米国株はどこまで下がるのか?投資家が知るべきこと
「米国株を保有しているけど、含み損が増えている…」「このまま下がり続けるのでは?」「損切りすべきか、保有を続けるべきか?」――米国株投資家の多くが、下落局面でこうした不安を抱えます。
2025年に入り、米国株市場は調整局面を迎える場面も見られます。30〜50代の投資家の中には、資産500万〜3000万円を米国株に投資しており、含み損を目の当たりにして判断に迷っている方も少なくないでしょう。
この記事では、過去の調整・暴落局面のデータを分析し、米国株がどこまで下がったか、そして下落時に取るべき投資戦略を解説します。
この記事のポイント:
- 米国株の下落予測は不可能だが、過去データから傾向を学べる
- 調整局面(-10%〜-20%)は平均1〜2年で回復、弱気相場(-20%以上)は1.5〜3年で回復
- ドルコスト平均法を継続し、下落時も買い続けることがリスク分散に有効
- 日本人投資家は為替リスク(ドル安・円高)も考慮が必要
- 感情的な損切りは避け、長期投資の視点を維持することが重要
米国株が下落する主な要因
米国株が下落する要因は複数ありますが、主なものは以下の通りです。
(1) 金利上昇(FRBの金融引き締め)
米国連邦準備制度理事会(FRB)が金利を引き上げると、企業の借入コストが上昇し、株価が下落する傾向があります。Federal Reserveの金融政策ページでは、FOMC(連邦公開市場委員会)の声明や政策金利の推移が公開されています。
過去の例:
- 2022年:FRBが急速な利上げを実施 → S&P500指数は年間で約-18%下落
(2) 景気後退(GDP成長率の低下)
景気後退(リセッション)とは、GDP成長率が2四半期連続でマイナスになる状態です。景気後退期には企業業績が悪化し、株価も下落します。
Federal Reserve Economic Data (FRED)では、米国のGDP成長率、失業率、インフレ率などの公式データが確認できます。
(3) 企業業績の悪化(決算ショック)
個別企業の決算が予想を下回ると、株価が急落する「決算ショック」が発生します。S&P500構成銘柄の大型株(Apple、Microsoft等)が決算を下方修正すると、市場全体に影響が及びます。
(4) 地政学リスク(戦争・政治不安)
戦争、政治不安、貿易摩擦などの地政学リスクも株価下落の要因です。
過去の例:
- 2022年:ロシア・ウクライナ戦争 → エネルギー価格高騰、株価下落
(5) バリュエーションの高騰(PER・PBRの割高)
PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が歴史的に高水準になると、割高感から株価が調整される傾向があります。
Bloombergの市場分析では、「PERが過去平均を大きく上回る場合、調整のリスクが高まる」と指摘されています。
過去の調整・暴落局面から学ぶ
(1) 調整局面(-10%〜-20%)の頻度と回復期間
調整局面とは、高値から10%〜20%の下落を指します。S&P500の歴史的データによれば、調整局面は平均して1〜2年に1回発生しており、回復までの期間は平均1〜2年です。
調整局面の特徴:
- 頻度が高い(市場の健全な調整)
- 長期投資家にとっては買い増しの好機
(2) 弱気相場(-20%以上)の歴史的事例
弱気相場(ベアマーケット)とは、高値から20%以上下落した状態を指します。S&P Global公式データでは、弱気相場の歴史的データが公開されています。
過去の弱気相場:
期間 | 下落率 | 回復までの期間 |
---|---|---|
リーマンショック(2007-2009) | -57% | 約4年 |
ITバブル崩壊(2000-2002) | -49% | 約5年 |
コロナショック(2020) | -34% | 約5ヶ月(異例の急回復) |
(3) リーマンショック(2008年、-57%下落)
2008年の金融危機では、S&P500指数は高値から-57%下落しました。しかし、2013年には高値を更新し、その後も上昇を続けています。
(4) コロナショック(2020年、-34%下落と急回復)
2020年3月、新型コロナウイルスの世界的流行で株価は急落しましたが、FRBの大規模な金融緩和により、わずか5ヶ月で高値を更新しました。これは歴史的に見ても異例の急回復です。
(5) ITバブル崩壊(2000年代)
2000年代初頭、IT関連株のバブル崩壊でナスダック指数は-78%下落しました。回復には約15年を要しましたが、その後は史上最高値を更新し続けています。
(6) 過去データは将来を保証しない
重要な注意点:
過去のデータは参考になりますが、将来の株価を保証するものではありません。金融庁の投資の基本ガイドでも、「過去のパフォーマンスは将来を保証しない」と明記されています。
下落時に取るべき投資戦略
(1) ドルコスト平均法を継続(下落時も買い続ける)
ドルコスト平均法とは、毎月一定額を定期的に投資する手法です。下落時も買い続けることで、平均取得単価を下げられます。
具体例:
- 毎月3万円を米国株に投資
- 株価が下がった月は多くの株数を購入できる
- 株価が回復したとき、大きなリターンを得られる
楽天証券のマーケット情報でも、「ドルコスト平均法は下落時こそ威力を発揮する」と解説されています。
(2) リバランス(資産配分の見直し)
リバランスとは、株式・債券・現金などの資産配分を定期的に見直すことです。
リバランスの例:
- 当初の資産配分: 株式70%、債券20%、現金10%
- 株価下落後: 株式50%、債券30%、現金20%(比率が変化)
- リバランス: 債券・現金の一部を株式に移し、株式70%に戻す
(3) 損切りは慎重に(長期投資なら保有継続が基本)
短期的な下落に過度に反応して損切りすると、回復局面でのリターンを逃してしまいます。金融庁のリスク管理ガイドでも、「長期投資では短期的な下落に惑わされない」ことが推奨されています。
損切りを検討すべきケース:
- 緊急資金が必要になった場合
- 企業のファンダメンタルズ(業績・経営状況)が悪化した場合
(4) 現金比率の管理(緊急資金の確保)
生活防衛資金(3〜6ヶ月分の生活費)は現金で確保し、投資に回さないことが重要です。緊急時に株を売却せざるを得ない状況を避けるためです。
(5) 市場タイミングの予測は困難
「底値で買って高値で売る」市場タイミングの予測は、プロの投資家でも困難です。SBI証券のマーケット情報でも、「市場タイミングを狙うより、長期投資を継続する方が合理的」と指摘されています。
日本人投資家特有のリスク管理
(1) ドル安・円高で損失が拡大するリスク
米国株はドル建てで取引されるため、為替リスクがあります。
具体例:
- 株価が10%上昇したが、ドル円が10%円高になった → 円換算では変わらない
- 株価が横ばいでも、ドル円が10%円高になった → 円換算では10%の損失
日本経済新聞の米国株式市場ページでも、「米国株投資では為替リスクを考慮すべき」と解説されています。
(2) 為替ヘッジの検討(ただしコストがかかる)
為替ヘッジ付きの投資信託を選ぶと、為替リスクを回避できます。ただし、ヘッジコストがかかるため、長期リターンが低下する可能性があります。
(3) 米国株・日本株の分散投資
米国株だけに集中投資するのではなく、日本株や他国株にも分散投資することで、リスクを低減できます。
(4) メディアの煽り情報に惑わされない
「米国株大暴落!」「今すぐ売れ!」といった煽り情報に惑わされず、冷静に判断することが重要です。金融庁のガイドでも、「メディアの煽り情報に惑わされない」ことが推奨されています。
まとめ:下落は長期投資の好機にもなる
米国株がどこまで下がるかを予測することは不可能ですが、過去のデータから学べることは多くあります。調整局面や弱気相場は定期的に発生しますが、長期的には株価は回復し、上昇を続けてきました。
この記事の要点:
- 米国株の下落予測は不可能だが、過去データから傾向を学べる
- 調整局面(-10%〜-20%)は平均1〜2年で回復、弱気相場(-20%以上)は1.5〜3年で回復
- ドルコスト平均法を継続し、下落時も買い続けることがリスク分散に有効
- 日本人投資家は為替リスク(ドル安・円高)も考慮が必要
- 感情的な損切りは避け、長期投資の視点を維持することが重要
次のアクション:
- ドルコスト平均法で定期積立を継続する
- リバランスで資産配分を見直す
- 生活防衛資金を確保し、緊急時の売却を避ける
- メディアの煽り情報に惑わされず、冷静に判断する
下落局面は不安を感じるものですが、長期投資家にとっては買い増しの好機でもあります。過去のデータを参考にしつつ、冷静な判断を心がけましょう。投資判断は自己責任で行ってください。