米国株の決算発表シーズンが近づいているけれど、どう読めばいいか分からない...
米国個別株に投資している日本人投資家の多くが、決算発表シーズンに株価が大きく動くことを経験しています。「EPSや売上高は何を見ればいいのか?」「ガイダンスとは何か?」「決算が良いのに株価が下がるのはなぜか?」といった疑問が尽きません。
米国株の決算発表は、企業の業績を判断し、投資戦略を見直す重要な機会です。しかし、決算資料の読み方や重要指標の見方を理解していないと、適切な投資判断ができません。
この記事では、米国株決算速報の入手方法、重要指標の読み方、ガイダンスの影響、決算後の投資戦略を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 決算発表は株価に大きなインパクト。決算シーズンは年4回(1月・4月・7月・10月)
- 速報入手は企業IR・SEC・Bloomberg・証券会社カレンダーを活用。日本時間では夜間~早朝に発表
- EPS(1株利益)と売上高がアナリスト予想と比較される。決算サプライズが株価を大きく動かす
- ガイダンス(業績見通し)は決算以上に重要。良い決算でもガイダンス下方修正で株価下落も
- 決算直後は値動きが激しい。プレ・アフターマーケットでの変動に注意し、多角的に評価
1. 米国株決算速報を理解する重要性
米国株の決算発表は、投資判断において最も重要なイベントの一つです。
(1) 決算発表が株価に与えるインパクト
決算発表は、企業の業績を数値で確認できる機会です。アナリスト予想を上回る決算(Earnings Beat)が発表されると、株価は大きく上昇することがあります。逆に、予想を下回る決算(Earnings Miss)が発表されると、株価は急落することがあります。
米国市場では、決算発表直後に株価が10%以上変動することも珍しくありません。このため、決算内容を正しく理解し、適切な投資判断を下すことが重要です。
(2) 決算シーズン(1月・4月・7月・10月)の特徴
米国企業の決算発表は、年4回の決算シーズンに集中します。
決算期 | 発表時期 | 対象期間 |
---|---|---|
Q1(第1四半期) | 1月中旬~2月 | 1-3月期 |
Q2(第2四半期) | 4月中旬~5月 | 4-6月期 |
Q3(第3四半期) | 7月中旬~8月 | 7-9月期 |
Q4(第4四半期) | 10月中旬~11月 | 10-12月期 |
決算シーズンには、多数の企業が同時期に決算を発表するため、市場全体が大きく変動することがあります。また、主要企業(Apple、Microsoft、Amazonなど)の決算は、市場全体のセンチメントに影響を与えることもあります。
2. 決算速報の入手方法―リアルタイムで確認する
米国株の決算速報を日本からリアルタイムで入手する方法を紹介します。
(1) 企業公式IR・SEC(8-K・10-Q)
最も信頼性の高い情報源は、企業の公式IRサイトとSEC(米国証券取引委員会)のEDGARデータベースです。
- 企業IR: 企業の公式ウェブサイトにある「Investor Relations」ページで、決算資料(Earnings Release)や決算説明会資料(Earnings Presentation)が公開されます。
- SEC EDGAR: 8-K(臨時報告書)で決算速報、10-Q(四半期報告書)で詳細な財務諸表が公開されます。
※出典: SEC EDGAR https://www.sec.gov/edgar/searchedgar/companysearch.html
(2) Bloomberg・ロイター・Yahoo Finance
日本語で決算速報を確認したい場合、BloombergやロイターのJapanサイトが便利です。
- Bloomberg Japan: 米国株決算速報ニュースを日本語で配信
- ロイターJapan: 米国企業決算の分析記事を日本語で配信
- Yahoo Finance: 英語だが、決算カレンダーと速報が無料で確認できる
※出典: Yahoo Finance Earnings Calendar https://finance.yahoo.com/calendar/earnings
(3) 日本の証券会社(SBI・楽天・マネックス)のカレンダー
日本の証券会社は、米国株決算カレンダーを提供しています。日本時間での発表時間が表示されるため、見やすいです。
- SBI証券: 米国株決算カレンダーで発表予定日を確認
- 楽天証券: 決算発表後の株価への影響分析も提供
- マネックス証券: 決算速報通知機能あり
(4) 日本時間での発表タイミング(夜間~早朝が多い)
米国企業の決算発表は、米国時間の取引時間外(プレマーケット:午前、アフターマーケット:午後)に行われることが多いです。
- プレマーケット発表: 米国時間の午前6時~9時30分 → 日本時間では夜8時~夜11時30分頃
- アフターマーケット発表: 米国時間の午後4時~8時 → 日本時間では翌朝6時~10時頃
サマータイム期間(3月~11月)と標準時間(11月~3月)で1時間の時差があるため、注意が必要です。
3. 決算資料の重要指標の読み方【EPS・売上高・利益率】
決算資料で最も注目されるのは、EPS、売上高、利益率の3つです。
(1) EPS(1株利益):アナリスト予想との比較が重要
EPS(Earnings Per Share)は、1株当たり利益を示す指標です。純利益を発行済株式数で割って計算されます。
決算発表では、EPSがアナリストコンセンサス予想と比較されます。予想を上回れば「Earnings Beat」、下回れば「Earnings Miss」と評価されます。
例:
- アナリスト予想EPS: $2.50
- 実際のEPS: $2.80
- → $0.30上回る = Earnings Beat → 株価上昇の可能性
(2) 売上高(Revenue):前年同期比成長率
売上高は、企業の事業規模と成長性を示します。前年同期比での成長率が注目されます。
例:
- 今期売上高: $50 billion
- 前年同期: $45 billion
- 成長率: +11.1% → 高成長と評価される可能性
アナリスト予想を上回る売上高も、株価上昇の要因となります。
(3) 営業利益・純利益・利益率
利益率は、企業の収益性を示す指標です。
- 営業利益率: 営業利益 ÷ 売上高 × 100(本業での稼ぐ力)
- 純利益率: 純利益 ÷ 売上高 × 100(最終的な利益率)
利益率が改善している場合、企業の収益性が向上していると評価されます。逆に、売上高が増加しても利益率が低下している場合、コスト増加や価格競争の激化が懸念されます。
(4) 決算サプライズ(Earnings Beat/Miss)の判定
決算サプライズは、実際の決算がアナリスト予想とどれだけ乖離しているかを示します。
- Earnings Beat: EPSと売上高が予想を上回る → 株価上昇の傾向
- Earnings Miss: EPSと売上高が予想を下回る → 株価下落の傾向
- Mixed Results: EPSは上回るが売上高は下回る、など → 反応は複雑
ただし、決算サプライズだけで株価が決まるわけではありません。次に説明するガイダンスも重要です。
4. ガイダンス(業績見通し)が株価に与える影響
ガイダンスは、決算以上に株価に影響を与えることがあります。
(1) ガイダンスとは何か
ガイダンス(Guidance)は、企業が示す次四半期または通期の業績見通しです。決算発表と同時に、またはEarnings Call(決算説明会)で発表されます。
ガイダンスには以下の内容が含まれます。
- 売上高見通し: 次四半期または通期の売上高予想
- EPS見通し: 次四半期または通期のEPS予想
- 成長率見通し: 前年比での成長率予想
(2) 決算が良くても株価が下がるケース(ガイダンス下方修正)
決算内容が良くても、ガイダンスが弱いと株価は下落することがあります。
例:
- 今期決算: EPSがアナリスト予想を上回る(Earnings Beat)
- 次期ガイダンス: 予想を下回る売上高見通しを発表(下方修正)
- → 株価は下落
投資家は、過去の業績だけでなく、今後の成長性を重視します。このため、ガイダンスが弱いと、決算が良くても株価が下がることがあります。
(3) Earnings Call(決算説明会)の重要性
Earnings Callは、決算発表後に経営陣が業績を説明する電話会議です。CEOやCFOが業績の詳細、今後の戦略、ガイダンスの根拠を説明します。
Earnings Callでは、アナリストからの質疑応答も行われます。この中で、経営陣の発言がポジティブかネガティブかが株価に影響を与えることがあります。
Earnings Callの内容は、企業IRサイトで録音が公開されることが多いです。
5. 決算発表後の投資戦略と注意点
決算発表後の投資戦略を考える際は、以下の点に注意が必要です。
(1) 決算直後の株価変動リスク
決算発表直後は、株価が大きく変動します。決算内容を見てから慌てて売買すると、高値掴みや安値売りのリスクがあります。
決算発表前に、以下の準備をしておくことが推奨されます。
- アナリスト予想を確認: Yahoo FinanceやEarnings Whispersで予想を確認
- 売買方針を決めておく: 決算が良ければ保有継続、悪ければ売却など、事前にルールを決める
- 損切りラインを設定: 想定外の決算悪化に備えて、損切りラインを設定しておく
(2) プレマーケット・アフターマーケットでの価格変動
米国市場では、通常取引時間外(プレマーケット・アフターマーケット)でも取引が可能です。決算発表が時間外に行われると、時間外取引で株価が大きく変動することがあります。
日本の証券会社では、時間外取引に対応していない場合が多いです。このため、決算発表直後に売買できず、翌日の寄付き(通常取引開始時)まで待つ必要があります。
(3) 決算内容の多角的な評価(短期的な数値だけで判断しない)
決算内容を評価する際は、EPSや売上高だけでなく、以下の点も確認することが推奨されます。
- 利益率の推移: 収益性が改善しているか
- キャッシュフロー: 営業キャッシュフローが健全か
- ガイダンス: 次期の見通しは強いか弱いか
- 競合他社との比較: 同業他社の決算と比較して優劣を判断
- 市場全体の動向: 個別企業だけでなく、市場全体やセクターの動向も考慮
短期的な数値だけで判断せず、長期的な成長性を見極めることが重要です。
6. まとめ:決算情報を活用した投資判断
米国株の決算速報は、企業の業績を確認し、投資戦略を見直す重要な機会です。決算速報は企業IR、SEC、Bloomberg、証券会社のカレンダーで確認できます。
EPS、売上高、利益率がアナリスト予想と比較され、決算サプライズが株価を動かします。ガイダンスは決算以上に重要で、良い決算でもガイダンス下方修正で株価が下落することがあります。
決算発表直後は株価が大きく変動するため、事前に売買方針を決めておくことが推奨されます。決算内容を多角的に評価し、長期的な成長性を見極めることが重要です。
次のアクション:
- 保有銘柄の決算発表スケジュールを確認する
- アナリスト予想EPSと売上高を確認する
- 決算発表後、ガイダンスとEarnings Callの内容を確認する
- 決算内容を多角的に評価し、保有継続または売却を判断する
決算情報を正しく理解し、適切な投資判断を下しましょう。投資判断は自己責任で行ってください。