米国株のアフターマーケット取引とは
米国株投資をしていると、「決算発表直後に株価が大きく動いている」というニュースを耳にすることがあります。多くの場合、これは通常取引時間外に行われる「アフターマーケット取引」での値動きです。
アフターマーケット取引(時間外取引)は、通常の取引時間外に株式を売買できる仕組みです。この記事では、アフターマーケット取引の仕組み、取引時間、メリット・デメリット、日本から取引できる証券会社を解説します。
この記事のポイント:
- アフターマーケットは通常取引終了後(米国時間16:00-20:00)の取引
- 決算発表直後に取引できるメリットがある
- 流動性が低くスプレッドが広がるリスクに注意
- 日本ではマネックス証券・SBI証券等が対応
(1) 時間外取引の仕組み
米国株の取引には、通常取引時間(Regular Trading Hours)と時間外取引(Extended Hours Trading)があります。
時間外取引の種類:
- プレマーケット(Pre-Market): 通常取引開始前の取引
- アフターマーケット(After-Hours): 通常取引終了後の取引
時間外取引では、ECN(電子通信ネットワーク)を通じて取引が行われます。NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQ(ナスダック)の通常取引とは異なる仕組みです。
(2) 通常取引との違い
時間外取引と通常取引には、以下のような違いがあります。
| 項目 | 通常取引 | 時間外取引 |
|---|---|---|
| 取引時間 | 9:30-16:00 ET | 4:00-9:30 / 16:00-20:00 ET |
| 流動性 | 高い | 低い |
| スプレッド | 狭い | 広い |
| 注文方法 | 成行・指値 | 指値のみ(証券会社による) |
| 約定のしやすさ | 高い | 低い |
時間外取引は流動性が低いため、約定しにくく、スプレッド(売値と買値の差)が広がりやすいという特徴があります。
アフターマーケット・プレマーケットの取引時間
時間外取引の時間帯を、米国時間と日本時間で整理します。
(1) プレマーケット(4:00-9:30 ET・日本時間18:00-23:30)
プレマーケットは、通常取引開始前の時間帯です。
米国時間(東部時間 ET):
- 4:00-9:30(夏時間・冬時間とも)
日本時間:
- 夏時間(3月中旬〜11月上旬): 17:00-22:30
- 冬時間(11月上旬〜3月中旬): 18:00-23:30
※証券会社によって対応時間が異なる場合があります。
(2) 通常取引(9:30-16:00 ET・日本時間23:30-翌6:00)
通常取引時間は、米国市場の主要な取引時間です。
米国時間(東部時間 ET):
- 9:30-16:00(夏時間・冬時間とも)
日本時間:
- 夏時間(3月中旬〜11月上旬): 22:30-翌5:00
- 冬時間(11月上旬〜3月中旬): 23:30-翌6:00
流動性が最も高く、スプレッドも狭いため、ほとんどの投資家は通常取引時間に取引します。
(3) アフターマーケット(16:00-20:00 ET・日本時間6:00-10:00)
アフターマーケットは、通常取引終了後の時間帯です。
米国時間(東部時間 ET):
- 16:00-20:00(夏時間・冬時間とも)
日本時間:
- 夏時間(3月中旬〜11月上旬): 翌5:00-翌9:00
- 冬時間(11月上旬〜3月中旬): 翌6:00-翌10:00
日本時間では朝の時間帯になるため、出勤前に取引できる点がメリットです。
時間外取引のメリットとデメリット
アフターマーケット取引には、メリットとデメリットがあります。
(1) メリット:決算発表直後の取引、日本時間での取引
メリット1: 決算発表直後に取引できる
多くの米国企業は、市場終了後(16:00 ET以降)に決算を発表します。アフターマーケット取引を利用すれば、決算内容を見て即座に取引できます。
例:
- 決算が予想を上回った → 株価が急騰する前に買える
- 決算が予想を下回った → 株価が急落する前に売れる
ただし、後述するリスクもあるため、慎重な判断が必要です。
メリット2: 日本時間の朝・夕方に取引できる
日本時間では、プレマーケットは夕方〜夜、アフターマーケットは朝になります。
- プレマーケット: 18:00-23:30(冬時間)
- アフターマーケット: 6:00-10:00(冬時間)
通常取引は深夜〜早朝のため、会社員には取引しにくいですが、時間外取引なら生活リズムに合わせやすい場合があります。
(2) デメリット①:流動性リスク
時間外取引は、通常取引に比べて流動性(売買のしやすさ)が大幅に低下します。
流動性が低い影響:
- 注文が約定しにくい(買いたい価格で買えない、売りたい価格で売れない)
- スプレッドが広がる(売値と買値の差が大きい)
- 少量の取引でも価格が大きく動く
特に、取引量が少ない銘柄では、時間外取引での売買は非常に難しくなります。
(3) デメリット②:価格変動リスク
時間外取引では、価格が大きく変動するリスクがあります。
価格変動が大きくなる理由:
- 決算発表や重要ニュースに市場が過剰反応する
- 流動性が低いため、少量の売買でも価格が動きやすい
- 翌日の通常取引で価格が戻ることもある(時間外の動きが一時的な場合)
時間外取引で急騰・急落した株価が、翌日には元の水準に戻ることもあります。
日本から時間外取引ができる証券会社
日本の証券会社でも、一部で時間外取引に対応しています。
(1) マネックス証券
マネックス証券は、米国株の時間外取引に対応しています。
対応時間帯:
- プレマーケット: 対応(詳細は公式サイトで確認)
- アフターマーケット: 対応
手数料:
- 通常取引と同じ手数料体系(約定代金の0.495%、上限22ドル)
注文方法:
- 指値注文のみ(成行注文は不可)
※最新情報はマネックス証券の公式サイトでご確認ください。
(2) SBI証券
SBI証券も、時間外取引に対応しています。
対応時間帯:
- プレマーケット: 対応(詳細は公式サイトで確認)
- アフターマーケット: 対応
手数料:
- 通常取引と同じ手数料体系(約定代金の0.495%、上限22ドル)
注文方法:
- 指値注文のみ
(3) その他証券会社の対応状況
楽天証券など、他の主要ネット証券でも時間外取引に対応している場合があります。
確認ポイント:
- 対応時間帯(プレマーケット・アフターマーケット)
- 注文方法(指値のみか、成行も可能か)
- 手数料体系
各証券会社の公式サイトで最新情報を確認することをおすすめします。
時間外取引のリスクと注意点
時間外取引には、通常取引にはないリスクがあります。
(1) スプレッドの拡大
時間外取引では、売値(Ask)と買値(Bid)の差(スプレッド)が広がります。
例(通常取引と時間外取引の比較):
| 時間帯 | 買値(Bid) | 売値(Ask) | スプレッド |
|---|---|---|---|
| 通常取引 | 100.00ドル | 100.05ドル | 0.05ドル(0.05%) |
| 時間外取引 | 99.80ドル | 100.30ドル | 0.50ドル(0.5%) |
スプレッドが広がると、買うときは高く、売るときは安くなるため、実質的なコストが上がります。
(2) 約定しにくいリスク
流動性が低いため、希望する価格で約定しにくくなります。
約定しにくい例:
- 指値注文を出しても、売り手・買い手が見つからない
- 注文が翌日の通常取引まで繰り越される
急いで売買したい場合でも、約定しない可能性があることを理解しておく必要があります。
(3) 初心者は避けるべき理由
時間外取引は、以下の理由から初心者には推奨されません。
初心者が避けるべき理由:
- 流動性リスクとスプレッド拡大により、不利な価格で取引する可能性が高い
- 決算発表直後の過剰反応で、翌日に価格が戻ることがある
- リスク管理が難しく、損失が拡大しやすい
初心者向けの取引方法:
- 通常取引時間に取引する
- 決算発表は翌日の市場反応を見てから判断する
- 長期保有を前提に、一時的な値動きに惑わされない
時間外取引は、経験豊富な投資家向けの取引手法です。
まとめ:時間外取引を活用する際のポイント
米国株のアフターマーケット取引は、決算発表直後に取引できるメリットがありますが、流動性リスクや価格変動リスクに注意が必要です。
この記事のまとめ:
- アフターマーケットは通常取引終了後(米国時間16:00-20:00、日本時間6:00-10:00)の取引
- 決算発表直後に取引できるメリットがある
- 流動性が低くスプレッドが広がるリスクに注意
- 日本ではマネックス証券・SBI証券等が対応
時間外取引を活用する際のポイント:
- 流動性が高い銘柄を選ぶ(出来高が多い大型株)
- 指値注文を利用し、希望価格を明確にする
- スプレッドが広がっていることを前提に、余裕を持った価格設定をする
- 初心者は通常取引時間に取引し、時間外取引は経験を積んでから挑戦する
次のアクション:
- 証券会社で時間外取引の対応状況を確認する
- まずは通常取引時間で経験を積む
- 決算発表スケジュールを確認し、時間外取引の値動きを観察する
アフターマーケット取引は便利な仕組みですが、リスクを理解した上で慎重に活用しましょう。
