米国株を売りたいけれど、手順や税金が分からない...
米国株を保有している方の中には、「売却手順が分からない」「税金はいくらかかるのか」「為替のタイミングをどう考えればいいのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。売却は買付と同様に重要な投資行動であり、税金や為替の影響を理解しておくことが大切です。
この記事では、米国株の売却手順、注文方法の種類、税金の計算方法、為替の影響、売却タイミングの考え方を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 米国株の売却は証券会社の取引画面から簡単に実行できる
- 売却時の注文方法は成行・指値・逆指値の3種類が基本
- 譲渡所得税20.315%(所得税15.315%+住民税5%)が課税される
- 為替差益も課税対象であり、円建てでの損益を確認することが重要
- NISA口座での売却は非課税(日本の税金)
米国株の売却手順:証券会社別の操作方法
(1) SBI証券での売却手順
SBI証券で米国株を売却する手順は以下の通りです:
- ログイン後、「外国株式」→「取引」→「売却」を選択
- 売却したい銘柄のティッカーシンボル(例:AAPL)を入力
- 売却株数、注文方法(成行・指値)、有効期限を指定
- 注文内容を確認して「注文」ボタンを押す
- 約定後、売却代金がドルで口座に入金される
SBI証券の公式サイトには、画面操作の詳しいガイドが掲載されています。
(2) 楽天証券での売却手順
楽天証券での売却手順もほぼ同様です:
- ログイン後、「外国株式」→「米国株式」→「売却」を選択
- 保有銘柄一覧から売却したい銘柄を選択
- 売却株数、注文方法、有効期限を指定
- 注文内容を確認して実行
- 約定後、売却代金がドルで入金される
楽天証券では、スマホアプリ「iSPEED」からも売却が可能です。
(3) マネックス証券での売却手順
マネックス証券では、以下の手順で売却します:
- ログイン後、「米国株」→「売却」を選択
- 保有銘柄から売却したい銘柄を選択
- 売却株数、注文方法(成行・指値・逆指値)を指定
- 注文内容を確認して実行
- 約定後、ドルで入金される
マネックス証券は逆指値注文にも対応しており、損失を限定したい場合に便利です。
注文方法の種類:成行・指値・逆指値の違い
(1) 成行注文(Market Order)
成行注文は、現在の市場価格ですぐに売却する注文方法です。
メリット:
- 確実に約定する(売却が成立する)
- すぐに売却したい時に便利
デメリット:
- 売却価格が事前に分からない
- 市場が不安定な時は、予想外の価格で約定する可能性
使うべき場面:
- すぐに現金化したい時
- 流動性の高い銘柄(取引量が多い)を売却する時
(2) 指値注文(Limit Order)
指値注文は、希望する価格を指定して売却する注文方法です。
メリット:
- 売却価格をコントロールできる
- 希望価格まで待つことができる
デメリット:
- 希望価格に達しなければ約定しない
- 売却のチャンスを逃す可能性
使うべき場面:
- 希望価格まで株価が上がるのを待ちたい時
- 急いで売却する必要がない時
例:
- 現在の株価が150ドル、155ドルで売りたい場合 → 指値155ドルで注文
- 株価が155ドルに達すれば約定、達しなければ約定しない
(3) 逆指値注文(Stop-Loss Order)
逆指値注文は、株価が一定の水準まで下がったら売却する注文方法です。損失を限定するために使われます。
メリット:
- 損失を一定範囲に抑えられる
- 自動的に売却されるため、常に監視する必要がない
デメリット:
- 一時的な下落で売却されてしまう可能性
- 約定後、株価が回復しても取り戻せない
使うべき場面:
- 損失を限定したい時(例:10%下落したら売却)
- 長期で保有しているが、大きな下落リスクを避けたい時
例:
- 現在の株価が150ドル、135ドルまで下がったら売りたい場合 → 逆指値135ドルで注文
- 株価が135ドルに達すると、成行または指値で売却注文が発動
米国株売却時の税金:譲渡所得税と確定申告
(1) 日本での譲渡所得税(20.315%)
米国株を売却して利益が出た場合、日本で譲渡所得税がかかります。税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)です。
課税対象:
- 売却価格 - 取得価格(購入時の価格+手数料) = 譲渡益
例:
- 取得価格: 100ドル × 100株 = 10,000ドル(為替レート150円/ドルで150万円)
- 売却価格: 150ドル × 100株 = 15,000ドル(為替レート160円/ドルで240万円)
- 譲渡益: 240万円 - 150万円 = 90万円
- 税金: 90万円 × 20.315% = 約18.3万円
(2) 為替差益も課税対象
米国株の売却益だけでなく、為替差益も課税対象です。円安が進んでいる場合、為替差益も大きくなります。
例:
- 購入時: 1ドル=140円、10,000ドル = 140万円
- 売却時: 1ドル=160円、10,000ドル = 160万円
- 為替差益: 160万円 - 140万円 = 20万円 → 課税対象
(3) 特定口座と一般口座の違い
特定口座(源泉徴収あり):
- 証券会社が自動で税金を計算・徴収してくれる
- 確定申告は原則不要(ただし損失繰越や外国税額控除を受ける場合は申告が必要)
一般口座:
- 自分で税金を計算し、確定申告が必要
- 手間がかかるが、損益通算や損失繰越を自分でコントロールできる
多くの投資家は特定口座(源泉徴収あり)を利用しています。
(4) 譲渡損失の繰越控除
米国株の売却で損失が出た場合、その損失を3年間繰り越して、翌年以降の利益と相殺できます。ただし、確定申告が必要です。
例:
- 2024年: 50万円の譲渡損失
- 2025年: 100万円の譲渡益
- 確定申告すれば、100万円 - 50万円 = 50万円に対してのみ課税
国税庁の公式サイトに詳しいガイドがあります。
為替の影響と売却タイミングの考え方
(1) 円建てでの損益を確認する
米国株の売却益はドル建てで計算されますが、日本円での損益も確認することが重要です。
例:
- 購入時: 100ドル(為替レート150円/ドル)= 15,000円
- 売却時: 110ドル(為替レート140円/ドル)= 15,400円
- ドルベース: +10%の利益
- 円ベース: +400円(+2.7%)の利益
円高が進むと、ドルベースでは利益が出ていても、円ベースでは利益が減少または損失になる可能性があります。
(2) 為替タイミングを気にしすぎない
為替レートを完璧に予測することは不可能です。長期投資を前提にするなら、為替タイミングを気にしすぎず、投資計画に基づいて売却を判断することが重要です。
推奨される考え方:
- 投資目的(利益確定、資産の再配分など)に基づいて売却を判断
- 為替レートは参考程度にとどめる
- ドルのまま保有し、次の投資機会を待つ選択肢もある
(3) NISA口座での売却は非課税
NISA口座(成長投資枠またはつみたて投資枠)で保有している米国株を売却した場合、日本の譲渡所得税(20.315%)はかかりません。
ただし、米国での配当金に対する10%源泉徴収は避けられません(譲渡益には米国の税金はかかりません)。
売却タイミングの考え方:目標設定とリバランス
(1) 利益確定の目標を設定する
売却タイミングを判断する一つの方法は、事前に利益確定の目標を設定することです。
例:
- 株価が+30%上昇したら半分売却
- 株価が+50%上昇したら全部売却
これにより、感情に左右されず、計画的に利益確定できます。
(2) ポートフォリオのリバランス
特定の銘柄やセクターの比率が高くなりすぎた場合、リバランス(資産配分の調整)のために一部を売却することも有効です。
例:
- ポートフォリオの40%がテクノロジー株になった → 30%まで減らすために一部売却
(3) 損切りのルール設定
損失が拡大する前に売却する「損切り」も重要な戦略です。逆指値注文を使えば、自動的に損切りできます。
例:
- 株価が購入価格から-10%下落したら売却
ただし、一時的な下落で売却してしまうリスクもあるため、長期投資の方針と照らし合わせて判断しましょう。
まとめ:米国株売却の手順と注意点
米国株の売却は、証券会社の取引画面から簡単に実行できますが、税金や為替の影響を理解しておくことが重要です。
売却時のポイント:
- 注文方法: 成行(すぐ売却)、指値(希望価格で売却)、逆指値(損失限定)を使い分ける
- 税金: 譲渡所得税20.315%、為替差益も課税対象
- 特定口座: 源泉徴収ありなら確定申告不要(ただし損失繰越等は申告必要)
- 為替: 円建てでの損益も確認、タイミングを気にしすぎない
- NISA: NISA口座なら日本の譲渡所得税は非課税
次のアクション:
- 証券会社の公式サイトで売却手順を確認(SBI証券、楽天証券など)
- 保有銘柄の損益を円建てで確認
- 利益確定や損切りのルールを事前に設定
- 特定口座(源泉徴収あり)で取引し、税務処理を簡素化
- NISA口座を活用して非課税で運用
米国株の売却は投資の重要な一部です。税金や為替の影響を理解し、計画的に売却することで、長期的な資産形成を実現しましょう。投資判断は最終的に自己責任で行ってください。
※税制は2025年時点の情報です。最新情報は国税庁の公式サイトをご確認ください。