると追随)
  • 純資産総額が大きく、安定運用
  • SBI証券・楽天証券・マネックス証券等で購入可能

(2) 楽天・全米株式インデックスファンド(楽天VTI):信託報酬0.162%

**楽天・全米株式インデックスファンド(楽天VTI)**は、楽天投信投資顧問が運用する、全米株式指数に連動するファンドです。

基本情報:

  • ベンチマーク:CRSP USトータル・マーケット・インデックス(全米株式)
  • 信託報酬:年0.162%程度
  • 純資産総額:約1兆円(2025年時点)
  • つみたてNISA対応:対応

特徴:

  • 中小型株含む約4000社に分散投資
  • 楽天証券での購入で楽天ポイントが貯まる(ポイント還元で実質コスト削減)
  • 米国ETF「VTI」を通じて運用(為替ヘッジなし)

(3) SBI・V・全米株式インデックスファンド:信託報酬0.0938%

SBI・V・全米株式インデックスファンドは、SBIアセットマネジメントが運用する、全米株式指数に連動するファンドです。

基本情報:

  • ベンチマーク:CRSP USトータル・マーケット・インデックス(全米株式)
  • 信託報酬:年0.0938%程度(業界最低水準)
  • 純資産総額:約2,000億円(2025年時点)
  • つみたてNISA対応:対応

特徴:

  • 楽天VTIより信託報酬が低い(0.0938% vs 0.162%)
  • SBI証券での購入でVポイントが貯まる
  • 米国ETF「VTI」を通じて運用

主要ファンド比較表:

ファンド名 ベンチマーク 信託報酬(年率) 純資産総額
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) S&P500 0.09372%以内 約5兆円
楽天VTI 全米株式 0.162%程度 約1兆円
SBI・V・全米株式 全米株式 0.0938%程度 約2,000億円

信託報酬と長期リターンの重要性

(1) 信託報酬0.1%の差が20年後に大きな差になる(試算例)

信託報酬のわずかな差は、長期投資では大きなリターン差になります。

試算条件:

  • 毎月3万円を20年間積立投資
  • 年率リターン7%(信託報酬控除前)
  • 信託報酬0.1% vs 0.5%

20年後の評価額:

  • 信託報酬0.1%:約1,540万円
  • 信託報酬0.5%:約1,480万円
  • 差額:約60万円

わずか0.4%の信託報酬差で、20年後に約60万円の差が生じます。長期投資では、信託報酬の低さが極めて重要です。

(2) トラッキングエラー:指数との乖離度(低いほど優秀)

トラッキングエラーとは、ファンドのリターンが指数からどれだけ乖離したかを示す指標です。インデックスファンドの場合、年率0.3%以下が優秀とされています。

主要ファンドのトラッキングエラーは、年率0.1~0.2%程度で、いずれも優秀な水準です(運用報告書で確認可能)。

(3) 純資産総額:大きいほど安定運用

純資産総額が大きいファンドは、以下のメリットがあります:

  • スケールメリット:運用コストを多くの投資家で分散し、実質コストを抑えられる
  • 流動性:大量の資金流入・流出にも対応しやすい
  • 償還リスク低下:純資産総額が小さいと、運用会社が償還(運用終了)を決定する可能性がある

eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は約5兆円の純資産総額を誇り、国内最大級のインデックスファンドです。

まとめ:新NISA活用でドルコスト平均法の積立投資

米国株式インデックスファンドは、低コスト・分散効果・長期リターンを兼ね備え、投資初心者に最適な商品です。S&P500と全米株式(VTI)のリターンはほぼ同等なので、信託報酬の低さ・純資産総額・ポイント還元などを比較して選びましょう。

次のアクション:

  • 新NISAのつみたて投資枠(年120万円)を活用する
  • 信託報酬の低いeMAXIS Slim米国株式(S&P500)またはSBI・V・全米株式を選ぶ
  • 毎月1~10万円をドルコスト平均法で積立投資
  • 20~30年の長期投資で、年率7~10%のリターンを目指す

市場の上下に一喜一憂せず、長期的な視点で積立を継続することが、資産形成の成功につながります。今日から米国株式インデックスファンドでの積立投資を始めましょう。

よくある質問

Q1米国株式インデックスファンドは初心者向け?

A1初心者に最適です。低コスト(信託報酬0.1%前後)、分散効果(S&P500なら500社、VTIなら約4000社)、銘柄選定不要で長期投資に適しています。つみたてNISAの定番商品として多くの投資家に選ばれています。

Q2S&P500と全米株式(VTI)どちらを選ぶべき?

A2過去20年のリターンはほぼ同等(年率10~11%)です。S&P500は大型株500社、VTIは中小型株含む約4000社に分散投資します。分散重視ならVTI、シンプルさ重視ならS&P500を選ぶと良いでしょう。

Q3おすすめのインデックスファンドは?

A3信託報酬が低いeMAXIS Slim米国株式(S&P500、0.09372%以内)、SBI・V・全米株式(0.0938%程度)を推奨します。楽天VTI(0.162%程度)も、楽天ポイント還元で実質コストを削減できます。いずれもつみたてNISA対応です。

Q4毎月いくら積み立てるべき?

A4新NISAのつみたて投資枠は年120万円(月10万円)までです。無理のない範囲で月1~3万円から始め、収入増加に応じて増額するのが一般的です。ドルコスト平均法で、市場の上下を気にせず長期積立を継続しましょう。

Q5米国株ETFとインデックスファンドの違いは?

A5ETFは上場投資信託で、株式のようにリアルタイム取引が可能です。インデックスファンドは非上場で、1日1回の基準価額で取引され、自動積立設定が可能です。初心者には、自動積立が簡単なインデックスファンドが手軽でおすすめです。

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