米国株の配当金はどうやって受け取るの?
米国株投資を始めた方の多くが、「配当金はいつ、どのように受け取れるのか?」「税金はどう処理されるのか?」と疑問に思います。配当金は定期的な収入源として魅力的ですが、受け取り方や税金の仕組みを理解していないと、思わぬ損失を被る可能性もあります。
米国株の配当金は、米国で10%源泉徴収された後、日本の証券口座に入金されます。その後、日本でも20.315%の課税がありますが、外国税額控除を使えば二重課税を一部軽減できます。
この記事では、米国株配当金の受け取りの流れ、受け取り方法の種類、税金処理と外国税額控除、入金タイミング、NISA口座での配当金の扱いについて詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 米国株の配当金は配当支払日から数日後に証券口座に入金される
- 米国で10%源泉徴収、日本で20.315%課税されるが、外国税額控除で軽減可能
- NISA口座なら日本の税金は非課税だが、米国の10%源泉徴収は避けられない
- 配当再投資プラン(DRIP)を使えば、自動で配当を再投資して複利効果を高められる
- 証券会社により入金タイミングや為替手数料が異なるため、事前に確認が必要
1. 米国株配当金の受け取りの流れ
(1) 権利確定日と配当落ち日
米国株の配当を受け取るには、「権利確定日(Record Date)」に株主として登録されている必要があります。ただし、実際には「配当落ち日(Ex-Dividend Date)」の前日までに株を購入していればOKです。
**配当落ち日(Ex-Dividend Date)**とは、この日以降に株を買っても次回の配当を受け取れない日のことです。例えば、配当落ち日が3月15日なら、3月14日までに株を購入すれば配当を受け取れます。
配当落ち日は、各企業が配当を発表する際に公表されます。証券会社のサイトや、Yahoo FinanceなどのWebサイトで確認できます。
(2) 配当支払日(Payment Date)
配当支払日(Payment Date)は、企業が実際に配当金を支払う日です。通常、配当落ち日から数週間後に設定されます。
例えば、配当落ち日が3月15日、配当支払日が4月10日といった具合です。この配当支払日に、企業から配当金が支払われます。
(3) 日本の証券会社での入金プロセス
企業が配当金を支払った後、日本の証券会社の口座に入金されるまでには数日かかります。通常、配当支払日から3〜7営業日程度で、証券口座に円建てまたはドル建てで入金されます。
入金のタイミングは証券会社により異なるため、各証券会社のウェブサイトで確認しましょう。
2. 配当金の受け取り方法3種類
(1) 証券口座への現金入金(最も一般的)
最も一般的な方法は、配当金を証券口座に現金で受け取る方法です。配当金は、米国で10%源泉徴収された後、円建てまたはドル建てで証券口座に入金されます。
円建て受け取り:
- 配当金が自動的に円に両替されて入金される
- 為替手数料がかかる(1ドルあたり25銭程度)
- 為替レートを気にせず受け取れる
ドル建て受け取り:
- 配当金がドルのまま証券口座に入金される
- 為替手数料がかからない
- ドルで米国株を買い増す場合に便利
証券会社の設定で、円建てかドル建てかを選択できます。米国株を継続して買い増す予定があるなら、ドル建て受け取りの方がコストを抑えられます。
(2) 銀行口座への振込(証券会社により対応)
一部の証券会社では、配当金を銀行口座に直接振り込むこともできます。ただし、この場合も一度証券口座に入金された後、銀行口座に振り込まれるため、タイミングが遅れることがあります。
銀行口座への振込を希望する場合は、証券会社の設定画面で振込先銀行口座を登録する必要があります。
(3) 配当再投資プラン(DRIP)の活用
配当再投資プラン(DRIP: Dividend Reinvestment Plan)とは、受け取った配当金を自動的に同じ銘柄の株式購入に充てる仕組みです。
DRIPのメリット:
- 複利効果: 配当を再投資することで、長期的な資産成長が加速する
- 手間不要: 手動で買い増す必要がなく、自動で再投資される
- 少額投資: 配当金が少額でも、端株(1株未満)で購入できる場合もある
日本の証券会社では、DRIPに対応しているところは限られています(SBI証券、楽天証券等で一部対応)。対応状況は証券会社のウェブサイトで確認しましょう。
3. 配当金にかかる税金と外国税額控除
(1) 米国で10%源泉徴収
米国株の配当金には、米国で自動的に10%の源泉徴収税がかかります。これは、日米租税条約により日本居住者に対しては10%と定められています(一般的には30%だが、条約により軽減)。
例えば、100ドルの配当が支払われる場合、米国で10ドルが源泉徴収され、手元に届くのは90ドルです。
(2) 日本で20.315%課税
米国で源泉徴収された後、日本でもさらに20.315%の税金(所得税15.315%+住民税5%)がかかります。これは、課税口座(特定口座・一般口座)で保有している場合です。
例えば、米国で10%源泉徴収された90ドルに対し、日本で20.315%が課税されると、約18ドルが税金として差し引かれ、手取りは約72ドルとなります。
これでは実質的に約28%の税金がかかることになり、二重課税となります。
(3) 外国税額控除で二重課税を軽減
二重課税を軽減するため、日本の税制では「外国税額控除」という制度があります。これは、米国で課税された10%を日本の所得税から差し引ける制度です。
外国税額控除を利用すると、実質的な税負担は約10%程度に抑えられます(上限あり)。
外国税額控除の計算例:
- 配当金: 100ドル
- 米国で源泉徴収: 10ドル
- 日本で課税: 約18ドル(90ドル × 20.315%)
- 外国税額控除: 10ドル
- 実質税負担: 約8ドル(8%)
(4) 確定申告の方法
外国税額控除を受けるには、確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)を使っていても、外国税額控除を受けるためには確定申告をする必要があります。
確定申告の手順:
- 証券会社から「特定口座年間取引報告書」を入手
- 「外国税額控除に関する明細書」を作成
- 確定申告書に必要事項を記入し、税務署に提出
国税庁のウェブサイトで、確定申告書の作成ツールが利用できます。
4. 配当金の入金タイミング
(1) 米国での支払日から数日後に円転入金
企業が配当支払日(Payment Date)に配当金を支払った後、日本の証券会社の口座に入金されるまでには数日かかります。
入金までの流れ:
- 配当支払日: 企業が配当金を支払う
- 米国の決済機関経由: 数日かかる
- 日本の証券会社に到着: 配当支払日から3〜7営業日後
- 証券口座に入金: 円建てまたはドル建てで入金
(2) 証券会社による入金スケジュールの違い
証券会社により、入金タイミングが若干異なります:
- SBI証券: 配当支払日から3〜5営業日後
- 楽天証券: 配当支払日から5〜7営業日後
- マネックス証券: 配当支払日から4〜6営業日後
具体的なタイミングは、各証券会社のウェブサイトや問い合わせ窓口で確認できます。
(3) 配当カレンダーの活用
保有している銘柄の配当スケジュールを把握しておくと、いつ配当金が入金されるか予測できます。証券会社のサイトや、Yahoo Financeなどで配当カレンダーを確認できます。
配当カレンダーでは、以下の情報が確認できます:
- 配当落ち日(Ex-Dividend Date)
- 権利確定日(Record Date)
- 配当支払日(Payment Date)
- 配当金額(1株あたり)
5. NISA口座での配当金の受け取り
(1) NISA口座なら日本の税金は非課税
NISA口座で米国株を保有している場合、日本の税金(20.315%)は非課税です。これは大きなメリットです。
例えば、課税口座では約18ドルかかる日本の税金が、NISA口座ではゼロになります。
(2) 米国での10%源泉徴収は避けられない
ただし、NISA口座でも米国での10%源泉徴収は避けられません。日米租税条約により、日本居住者に対しては10%と定められているためです。
NISA口座での配当金の実質税負担:
- 配当金: 100ドル
- 米国で源泉徴収: 10ドル
- 日本で課税: 0ドル(非課税)
- 実質税負担: 10ドル(10%)
課税口座で外国税額控除を利用した場合(約8%)と比べると、NISA口座の方がやや税負担が高くなります。ただし、NISA口座は確定申告不要というメリットもあります。
(3) 外国税額控除は適用不可
NISA口座では、外国税額控除を利用できません。NISA制度は日本の税金を非課税にする制度であり、外国税額控除は日本の所得税から差し引く制度なので、併用できないのです。
このため、NISA口座で米国株を保有する場合、米国での10%源泉徴収を取り戻す手段はありません。
6. まとめ:配当金を賢く受け取ろう
米国株の配当金は、配当支払日から数日後に証券口座に入金されます。米国で10%源泉徴収、日本で20.315%課税されますが、外国税額控除を使えば実質的な税負担を約8〜10%に抑えられます。
米国株配当金受け取りのポイント:
- 配当落ち日の前日までに株を購入すれば、配当を受け取れる
- 配当支払日から3〜7営業日後に証券口座に入金される
- 米国で10%源泉徴収、日本で20.315%課税(外国税額控除で軽減可能)
- NISA口座なら日本の税金は非課税だが、米国の10%源泉徴収は避けられない
- 配当再投資プラン(DRIP)を使えば、自動で配当を再投資して複利効果を高められる
次のアクション:
- 保有銘柄の配当カレンダーを確認し、配当支払日をチェック
- 証券会社の設定で、円建て受け取りかドル建て受け取りかを選択
- 外国税額控除を受けるため、確定申告の準備をする
- NISA口座を活用して、日本の税金を非課税にする
配当金は定期的な収入源として魅力的です。受け取り方や税金処理を理解し、賢く配当投資を続けましょう。
よくある質問:
Q: 配当金はいつ受け取れる? A: 配当支払日(Payment Date)から3〜7営業日程度で証券口座に入金されます。証券会社により入金タイミングが異なるため、各証券会社のウェブサイトで確認しましょう。配当カレンダーで配当支払日をチェックしておくと、入金時期を予測できます。
Q: 配当金にかかる税金は? A: 米国で10%源泉徴収、日本で20.315%課税されます。外国税額控除を使えば、米国で課税された10%を日本の所得税から差し引けるため、実質的な税負担は約8〜10%に抑えられます。ただし、外国税額控除を受けるには確定申告が必要です。
Q: NISA口座の配当金は非課税? A: 日本の税金(20.315%)は非課税です。ただし、米国での10%源泉徴収は避けられません。また、NISA口座では外国税額控除が利用できないため、米国で課税された10%を取り戻すことはできません。それでも、確定申告不要で自動的に日本の税金がゼロになるメリットは大きいです。
Q: 配当再投資プラン(DRIP)は使える? A: 日本の証券会社では一部対応しています(SBI証券、楽天証券等)。DRIPを使えば、受け取った配当金を自動的に同じ銘柄の株式購入に充てることができ、複利効果で長期的な資産成長が加速します。対応状況は証券会社のウェブサイトで確認しましょう。