米国株を買うには何が必要か
米国株投資に興味があるものの、「何から始めれば良いのか分からない」「証券口座の開設方法や注文方法が複雑そう」と感じている方は少なくありません。
実際には、米国株投資は日本のネット証券を通じて、比較的簡単に始めることができます。この記事では、証券口座開設から米国株購入、税金の仕組みまで、初心者向けに全体の流れを解説します。
この記事のポイント:
- 米国株は1株から購入可能、数千円〜数万円で始められる
- 証券口座開設には本人確認書類とマイナンバーが必要
- 主要証券会社(SBI・楽天・マネックス)の手数料はほぼ同水準
- 米ドル決済と円貨決済の選択で為替手数料が変わる
- 特定口座(源泉徴収あり)なら基本的に確定申告不要
(1) 米国株投資のメリット
米国株投資には以下のメリットがあります。
主なメリット:
- 1株から購入可能: 日本株は100株単位が多いのに対し、米国株は1株から購入できる
- 世界的企業に投資できる: Apple、Microsoft、Amazon、Teslaなど、日本では買えない企業に投資可能
- 配当金の頻度が高い: 多くの米国企業は四半期ごとに配当を支払う
- 長期的な成長性: 過去数十年、米国株式市場は右肩上がりの成長を続けている
日本証券業協会の資料でも、米国株投資の基礎知識として、これらのメリットが紹介されています。
(出典: 日本証券業協会「米国株投資の基礎知識」)
(2) 必要なもの(証券口座・本人確認書類・マイナンバー)
米国株を買うには、以下が必要です。
必要なもの:
- 証券口座: 米国株を取り扱う証券会社の口座(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)
- 本人確認書類: 運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等
- マイナンバー: マイナンバーカードまたは通知カード
- 銀行口座: 証券口座への入金用
金融庁の「証券会社リスト」で、米国株を取り扱う証券会社を確認できます。
(出典: 金融庁「証券会社リスト」)
(3) 最低投資金額
米国株は1株から購入可能ですが、最低投資金額は銘柄により異なります。
例(2025年1月時点、概算):
- Apple(AAPL): 約200ドル(約3万円)
- Microsoft(MSFT): 約400ドル(約6万円)
- Amazon(AMZN): 約150ドル(約2.3万円)
- Tesla(TSLA): 約250ドル(約3.8万円)
※1ドル=150円の場合
ただし、売買手数料・為替手数料を考慮すると、最低3〜5万円程度からの投資が現実的です。少額投資では手数料の影響が大きくなるためです。
証券会社の選び方
(1) 主要証券会社の比較(SBI・楽天・マネックス)
日本で米国株を買える主要ネット証券は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券の3社です。
項目 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 |
---|---|---|---|
取扱銘柄数 | 約5,000銘柄 | 約4,800銘柄 | 約4,500銘柄 |
売買手数料 | 約定代金の0.495%(上限22ドル) | 約定代金の0.495%(上限22ドル) | 約定代金の0.495%(上限22ドル) |
為替スプレッド | 25銭/ドル(円貨決済) | 25銭/ドル(円貨決済) | 0銭/ドル(買付時) |
NISA対応 | ◯ | ◯ | ◯ |
特徴 | 取扱銘柄数最多、住信SBI連携 | 楽天ポイント活用可、UI使いやすい | 取引ツール充実、情報豊富 |
(出典: SBI証券、楽天証券、マネックス証券各公式サイト、価格.com「ネット証券比較 - 米国株」)
(2) 手数料の違い(売買手数料・為替スプレッド)
売買手数料:
- 3社とも約定代金の0.495%(上限22ドル、最低0ドル)
- 手数料体系はほぼ同じ
為替スプレッド(円貨決済):
- SBI証券: 25銭/ドル
- 楽天証券: 25銭/ドル
- マネックス証券: 買付時0銭、売却時25銭
マネックス証券は買付時の為替スプレッドが0銭のため、買付コストでは最も有利です。
(3) 取扱銘柄数・取引ツールの充実度
取扱銘柄数:
- SBI証券: 約5,000銘柄(最多)
- 楽天証券: 約4,800銘柄
- マネックス証券: 約4,500銘柄
取引ツール:
- SBI証券: HYPER SBI(有料)、米国株アプリ
- 楽天証券: iSPEED(無料)
- マネックス証券: トレードステーション(米国株専用、無料)
マネックス証券のトレードステーションは、米国株専用ツールとして評価が高いです。
(4) NISA対応状況
3社とも新NISA(成長投資枠・つみたて投資枠)に対応しています。成長投資枠で年間240万円まで米国株に投資でき、配当・売却益が非課税になります。
ただし、米国での源泉徴収10%は避けられません。
証券口座開設の手順
(1) 必要書類の準備
必要書類:
- 本人確認書類: 運転免許証、マイナンバーカード、パスポート等(いずれか1つ)
- マイナンバー: マイナンバーカードまたは通知カード
(2) オンライン申込の流れ
主要証券会社は、オンラインで口座開設が完結します。
手順(SBI証券の例):
- SBI証券公式サイトで「口座開設」をクリック
- メールアドレスを登録
- 本人確認書類をアップロード(スマホ撮影でOK)
- マイナンバーを入力
- 口座タイプを選択(特定口座・源泉徴収ありを推奨)
- 審査(1〜3営業日)
- ログイン情報を受け取り
(出典: SBI証券「米国株の買い方ガイド」)
(3) 外国株取引口座の開設
証券口座開設後、別途「外国株取引口座」の申込が必要です(オンラインで即日開設可能)。
(4) 口座開設にかかる時間
- 審査: 1〜3営業日
- 外国株取引口座: 即日〜1営業日
最短で申込から3〜5日程度で取引開始できます。
米国株の買い方(注文から決済まで)
(1) 米ドル決済と円貨決済の違い
米国株を買う際、米ドル決済と円貨決済の2つの方法があります。
米ドル決済:
- 事前に円→ドルに両替してから購入
- 為替タイミングを自分で選べる
- 為替スプレッドを抑えられる(住信SBI銀行・楽天FX口座利用で1銭程度)
円貨決済:
- 日本円で購入、証券会社が自動で為替取引
- 手間が省ける(初心者向け)
- 為替スプレッドが上乗せ(25銭/ドル程度)
大口投資ほど米ドル決済が有利ですが、少額投資なら円貨決済の方が手軽です。
(2) 注文方法(成行・指値・逆指値)
米国株の注文方法には、主に3種類があります。
成行注文(Market Order):
- 現在の市場価格で即座に売買
- 確実に約定するが、価格は指定できない
指値注文(Limit Order):
- 指定した価格以下(買い)または以上(売り)で売買
- 希望価格で買えるが、約定しない可能性あり
逆指値注文(Stop Order):
- 指定した価格に達したら成行または指値で発注
- 損切り(ストップロス)に活用
(出典: NASDAQ "How to Trade Stocks")
(3) 実際の購入手順(画面操作の流れ)
例(楽天証券の場合):
- ログイン後、「外国株式」→「米国株式」を選択
- 銘柄検索(ティッカーシンボルまたは企業名)
- 「買い注文」をクリック
- 注文方法(成行・指値)を選択
- 株数を入力
- 決済方法(円貨決済・米ドル決済)を選択
- 注文内容を確認して「注文」
(出典: 楽天証券「米国株投資はじめてガイド」)
(4) 約定・決済(T+2)の仕組み
米国株の決済は「T+2」(Trade date + 2営業日)です。例えば、月曜日に注文が約定した場合、水曜日に決済(代金の引き落としと株式の受け渡し)が行われます。
この2営業日の間に口座に十分な資金を用意しておく必要があります。
税金と確定申告
(1) 譲渡益・配当の税金(20.315%)
米国株の譲渡益(売却益)と配当金には、日本で20.315%の税金がかかります。
税金の内訳:
- 所得税: 15.315%
- 住民税: 5%
(2) 外国税額控除の仕組み
配当金には、米国で10%の源泉徴収が行われた後、日本で20.315%が課税されます。これを「二重課税」と呼び、外国税額控除を使えば米国で徴収された10%の一部を日本の税金から差し引けます。
外国税額控除を受けるには、確定申告が必要です。
(出典: 国税庁「外国株式の税金」)
(3) 特定口座(源泉徴収あり)の活用
特定口座(源泉徴収あり)を選ぶと、証券会社が自動で税金を計算・納税してくれるため、基本的に確定申告は不要です。
ただし、外国税額控除を受けたい場合は確定申告が必要です。
(4) 確定申告の要否
確定申告が不要:
- 特定口座(源泉徴収あり)で取引し、外国税額控除を受けない場合
確定申告が必要:
- 一般口座で取引した場合
- 特定口座(源泉徴収なし)で取引した場合
- 外国税額控除を受けたい場合
まとめ:米国株投資を始める前のチェックリスト
米国株投資は、証券口座を開設すれば比較的簡単に始められます。以下のチェックリストを確認して、準備を整えましょう。
チェックリスト:
- 証券会社を選ぶ(SBI・楽天・マネックスなど)
- 本人確認書類とマイナンバーを用意
- 証券口座と外国株取引口座を開設
- 最低投資金額(3〜5万円程度)を用意
- 米ドル決済か円貨決済かを決める
- 注文方法(成行・指値)を理解
- 特定口座(源泉徴収あり)を選択
- NISA口座の活用を検討
次のアクション:
- 証券会社の手数料・銘柄数・ツールを比較して選ぶ
- 口座開設を申し込む(1〜3営業日で完了)
- 少額から投資を始める(3〜5万円程度)
- 長期投資を前提に、分散投資を心がける
投資判断は自己責任で行い、リスクを理解した上で、長期的な資産形成を目指しましょう。