米国株下がる理由と対処法|下落時の投資戦略完全ガイド

公開日: 2025/10/20

米国株が下がると不安になる理由

米国株に投資しているけれど、株価が下がると「このまま下がり続けるのでは」「今すぐ売った方がいいのでは」と不安になっていませんか。株価下落時の心理的プレッシャーは大きく、冷静な判断が難しくなります。

この記事では、米国株が下がる主な要因と、下落局面での投資戦略を解説します。歴史的なデータから、長期投資の視点で下落をどう捉えるべきかをお伝えします。

この記事のポイント:

  • 米国株下落の主因は金利上昇・インフレ・地政学リスク等
  • リーマンショック・コロナショックも数年で回復している
  • 下落時のパニック売りは損失を確定させる
  • ドルコスト平均法で下落局面も買い続けることが有効
  • S&P500は長期的に右肩上がりのトレンドを維持

米国株が下がる主な要因

(1) FRBの金利上昇政策

米国連邦準備制度理事会(FRB)の金利政策は、株価に大きな影響を与えます。

金利が上昇すると、企業の借入コストが増加し、利益が圧迫されます。また、債券の利回りが上がるため、株式の魅力が相対的に低下します。

金利上昇の株価への影響:

  • 企業の借入コスト増加 → 利益圧迫
  • 債券利回り上昇 → 株式から債券へ資金移動
  • 住宅ローン金利上昇 → 消費減退

FRBの公式発表によると、2022年〜2023年にかけて政策金利を0.25%から5.25%まで引き上げたことが、株価下落の主因とされています。

(2) インフレ懸念の高まり

インフレ(物価上昇)が加速すると、企業のコスト増加と消費者の購買力低下につながります。

インフレの株価への影響:

  • 原材料・人件費の上昇 → 企業利益の圧迫
  • 実質賃金の低下 → 消費減退
  • FRBの金利引き上げ → 株価下落

米国労働統計局のデータでは、2022年のインフレ率は一時9.1%に達し、株価の大幅下落を引き起こしました。

(3) 地政学リスク(戦争・貿易摩擦)

戦争や貿易摩擦などの地政学リスクは、市場の不確実性を高めます。

地政学リスクの例:

  • ロシア・ウクライナ紛争(2022年〜)
  • 米中貿易摩擦(2018年〜)
  • 中東情勢の緊迫化

これらのリスクが高まると、投資家は安全資産(金・債券等)に資金を移動させ、株価が下落します。

(4) 企業業績の悪化

企業の決算が予想を下回ると、株価は大きく下落します。

業績悪化のサイン:

  • 売上高の減少
  • 利益率の低下
  • ガイダンス(業績見通し)の下方修正
  • 配当削減・無配転落

Bloombergの分析によると、S&P500構成企業の約30%が決算予想を下回ると、市場全体が下落する傾向があります。

(5) 市場心理の悪化(VIX指数の上昇)

VIX指数(恐怖指数)は、市場の不安心理を示す指標です。

VIX指数 市場の状態
10-15 安定
15-20 やや不安
20-30 不安定
30以上 パニック

VIX指数が30を超えると、市場は恐怖に支配され、株価が急落しやすくなります。

歴史的な下落局面と回復パターン

(1) リーマンショック(2008年)の教訓

2008年のリーマンショックは、戦後最大の金融危機でした。

リーマンショックの下落:

  • S&P500: 2007年10月の高値1,565から2009年3月の安値676まで約-57%下落
  • 回復: 2013年に高値を更新

連邦準備制度のデータによると、回復には約4年かかりましたが、その後は史上最長の強気相場が続きました。

(2) コロナショック(2020年)の急回復

2020年3月のコロナショックは、短期間で急激に下落しましたが、回復も早かったです。

コロナショックの下落と回復:

  • S&P500: 2020年2月の高値3,386から3月の安値2,237まで約-34%下落
  • 回復: 2020年8月に高値を更新(わずか5ヶ月)

FRBの大規模金融緩和政策が、急速な回復を後押ししました。

(3) ITバブル崩壊(2000年)からの回復

2000年のITバブル崩壊では、ハイテク株が暴落しました。

ITバブル崩壊:

  • Nasdaq: 2000年3月の高値5,048から2002年10月の安値1,114まで約-78%下落
  • 回復: 2015年に高値を更新(約15年)

ハイテク株中心のNasdaqは回復に時間がかかりましたが、S&P500は2007年に高値を更新しています。

(4) 弱気相場と調整局面の違い

株価下落には、規模によって呼び方が変わります:

下落幅 呼称 頻度
-10% 調整(Correction) 数年に1回
-20% 弱気相場(Bear Market) 10年に1-2回
-30%以上 暴落(Crash) 数十年に1回

調整局面(-10%程度)は正常な値動きの範囲内であり、過度に心配する必要はありません。

下落時の投資戦略と対応策

(1) パニック売りを避ける

下落時に最も避けるべきは、パニック売りです。

楽天証券の調査によると、2020年3月のコロナショック時に狼狽売りした投資家の多くが、その後の回復を逃して損失を確定させています。

パニック売りを避けるコツ:

  • 投資計画を事前に立てておく
  • 損切りラインを明確にする
  • 短期的な値動きを見ない
  • SNSや掲示板の煽り情報を鵜呑みにしない

(2) ドルコスト平均法での買い増し

ドルコスト平均法は、定期的に一定額を投資する手法です。

ドルコスト平均法のメリット:

  • 下落時も自動的に買い続ける
  • 平均購入単価を下げられる
  • 感情的な判断を排除できる

SBI証券のシミュレーションでは、リーマンショック時もドルコスト平均法を続けた投資家は、その後大きなリターンを得ています。

(3) ポートフォリオの見直しと分散

下落局面は、ポートフォリオを見直す良い機会です。

見直しポイント:

  • セクター分散ができているか
  • 地域分散ができているか
  • 債券や現金の比率は適切か
  • リスク許容度に合っているか

金融庁の資料では、分散投資によりリスクを20-30%低減できるとされています。

(4) 損切りとナンピン買いの判断基準

損切りとナンピン買い(下落時の買い増し)は、状況に応じて使い分けます。

状況 対応
企業価値が毀損(業績悪化・競争力喪失) 損切り検討
市場全体の調整(企業価値は不変) ナンピン買い検討
投資理由が消失 即座に売却
一時的な悪材料 保有継続

企業価値と株価を分けて考えることが重要です。

長期投資の視点で見る下落局面

(1) S&P500の長期上昇トレンド

S&P500の長期チャート(50年間)を見ると、右肩上がりのトレンドが明確です。

S&P500の長期リターン:

  • 過去50年の年率リターン: 約10%(配当再投資込み)
  • 過去100年の年率リターン: 約9-10%

連邦準備経済データ(FRED)によると、長期的には必ず上昇しています。

(2) 過去の暴落は必ず回復している事実

過去の主要な暴落は、すべて回復しています。

暴落 下落率 回復期間
世界恐慌(1929年) -86% 約25年
リーマンショック(2008年) -57% 約4年
コロナショック(2020年) -34% 5ヶ月

回復期間は短縮傾向にあり、政策対応の速さが寄与しています。

(3) 下落局面は買い増しのチャンス

ウォーレン・バフェット氏は「他人が恐怖を感じている時に貪欲になれ」と述べています。

下落局面での買い増しメリット:

  • 割安な価格で優良企業を購入
  • 将来のリターンを高められる
  • 配当利回りが向上

ただし、余剰資金の範囲内で行うことが重要です。

(4) 為替リスクと長期投資

円高になると、米国株は円ベースでさらに下落します。

為替リスクへの対応:

  • 長期投資で為替変動を平準化
  • ドルベースのリターンで評価
  • 分散投資で為替リスクを軽減

国税庁の資料では、外国税額控除を活用することで、配当課税の二重負担を軽減できます。

まとめ:下落を恐れない投資家になるために

米国株の下落は避けられませんが、長期投資の視点を持てば、過度に恐れる必要はありません。

下落局面での5つの心得:

  1. パニック売りを避け、投資計画に従う
  2. ドルコスト平均法で下落局面も買い続ける
  3. ポートフォリオの分散でリスクを管理
  4. 企業価値と株価を分けて判断
  5. S&P500の長期上昇トレンドを信じる

次のアクション:

  • 投資計画と損切りラインを明確にする
  • ドルコスト平均法での積立投資を設定
  • ポートフォリオのセクター分散を確認
  • 長期チャート(10年以上)を定期的に見る

米国株は、短期的には上下しますが、長期的には成長を続けています。下落を恐れず、冷静に対応することが、成功する投資家への第一歩です。

※投資判断は自己責任で行ってください。本記事は情報提供を目的としており、特定銘柄の推奨ではありません。

よくある質問

Q1米国株が下がったら売った方がいいですか?

A1長期投資なら保有継続が基本です。パニック売りは損失を確定させるだけで、その後の回復を逃します。過去のリーマンショック(-57%)やコロナショック(-34%)も数年で回復しています。投資計画に従い、企業価値が毀損していない限り、保有を続けることが推奨されます。

Q2ドルコスト平均法は下落時も有効ですか?

A2非常に有効です。ドルコスト平均法は下落時にも定期購入を続けることで、平均購入単価を下げられます。SBI証券のシミュレーションでは、リーマンショック時もドルコスト平均法を続けた投資家は、その後大きなリターンを得ています。感情的な判断を排除でき、長期投資に最適です。

Q3円高で二重の損失が怖いです

A3為替リスクは短期的には大きな影響がありますが、長期投資では平準化される傾向があります。円高・円安は繰り返すため、短期的な変動に過剰反応せず、ドルベースのリターンで評価することが重要です。また、セクター分散や地域分散により為替リスクを軽減できます。

Q4底値を見極める方法はありますか?

A4底値の予測は不可能です。プロでも正確に当てることはできません。タイミングを狙わず、ドルコスト平均法で定期的に投資する方が確実です。ウォーレン・バフェット氏も「完璧なタイミングを狙わない」と述べています。下落局面は買い増しのチャンスと捉え、余剰資金の範囲内で投資を続けましょう。

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