米国株投資を始める前に知っておくべきこと
「米国株を買ってみたいけど、何から始めればいいの?」
米国株投資に興味を持つ日本人投資家が増えていますが、「どの証券会社を選べばいいか」「口座開設は難しくないか」「税金はどうなるのか」といった疑問が次々に浮かんできます。日本株とは異なる手続きや注意点があるため、初心者が躊躇するのも無理はありません。
この記事では、米国株投資の始め方を5ステップに分けて、初心者でも迷わず実践できるよう詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 米国株は1株から購入可能、2〜3万円あれば有名企業に投資できる
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券が主要3社、手数料と為替コストを比較
- 外国株取引口座の開設が必要、総合口座とは別に申込
- 円貨決済なら自動で両替、外貨決済で為替コストを抑える方法も
- 特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告不要、外国税額控除は要申告
(1) 米国株投資のメリット
米国株投資には、日本株にはない魅力があります:
- 1株から購入可能: 日本株は通常100株単位だが、米国株は1株から投資できる
- 世界トップ企業に投資: Apple、Microsoft、Googleなど、世界を代表する企業の株主になれる
- 配当の頻度が高い: 多くの企業が四半期ごとに配当を支払う(日本は年1〜2回が一般的)
- 市場規模が大きい: NYSE・NASDAQは世界最大の株式市場、流動性が高い
- ドル建て資産の保有: 為替リスクはあるが、円安時には資産価値が上昇
(2) リスクと注意点(為替・元本割れ)
米国株投資にはリスクも伴います:
為替リスク:
- 円高になると、ドル建ての評価額が円換算で目減りする
- 例: 1ドル=150円で購入、1ドル=130円で売却 → 株価が上がっても円建てでは損失の可能性
元本割れリスク:
- 個別株は分散投資されていないため、特定企業の業績悪化で大きな損失も
- 市場全体の下落(リーマンショック、コロナショック等)で評価額が半減することも
税金の二重課税:
- 配当は米国で10%源泉徴収、日本でさらに20.315%課税
- 外国税額控除を使えば一部取り戻せるが、手続きが必要
(3) NISAでの米国株投資
新NISA制度(2024年開始)では、米国株も非課税枠で購入できます:
つみたて投資枠:
- 年間120万円まで非課税
- 対象は金融庁指定の投資信託・ETF(米国株インデックスファンド含む)
- 個別株は対象外
成長投資枠:
- 年間240万円まで非課税
- 米国株の個別株・ETFも購入可能
- 日本の税金(20.315%)は非課税、ただし米国の源泉徴収10%は避けられない
NISA口座の注意点:
- 外国税額控除は適用されない(米国で課税された10%は取り戻せない)
- 損益通算不可(他の口座の利益と損失を相殺できない)
証券会社の選び方(SBI・楽天・マネックス比較)
(1) 手数料・為替コストの比較
主要3社の手数料体系を比較します:
項目 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 |
---|---|---|---|
取引手数料 | 0.495%(上限22ドル) | 0.495%(上限22ドル) | 0.495%(上限22ドル) |
為替手数料(片道) | 25銭 | 25銭 | 買付時無料 |
住信SBI銀行経由 | 4銭 | - | - |
最低手数料 | 0ドル | 0ドル | 0ドル |
※2025年10月時点の情報です。最新の手数料は各証券会社の公式サイトでご確認ください。
コストを抑えるポイント:
- SBI証券: 住信SBIネット銀行で外貨積立すれば為替手数料が片道4銭に
- マネックス証券: 買付時の為替手数料が無料(売却時は25銭)
- 楽天証券: 楽天ポイントで投資可能、ポイント還元あり
(2) 取扱銘柄数の違い
証券会社 | 取扱銘柄数 | 特徴 |
---|---|---|
SBI証券 | 約5,400銘柄 | 国内最多、幅広い選択肢 |
楽天証券 | 約4,700銘柄 | 主要銘柄は網羅 |
マネックス証券 | 約4,500銘柄 | 米国株情報・分析ツールが充実 |
初心者は主要銘柄(GAFAM等)に投資することが多いため、取扱銘柄数の差はそれほど問題になりません。
(3) ポイント還元とツールの違い
SBI証券:
- Tポイント・Pontaポイント・dポイント・Vポイントが貯まる
- 米国株スクリーニングツールあり
楽天証券:
- 楽天ポイントで米国株が買える(ポイント投資)
- 楽天経済圏を活用している人に有利
- 情報ツール「iSPEED」が使いやすい
マネックス証券:
- 米国株の企業分析レポートが充実
- 銘柄スクリーニング機能が豊富
- 米国株専用アプリ「トレードステーション」
口座開設の手順|外国株取引口座の申込
(1) 総合口座の開設
米国株を購入するには、まず証券会社の総合口座を開設します。
開設の流れ(SBI証券の例):
- 公式サイトから「口座開設」を選択
- 本人確認書類をアップロード
- マイナンバーカード、または
- 通知カード + 運転免許証・パスポート等
- 個人情報を入力(氏名、住所、職業、投資経験等)
- 口座タイプを選択
- 特定口座(源泉徴収あり): 税金が自動で天引き、確定申告不要(初心者におすすめ)
- 一般口座: 確定申告が必要
- 審査(通常1〜2週間)
- ログインID・パスワードが郵送またはメールで届く
楽天証券・マネックス証券も同様の流れです。
(2) 外国株取引口座の申込
総合口座開設後、米国株を買うために「外国株取引口座」を追加で申し込みます。
申込方法(SBI証券の例):
- マイページにログイン
- 「口座管理」→「お客さま情報 設定・変更」
- 「外国株式取引口座」を選択
- 約款に同意して申込
- 審査(通常1〜3営業日)
- 開設完了通知がメールで届く
外国株取引口座の審査は早く、最短で翌営業日に取引開始できます。
(3) 本人確認とマイナンバー登録
証券口座開設には、以下の書類が必要です:
本人確認書類(いずれか1つ):
- マイナンバーカード(表裏)
- 通知カード + 運転免許証
- 通知カード + パスポート
提出方法:
- スマホで撮影してアップロード(最も簡単)
- 郵送(書類到着まで時間がかかる)
マイナンバーの登録は法律で義務付けられています。登録しないと口座開設できません。
入金方法とドル転(円→ドル両替)
(1) 円貨決済 vs 外貨決済
米国株を購入する際、決済方法を選べます:
円貨決済:
- 証券会社が自動で円→ドルに両替して購入
- メリット: ドル転の手間が不要
- デメリット: 為替スプレッド(手数料)が高め(片道25銭)
外貨決済:
- 事前にドルに両替(ドル転)してから購入
- メリット: 為替スプレッドが安い(SBI証券なら片道4銭)
- デメリット: 両替の手間がかかる
どちらを選ぶべき?
少額投資(10万円未満)なら円貨決済でOK。100万円以上の投資なら、外貨決済でコストを抑えましょう。
(2) 住信SBIネット銀行での外貨積立
SBI証券ユーザーは、住信SBIネット銀行を活用すると為替コストを大幅に削減できます。
外貨積立の手順:
- 住信SBIネット銀行の口座を開設(SBI証券と同時申込可能)
- 「外貨積立」サービスに申込
- 毎月の積立額を設定(例: 月3万円)
- 為替手数料片道4銭でドルを購入
- SBI証券の外貨建てMMFにドルを入金
- 米国株を外貨決済で購入
コスト比較(10万円投資の場合):
方法 | 為替手数料 | 年間コスト(月10万円積立) |
---|---|---|
円貨決済(25銭) | 250円/回 | 3,000円 |
外貨決済(4銭) | 40円/回 | 480円 |
差額 | - | 2,520円 |
長期積立では、為替コストの差が大きく影響します。
(3) 為替手数料を抑える方法
マネックス証券の場合:
- 買付時の為替手数料が無料
- 売却時は片道25銭
- 長期保有前提なら、買付コストを抑えられる
楽天証券の場合:
- 為替手数料は片道25銭
- 楽天ポイントで米国株を購入すれば、為替コスト不要
銘柄選びと購入方法・税金の基礎知識
(1) 初心者向け:ETF(S&P500等)から始める
初心者は、個別株ではなくETF(上場投資信託)から始めることをおすすめします。
おすすめの米国株ETF:
ティッカー | 名称 | 特徴 | 株価目安 |
---|---|---|---|
VOO | バンガード S&P500 ETF | 米国大型株500社に分散 | 約450ドル |
VTI | バンガード・トータル・ストック・マーケットETF | 米国株全体(約4,000社) | 約250ドル |
QQQ | インベスコQQQ トラスト | NASDAQ100(ハイテク大型株) | 約450ドル |
ETFなら1銘柄で数百〜数千社に分散投資でき、個別株よりもリスクを抑えられます。
(2) ティッカーシンボルでの検索と注文方法
米国株は「ティッカーシンボル」(企業コード)で検索します。
主要銘柄のティッカーシンボル:
- Apple → AAPL
- Microsoft → MSFT
- Google(Alphabet) → GOOGL
- Amazon → AMZN
- Tesla → TSLA
注文の流れ(スマホアプリの例):
- アプリを起動してログイン
- 検索バーにティッカーシンボル(例: AAPL)を入力
- 銘柄ページで「買付」をタップ
- 注文数量を入力(例: 1株)
- 注文種類を選択
- 成行注文: その時点の価格で即座に購入
- 指値注文: 希望価格を指定して購入(初心者におすすめ)
- 決済方法を選択(円貨決済 or 外貨決済)
- 内容を確認して「注文」をタップ
(3) 税金の基礎知識(配当課税・外国税額控除)
米国株の配当や売却益には、以下の税金がかかります:
配当課税:
- 米国での源泉徴収: 10%
- 日本での課税: 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
具体例(100ドルの配当):
- 米国で10ドル源泉徴収 → 手取り90ドル
- 日本で約18ドル課税(特定口座の場合、自動で天引き)
- 実質的な手取り: 約72ドル
外国税額控除:
確定申告で外国税額控除を申請すれば、米国で課税された10%を日本の所得税から一部差し引けます。ただし、控除額には上限があります。
確定申告の必要性:
- 特定口座(源泉徴収あり): 原則不要
- 外国税額控除を受ける場合: 確定申告が必要
- NISA口座: 確定申告不要(外国税額控除も適用されない)
※2025年10月時点の税率です。最新情報は国税庁のウェブサイトをご確認ください。
まとめ:米国株投資を始める5ステップ
米国株投資の始め方を、5ステップでまとめます。
ステップ1: 証券会社を選ぶ
- SBI証券(取扱銘柄数最多、住信SBI銀行で為替コスト削減)
- 楽天証券(楽天ポイント活用、楽天経済圏)
- マネックス証券(買付時の為替手数料無料、米国株情報充実)
ステップ2: 口座を開設する
- 総合口座(特定口座・源泉徴収ありがおすすめ)
- 外国株取引口座(総合口座開設後に追加申込)
- 本人確認書類とマイナンバーが必要
ステップ3: 入金・ドル転
- 少額(10万円未満): 円貨決済でOK
- 大口(100万円以上): 外貨決済で為替コスト削減
- 住信SBI銀行の外貨積立なら為替手数料片道4銭
ステップ4: 銘柄を選ぶ
- 初心者: ETF(VOO、VTI、QQQ等)がおすすめ
- 個別株: ティッカーシンボルで検索
- 指値注文で希望価格を指定
ステップ5: 税金を理解する
- 配当は米国10%、日本20.315%の二重課税
- 外国税額控除で一部取り戻せる(要確定申告)
- NISA口座なら日本の税金は非課税
投資前のチェックリスト:
- 為替リスクを理解しているか(円高で評価額が目減り)
- 元本割れのリスクを受け入れられるか
- 長期投資が前提(短期売買で儲けようとしない)
- 生活資金とは別に、余裕資金で投資しているか
米国株は1株から購入でき、Apple(約2万円)やMicrosoft(約4万円)など、少額からでも世界トップ企業に投資できます。まずは少額で始めて、操作に慣れることが成功への第一歩です。
投資は元本保証がありません。投資判断は自己責任で行い、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。