米国株割高?2025年バリュエーション分析と投資戦略

公開日: 2025/10/20

「米国株は割高」という声が高まる背景

「米国株が高すぎるのでは?」「今から投資しても大丈夫?」と不安を感じている投資家の方は少なくありません。S&P500は過去10年で大きく上昇し、PER(株価収益率)も歴史的な平均を上回る水準で推移しています。

しかし、「割高」という指標だけで投資判断をするのは危険です。過去には割高と言われながらも上昇を続けた局面もあれば、割高から暴落した局面もあります。この記事では、現在の米国株のバリュエーション(株価評価)を複数の指標で分析し、割高局面での投資戦略を解説します。

この記事のポイント:

  • S&P500のPERは20-25倍で、長期平均(15-18倍)よりやや高い
  • ITバブル期(PER 30倍超)やリーマン前と比べると極端な割高ではない
  • 低金利環境や企業収益成長により、割高でも上昇する可能性はある
  • 割高局面ではドルコスト平均法で時間分散し、リスクを軽減する
  • 長期投資前提なら、タイミングを過度に気にする必要はない

(1) 過去10年の株価上昇率

S&P500は2015年から2025年にかけて約2倍以上に上昇しました。特に2020年以降のコロナ後の金融緩和により、株価は大きく上昇しています。この急激な上昇が、「割高では?」という警戒感を生んでいます。

(2) PERが過去平均を上回る水準

S&P500のPERは現在20-25倍前後で推移しており、過去30年の平均である15-18倍を上回っています(2025年1月時点)。この水準を見て、多くの投資家が「割高」と感じるのは自然な反応です。

(3) 投資家の警戒感

「バブルではないか」「調整(株価下落)が来るのでは」といった警戒感が広がっており、新規投資をためらう投資家が増えています。特に、過去のITバブルやリーマンショックを経験した投資家ほど、慎重になる傾向があります。

米国株の現在のバリュエーション分析

株価の割高・割安を判断するには、複数の指標を総合的に見る必要があります。

(1) PER(株価収益率)から見た割高度

PERは「株価 ÷ 1株利益」で計算され、株価が利益の何倍かを示します。S&P500の現在のPERは約20-25倍で、長期平均(15-18倍)より高い水準です。

ただし、PERが高い理由は複数あります。例えば、低金利環境では、将来の利益がより高く評価されるため、PERが上昇する傾向があります。

(2) PBR(株価純資産倍率)の推移

PBRは「株価 ÷ 1株純資産」で計算され、企業の純資産に対して株価がどれだけ高いかを示します。S&P500のPBRは現在4倍前後で、こちらも過去平均(2-3倍)を上回っています。

(3) シラーPER(CAPE)の分析

シラーPERは、過去10年間の平均利益を使って計算したPERで、景気変動の影響を除いた長期的な割高度を測る指標です。現在のシラーPERは約30倍前後で、長期平均(16-17倍)を大きく上回っています。

ただし、ITバブル期(2000年)のシラーPERは44倍に達しており、現在はその水準には達していません。

(4) バフェット指標(時価総額/GDP比率)

バフェット指標は、米国株式市場の時価総額をGDP(国内総生産)で割った値です。100%を超えると割高とされ、現在は約180%前後と言われています(2025年時点)。これは歴史的に高い水準ですが、ITバブル期の140%を上回っています。

(5) セクター別の割高度

米国株式市場はセクターによって割高度が大きく異なります。例えば、テクノロジーセクターは歴史的にPERが高く(30-40倍も珍しくない)、エネルギーや金融セクターは低PER(10-15倍)で推移しています。

(6) 予想PERと実績PERの比較

予想PERは、来期の予想利益に基づくPERです。現在の予想PERは約18-22倍で、実績PER(20-25倍)よりやや低い水準です。これは、市場が今後の企業収益成長を期待していることを示しています。

過去の割高局面との比較

(1) ITバブル期(2000年)のバリュエーション

2000年のITバブル期、S&P500のPERは約30倍、シラーPERは44倍に達しました。特にテクノロジー株のPERは100倍を超える銘柄もあり、極端な割高状態でした。その後、2000-2002年にかけて約50%以上の下落が起きました。

(2) リーマンショック前(2007年)の水準

2007年のリーマンショック前、PERは約20倍前後で、現在とほぼ同じ水準でした。ただし、当時は住宅バブルと金融機関の過剰なレバレッジが問題となり、2007-2009年にかけて約40%以上下落しました。

(3) 現在との共通点と相違点

共通点:

  • PERが過去平均を上回る
  • 株価が長期間上昇している
  • 一部で「バブル」との声

相違点:

  • ITバブル期ほど極端な高PERではない
  • 企業収益は堅調に成長している(ITバブル期は利益のない企業も多かった)
  • 金融システムの健全性は当時より改善

(4) 過去の割高局面からの教訓

過去の割高局面から学べることは、「割高だからすぐ暴落する」とは限らないことです。割高でも数年間上昇を続けることもあります。一方で、極端な割高状態は調整(下落)を伴うことが多いのも事実です。

割高でも株価が上昇する理由

(1) 企業収益の継続的成長

米国企業は過去10年間で利益を大きく伸ばしています。特にGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)などのテクノロジー企業は、収益性が高く、安定した成長を続けています。株価が上昇しても、利益成長が追いつけば、PERは低下します。

(2) 低金利環境の影響

金利が低い環境では、将来のキャッシュフローの現在価値が高まるため、株価が上昇しやすくなります。過去10年間の低金利環境が、株価上昇を後押ししてきました。

(3) テクノロジー企業の構造的優位性

現代のテクノロジー企業は、プラットフォームビジネスやサブスクリプションモデルにより、安定した収益を上げています。これは過去の製造業中心の経済とは異なる構造です。

(4) グローバル経済の成長

米国企業は世界中で事業を展開しており、新興国の経済成長が米国企業の利益にも貢献しています。

(5) 長期的な資金流入トレンド

年金基金や個人投資家からの長期的な資金流入が、米国株式市場を支えています。特に、インデックス投資の普及により、S&P500への資金流入が続いています。

割高局面での投資戦略とリスク管理

(1) ドルコスト平均法による時間分散

ドルコスト平均法とは、毎月一定額を投資する方法です。株価が高い時は少なく、安い時は多く買えるため、平均購入単価を抑えられます。割高局面では特に有効な戦略です。

例えば、毎月5万円ずつ投資すれば、株価が下がった時には自動的に多くの株を買えます。

(2) 一括投資vs分割投資

割高局面では、一括投資よりも分割投資の方がリスクを抑えられます。例えば、300万円を一括投資するのではなく、月10万円ずつ2年半かけて投資する方が、下落局面でのダメージを軽減できます。

(3) セクター分散の重要性

テクノロジー株だけに集中投資すると、セクター全体が下落した時のダメージが大きくなります。ヘルスケア、生活必需品、金融など、異なるセクターに分散することで、リスクを分散できます。

(4) 長期投資前提の考え方

過去のデータを見ると、S&P500に15年以上投資した場合、元本割れする確率はほぼゼロと言われています。短期的な割高・割安にとらわれず、長期保有を前提とすることが重要です。

(5) 調整局面への心構え

米国株式市場では、年に1-2回程度、10-20%の調整(下落)が起こることは珍しくありません。こうした調整局面で慌てて売却せず、継続して投資できる心構えが必要です。

(6) 新規投資vs既存ポジション保持

既に米国株を保有している方は、長期保有を継続することが推奨されます。一方、新規投資する方は、ドルコスト平均法で少しずつ投資を始めるのが良いでしょう。

まとめ:割高論と投資判断の考え方

米国株は複数のバリュエーション指標で見ると、歴史的な平均よりは高い水準にあります。しかし、ITバブル期ほど極端な割高ではなく、企業収益の成長や低金利環境を考慮すれば、必ずしも「バブル」とは言えません。

割高かどうかの判断は、タイミング予測と同様に困難です。長期投資を前提とするなら、ドルコスト平均法で時間分散し、調整局面でも継続する姿勢が重要です。

次のアクション:

  • 長期投資前提で米国株投資を検討する
  • ドルコスト平均法で分割投資を始める
  • セクター分散でリスクを軽減する
  • 調整局面(10-20%下落)を想定した心構えを持つ

市場の短期的な変動に一喜一憂せず、自分の投資方針を貫くことが、長期的な資産形成につながります。

※本記事は2025年1月時点の情報です。バリュエーション指標は変動するため、最新のデータは各情報源でご確認ください。投資判断は自己責任で行ってください。

よくある質問

Q1米国株のPERはどのくらいが適正ですか?

A1S&P500の長期平均は15-18倍程度です。ただし金利水準や成長率により変動します。現在は20-25倍で過去平均よりやや高いですが、ITバブル期(30倍超)ほどではありません。

Q2過去の割高局面ではその後どうなりましたか?

A2ITバブル(2000年)は50%超下落、リーマン前(2007年)も40%超下落しました。ただし長期保有なら回復しています。割高局面でも上昇が続く場合もあり、タイミング予測は困難です。

Q3割高な時に米国株に投資する方法は?

A3ドルコスト平均法で分割購入し、時間分散でリスクを軽減します。一括投資は避け、セクター分散も重要です。調整局面(10-20%下落)を想定した長期保有が前提となります。

Q4今から新規投資するのは危険ですか?

A4割高かどうかの判断は困難で、タイミング予測も不可能です。長期投資前提なら、ドルコスト平均法で開始し、調整局面でも継続する戦略が推奨されます。短期的な値動きに一喜一憂しないことが重要です。

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