米国株インデックスファンド チャート比較|リターン徹底分析

公開日: 2025/10/19

米国株式インデックスファンドのチャートを見る理由

「S&P500、全米株式、NASDAQ100…どれに投資すればいいの?」

米国株インデックスファンドへの長期積立投資を検討する際、多くの投資家が過去のパフォーマンスを比較したいと考えます。「どのインデックスが最も成長してきたのか」「リスクはどのくらい違うのか」といった疑問に答えるため、チャート分析は欠かせません。

この記事では、主要な米国株インデックス(S&P500、全米株式、NASDAQ100)の長期チャートを比較し、リスク・リターン指標を用いて各インデックスの特性を詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • S&P500は大型株500社、全米株式は約4,000社、NASDAQ100はハイテク大型株100社をカバー
  • 過去10年のリターンはNASDAQ100が最高だが、ボラティリティも高い
  • S&P500と全米株式の長期パフォーマンスは近似、分散効果で全米株式がやや有利
  • 為替リスクあり、円建てリターンはドル建てチャートと異なる
  • 信託報酬の差は長期で大きな影響、年0.1%でも20年で数十万円の差

主要な米国株インデックスの種類と特徴

(1) S&P500(大型株500社)

構成:

  • 米国の大型株500社で構成
  • 時価総額加重平均(企業規模が大きいほど指数への影響大)
  • セクター分散:情報技術28%、ヘルスケア13%、金融11%など(2025年時点)

特徴:

  • 安定性: 大型株中心のため価格変動が比較的穏やか
  • 流動性: 世界中の機関投資家が参照する代表的指数
  • 歴史: 1957年から算出、長期データが豊富

代表的な連動商品:

  • バンガード S&P500 ETF (VOO)
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

(2) CRSP US Total Market(全米株式約4,000社)

構成:

  • 米国株式市場のほぼ全銘柄(大型・中型・小型株を含む約4,000社)
  • 時価総額加重平均
  • S&P500が市場の約80%をカバーするのに対し、全米株式は約100%をカバー

特徴:

  • 分散効果: 中小型株も含むため、より広範な分散投資が可能
  • 成長性: 小型株の成長余地を取り込める
  • リスク: S&P500とほぼ同等(大型株の比率が高いため)

代表的な連動商品:

  • バンガード・トータル・ストック・マーケットETF (VTI)
  • 楽天・全米株式インデックスファンド

(3) NASDAQ100(ハイテク大型株100社)

構成:

  • NASDAQ市場の非金融大型株100社
  • 時価総額加重平均
  • セクター分散:情報技術55%、消費者サービス20%、ヘルスケア8%など(2025年時点)

特徴:

  • 成長性: GAFAMなどハイテク大型株が中心、過去10年で高リターン
  • ボラティリティ: 価格変動が大きく、短期的には大幅な下落も
  • 集中リスク: 上位10銘柄で指数の約50%を占める

代表的な連動商品:

  • インベスコQQQ トラスト・シリーズ1 ETF (QQQ)
  • iFree NASDAQ100インデックス

S&P500・全米株式・NASDAQ100の長期チャート比較

(1) 過去10年のパフォーマンス推移

過去10年(2015年〜2025年)のトータルリターン(配当込み)を比較すると、以下のような傾向が見られます:

年平均リターン(ドル建て、概算):

インデックス 10年平均リターン 特徴
NASDAQ100 約18% 最高リターン、ハイテク好調期
S&P500 約13% 安定した成長
全米株式 約13% S&P500とほぼ同等

※過去のパフォーマンスは将来の成果を保証するものではありません。データは概算値であり、最新の公式データは各指数提供会社のウェブサイトでご確認ください。

チャートの特徴:

  • 2020年3月: コロナショックで全指数が30〜40%下落
  • 2020年〜2021年: 金融緩和・ハイテク需要でNASDAQ100が急騰
  • 2022年: 金利上昇でNASDAQ100が大きく調整(約30%下落)
  • 2023年〜2025年: AI需要でNASDAQ100が再び上昇

(2) 過去20年のトータルリターン比較

過去20年(2005年〜2025年)で見ると、リーマンショック(2008年)やドットコムバブル崩壊後の回復期を含むため、より長期的な視点が得られます:

20年累積リターン(概算):

インデックス 累積リターン 年平均リターン
NASDAQ100 約800% 約11%
S&P500 約400% 約8%
全米株式 約420% 約8.5%

※2008年のリーマンショック時、全指数が50%以上下落した時期を含む。長期投資の重要性を示すデータです。

(3) 為替を考慮した円建てリターン

日本の投資家にとって重要なのは、円建てでのリターンです。為替レートの変動により、ドル建てチャートと実質リターンは異なります。

具体例(2015年〜2025年の仮定):

  • 2015年: 1ドル=120円
  • 2025年: 1ドル=150円(円安)
  • ドル建てリターン: S&P500が100%上昇(100→200)
  • 円建てリターン: 約150%(12,000円→30,000円)

円安が進行した場合、円建てリターンはドル建てを上回ります。逆に円高になれば、ドル建てで利益が出ていても円建てでは損失になる可能性があります。

リスク・リターン指標で見る各インデックスの特性

(1) ボラティリティ(価格変動リスク)

ボラティリティは、価格変動の大きさを示す指標です。数値が高いほど、短期的な値動きが激しくなります。

年率ボラティリティ(過去10年の概算):

インデックス ボラティリティ
NASDAQ100 約22%
S&P500 約18%
全米株式 約18%

NASDAQ100はリターンが高い反面、価格変動も大きいため、短期的には大きな含み損を抱えるリスクがあります。

(2) 最大ドローダウン(最大下落率)

最大ドローダウンは、過去のピークから最安値までの下落率を示します。

過去10年の最大ドローダウン(概算):

インデックス 最大下落率 期間
NASDAQ100 約-35% 2022年(金利上昇)
S&P500 約-25% 2020年(コロナショック)
全米株式 約-26% 2020年(コロナショック)

NASDAQ100は、金利上昇局面で大きく下落する傾向があります。リスク許容度が低い投資家は、S&P500または全米株式が適しています。

(3) シャープレシオ(リスク調整後リターン)

シャープレシオは、リスク1単位あたりのリターンを示す指標です。数値が高いほど、効率的にリターンを得られていることを意味します。

シャープレシオ(過去10年の概算):

インデックス シャープレシオ
S&P500 約0.7
全米株式 約0.7
NASDAQ100 約0.8

NASDAQ100は高リターン・高リスクですが、シャープレシオで見るとリスクに見合ったリターンを得られています。ただし、過去10年はハイテク好調期だったため、今後も同様のパフォーマンスが続く保証はありません。

日本で購入できる米国株インデックスファンドの比較

(1) eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

基本情報:

  • 連動指数: S&P500
  • 信託報酬: 年率0.09372%(業界最安水準)
  • 純資産総額: 約5兆円(2025年時点)
  • NISA対応: つみたて投資枠・成長投資枠の両方で購入可能

特徴:

  • 日本で最も人気のある米国株インデックスファンド
  • 低コストで長期投資に最適
  • 楽天証券・SBI証券などで購入可能

(2) 楽天・全米株式インデックスファンド

基本情報:

  • 連動指数: CRSP US Total Market(バンガード・トータル・ストック・マーケットETFを通じて連動)
  • 信託報酬: 年率0.162%
  • 純資産総額: 約1.5兆円(2025年時点)
  • NISA対応: つみたて投資枠・成長投資枠の両方で購入可能

特徴:

  • 中小型株も含む分散投資
  • S&P500より幅広い銘柄をカバー
  • 楽天証券で楽天ポイント投資が可能

(3) iFree NASDAQ100インデックス

基本情報:

  • 連動指数: NASDAQ100
  • 信託報酬: 年率0.495%
  • 純資産総額: 約500億円(2025年時点)
  • NISA対応: 成長投資枠で購入可能(つみたて投資枠は対象外)

特徴:

  • ハイテク集中で高成長を狙える
  • 信託報酬が他の2つより高め
  • リスク許容度が高い投資家向け

信託報酬の長期的な影響:

仮に月3万円を20年間積み立てた場合、信託報酬の差は以下のような影響を与えます(年率7%のリターンを仮定):

信託報酬 20年後の資産額 差額
0.09% 約1,540万円 -
0.16% 約1,530万円 約-10万円
0.50% 約1,480万円 約-60万円

信託報酬が0.4%違うだけで、20年後には約60万円の差が生まれます。長期投資では、低コストのファンドを選ぶことが重要です。

まとめ:チャート分析から選ぶべきインデックスファンド

米国株インデックスファンドの選択は、リスク許容度と投資期間によって異なります。チャート分析と各指標を踏まえた選び方は以下の通りです。

投資家タイプ別のおすすめ:

  • 安定志向・初心者: S&P500(eMAXIS Slim 米国株式)

    • 大型株中心で価格変動が穏やか
    • 信託報酬が最安水準
    • 長期的に安定したリターンを期待
  • 分散重視: 全米株式(楽天・全米株式インデックスファンド)

    • 中小型株も含む幅広い分散
    • S&P500とリスク・リターンはほぼ同等
    • 小型株の成長余地も取り込める
  • 高リターン志向: NASDAQ100(iFree NASDAQ100インデックス)

    • 過去10年で最高リターン
    • ボラティリティが高く、短期的には大きな下落も
    • ハイテク集中リスクに注意

投資前のチェックリスト:

  • 過去のチャートは参考だが、将来の成果を保証しない
  • 為替リスクあり、円建てリターンはドル建てチャートと異なる
  • 信託報酬の差は長期で大きな影響(年0.1%でも20年で数十万円)
  • リスク許容度に合わせて、無理のない範囲で投資
  • 定期的にチャートと運用報告書を確認し、投資目的と合致しているかチェック

過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません。投資判断は自己責任で行い、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。

よくある質問

Q1S&P500と全米株式、どちらが良いですか?

A1長期的なパフォーマンスはほぼ同等です。S&P500は大型株500社、全米株式は約4,000社をカバーし、中小型株も含む分散効果があります。リスク・リターンに大きな差はないため、信託報酬が低い方を選ぶか、分散効果を重視するかで判断しましょう。

Q2NASDAQ100は他のインデックスより有利ですか?

A2過去10年では年平均約18%と最高リターンでしたが、ボラティリティ(価格変動)も約22%と高く、2022年には約35%下落しました。ハイテク集中リスクがあり、リスク許容度が高い投資家向けです。安定志向ならS&P500がおすすめです。

Q3過去のチャートで将来のパフォーマンスは予測できますか?

A3できません。過去の実績は参考にはなりますが、将来の成果を保証するものではありません。2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックのように、予測できない暴落もあります。リスク許容度に合わせて選択し、長期投資を前提にしましょう。

Q4為替リスクはチャートに反映されていますか?

A4米国の公式チャートはドル建てです。日本の投資家にとっては、為替変動の影響を受けた円建てリターンが実際の成果になります。円安が進めばドル建て以上のリターン、円高なら損失になる可能性があります。

Q5信託報酬の違いはパフォーマンスに影響しますか?

A5長期投資では大きな差になります。例えば、月3万円を20年間積み立てた場合、信託報酬が年0.09%と0.50%では約60万円の差が生まれます。低コストのファンドを選ぶことが長期的な資産形成に重要です。

関連記事