米国株オプション取引の基礎|仕組み・税金・証券会社

公開日: 2025/10/19

米国株オプション取引を始める前に知っておくべきこと

米国株の現物取引に慣れてきた投資家の中には、「オプション取引に挑戦したい」と考える方もいるでしょう。

オプション取引は、レバレッジ効果やリスクヘッジの手段として注目されていますが、「仕組みが複雑で分からない」「リスクが高そうで不安」といった声も多く聞かれます。

この記事では、米国株オプション取引の基礎知識、日本の証券会社での取引方法、リスクと税金について解説します。

この記事のポイント:

  • オプション取引は「買う権利」「売る権利」を売買するデリバティブ取引
  • コールオプション(買う権利)とプットオプション(売る権利)の2種類がある
  • 日本ではSBI証券、マネックス証券等で取引可能
  • オプション買いはプレミアム全額を失うリスク、売りは無限大の損失リスクがある
  • 税制は雑所得(総合課税)扱いで確定申告が必要

(1) オプション取引とは何か(デリバティブ取引の一種)

オプション取引とは、将来の特定日(または期間内)に、特定価格で株式を売買する権利を取引する金融商品です。

デリバティブ(金融派生商品)の一種であり、株式の現物取引とは異なる仕組みを持ちます。

オプション取引の特徴:

  • 権利の売買: 株式そのものではなく、売買する権利を取引
  • レバレッジ効果: 少額の資金で大きな金額の株式をコントロール可能
  • リスクヘッジ: 保有株の下落リスクを軽減する手段として利用可能

(2) 現物株との違い:レバレッジとリスクヘッジ

現物株:

  • 株式を購入して保有
  • 株価上昇で利益、下落で損失
  • 投資金額=株価×株数

オプション取引:

  • 権利を購入(プレミアムを支払う)
  • 少額の資金で大きな利益を狙える(レバレッジ効果)
  • リスクヘッジ(保有株の下落に備える)も可能

オプション取引は、ハイリスク・ハイリターンの商品であり、初心者には難易度が高い投資手法と言われています。

オプション取引の基本:コールとプットの仕組み

(1) コールオプション:買う権利を得る仕組み

**コールオプション(Call Option)**は、将来の特定日(満期日)に、特定価格(権利行使価格)で株式を買う権利です。

例:

  • 現在の株価:100ドル
  • 権利行使価格:105ドル
  • プレミアム:3ドル
  • 満期日:1ヶ月後

シナリオ1: 株価が120ドルに上昇

  • 105ドルで買う権利を行使→120ドルで売却→利益15ドル
  • プレミアム3ドルを差し引いた実質利益:12ドル

シナリオ2: 株価が100ドルのまま

  • 権利を行使しない(105ドルで買うより、市場で100ドルで買う方が有利)
  • プレミアム3ドルを失う

コールオプションは、株価上昇を予想する場合に購入します。

(2) プットオプション:売る権利を得る仕組み

**プットオプション(Put Option)**は、将来の特定日(満期日)に、特定価格(権利行使価格)で株式を売る権利です。

例:

  • 現在の株価:100ドル
  • 権利行使価格:95ドル
  • プレミアム:2ドル
  • 満期日:1ヶ月後

シナリオ1: 株価が80ドルに下落

  • 市場で80ドルで購入→95ドルで売る権利を行使→利益15ドル
  • プレミアム2ドルを差し引いた実質利益:13ドル

シナリオ2: 株価が100ドルのまま

  • 権利を行使しない(95ドルで売るより、市場で100ドルで売る方が有利)
  • プレミアム2ドルを失う

プットオプションは、株価下落を予想する場合、または保有株の下落リスクをヘッジする場合に購入します。

(3) プレミアム・権利行使価格・満期日の概念

プレミアム(Premium):

  • オプション購入時に支払う対価(オプション価格)
  • オプション買いの最大損失はプレミアム全額

権利行使価格(Strike Price):

  • オプション契約で定められた、将来の売買価格

満期日(Expiration Date):

  • オプションの権利が失効する日
  • 米国株オプションは通常、毎月第3金曜日が満期日

(4) イン・ザ・マネー、アウト・オブ・ザ・マネーとは

イン・ザ・マネー(In-the-Money):

  • オプションを行使すれば利益が出る状態
  • コール:株価 > 権利行使価格
  • プット:株価 < 権利行使価格

アウト・オブ・ザ・マネー(Out-of-the-Money):

  • オプションを行使しても利益が出ない状態
  • コール:株価 < 権利行使価格
  • プット:株価 > 権利行使価格

アウト・オブ・ザ・マネーのまま満期を迎えると、オプションは無価値となり、プレミアム全額を失います。

日本の証券会社で米国株オプション取引を始める方法

(1) 取引可能な証券会社(SBI・楽天・マネックス等)

日本の主要ネット証券での米国株オプション取引の対応状況:

証券会社 米国株オプション 備考
SBI証券 取扱銘柄豊富
マネックス証券 教育コンテンツ充実
楽天証券 × 米国株オプション非対応
DMM.com証券 × 米国株オプション非対応

※2025年10月時点の情報です。最新情報は各証券会社の公式サイトでご確認ください。

(2) 口座開設条件と必要資金(証拠金)

口座開設条件:

  • 米国株取引口座の開設
  • オプション取引口座の申込(知識確認テストあり)
  • 投資経験・資産状況の申告

必要資金:

  • オプション買い(ロング): プレミアム分(数千円〜数万円)
  • オプション売り(ショート): 証拠金が必要(数十万円〜)

オプション売りは、損失が無限大になる可能性があるため、証券会社が証拠金を要求します。

(3) 手数料体系(1契約あたりの手数料)

米国株オプション取引の手数料は、1契約あたりで計算されます。

手数料の目安(SBI証券の例):

  • 1契約あたり:約2ドル〜5ドル
  • 最低手数料:あり

※手数料は証券会社により異なります。最新情報は各証券会社の公式サイトでご確認ください。

(4) 取引時間と取扱銘柄

取引時間:

  • 米国市場の取引時間に準じる
  • 日本時間23:30-6:00(通常時間)
  • 日本時間22:30-5:00(夏時間)

取扱銘柄:

  • 主要な米国株(Apple、Microsoft、Amazon等)のオプション
  • 証券会社により取扱銘柄が異なる

オプション取引のリスクと注意点

(1) オプション買い(ロング):プレミアム全額を失うリスク

オプション買いの最大損失は、プレミアム全額です。

リスク:

  • 株価が予想と逆方向に動いた場合、プレミアムを全額失う
  • 満期までに株価が動かなかった場合も、プレミアムを全額失う
  • 時間的価値の減少(満期が近づくとオプション価値が減少)

オプション買いは、損失が限定される一方、利益を得られる確率は低いと言われています。

(2) オプション売り(ショート):無限大の損失リスク

オプション売りは、理論上無限大の損失リスクがあります。

リスク:

  • コールオプション売り:株価が急騰した場合、損失が無限大
  • プットオプション売り:株価が急落した場合、損失が拡大

初心者は、オプション売りに手を出すべきではありません。

(3) 時間的価値の減少(満期が近づくと価値減少)

オプションには、時間的価値があります。

  • 満期までの時間が長いほど、オプション価値が高い
  • 満期が近づくと、時間的価値が減少(タイムディケイ)

オプション買いでは、時間的価値の減少により、株価が変わらなくても損失が発生します。

(4) 為替リスク(ドル建て取引)

米国株オプション取引はドル建てで行われるため、為替リスクがあります。

  • 円高(ドル安)になると、円換算の利益が減少
  • 円安(ドル高)になると、円換算の利益が増加

オプション取引の損益に加えて、為替変動も考慮する必要があります。

米国株オプション取引の税金と確定申告

(1) 海外オプションは雑所得(総合課税)扱い

米国株オプション取引の利益は、**雑所得(総合課税)**として扱われます。

税率:

  • 所得税(累進課税):5%〜45%
  • 住民税:10%
  • 合計:15%〜55%

所得が高いほど、税率も高くなります。

注意:

  • 国内先物オプション(申告分離課税、税率20.315%)とは損益通算不可
  • 株式の譲渡所得(申告分離課税、税率20.315%)とも損益通算不可

(2) 確定申告の方法と必要書類

米国株オプション取引で利益が出た場合、確定申告が必要です。

必要書類:

  • 証券会社の年間取引報告書
  • 損益計算書

申告方法:

  • 確定申告書に雑所得として記載
  • e-Taxでのオンライン申告も可能

(3) 国内先物オプションとの損益通算は不可

海外オプション取引の損益は、国内先物オプション取引の損益と損益通算できません。

それぞれ別の税制が適用されるため、注意が必要です。

まとめ:オプション取引は慎重に、知識と経験を積んでから

米国株オプション取引は、レバレッジ効果やリスクヘッジの手段として有効ですが、高リスクな商品であることを理解する必要があります。

次のアクション:

  • オプション取引の基礎知識を書籍や証券会社の教育コンテンツで学ぶ
  • SBI証券、マネックス証券等でオプション取引口座を開設
  • 少額のプレミアムで練習(オプション買いから開始)
  • オプション売りは、十分な知識と経験を積んでから検討
  • 税制(雑所得・総合課税)を理解し、確定申告の準備をする

初心者は、現物株投資で経験を積んでから、オプション取引に挑戦することをおすすめします。

※本記事は2025年10月時点の情報に基づいています。投資判断は自己責任で行ってください。

よくある質問

Q1米国株オプション取引ができる証券会社は?

A1SBI証券、マネックス証券等で取引可能です。楽天証券は米国株オプションに非対応です。各証券会社で取扱銘柄・手数料が異なるため、事前に公式サイトでご確認ください。

Q2オプション取引に必要な資金はいくらですか?

A2オプション買い(ロング)ならプレミアム分(数千円〜数万円)から可能です。オプション売り(ショート)は証拠金が必要で、数十万円〜が目安となります。売りは損失リスクが高いため、初心者にはおすすめできません。

Q3米国株オプション取引の税制は?

A3雑所得(総合課税)扱いです。所得税(5%〜45%)と住民税(10%)がかかり、確定申告が必要です。国内先物オプション(申告分離課税、税率20.315%)とは損益通算できません。

Q4オプション取引のリスクは?

A4オプション買いはプレミアム全額を失うリスク、オプション売りは理論上無限大の損失リスクがあります。初心者は、少額のプレミアムでオプション買いから開始し、十分な知識と経験を積むべきです。

Q5現物株とオプション取引の違いは?

A5現物株は株式を保有しますが、オプションは売買する権利を取引します。オプションはレバレッジ効果があり、少額で大きな利益を狙える一方、リスクも大きくなります。

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