利下げと米国株|FRBの影響とセクター別投資戦略を解説

公開日: 2025/10/19

FRB利下げが米国株に与える影響とは?セクター別の投資戦略を解説

「FRBが利下げを始めたら米国株は上がる」と聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、利下げが必ずしも株価上昇につながるわけではありません

この記事では、FRB(米国連邦準備制度理事会)の利下げが米国株に与える影響と、セクター別の投資戦略について解説します。

この記事のポイント:

  • 利下げ→借入コスト低下→企業業績改善→株価上昇の流れ
  • 景気後退期の利下げは株価下落と同時進行する場合も
  • グロース株・不動産株は利下げで恩恵、金融株はマイナス影響
  • 為替リスク(利下げでドル安円高)にも注意

1. FRB利下げと米国株の関係を知る理由

米国株投資をしている方にとって、FRBの金融政策は株価に大きな影響を与えます。利下げのタイミングと理由を理解することで、投資判断の精度が高まります

ただし、「利下げ=株価上昇」という単純な図式ではありません。利下げの背景(景気刺激か景気後退対応か)によって、株価への影響は大きく異なります。

2. 利下げの仕組みと実施される背景

(1) FRBと政策金利(FF金利)

FRBは、政策金利(フェデラルファンド金利)を操作することで経済を調整します。利下げとは、この政策金利を引き下げることです。

(2) 利下げが実施される理由(景気刺激・インフレ抑制終了)

FRBが利下げを実施する主な理由は以下の2つです:

  • 景気刺激: 景気が減速している場合、借入コストを下げて企業や個人の投資・消費を促進
  • インフレ抑制終了: インフレが落ち着き、利上げの必要がなくなった場合

(3) FOMCでの決定プロセス

FRBの金融政策は、FOMC(連邦公開市場委員会)で年8回開催される会合で決定されます。会合の声明文や議事録は、FRBの公式サイトで公開されています。

(4) 利下げ幅と回数の影響

利下げ幅は通常0.25%(25bps)ですが、緊急時には0.50%以上の大幅利下げが行われることもあります。利下げの回数と幅が大きいほど、経済への影響も大きくなります

3. 利下げが米国株に与える影響

(1) 借入コスト低下→企業業績改善

利下げにより、企業が銀行から借りる際の金利が低下します。これにより、企業の設備投資や研究開発が活発化し、業績が改善する可能性があります。

(2) 債券利回り低下→株式投資の相対的魅力向上

利下げにより債券の利回りが低下すると、株式投資の相対的な魅力が高まります。資金が債券市場から株式市場に流れ込む傾向があります。

(3) 景気後退期の利下げvs景気拡大期の利下げ

重要なのは、利下げの背景です:

利下げの背景 株価への影響
景気拡大期の予防的利下げ 株価上昇しやすい
景気後退期の緊急利下げ 株価下落と同時進行の場合も

例えば、リーマンショック時(2008年)やコロナショック時(2020年)の利下げは、株価の急落と同時に行われました。

(4) 為替への影響(ドル安円高リスク)

利下げにより米国の金利が低下すると、ドル安円高になりやすくなります。これは、日本人投資家にとっては円換算での米国株価が下がることを意味します。

※2025年10月時点の金融政策です。最新情報はFRBのウェブサイトをご確認ください。

4. セクター別の恩恵と影響

(1) 恩恵を受けやすいセクター(グロース株・不動産・消費)

以下のセクターは、利下げで恩恵を受けやすいと言われています:

  • グロース株(テック株): 借入コストが下がり、成長投資がしやすくなる
  • 不動産株(REITs): 借入金利が下がり、不動産投資の採算が改善
  • 消費関連株: 消費者の借入コストが下がり、消費が活発化

(2) マイナス影響を受けやすいセクター(金融株)

一方、金融株は利下げでマイナス影響を受けやすいです:

  • 銀行の貸出金利が下がり、利ざやが縮小
  • 保険会社の運用利回りが低下

(3) ディフェンシブ株の動向

ディフェンシブ株(生活必需品、ヘルスケア等)は、金利変動の影響を受けにくい傾向があります。

(4) セクターローテーションの考え方

利下げ局面では、景気敏感株からグロース株へのセクターローテーションが起こることがあります。ただし、これは一般論であり、個別の局面では異なる動きになることもあります。

5. 過去の利下げ局面と株価パフォーマンス

(1) リーマンショック後の利下げ(2008年)

2008年のリーマンショック時、FRBは政策金利を5.25%から0.25%まで大幅に引き下げました。しかし、株価は利下げ後も半年以上下落し、2009年3月に底を打ちました。

(2) コロナショック時の緊急利下げ(2020年)

2020年3月のコロナショック時も、FRBは緊急で1.50%から0.25%まで利下げしました。株価は急落後、数ヶ月で回復に転じました。

(3) 利下げ開始後のS&P500パフォーマンス

過去のデータでは、利下げ開始から6ヶ月後のS&P500リターンは平均でプラスですが、個別の局面によって大きく異なります。

(4) 材料出尽くしで下落するケース

利下げ期待が先行して株価が上昇した後、実際に利下げが発表されると「材料出尽くし」で下落することもあります。

6. まとめ:利下げ局面での投資戦略

FRBの利下げは米国株に影響を与えますが、必ずしも株価上昇につながるわけではありません。利下げの背景(景気刺激か景気後退対応か)を理解することが重要です。

次のアクション:

  • FRBのFOMC声明文を定期的に確認する
  • 利下げ局面ではグロース株・不動産株に注目
  • 為替リスク(ドル安円高)も考慮に入れる
  • タイミングを狙わず、ドルコスト平均法で継続投資

長期的な視点で、利下げ局面を投資機会として活用しましょう。

よくある質問

Q1利下げが始まったら株価は必ず上がりますか?

A1必ずしも上がりません。景気拡大期の予防的利下げは株価上昇につながりやすいですが、景気後退期の緊急利下げは株価下落と同時進行する場合もあります。また、利下げ期待が先行して織り込まれた後は「材料出尽くし」で下落することもあります。

Q2利下げで恩恵を受けやすいセクターは?

A2グロース株(テック株)、不動産株(REITs)、消費関連株が恩恵を受けやすいと言われています。借入コストが低下することで、企業の成長投資がしやすくなり、消費者の購買力も高まるためです。

Q3利下げで為替はどうなりますか?

A3利下げにより米国の金利が低下すると、ドル安円高になりやすくなります。これは日本人投資家にとって、円換算での米国株価が下がるリスクを意味します。為替ヘッジ付きの投資信託を検討するのも一つの方法です。

Q4利下げ局面での投資タイミングは?

A4タイミングを狙わず、ドルコスト平均法で継続投資するのがベターです。利下げ期待が先行して株価が上がることも多いため、実際の利下げ発表を待っていると買い時を逃す可能性があります。長期的な視点で積立投資を続けましょう。

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