米国株投資、現実的なリターンはどれくらい?
米国株投資を始めた日本人投資家の多くが、「実際にどれくらいのリターンが期待できるのか」という疑問を持ちます。SNSやメディアでは「年利20%達成!」といった情報も見かけますが、平均的な投資家が得られるリターンはもっと現実的な水準です。
この記事では、S&P500の過去100年を超える歴史的データを分析し、米国株の平均リターン・配当利回り・セクター別パフォーマンスを解説します。過度な期待を持たず、現実的な投資計画を立てる参考にしてください。
この記事のポイント:
- S&P500の過去100年平均リターンは約7%(インフレ調整後)、過去30年は約10%(配当込み)
- 配当利回りは1.5-2%程度(近年の水準)
- セクター別では、テクノロジーが高リターン・高ボラティリティ、生活必需品が低ボラティリティ
- S&P500は過去30年でTOPIXを大きく上回る
- 過去のリターンは将来を保証しない。年ごとの変動幅も大きい
米国株の平均リターンを知る意義
平均リターンを理解することで、現実的な投資計画を立てられます。
(1) 過去のリターンは参考値
過去のリターンは将来の運用成果を保証しないことを理解してください。金融市場では「過去の実績は将来の成果を示すものではありません」という免責文言が必ず付きます。
ただし、過去100年以上のデータは、長期的な期待値を設定する上で有用な参考資料です。
(2) 長期投資の期待値設定
長期投資では、以下のような期待値設定が現実的です:
- S&P500インデックスファンド: 年平均7-10%(配当込み)
- 個別株ポートフォリオ: インデックスを上回る保証はなし
- 短期トレード: 取引コストとリスクが高く、平均的には市場平均を下回る傾向
(出典: 日本証券業協会「米国株式市場の基礎知識」https://www.jsda.or.jp/jikan/knowledge/us_stocks.html)
(3) リスクとリターンの関係
米国株の年間ボラティリティ(価格変動の大きさ)は約15-20%です。つまり、平均リターンが10%でも、単年では以下のような変動があります:
- 好調な年: +30%以上
- 不調な年: -30%以上(2008年金融危機では-37%)
リスクを受け入れられる範囲で投資することが重要です。
S&P500の長期平均リターン
S&P500は米国を代表する株価指数で、500社の大企業で構成されています。
(1) 過去100年の平均(約7%、インフレ調整後)
Ibbotson SBBIのデータによると、米国株式市場の**過去100年超の実質リターン(インフレ調整後)は年平均約7%**です。
これは、物価上昇を差し引いた後の「購買力ベース」のリターンを意味します。
(出典: Morningstar「Ibbotson SBBI: Stocks, Bonds, Bills, and Inflation Yearbook」https://www.morningstar.com/products/sbbi)
(2) 過去30年の平均(約10%、配当込み)
S&P500の過去30年(1995-2024年)の平均リターンは**約10%(配当込み、インフレ調整前)**です。
以下の期間別リターン(配当込み):
期間 | 年平均リターン |
---|---|
過去10年(2015-2024) | 約12% |
過去20年(2005-2024) | 約10% |
過去30年(1995-2024) | 約10% |
※2025年10月時点のデータ。最新情報はS&P Dow Jones Indicesの公式サイトをご確認ください。
(出典: S&P Dow Jones Indices「S&P 500 Long-Term Returns」https://www.spglobal.com/spdji/en/indices/equity/sp-500/)
(3) 年ごとの変動幅
平均が10%でも、年ごとの変動は大きく異なります:
年 | リターン |
---|---|
2008年(金融危機) | -37% |
2013年 | +32% |
2020年(コロナショック) | +16%(年初-34%から回復) |
2022年(インフレ・金利上昇) | -18% |
このように、短期的には大幅なマイナスもあることを理解してください。
配当利回りの推移
配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合です。
(1) 歴史的な配当利回り(1.5-2%程度)
現在のS&P500の配当利回りは1.5-2%程度です。
FRB(連邦準備制度)の公式データによると、S&P500の配当利回りは時代により大きく変動しています。
(出典: Federal Reserve Economic Data「S&P 500 Dividend Yield」https://fred.stlouisfed.org/series/SP500DIVYIELD)
(2) 1980年代と2010年代の違い
年代 | 配当利回り |
---|---|
1980年代 | 5%超(株価が低く、配当重視の時代) |
2010年代-現在 | 2%前後(株価上昇、成長重視の時代) |
近年は企業が配当よりも自社株買いでリターンを株主に還元する傾向が強まっています。
(3) 配当再投資の効果
配当を再投資する(配当で追加株式を購入する)ことで、複利効果が働き、長期的なリターンが大きく向上します。
例(過去30年):
- 配当なしリターン: 約7%/年
- 配当込みリターン: 約10%/年
配当再投資により、年平均で約3%のリターン上乗せが期待できます。
セクター別平均リターン
S&P500は11のセクター(産業分類)に分かれており、それぞれリターンが異なります。
(1) テクノロジーセクター(高リターン・高ボラティリティ)
過去20年の年平均リターン: 約15%
Apple、Microsoft、Nvidiaなどが含まれます。成長性が高い一方、暴落時の下落幅も大きいです。
(2) ヘルスケアセクター(安定成長)
過去20年の年平均リターン: 約12%
Johnson & Johnson、Pfizerなど。人口高齢化により安定した需要があります。
(3) 生活必需品セクター(低ボラティリティ)
過去20年の年平均リターン: 約8%
Procter & Gamble、Coca-Colaなど。景気に左右されにくく、ボラティリティが低いです。
セクター別リターン比較(過去20年):
セクター | 年平均リターン | ボラティリティ |
---|---|---|
テクノロジー | 約15% | 高 |
ヘルスケア | 約12% | 中 |
金融 | 約10% | 高 |
生活必需品 | 約8% | 低 |
エネルギー | 約5% | 非常に高 |
※データは過去のものであり、将来を保証しません。
(出典: Morningstar「Sector Performance Analysis」https://www.morningstar.com/stocks/sector-performance)
日本株との比較
米国株と日本株のリターンを比較します。
(1) TOPIX vs S&P500の過去30年
過去30年の累積リターン(配当込み):
指数 | 累積リターン | 年平均リターン |
---|---|---|
S&P500 | 約1,800% | 約10% |
TOPIX | 約200% | 約4% |
S&P500はTOPIXを大きく上回っています。
(出典: 東京証券取引所「TOPIX長期パフォーマンス」https://www.jpx.co.jp/markets/indices/topix/index.html)
(2) 配当利回りの違い
配当利回り(2025年):
- S&P500: 1.5-2%
- TOPIX: 2-2.5%
日本株の方が配当利回りは高いですが、株価上昇率では米国株が優位です。
(3) 成長性の差
米国企業はグローバル展開・イノベーション投資に積極的で、成長性が高い傾向があります。一方、日本企業は内需中心・保守的経営が多く、成長が緩やかです。
為替リスクの注意点:
米国株はドル建てのため、円高が進むと円建てリターンが減少します。例えば:
- ドル建てリターン: +10%
- 為替変動: 1ドル=150円 → 140円(円高)
- 円建てリターン: 約 +3%
長期投資では為替変動は平準化されやすいですが、短期的には影響があります。
まとめ:現実的なリターン期待値の設定
米国株の長期平均リターンは、S&P500ベースで年7-10%(配当込み)です。ただし、年ごとの変動幅は大きく、短期的には30%以上の下落もあり得ます。
次のアクション:
- S&P500インデックスファンドでの長期投資を検討する(年平均7-10%の期待値)
- 配当を再投資して複利効果を最大化する
- セクター分散でリスクを軽減する
- 過去のリターンは参考値であり、将来を保証しないことを理解する
- 為替リスクも考慮した投資計画を立てる
現実的な期待値を設定し、長期的な資産形成を目指しましょう。
(出典: SBI証券「米国株投資ガイド」https://go.sbisec.co.jp/lp/us_stock_guide.html)