米国株暴落の歴史完全ガイド|5大暴落から学ぶ投資戦略

公開日: 2025/10/19

米国株暴落の歴史を学ぶ意義

米国株投資を続けていると、いつか必ず暴落に遭遇します。「もう株価は戻らないのでは?」「今すぐ売るべきか?」と不安に駆られ、パニック売りをしてしまった経験はありませんか。

実は、米国株式市場は過去100年間で何度も暴落を経験していますが、すべての暴落から回復し、史上最高値を更新してきました。歴史を知ることで、暴落時の冷静な判断が可能になります。

この記事では、1929年の大恐慌から2020年のコロナショックまで、主要な暴落を時系列で分析し、投資家が学ぶべき教訓を解説します。

この記事のポイント:

  • 米国株は過去100年間で5回の大暴落を経験(-22%~-89%の下落)
  • すべての暴落は数年以内に回復し、史上最高値を更新
  • 暴落の予兆は過度な楽観・バリュエーション高騰・金融政策の転換
  • 長期投資家にとって暴落は買い増しの好機
  • 分散投資・現金比率の維持・感情に流されない投資ルールが重要

(1) 暴落は周期的に発生する

米国株式市場では、歴史的に**約10年前後の周期で大きな調整局面(弱気相場)**が発生しています。

過去100年の主要暴落:

  • 1929年:大恐慌(-89%)
  • 1987年:ブラックマンデー(1日で-22%)
  • 2000年:ITバブル崩壊(-50%)
  • 2008年:リーマンショック(-57%)
  • 2020年:コロナショック(-34%)

暴落は例外的な出来事ではなく、市場の正常な調整プロセスの一部です。歴史を知ることで、「また来た」と冷静に対処できます。

(2) 歴史を知れば冷静な判断が可能

暴落時は恐怖に駆られ、「もう株価は戻らない」と感じてしまいます。しかし、過去のデータを見れば、すべての暴落は回復してきたことが分かります。

S&P500の長期リターン(配当再投資含む):

  • 過去30年:年率約10%
  • 過去50年:年率約11%
  • 過去100年:年率約10%

暴落を含めても、長期的には右肩上がりの成長を続けています。歴史を学ぶことで、短期的な変動に惑わされず、長期投資を継続する勇気が得られます。

過去の主要暴落5選【1929年~2020年】

(1) 1929年 大恐慌:-89%の下落

期間:1929年9月~1932年7月(約3年) 下落率:-89%(ダウ平均:381ドル→41ドル) 原因:過剰な信用取引・投機熱・世界的な経済不況 回復期間:約25年(1954年にピーク回復)

1920年代の米国は空前の好景気に沸き、株価は1920年から1929年にかけて約5倍に上昇しました。しかし、過剰な信用取引(借金で株を買う投機)が膨らみ、1929年10月24日(暗黒の木曜日)に株価が急落。その後3年間で株価は89%下落し、世界恐慌へと発展しました。

教訓:過度な信用取引と投機熱は暴落の予兆。レバレッジ(借金)を使った投資はリスクが高い。

(2) 1987年 ブラックマンデー:1日で-22%

期間:1987年10月19日(1日) 下落率:-22.6%(S&P500:1日で-20.5%) 原因:プログラム取引の連鎖・金利上昇懸念・過度な株価上昇 回復期間:約2年(1989年に高値回復)

1987年10月19日(月曜日)、ニューヨーク株式市場は1日で22.6%急落しました。これは史上最大の1日下落率です。原因は、コンピューターによるプログラム取引が売りを加速させたことと、金利上昇懸念が重なったためです。

しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)が迅速に流動性を供給し、わずか2年で株価は回復しました。

教訓:1日で20%以上の急落も発生しうる。しかし、政策対応が適切なら回復は早い。

(3) 2000年 ITバブル崩壊:-50%の下落

期間:2000年3月~2002年10月(約2年半) 下落率:-50%(NASDAQ総合指数:-78%) 原因:インターネット関連株の過大評価・収益なき企業への投資 回復期間:約7年(2007年に高値回復)

1990年代後半、インターネットの普及により、多くのIT企業が上場しました。しかし、多くは収益を上げていない「ドットコム企業」で、株価は実態から大きく乖離していました。

2000年3月、ITバブルが崩壊し、NASDAQ総合指数は約78%下落。S&P500も50%下落しました。収益性のない企業の多くは倒産し、投資家は大きな損失を被りました。

教訓:バリュエーション(株価が適正か)を無視した投資は危険。「今回は違う」という楽観は要注意。

(4) 2008年 リーマンショック:-57%の下落

期間:2007年10月~2009年3月(約1年半) 下落率:-57%(S&P500:1,565→676) 原因:サブプライムローン問題・金融機関の破綻・世界的な信用収縮 回復期間:約5年(2013年に高値回復)

2008年9月、米国の大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破綻し、世界的な金融危機が発生しました。サブプライムローン(信用力の低い借り手向け住宅ローン)を証券化した金融商品が世界中に拡散しており、リーマン破綻をきっかけに信用収縮が連鎖しました。

S&P500は約57%下落し、失業率は10%に達しました。しかし、FRBの大規模な金融緩和(量的緩和)により、2013年には株価が回復しました。

教訓:金融システムの崩壊リスクは存在する。しかし、政府・中央銀行の政策対応により回復は可能。

(5) 2020年 コロナショック:-34%の急落と回復

期間:2020年2月~2020年3月(約1ヶ月) 下落率:-34%(S&P500:3,386→2,237) 原因:新型コロナウイルスのパンデミック・経済活動の停止 回復期間:約5ヶ月(2020年8月に高値回復)

2020年3月、新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中で経済活動が停止しました。S&P500は約1ヶ月で34%急落し、史上最速の弱気相場入りとなりました。

しかし、FRBの迅速な金融緩和と政府の財政支援により、わずか5ヶ月で株価は回復。2021年には史上最高値を更新しました。これは過去最速の回復です。

教訓:パンデミックのような予測不可能なイベントでも、政策対応が迅速なら回復は早い。

主要暴落の比較表:

暴落イベント 期間 下落率 回復期間 原因
1929年 大恐慌 約3年 -89% 約25年 過剰な信用取引・投機熱
1987年 ブラックマンデー 1日 -22% 約2年 プログラム取引・金利上昇懸念
2000年 ITバブル崩壊 約2年半 -50% 約7年 IT株の過大評価
2008年 リーマンショック 約1年半 -57% 約5年 サブプライムローン問題
2020年 コロナショック 約1ヶ月 -34% 約5ヶ月 パンデミック

暴落の共通パターンと予兆

(1) 過度な楽観とバリュエーション高騰

すべての暴落前には、過度な楽観とバリュエーション(株価が適正か)の高騰が見られます。

バリュエーション指標:

  • PER(株価収益率):株価÷1株あたり利益。S&P500の平均PERは約15~17倍。30倍を超えると割高とされる。
  • シラーPER(景気調整後PER):過去10年の平均利益で算出。25倍を超えると割高とされる。

2000年のITバブル時、S&P500のPERは30倍を超えていました。2008年のリーマンショック前も、住宅価格が過度に上昇していました。

(2) 金融緩和から引き締めへの転換

FRBの金融政策転換(利上げ開始)は、暴落の引き金となることがあります。

  • 1987年:1986年から利上げが続き、1987年に暴落
  • 2000年:1999年から利上げが続き、2000年にITバブル崩壊

金利上昇は企業の借入コストを増やし、株式の魅力を低下させます。

(3) 地政学リスク・パンデミック

予測不可能なイベント(戦争・テロ・パンデミック)も暴落の原因となります。

  • 2001年9月11日:同時多発テロ後、S&P500は約12%下落
  • 2020年3月:コロナパンデミックで約34%下落

これらは予測困難ですが、常にリスクに備えることが重要です。

暴落時の投資家心理と行動

(1) パニック売りと損切りの連鎖

暴落時、多くの投資家は恐怖に駆られ、パニック売りをしてしまいます。株価が下がれば下がるほど売りが加速し、損切りの連鎖が起きます。

典型的な投資家心理:

  1. 株価が10%下落:「一時的な調整だろう」
  2. 株価が20%下落:「そろそろ底だろう」
  3. 株価が30%下落:「もう戻らないかも…売ろう」

結果的に、底値で売却し、その後の回復局面で利益を逃してしまいます。

(2) 底値での買いチャンスと見極め

一方で、暴落は優良企業を割安で買える絶好の機会でもあります。

ウォーレン・バフェットの名言: 「他人が貪欲なときに恐れ、他人が恐れているときに貪欲であれ」

2008年のリーマンショック時、バフェットは優良企業の株を大量に購入し、その後大きなリターンを得ました。

ただし、底値を完璧に見極めることは不可能です。分散して少しずつ買い増すのが現実的です。

(3) 長期投資家と短期投資家の違い

項目 長期投資家 短期投資家
暴落時の行動 保有継続または買い増し パニック売り
投資期間 10年以上 数ヶ月~数年
リターン 長期で年率10%前後 暴落で大損のリスク

長期投資家は、暴落を含めても長期的なリターンを得られる一方、短期投資家は暴落で大きな損失を被りやすいです。

暴落から学ぶ投資戦略

(1) 分散投資でリスク軽減

分散投資により、個別銘柄の暴落リスクを軽減できます。

分散の3つの軸:

  • 銘柄分散:S&P500インデックスファンドなら500社に分散
  • 資産分散:株式・債券・現金を組み合わせる
  • 地域分散:米国株・日本株・新興国株を組み合わせる

特にインデックスファンドは、数百~数千社に分散投資でき、個別銘柄の倒産リスクを回避できます。

(2) 暴落時は買い増しの好機

長期投資家にとって、暴落は買い増しの絶好の機会です。

ドルコスト平均法の効果:

  • 株価が下がったときに多くの株を買える
  • 平均取得単価が下がり、回復時のリターンが大きくなる

つみたてNISAで毎月一定額を積み立てている場合、暴落時も自動的に買い増しされるため、感情に左右されずに投資を継続できます。

(3) キャッシュポジションの確保

暴落に備えて、ポートフォリオの10~20%を現金で保有することが推奨されます。

キャッシュポジションのメリット:

  • 暴落時に買い増し資金として使える
  • 精神的な安心感(暴落時のパニック売りを防ぐ)

すべてを株式に投資すると、暴落時に買い増したくても資金がなく、機会を逃してしまいます。

(4) 感情に流されない投資ルール

暴落時は感情に流されやすいため、事前に投資ルールを決めておくことが重要です。

投資ルールの例:

  • 株価が20%下落しても売却しない
  • 株価が30%下落したら追加で買い増す
  • 毎月一定額を積み立て、暴落時も継続する

ルールを決めておけば、暴落時も冷静に対処できます。

まとめ:歴史から学び、冷静に対処する

米国株は過去100年間で何度も暴落を経験しましたが、すべての暴落から回復し、史上最高値を更新してきました。暴落は市場の正常な調整プロセスであり、長期投資家にとっては買い増しの好機です。

次のアクション:

  • 過去の暴落データを確認し、歴史から学ぶ
  • 分散投資とキャッシュポジションでリスクに備える
  • ドルコスト平均法でつみたて投資を継続する
  • 事前に投資ルールを決め、感情に流されない

暴落は必ず訪れます。しかし、歴史を知り、冷静に対処すれば、長期的な資産形成は可能です。今日から暴落に備えた投資戦略を実践しましょう。

よくある質問

Q1米国株の暴落とは?

A1株価がピークから20%以上下落した状態を「弱気相場(Bear Market)」と呼びます。米国株は過去100年間で5回の大暴落(-22%~-89%の下落)を経験していますが、すべて数年以内に回復し、史上最高値を更新してきました。

Q2暴落からの回復期間は?

A2暴落の規模により異なります。1929年大恐慌は約25年、2000年ITバブルは約7年、2008年リーマンショックは約5年、2020年コロナショックは約5ヶ月で回復しました。近年は政策対応が迅速化し、回復期間が短縮される傾向にあります。

Q3暴落時は売るべき?

A3長期投資前提なら売らない方が良いとされています。過去の暴落はすべて回復しており、パニック売りは底値で売却してしまうリスクがあります。むしろドルコスト平均法で買い増しを継続することが推奨されます。

Q4暴落の予兆はある?

A4過度な楽観、バリュエーション(PER等)の高騰、金融政策の転換(利上げ開始)が予兆となることが多いです。ただし、暴落のタイミングを正確に予測することは不可能です。常にリスクに備えることが重要です。

Q5暴落に備える方法は?

A5分散投資(インデックスファンド等)、ポートフォリオの10~20%を現金で保有、事前に投資ルールを決める(株価が20%下落しても売却しない等)、ドルコスト平均法でつみたて投資を継続することが基本です。

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