米国株と大統領選挙の影響|過去データで見る投資戦略

公開日: 2025/10/20

米国大統領選挙で保有銘柄はどうなる...?投資を続けるべきか迷っている

米国株に投資している日本人投資家の多くが、大統領選挙の年に不安を抱えています。「選挙で株価は暴落するのではないか」「共和党と民主党、どちらが株価に有利なのか」「選挙前に一旦現金化すべきか」といった疑問は尽きません。

この記事では、過去の大統領選挙年の市場データを分析し、セクター別の影響、選挙前後の投資戦略、日本人投資家特有のリスク管理(為替リスク含む)を解説します。

この記事のポイント:

  • 過去の選挙年でも米国株は上昇傾向(2020年、2016年、2012年等)
  • 短期的なボラティリティは高まるが、長期リターンは政権政党に関係なくプラス
  • セクター別の影響あり(エネルギー、ヘルスケア、テクノロジー等)
  • 選挙結果を予測して売買するのはリスク大(機会損失)
  • 長期分散投資を継続し、ドルコスト平均法で積立を続けるのが合理的

1. 米国大統領選挙が株式市場に与える影響とは

米国大統領選挙は4年に一度、世界の金融市場に大きな注目が集まるイベントです。新政権の経済政策、税制改革、規制の変更が株式市場に影響を与える可能性があるため、投資家は選挙結果を注視します。

しかし、「選挙年は株価が下がる」「共和党が勝てば株価が上がる」といった単純な法則は存在しません。過去のデータを客観的に分析すると、選挙が市場に与える影響は限定的であり、長期投資家にとっては大きな懸念材料ではないことがわかります。

この記事では、過去の選挙年のデータ、セクター別の影響、日本人投資家が取るべき戦略を、中立的な視点から解説します。

2. 過去の大統領選挙年の市場パフォーマンス分析

過去の大統領選挙年に、米国株市場がどのようなパフォーマンスを示したかを見てみましょう。

(1) 過去20年の選挙年のS&P500リターン

選挙年 当選者 政党 S&P500年間リターン
2020 バイデン 民主党 +16.3%
2016 トランプ 共和党 +9.5%
2012 オバマ(再選) 民主党 +13.4%
2008 オバマ 民主党 -38.5%(金融危機)
2004 ブッシュ(再選) 共和党 +9.0%
2000 ブッシュ 共和党 -10.1%(ITバブル崩壊)

分析:

  • 過去20年の選挙年のうち、4回は10%以上のプラスリターン
  • 2008年と2000年のマイナスリターンは、選挙よりも金融危機やバブル崩壊の影響が大きい
  • 長期的には、選挙年も市場は上昇傾向にある

(2) 4年サイクル理論

「Presidential Election Cycle Theory(大統領選挙サイクル理論)」によれば、4年周期で市場には以下の傾向があると言われています:

  • 1年目(就任年): 低調。新政権が不人気な政策を実施することが多い
  • 2年目(中間選挙年): やや低調。中間選挙による不確実性
  • 3年目: 最も好調。次の選挙に向けて景気刺激策を実施
  • 4年目(選挙年): 中立的。選挙不確実性と景気刺激策のバランス

ただし、この理論は統計的に有意とは言えず、例外も多くあります。市場は複雑な要因で動くため、4年サイクルだけで投資判断をするのは危険です。

(3) 選挙前後のボラティリティ

選挙前後は、市場のボラティリティ(変動性)が高まる傾向があります。VIX指数(恐怖指数)は、選挙直前に上昇することが多いです。

VIX指数の推移(選挙年):

  • 2020年: VIXは選挙前に30-40台で推移(コロナ禍の影響も)
  • 2016年: VIXは選挙直前に20台に上昇
  • 2012年: VIXは選挙前後で15-20台

ボラティリティが高い時期は、短期的な価格変動が大きくなりますが、長期投資家にとっては買い増しのチャンスとも言えます。

(4) 長期リターンは政権政党に関係なく上昇傾向

過去のデータを見ると、共和党政権でも民主党政権でも、長期的には株価は上昇しています。

政党別の年平均リターン(1952-2020年):

  • 民主党政権: 年平均約10.6%
  • 共和党政権: 年平均約4.8%

ただし、この差は政権の政策だけでなく、景気サイクル、金融危機、技術革新など、多様な要因が絡んでいます。「民主党が株価に有利」と単純に結論づけることはできません。

3. セクター別の影響分析

大統領選挙では、共和党と民主党の政策の違いが、セクター(業種)ごとに異なる影響を与えることがあります。

(1) エネルギーセクター(規制緩和vs脱炭素)

  • 共和党: 化石燃料産業を支持、規制緩和を推進
  • 民主党: 再生可能エネルギーを推進、脱炭素政策を強化

市場の反応:

  • 共和党が勝利すると、石油・天然ガス企業(Exxon Mobil、Chevron等)が上昇する傾向
  • 民主党が勝利すると、再生可能エネルギー企業(NextEra Energy等)が注目される

ただし、エネルギー価格は国際情勢や需給バランスにも左右されるため、政権だけで決まるわけではありません。

(2) ヘルスケアセクター(医療保険制度の違い)

  • 共和党: 民間保険を重視、規制緩和
  • 民主党: 公的医療保険の拡大、薬価規制強化

市場の反応:

  • 共和党が勝利すると、製薬会社や民間保険会社が好感
  • 民主党が勝利すると、薬価規制への懸念から製薬株が下落することも

ヘルスケアは政策の影響を受けやすいセクターですが、高齢化による需要増など、長期的な成長要因も大きいです。

(3) テクノロジーセクター(規制強化vs緩和)

  • 共和党: ビジネス寄り、規制緩和を支持
  • 民主党: 反トラスト法による規制強化(GAFAM等への独占禁止)

市場の反応:

  • 共和党が勝利すると、テクノロジー企業は規制緩和を期待
  • 民主党が勝利すると、GAFAM等の大手テック企業への規制強化懸念

ただし、テクノロジーセクターは両党政権下でも成長を続けており、政権よりも技術革新や企業業績の影響が大きいです。

(4) 金融セクター(規制緩和vs消費者保護)

  • 共和党: 金融規制緩和を推進(ドッド・フランク法の緩和等)
  • 民主党: 消費者保護を重視、銀行規制を強化

市場の反応:

  • 共和党が勝利すると、銀行株(JPMorgan Chase、Bank of America等)が上昇
  • 民主党が勝利すると、規制強化への懸念から銀行株が下落することも

(5) 政策は公約通りに実現しない場合もある

重要な点として、選挙公約がすべて実現するわけではありません。議会の構成(上院・下院の多数党)、司法の判断、国際情勢など、多くの要因が政策実現に影響します。

「分割政府」(大統領と議会の多数党が異なる)の場合、大胆な政策変更は難しく、市場は安定する傾向があります。

4. 選挙前後の投資戦略

大統領選挙前後に、投資家はどのような戦略を取るべきでしょうか。

(1) 長期分散投資を継続(短期的な変動を気にしない)

最も推奨される戦略は、長期分散投資を継続することです。選挙結果を予測して売買するのは、以下のリスクがあります:

  • 選挙結果の予測は困難(世論調査と実際の結果が異なることも)
  • 売却後に株価が上昇し、機会損失のリスク
  • 売買による税金・手数料のコスト

過去のデータから、選挙年も長期的には株価は上昇しています。短期的な変動を気にせず、保有を継続することが合理的です。

(2) セクターローテーションの検討

選挙結果を見越したセクターローテーション(業種の入れ替え)は、一定のリスクがあります。

注意点:

  • 選挙結果が予想と異なる場合、損失が拡大
  • 政策が公約通りに実現しない可能性
  • セクターローテーションはタイミングが難しい

セクターローテーションを検討する場合は、ポートフォリオ全体の一部(10-20%程度)に留め、コア部分は分散投資を維持することが賢明です。

(3) 選挙結果待ちで現金保有はリスク(機会損失)

「選挙結果が出るまで現金で待つ」という戦略は、機会損失のリスクがあります。

過去の例:

  • 2016年トランプ当選時、「株価暴落」を予想して現金化した投資家が多かったが、実際には大幅上昇
  • 2020年バイデン当選時も同様に、予想と逆の動きが起きた

市場は予測不可能です。選挙結果を待つよりも、投資を継続する方が長期的には有利です。

(4) ドルコスト平均法で積立継続

ドルコスト平均法(定期的に一定額を投資)は、選挙年でも有効です。

メリット:

  • 選挙による短期的な変動を平準化
  • タイミングを気にせず投資を継続
  • つみたてNISAで実践可能

毎月一定額をS&P500インデックスファンドに積み立てれば、選挙による変動の影響を抑えながら資産形成ができます。

5. 日本人投資家が知るべきリスク管理

日本人投資家には、為替リスクも含めたリスク管理が重要です。

(1) 為替変動の影響(ドル円レート)

米国株投資では、株価だけでなく、ドル円レートの変動も考慮する必要があります。

為替リスクの例:

  • 株価が10%上昇しても、円高で10%ドル安になれば円建てリターンはゼロ
  • 逆に、株価が横ばいでも、円安が進めば円建てリターンはプラス

選挙結果により、財政政策や金融政策が変わり、為替レートも変動します。為替リスクを完全に避けることはできませんが、長期保有により為替変動の影響は平準化されます。

(2) 分散投資の重要性(米国株だけに集中しない)

米国株だけに集中投資すると、選挙リスクや為替リスクが大きくなります。

分散投資の例:

  • 米国株60%、全世界株式(米国以外)30%、債券10%
  • S&P500とオールカントリー(全世界株式)を組み合わせる

分散投資により、特定の国や地域の影響を軽減できます。

(3) メディアのノイズに惑わされない

選挙期間中は、メディアが過剰に反応することがあります。「株価暴落」「市場大混乱」といった見出しに惑わされず、冷静に判断することが重要です。

対策:

  • ニュースは参考程度に留める
  • 長期投資の視点を維持
  • 感情的な売買を避ける

(4) 政策不確実性は一時的(新政権発足後に明確化)

選挙前後の政策不確実性は、新政権発足後に徐々に明確化します。市場は不確実性を嫌いますが、政策が明らかになれば、それに応じて調整されます。

一時的な変動を気にせず、長期的な視点で投資を続けることが賢明です。

6. まとめ:長期視点で選挙リスクを乗り越える

米国大統領選挙は、短期的な市場のボラティリティを高めますが、長期的には株価は上昇傾向にあります。過去のデータから、選挙年も10%以上のリターンを記録することが多く、政権政党に関係なく市場は成長してきました。

セクター別の影響はあるものの、政策が公約通りに実現するとは限らず、選挙結果を予測して売買するのはリスクが大きいです。長期分散投資を継続し、ドルコスト平均法で積立を続けることが、最も合理的な戦略と言えます。

次のアクション:

  • 長期分散投資を継続し、選挙による短期変動を気にしない
  • つみたてNISAでドルコスト平均法を実践
  • 米国株だけでなく、全世界株式や債券にも分散投資
  • メディアのノイズに惑わされず、冷静に判断
  • 為替リスクも考慮し、長期保有で影響を平準化

選挙は4年に一度のイベントですが、資産形成は数十年の長期戦です。短期的な変動に惑わされず、長期視点で投資を続けることが、成功への鍵です。

よくある質問

Q1大統領選挙で米国株は下がりますか?

A1過去データでは、選挙年も上昇傾向にあります。2020年は+16.3%、2016年は+9.5%、2012年は+13.4%でした。短期的なボラティリティは高まりますが、長期リターンは政権政党に関係なくプラスです。

Q2共和党と民主党、どちらが株価に有利ですか?

A2どちらが良いかは一概に言えません。セクターによって影響が異なります。エネルギーは共和党、ヘルスケアは民主党有利との見方もありますが、長期的には両党政権下でも市場は成長しています。

Q3選挙前に現金化すべきですか?

A3推奨しません。選挙結果を予測して売買すると、機会損失のリスクがあります。2016年トランプ当選時も、予想に反して株価は大幅上昇しました。長期投資なら、ドルコスト平均法で積立継続が合理的です。

Q4日本人投資家は為替リスクをどう考えるべきですか?

A4選挙による政策変更で、ドル円レートも変動します。為替リスクを完全に避けることはできませんが、長期保有により影響は平準化されます。米国株だけでなく、日本株・債券にも分散投資することをおすすめします。

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