米国大統領選挙で保有銘柄はどうなる...?投資を続けるべきか迷っている
米国株に投資している日本人投資家の多くが、大統領選挙の年に不安を抱えています。「選挙で株価は暴落するのではないか」「共和党と民主党、どちらが株価に有利なのか」「選挙前に一旦現金化すべきか」といった疑問は尽きません。
この記事では、過去の大統領選挙年の市場データを分析し、セクター別の影響、選挙前後の投資戦略、日本人投資家特有のリスク管理(為替リスク含む)を解説します。
この記事のポイント:
- 過去の選挙年でも米国株は上昇傾向(2020年、2016年、2012年等)
- 短期的なボラティリティは高まるが、長期リターンは政権政党に関係なくプラス
- セクター別の影響あり(エネルギー、ヘルスケア、テクノロジー等)
- 選挙結果を予測して売買するのはリスク大(機会損失)
- 長期分散投資を継続し、ドルコスト平均法で積立を続けるのが合理的
1. 米国大統領選挙が株式市場に与える影響とは
米国大統領選挙は4年に一度、世界の金融市場に大きな注目が集まるイベントです。新政権の経済政策、税制改革、規制の変更が株式市場に影響を与える可能性があるため、投資家は選挙結果を注視します。
しかし、「選挙年は株価が下がる」「共和党が勝てば株価が上がる」といった単純な法則は存在しません。過去のデータを客観的に分析すると、選挙が市場に与える影響は限定的であり、長期投資家にとっては大きな懸念材料ではないことがわかります。
この記事では、過去の選挙年のデータ、セクター別の影響、日本人投資家が取るべき戦略を、中立的な視点から解説します。
2. 過去の大統領選挙年の市場パフォーマンス分析
過去の大統領選挙年に、米国株市場がどのようなパフォーマンスを示したかを見てみましょう。
(1) 過去20年の選挙年のS&P500リターン
選挙年 | 当選者 | 政党 | S&P500年間リターン |
---|---|---|---|
2020 | バイデン | 民主党 | +16.3% |
2016 | トランプ | 共和党 | +9.5% |
2012 | オバマ(再選) | 民主党 | +13.4% |
2008 | オバマ | 民主党 | -38.5%(金融危機) |
2004 | ブッシュ(再選) | 共和党 | +9.0% |
2000 | ブッシュ | 共和党 | -10.1%(ITバブル崩壊) |
分析:
- 過去20年の選挙年のうち、4回は10%以上のプラスリターン
- 2008年と2000年のマイナスリターンは、選挙よりも金融危機やバブル崩壊の影響が大きい
- 長期的には、選挙年も市場は上昇傾向にある
(2) 4年サイクル理論
「Presidential Election Cycle Theory(大統領選挙サイクル理論)」によれば、4年周期で市場には以下の傾向があると言われています:
- 1年目(就任年): 低調。新政権が不人気な政策を実施することが多い
- 2年目(中間選挙年): やや低調。中間選挙による不確実性
- 3年目: 最も好調。次の選挙に向けて景気刺激策を実施
- 4年目(選挙年): 中立的。選挙不確実性と景気刺激策のバランス
ただし、この理論は統計的に有意とは言えず、例外も多くあります。市場は複雑な要因で動くため、4年サイクルだけで投資判断をするのは危険です。
(3) 選挙前後のボラティリティ
選挙前後は、市場のボラティリティ(変動性)が高まる傾向があります。VIX指数(恐怖指数)は、選挙直前に上昇することが多いです。
VIX指数の推移(選挙年):
- 2020年: VIXは選挙前に30-40台で推移(コロナ禍の影響も)
- 2016年: VIXは選挙直前に20台に上昇
- 2012年: VIXは選挙前後で15-20台
ボラティリティが高い時期は、短期的な価格変動が大きくなりますが、長期投資家にとっては買い増しのチャンスとも言えます。
(4) 長期リターンは政権政党に関係なく上昇傾向
過去のデータを見ると、共和党政権でも民主党政権でも、長期的には株価は上昇しています。
政党別の年平均リターン(1952-2020年):
- 民主党政権: 年平均約10.6%
- 共和党政権: 年平均約4.8%
ただし、この差は政権の政策だけでなく、景気サイクル、金融危機、技術革新など、多様な要因が絡んでいます。「民主党が株価に有利」と単純に結論づけることはできません。
3. セクター別の影響分析
大統領選挙では、共和党と民主党の政策の違いが、セクター(業種)ごとに異なる影響を与えることがあります。
(1) エネルギーセクター(規制緩和vs脱炭素)
- 共和党: 化石燃料産業を支持、規制緩和を推進
- 民主党: 再生可能エネルギーを推進、脱炭素政策を強化
市場の反応:
- 共和党が勝利すると、石油・天然ガス企業(Exxon Mobil、Chevron等)が上昇する傾向
- 民主党が勝利すると、再生可能エネルギー企業(NextEra Energy等)が注目される
ただし、エネルギー価格は国際情勢や需給バランスにも左右されるため、政権だけで決まるわけではありません。
(2) ヘルスケアセクター(医療保険制度の違い)
- 共和党: 民間保険を重視、規制緩和
- 民主党: 公的医療保険の拡大、薬価規制強化
市場の反応:
- 共和党が勝利すると、製薬会社や民間保険会社が好感
- 民主党が勝利すると、薬価規制への懸念から製薬株が下落することも
ヘルスケアは政策の影響を受けやすいセクターですが、高齢化による需要増など、長期的な成長要因も大きいです。
(3) テクノロジーセクター(規制強化vs緩和)
- 共和党: ビジネス寄り、規制緩和を支持
- 民主党: 反トラスト法による規制強化(GAFAM等への独占禁止)
市場の反応:
- 共和党が勝利すると、テクノロジー企業は規制緩和を期待
- 民主党が勝利すると、GAFAM等の大手テック企業への規制強化懸念
ただし、テクノロジーセクターは両党政権下でも成長を続けており、政権よりも技術革新や企業業績の影響が大きいです。
(4) 金融セクター(規制緩和vs消費者保護)
- 共和党: 金融規制緩和を推進(ドッド・フランク法の緩和等)
- 民主党: 消費者保護を重視、銀行規制を強化
市場の反応:
- 共和党が勝利すると、銀行株(JPMorgan Chase、Bank of America等)が上昇
- 民主党が勝利すると、規制強化への懸念から銀行株が下落することも
(5) 政策は公約通りに実現しない場合もある
重要な点として、選挙公約がすべて実現するわけではありません。議会の構成(上院・下院の多数党)、司法の判断、国際情勢など、多くの要因が政策実現に影響します。
「分割政府」(大統領と議会の多数党が異なる)の場合、大胆な政策変更は難しく、市場は安定する傾向があります。
4. 選挙前後の投資戦略
大統領選挙前後に、投資家はどのような戦略を取るべきでしょうか。
(1) 長期分散投資を継続(短期的な変動を気にしない)
最も推奨される戦略は、長期分散投資を継続することです。選挙結果を予測して売買するのは、以下のリスクがあります:
- 選挙結果の予測は困難(世論調査と実際の結果が異なることも)
- 売却後に株価が上昇し、機会損失のリスク
- 売買による税金・手数料のコスト
過去のデータから、選挙年も長期的には株価は上昇しています。短期的な変動を気にせず、保有を継続することが合理的です。
(2) セクターローテーションの検討
選挙結果を見越したセクターローテーション(業種の入れ替え)は、一定のリスクがあります。
注意点:
- 選挙結果が予想と異なる場合、損失が拡大
- 政策が公約通りに実現しない可能性
- セクターローテーションはタイミングが難しい
セクターローテーションを検討する場合は、ポートフォリオ全体の一部(10-20%程度)に留め、コア部分は分散投資を維持することが賢明です。
(3) 選挙結果待ちで現金保有はリスク(機会損失)
「選挙結果が出るまで現金で待つ」という戦略は、機会損失のリスクがあります。
過去の例:
- 2016年トランプ当選時、「株価暴落」を予想して現金化した投資家が多かったが、実際には大幅上昇
- 2020年バイデン当選時も同様に、予想と逆の動きが起きた
市場は予測不可能です。選挙結果を待つよりも、投資を継続する方が長期的には有利です。
(4) ドルコスト平均法で積立継続
ドルコスト平均法(定期的に一定額を投資)は、選挙年でも有効です。
メリット:
- 選挙による短期的な変動を平準化
- タイミングを気にせず投資を継続
- つみたてNISAで実践可能
毎月一定額をS&P500インデックスファンドに積み立てれば、選挙による変動の影響を抑えながら資産形成ができます。
5. 日本人投資家が知るべきリスク管理
日本人投資家には、為替リスクも含めたリスク管理が重要です。
(1) 為替変動の影響(ドル円レート)
米国株投資では、株価だけでなく、ドル円レートの変動も考慮する必要があります。
為替リスクの例:
- 株価が10%上昇しても、円高で10%ドル安になれば円建てリターンはゼロ
- 逆に、株価が横ばいでも、円安が進めば円建てリターンはプラス
選挙結果により、財政政策や金融政策が変わり、為替レートも変動します。為替リスクを完全に避けることはできませんが、長期保有により為替変動の影響は平準化されます。
(2) 分散投資の重要性(米国株だけに集中しない)
米国株だけに集中投資すると、選挙リスクや為替リスクが大きくなります。
分散投資の例:
- 米国株60%、全世界株式(米国以外)30%、債券10%
- S&P500とオールカントリー(全世界株式)を組み合わせる
分散投資により、特定の国や地域の影響を軽減できます。
(3) メディアのノイズに惑わされない
選挙期間中は、メディアが過剰に反応することがあります。「株価暴落」「市場大混乱」といった見出しに惑わされず、冷静に判断することが重要です。
対策:
- ニュースは参考程度に留める
- 長期投資の視点を維持
- 感情的な売買を避ける
(4) 政策不確実性は一時的(新政権発足後に明確化)
選挙前後の政策不確実性は、新政権発足後に徐々に明確化します。市場は不確実性を嫌いますが、政策が明らかになれば、それに応じて調整されます。
一時的な変動を気にせず、長期的な視点で投資を続けることが賢明です。
6. まとめ:長期視点で選挙リスクを乗り越える
米国大統領選挙は、短期的な市場のボラティリティを高めますが、長期的には株価は上昇傾向にあります。過去のデータから、選挙年も10%以上のリターンを記録することが多く、政権政党に関係なく市場は成長してきました。
セクター別の影響はあるものの、政策が公約通りに実現するとは限らず、選挙結果を予測して売買するのはリスクが大きいです。長期分散投資を継続し、ドルコスト平均法で積立を続けることが、最も合理的な戦略と言えます。
次のアクション:
- 長期分散投資を継続し、選挙による短期変動を気にしない
- つみたてNISAでドルコスト平均法を実践
- 米国株だけでなく、全世界株式や債券にも分散投資
- メディアのノイズに惑わされず、冷静に判断
- 為替リスクも考慮し、長期保有で影響を平準化
選挙は4年に一度のイベントですが、資産形成は数十年の長期戦です。短期的な変動に惑わされず、長期視点で投資を続けることが、成功への鍵です。