米国株の単元株制度を知る理由
「米国株は1株から買える」と聞いて、興味を持った方は多いのではないでしょうか。日本株は100株単位(単元株)での購入が基本ですが、米国株には単元株制度がなく、1株から自由に購入できます。
しかし、1株から買えるからといって、すぐに少額投資を始めてよいのでしょうか。この記事では、米国株の取引単位の仕組みと、1株投資のメリット・デメリット、実践的な少額投資戦略を解説します。
この記事のポイント:
- 米国株には単元株制度がなく、1株から購入可能
- 日本株は100株単位だが、米国株は1株から分散投資しやすい
- 手数料率が高くなる点に注意(少額だとコスト負担が大きい)
- つみたてNISAとの使い分けで効率的な少額投資が可能
日本株と米国株の取引単位の違い
米国株と日本株の取引単位には大きな違いがあります。
(1) 日本株は100株単位(単元株制度)
日本株は、2018年に「単元株制度」が統一され、ほとんどの銘柄が100株単位で取引されています。
例: ソニーグループ(株価1,500円の場合)
- 最低購入金額: 1,500円 × 100株 = 150,000円
少額投資家にとっては、100株揃えるだけで十数万円の資金が必要になるため、購入のハードルが高くなります。
※一部のネット証券では「ミニ株」「単元未満株」として1株から買えるサービスもありますが、すべての銘柄が対象ではなく、取引時間や手数料に制限があります。
(2) 米国株は1株から購入可能
米国株には日本のような単元株制度がありません。NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQで取引される株式は、すべて1株から購入できます。
例: Apple(株価200ドルの場合、為替レート150円/ドル)
- 最低購入金額: 200ドル × 1株 = 約30,000円
高額株でも1株から買えるため、資金が少ない投資家でも分散投資がしやすい仕組みです。
(3) ラウンドロットとオッドロット
米国市場には「Round Lot(ラウンドロット)」と「Odd Lot(オッドロット)」という概念があります。
ラウンドロット:
- 100株単位の取引(標準的な取引単位)
- 機関投資家や大口の個人投資家が利用
オッドロット:
- 100株未満の取引(1株、10株など)
- 個人投資家が少額で取引する際に利用
オッドロットでも取引に制限はなく、1株から自由に売買できます。ただし、流動性が低い銘柄では、オッドロットの売買が成立しにくい場合があります。
(4) 主要証券会社での購入方法
日本のネット証券でも、米国株を1株から購入できます。
主要証券会社:
- SBI証券: 1株から購入可能、手数料は約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 楽天証券: 1株から購入可能、手数料は約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- マネックス証券: 1株から購入可能、手数料は約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
※手数料体系は変更される場合があるため、最新情報は各証券会社の公式サイトでご確認ください。
1株投資のメリット
米国株を1株から買えることで、以下のようなメリットがあります。
(1) 少額から米国株投資を始められる
1株から購入できるため、数万円の資金でも米国株投資を始められます。
例: 資金10万円で分散投資
- Apple 1株(約30,000円)
- Microsoft 1株(約40,000円)
- Amazon 1株(約30,000円)
日本株なら1銘柄しか買えない金額で、米国株なら3銘柄に分散投資できます。
(2) 分散投資がしやすい
1株から買えるため、多くの銘柄に分散投資しやすくなります。
分散投資の例:
- セクター分散: テクノロジー、ヘルスケア、消費財など
- 地域分散: 米国大型株、米国中小型株、先進国株など
- 時間分散: 毎月定額で積立購入(ドルコスト平均法)
リスクを分散しながら、長期的な資産形成を目指せます。
(3) 高額株(Apple、Amazon等)も購入可能
AppleやAmazon、Googleなどの高額株も、1株から購入できます。
例: Amazonの株価が180ドルの場合(為替レート150円/ドル)
- 必要資金: 180ドル × 150円 = 約27,000円
日本株で100株揃えようとすると数百万円必要な銘柄でも、米国株なら数万円で購入できます。
(4) NISAとの相性が良い
2024年から始まった新NISA制度では、成長投資枠(年間240万円まで非課税)で米国株を1株から購入できます。
NISAのメリット:
- 配当金・売却益が非課税(日本での税金20.315%がかからない)
- 1株から購入できるため、少額でも分散投資しやすい
- 長期保有に適した銘柄を選びやすい
※米国での源泉徴収10%は避けられません。
1株投資のデメリットと取引コスト
1株から買えるメリットがある一方で、注意すべき点もあります。
(1) 手数料率が高くなりやすい
約定代金が少ないと、手数料率が高くなります。
例: 手数料0.495%、最低手数料0ドルの場合
| 約定代金 | 手数料(ドル) | 手数料率 |
|---|---|---|
| 100ドル | 0.495ドル | 0.495% |
| 1,000ドル | 4.95ドル | 0.495% |
| 10,000ドル | 22ドル(上限) | 0.22% |
少額取引では、往復(購入+売却)で約1%のコストがかかります。短期売買では利益を出しにくくなるため、長期保有が基本です。
(2) 為替手数料の影響
米国株を購入する際、円をドルに換える必要があり、為替手数料がかかります。
主要証券会社の為替手数料(片道):
- SBI証券: 1ドルあたり25銭(住信SBIネット銀行経由なら6銭)
- 楽天証券: 1ドルあたり25銭
- マネックス証券: 1ドルあたり25銭(買付時0銭キャンペーンあり)
例: 1,000ドル分を購入する場合(25銭/ドル)
- 為替手数料: 1,000ドル × 0.25円 = 250円
少額投資では、為替手数料の比率が大きくなるため、証券会社の選択やドル転のタイミングが重要です。
(3) 証券会社別の手数料体系(定額制vs比例制)
証券会社によって、手数料体系が異なります。
約定代金比例制(主流):
- 約定代金の0.495%(最低0ドル、上限22ドル)
- 少額取引でも手数料がかかる
定額制(一部の証券会社):
- 月額定額で取引し放題
- 取引回数が多い場合に有利
※2025年10月時点では、主要ネット証券は約定代金比例制が中心です。
(4) 少額投資のコスト計算例
例: 毎月1万円を積立投資する場合
- 約定代金: 約67ドル(為替レート150円/ドル)
- 取引手数料: 0.33ドル(0.495%)
- 為替手数料: 約17円(25銭/ドル)
- 合計コスト: 約67円(約0.67%)
往復(購入+売却)で約1.3%のコストがかかるため、長期保有が前提です。
少額投資の実践戦略
1株投資を活かした少額投資の戦略を紹介します。
(1) 定期的な積立投資(ドルコスト平均法)
毎月一定額を積立購入することで、株価の変動リスクを平準化できます。
例: 毎月3万円を積立
- 1ヶ月目: 株価200ドル → 1株購入
- 2ヶ月目: 株価150ドル → 1株購入
- 3ヶ月目: 株価180ドル → 1株購入
- 平均取得単価: (200+150+180) ÷ 3 = 約177ドル
株価が下がったときに多く買い、上がったときに少なく買うことで、平均取得単価を抑えられます。
(2) 高配当株での配当再投資
配当金を再投資することで、複利効果を得られます。
配当再投資の例:
- 高配当株(配当利回り4%)を10株保有
- 年間配当金を受け取る
- 配当金で追加購入(1株ずつ買い増し)
- 保有株数が増え、翌年の配当金も増える
長期的に保有株数を増やすことで、配当収入を増やせます。
(3) 分散投資でリスク管理
1株から買えるため、複数銘柄に分散投資しやすくなります。
分散投資の例(資金30万円):
- テクノロジー株 3銘柄(各3万円)
- ヘルスケア株 2銘柄(各3万円)
- 消費財株 2銘柄(各3万円)
- 金融株 2銘柄(各3万円)
- エネルギー株 1銘柄(3万円)
セクター分散することで、特定業界の不振時のリスクを軽減できます。
(4) つみたてNISAとの使い分け
つみたてNISA(年間120万円まで非課税)では、米国株投資信託を積立購入できます。
使い分け例:
- つみたてNISA: eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を毎月積立(手数料が安い、分散投資が自動)
- 成長投資枠: 個別米国株を1株ずつ購入(配当重視、特定企業への投資)
投資信託と個別株を使い分けることで、効率的な資産形成が可能です。
まとめ:1株投資に向いている人
米国株の1株投資は、少額から分散投資したい人に向いています。
この記事のまとめ:
- 米国株には単元株制度がなく、1株から購入可能
- 日本株(100株単位)に比べて、少額で分散投資しやすい
- 手数料率が高くなる点に注意(長期保有が前提)
- つみたてNISAと個別株を使い分けて効率化
1株投資に向いている人:
- 少額から米国株投資を始めたい人
- 複数銘柄に分散投資したい人
- 高額株(Apple、Amazonなど)を1株だけ保有したい人
- 長期保有を前提に配当再投資したい人
次のアクション:
- 証券会社で米国株口座を開設する
- 毎月一定額を積立購入する計画を立てる
- NISAを活用して非課税メリットを享受する
米国株の1株投資を活用して、少額から国際分散投資を始めましょう。
