米国株の平均リターン|S&P500の歴史データ分析

公開日: 2025/10/19

米国株投資、現実的なリターンはどれくらい?

米国株投資を始めた日本人投資家の多くが、「実際にどれくらいのリターンが期待できるのか」という疑問を持ちます。SNSやメディアでは「年利20%達成!」といった情報も見かけますが、平均的な投資家が得られるリターンはもっと現実的な水準です。

この記事では、S&P500の過去100年を超える歴史的データを分析し、米国株の平均リターン・配当利回り・セクター別パフォーマンスを解説します。過度な期待を持たず、現実的な投資計画を立てる参考にしてください。

この記事のポイント:

  • S&P500の過去100年平均リターンは約7%(インフレ調整後)、過去30年は約10%(配当込み)
  • 配当利回りは1.5-2%程度(近年の水準)
  • セクター別では、テクノロジーが高リターン・高ボラティリティ、生活必需品が低ボラティリティ
  • S&P500は過去30年でTOPIXを大きく上回る
  • 過去のリターンは将来を保証しない。年ごとの変動幅も大きい

米国株の平均リターンを知る意義

平均リターンを理解することで、現実的な投資計画を立てられます。

(1) 過去のリターンは参考値

過去のリターンは将来の運用成果を保証しないことを理解してください。金融市場では「過去の実績は将来の成果を示すものではありません」という免責文言が必ず付きます。

ただし、過去100年以上のデータは、長期的な期待値を設定する上で有用な参考資料です。

(2) 長期投資の期待値設定

長期投資では、以下のような期待値設定が現実的です:

  • S&P500インデックスファンド: 年平均7-10%(配当込み)
  • 個別株ポートフォリオ: インデックスを上回る保証はなし
  • 短期トレード: 取引コストとリスクが高く、平均的には市場平均を下回る傾向

(出典: 日本証券業協会「米国株式市場の基礎知識」https://www.jsda.or.jp/jikan/knowledge/us_stocks.html)

(3) リスクとリターンの関係

米国株の年間ボラティリティ(価格変動の大きさ)は約15-20%です。つまり、平均リターンが10%でも、単年では以下のような変動があります:

  • 好調な年: +30%以上
  • 不調な年: -30%以上(2008年金融危機では-37%)

リスクを受け入れられる範囲で投資することが重要です。

S&P500の長期平均リターン

S&P500は米国を代表する株価指数で、500社の大企業で構成されています。

(1) 過去100年の平均(約7%、インフレ調整後)

Ibbotson SBBIのデータによると、米国株式市場の**過去100年超の実質リターン(インフレ調整後)は年平均約7%**です。

これは、物価上昇を差し引いた後の「購買力ベース」のリターンを意味します。

(出典: Morningstar「Ibbotson SBBI: Stocks, Bonds, Bills, and Inflation Yearbook」https://www.morningstar.com/products/sbbi)

(2) 過去30年の平均(約10%、配当込み)

S&P500の過去30年(1995-2024年)の平均リターンは**約10%(配当込み、インフレ調整前)**です。

以下の期間別リターン(配当込み):

期間 年平均リターン
過去10年(2015-2024) 約12%
過去20年(2005-2024) 約10%
過去30年(1995-2024) 約10%

※2025年10月時点のデータ。最新情報はS&P Dow Jones Indicesの公式サイトをご確認ください。

(出典: S&P Dow Jones Indices「S&P 500 Long-Term Returns」https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-500/)

(3) 年ごとの変動幅

平均が10%でも、年ごとの変動は大きく異なります:

リターン
2008年(金融危機) -37%
2013年 +32%
2020年(コロナショック) +16%(年初-34%から回復)
2022年(インフレ・金利上昇) -18%

このように、短期的には大幅なマイナスもあることを理解してください。

配当利回りの推移

配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合です。

(1) 歴史的な配当利回り(1.5-2%程度)

現在のS&P500の配当利回りは1.5-2%程度です。

FRB(連邦準備制度)の公式データによると、S&P500の配当利回りは時代により大きく変動しています。

(出典: Federal Reserve Economic Data「S&P 500 Dividend Yield」https://fred.stlouisfed.org/series/SP500DIVYIELD)

(2) 1980年代と2010年代の違い

年代 配当利回り
1980年代 5%超(株価が低く、配当重視の時代)
2010年代-現在 2%前後(株価上昇、成長重視の時代)

近年は企業が配当よりも自社株買いでリターンを株主に還元する傾向が強まっています。

(3) 配当再投資の効果

配当を再投資する(配当で追加株式を購入する)ことで、複利効果が働き、長期的なリターンが大きく向上します。

例(過去30年):

  • 配当なしリターン: 約7%/年
  • 配当込みリターン: 約10%/年

配当再投資により、年平均で約3%のリターン上乗せが期待できます。

セクター別平均リターン

S&P500は11のセクター(産業分類)に分かれており、それぞれリターンが異なります。

(1) テクノロジーセクター(高リターン・高ボラティリティ)

過去20年の年平均リターン: 約15%

Apple、Microsoft、Nvidiaなどが含まれます。成長性が高い一方、暴落時の下落幅も大きいです。

(2) ヘルスケアセクター(安定成長)

過去20年の年平均リターン: 約12%

Johnson & Johnson、Pfizerなど。人口高齢化により安定した需要があります。

(3) 生活必需品セクター(低ボラティリティ)

過去20年の年平均リターン: 約8%

Procter & Gamble、Coca-Colaなど。景気に左右されにくく、ボラティリティが低いです。

セクター別リターン比較(過去20年):

セクター 年平均リターン ボラティリティ
テクノロジー 約15%
ヘルスケア 約12%
金融 約10%
生活必需品 約8%
エネルギー 約5% 非常に高

※データは過去のものであり、将来を保証しません。

(出典: Morningstar「Sector Performance Analysis」https://www.morningstar.com/stocks/sector-performance)

日本株との比較

米国株と日本株のリターンを比較します。

(1) TOPIX vs S&P500の過去30年

過去30年の累積リターン(配当込み):

指数 累積リターン 年平均リターン
S&P500 約1,800% 約10%
TOPIX 約200% 約4%

S&P500はTOPIXを大きく上回っています。

(出典: 東京証券取引所「TOPIX長期パフォーマンス」https://www.jpx.co.jp/markets/indices/topix/index.html)

(2) 配当利回りの違い

配当利回り(2025年):

  • S&P500: 1.5-2%
  • TOPIX: 2-2.5%

日本株の方が配当利回りは高いですが、株価上昇率では米国株が優位です。

(3) 成長性の差

米国企業はグローバル展開・イノベーション投資に積極的で、成長性が高い傾向があります。一方、日本企業は内需中心・保守的経営が多く、成長が緩やかです。

為替リスクの注意点:

米国株はドル建てのため、円高が進むと円建てリターンが減少します。例えば:

  • ドル建てリターン: +10%
  • 為替変動: 1ドル=150円 → 140円(円高)
  • 円建てリターン: 約 +3%

長期投資では為替変動は平準化されやすいですが、短期的には影響があります。

まとめ:現実的なリターン期待値の設定

米国株の長期平均リターンは、S&P500ベースで年7-10%(配当込み)です。ただし、年ごとの変動幅は大きく、短期的には30%以上の下落もあり得ます。

次のアクション:

  • S&P500インデックスファンドでの長期投資を検討する(年平均7-10%の期待値)
  • 配当を再投資して複利効果を最大化する
  • セクター分散でリスクを軽減する
  • 過去のリターンは参考値であり、将来を保証しないことを理解する
  • 為替リスクも考慮した投資計画を立てる

現実的な期待値を設定し、長期的な資産形成を目指しましょう。

(出典: SBI証券「米国株投資ガイド」https://go.sbisec.co.jp/lp/us_stock_guide.html)

よくある質問

Q1米国株の平均リターンは?

A1S&P500の過去100年平均は約7%(インフレ調整後)、過去30年平均は約10%(配当込み、インフレ調整前)です。ただし、年ごとの変動幅は大きく、2008年には-37%の年もありました。過去のリターンは将来を保証しません。

Q2米国株の配当利回りは?

A2S&P500の配当利回りは現在1.5-2%程度です。1980年代は5%超でしたが、近年は株価上昇により低水準です。配当を再投資することで年平均約3%のリターン上乗せが期待できます。

Q3長期保有すれば必ず儲かりますか?

A3過去のデータでは20年以上の長期保有でマイナスになる確率は低いですが、保証はありません。2008年金融危機や2020年コロナショックのような暴落もあるため、リスク管理が重要です。分散投資と損切りルールを設定してください。

Q4日本株と比較するとどうですか?

A4S&P500は過去30年でTOPIXを大きく上回ります(S&P500: 年平均約10%、TOPIX: 年平均約4%)。米国企業の成長性が優位ですが、ドル建てのため為替リスクがあります。円高になると円建てリターンが減少します。

Q5どのセクターがリターンが高いですか?

A5過去20年ではテクノロジーセクターが年平均約15%と最も高リターンでした。ヘルスケアは約12%、生活必需品は約8%です。ただし、テクノロジーはボラティリティも高く、暴落時の下落幅も大きいです。分散投資でリスクを軽減してください。

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