米国株の配当をドルで受け取るとは?
米国株から配当金を受け取る際、「自動的に円に両替されて受け取るか」「ドルのまま受け取るか」を選べることをご存知でしょうか。配当金をドルのまま受け取ることで、為替手数料を節約したり、ドルで再投資したりすることが可能です。
この記事では、米国株の配当をドルで受け取る方法、証券会社別の対応状況、メリット・デメリット、税制面の注意点を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 配当金はドルで受け取るか、円に両替して受け取るか選べる
- ドル受取なら為替手数料を節約でき、ドルで再投資しやすい
- 為替リスクを保有することになり、管理が複雑になる
- SBI証券、楽天証券、マネックス証券が外貨決済に対応
- 配当金の課税は、支払日の為替レートで円換算して計算
(1) 外貨決済と円転の違い
円転 とは、配当金をドルから円に両替して受け取ることです。証券会社が自動的に為替交換を行い、円で証券口座に入金されます。
外貨決済(ドル受取) とは、配当金をドルのまま証券口座に入金し、円に両替せずに保有することです。ドルのまま米国株を購入したり、必要な時に円に両替したりできます。
(2) どんな人がドル受取を選ぶべきか
ドル受取が向いているのは、以下のような人です:
- 配当金をドルのまま米国株に再投資したい人
- 為替手数料を節約したい人
- 将来的に海外移住や海外でのドル使用を考えている人
- 為替タイミングを自分で選びたい人
Investopediaなどの金融教育サイトでは、株式取引における通貨管理の基本が解説されています。
ドル受取の仕組みと円転との違い
配当金の受取プロセスと為替手数料の発生タイミングを理解しましょう。
(1) 配当金の受取プロセス
米国株の配当金は、米国企業から米国で10%源泉徴収された後、ドル建てで支払われます。証券会社が配当金を受け取り、以下のいずれかの方法で投資家に渡します:
- 円転(自動円転): ドルを円に両替して、円で証券口座に入金
- ドル受取(外貨決済): ドルのまま証券口座(外貨預り金)に入金
SECの公式サイトでは、配当金の支払い方法に関する基本情報が提供されています。
(2) 外貨預り金の仕組み
外貨預り金とは、証券口座内のドル残高のことです。配当金をドルで受け取ると、外貨預り金としてドル残高が積み上がります。このドルを使って、米国株を購入したり、円に両替したりできます。
ただし、外貨預り金には金利が付かないか、ごくわずかな金利しか付きません。ドルを長期間保有する場合は、外貨建てMMFなどの金融商品を検討する選択肢もあります。
(3) 為替手数料の発生タイミング
円転の場合: 配当金受取時に自動的に為替交換が行われ、為替手数料がかかります。主要ネット証券の為替手数料は1ドル=25銭程度です。
ドル受取の場合: 配当金受取時には為替手数料がかかりません。ドルを円に両替する時に初めて為替手数料が発生します。ドルのまま米国株を購入すれば、為替手数料を節約できます。
Yahoo Financeなどのサイトでは、為替レートをリアルタイムで確認できます。
証券会社別のドル受取対応状況
主要ネット証券のドル受取対応状況を確認しましょう。
(1) SBI証券の外貨決済サービス
SBI証券では、「外貨決済サービス」を提供しており、配当金をドルで受け取ることができます。外貨預り金としてドル残高を保有でき、ドルのまま米国株を購入できます。
為替手数料は1ドル=25銭(片道)です(2025年1月時点)。SBI証券の公式サイトでは、外貨決済の詳細な手順が説明されています。
(2) 楽天証券の外貨管理
楽天証券でも、配当金をドルで受け取り、外貨預り金として保有できます。為替手数料は1ドル=25銭(片道)です(2025年1月時点)。
楽天証券の公式サイトでは、外貨建て商品の取引方法や、ドルのまま保有するメリットが解説されています。
(3) マネックス証券の対応
マネックス証券でも、外貨決済サービスを提供しており、配当金をドルで受け取れます。為替手数料は1ドル=25銭(片道)ですが、買付時に為替手数料無料キャンペーンを実施している場合があります(2025年1月時点)。
マネックス証券の公式サイトでは、外貨決済の仕組みが紹介されています。
(4) その他の証券会社の比較
主要ネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券)は外貨決済に対応していますが、一部の証券会社では外貨決済サービスがない場合もあります。配当金をドルで受け取りたい場合は、証券会社のサービス内容を事前に確認しましょう。
※最新のサービス内容や手数料は、各証券会社の公式サイトでご確認ください。
ドル受取のメリットとデメリット
ドル受取のメリット・デメリットを理解しましょう。
(1) メリット:為替手数料の節約、再投資の効率化、為替タイミングの選択
為替手数料の節約: 配当金をドルで受け取り、ドルのまま米国株を購入すれば、為替手数料(1ドル=25銭程度)がかかりません。例えば、配当金1,000ドル(約15万円、1ドル=150円換算)を円転すると、為替手数料は約250円(25銭 × 1,000ドル)です。ドルのまま再投資すれば、この手数料を節約できます。
再投資の効率化: ドルのまま保有しておけば、いつでもすぐに米国株を購入できます。円転してから再度ドルに交換すると、往復で為替手数料がかかるため、ドル受取の方が効率的です。
為替タイミングの選択: ドルのまま保有しておき、円高時に円に両替すれば、有利なレートで円転できる可能性があります。ただし、為替予測は困難であり、タイミングを狙うことは推奨されません。
日本証券業協会の公式サイトでは、外貨決済のメリットが説明されています。
(2) デメリット:為替リスクの保有、管理の複雑さ、出金時の手数料
為替リスクの保有: ドルのまま保有すると、為替変動の影響を受けます。円高ドル安が進めば、ドル資産の円換算価値が下がります。例えば、1ドル=150円で1,000ドル(15万円)を保有していたとして、1ドル=140円に円高が進むと、円換算で14万円に目減りします。
管理の複雑さ: 円とドルの両方を管理する必要があり、資産管理が複雑になります。確定申告時に為替レートを確認する手間もかかります。
出金時の手数料: ドルを銀行口座に出金する際、証券会社によっては出金手数料がかかる場合があります。
(3) コスト比較(円転 vs ドル受取)
円転の場合: 配当金1,000ドルを円転し、再度ドルに交換して米国株を購入すると、往復で為替手数料が約500円(25銭 × 1,000ドル × 2回)かかります。
ドル受取の場合: 配当金をドルのまま米国株に再投資すれば、為替手数料は0円です。
ドルのまま再投資する場合は、ドル受取の方がコスト面で有利です。
税制面での注意点と確定申告
ドル受取の税制面の注意点を理解しましょう。
(1) 配当金の課税タイミング
配当金は、米国で10%源泉徴収された後、日本で20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)が課税されます。配当金の課税は、支払日の為替レートで円換算して計算されます。
ドルで受け取っても円で受け取っても、課税額は同じです。
(2) 為替差益の扱い
ドルを円に両替する際、為替差益が出た場合、雑所得として課税される場合があります。ただし、年間の為替差益が20万円以下であれば、確定申告は不要です(給与所得者の場合)。
国税庁の公式サイトでは、外貨建て資産の課税について詳しく説明されています。
(3) 確定申告時の為替レート適用ルール
外国税額控除を受けるために確定申告をする場合、配当金の金額を円換算する必要があります。この際、配当支払日の為替レート(TTBレート、電信買相場)を使用します。
為替レートは金融機関によって異なるため、証券会社が提供する為替レートを使用するのが一般的です。
(4) 外国税額控除との関係
配当金は米国で10%源泉徴収されていますが、外国税額控除を利用すれば、日本の所得税から一部還付できます。外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。
ドルで受け取っても円で受け取っても、外国税額控除の計算方法は同じです。
まとめ:ドル受取が向いている人・向いていない人
米国株の配当金をドルで受け取ることには、為替手数料の節約や再投資の効率化といったメリットがあります。一方で、為替リスクの保有や管理の複雑さといったデメリットもあります。
ドル受取が向いている人:
- 配当金をドルのまま米国株に再投資したい人
- 為替手数料を節約したい人
- ドル資産を長期保有する予定の人
ドル受取が向いていない人:
- 配当金を円で生活費に使いたい人
- 為替リスクを避けたい人
- 資産管理をシンプルにしたい人
次のアクション:
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券で外貨決済サービスを確認
- 配当金の再投資計画を立てる
- 為替リスクと手数料を比較し、自分に合った方法を選ぶ
- 確定申告時の為替レート適用ルールを理解する
ドル受取は、配当金を効率的に再投資するための有効な手段です。自分の投資スタイルに合わせて、円転かドル受取かを選択しましょう。投資判断は自己責任で行い、税務面で不安な場合は税理士などの専門家にご相談ください。