米国株ETFの選び方|VOO・VTI・QQQ徹底比較

公開日: 2025/10/19

米国株ETFとは―投資信託との違い

「米国株に投資したいけど、個別株は難しそう…」

米国株投資に関心を持つ日本人投資家の多くが、まず検討するのがETF(上場投資信託)です。しかし、「ETFって何?」「投資信託とどう違うの?」「どれを選べばいいの?」といった疑問が次々に浮かんできます。

この記事では、米国株ETFの基礎知識から、主要ETFの比較、日本からの購入方法まで、初心者でも迷わず始められるよう詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • ETFは取引所でリアルタイム売買できる投資信託、経費率が低い
  • S&P500連動のVOO・IVV、全米株式のVTIが初心者に適している
  • 配当は米国で10%、日本で20.315%の二重課税(外国税額控除で一部取り戻せる)
  • NISA口座で日本の税金は非課税だが、米国の10%は免除されない
  • 1口から購入可能、VOOは約7万円、VTIは約3.5万円から始められる

(1) ETF(上場投資信託)の仕組み

ETF(Exchange Traded Fund)は、株式のように取引所で売買できる投資信託です。

ETFの基本構造:

  • 指数連動: S&P500などの株価指数に連動するよう設計
  • 分散投資: 1つのETFで数百〜数千の銘柄に分散投資
  • 取引所上場: NYSE、NASDAQなどの取引所でリアルタイム売買
  • 低コスト: 運用コスト(経費率)が投資信託より低い傾向

(2) 投資信託との比較(取引方法・コスト・分配金)

項目 ETF 投資信託
売買方法 取引所でリアルタイム売買 1日1回の基準価額で売買
経費率 低い(年0.03〜0.5%) やや高い(年0.1〜2%)
売買手数料 あり(証券会社により異なる) ノーロード(無料)が多い
最低投資額 1口単位(数万円〜) 100円〜(積立可能)
分配金 配当金として受取(再投資は手動) 自動再投資が可能
為替手数料 かかる(円→ドル両替) 円建てファンドなら不要

どちらを選ぶべき?

  • ETF向き: 経費率を抑えたい、リアルタイム売買したい、まとまった資金がある
  • 投資信託向き: 少額から積立したい、自動再投資したい、為替手数料を避けたい

(3) リアルタイム売買とNAV(純資産価値)

ETFは株式と同様、取引時間中(米国市場: 日本時間23:30〜翌6:00)に価格が変動します。

NAV(Net Asset Value: 純資産価値):

  • ETFが保有する全資産の価値を口数で割った理論価格
  • ETFの市場価格はNAVに近似するが、需給により乖離することもある

具体例(VOOの場合):

  • NAV: 500ドル
  • 市場価格: 500.5ドル(0.1%のプレミアム)

通常、大型ETFでは乖離は0.1%以下に抑えられています。

米国株ETFのメリット・デメリット

(1) メリット:低コスト、分散投資、流動性の高さ

メリット1: 低コスト

米国株ETFの経費率は非常に低く、長期投資で大きな差になります。

ETF 経費率(年率)
VOO(Vanguard S&P500 ETF) 0.03%
VTI(Vanguard全米株式ETF) 0.03%
QQQ(NASDAQ100 ETF) 0.20%

メリット2: 分散投資

1つのETFで数百〜数千の銘柄に分散投資できるため、個別株のリスクを大幅に抑えられます。

  • VOO: S&P500銘柄(約500社)
  • VTI: 米国株全体(約4,000社)
  • VT: 全世界株式(約9,000社)

メリット3: 流動性の高さ

大型ETFは取引量が多く、いつでも希望価格で売買しやすいです。

(2) デメリット:為替リスク、配当の二重課税、売買手数料

デメリット1: 為替リスク

米国株ETFはドル建てのため、円高になると円換算の評価額が目減りします。

具体例:

  • 購入時: 1ドル=150円、ETF価格500ドル → 75,000円
  • 売却時: 1ドル=130円、ETF価格500ドル → 65,000円
  • 結果: ドル建てでは変動なしでも、円建てでは1万円の損失

デメリット2: 配当の二重課税

米国株ETFの配当には、米国と日本で二重に税金がかかります:

  1. 米国: 10%源泉徴収
  2. 日本: 20.315%課税(所得税15.315%、住民税5%)

外国税額控除を確定申告で申請すれば、米国で課税された10%を日本の所得税から一部差し引けます。

デメリット3: 売買手数料

投資信託のノーロードファンドと違い、ETFは売買のたびに手数料がかかります。

  • SBI証券・楽天証券: 約定代金の0.495%(上限22ドル)
  • マネックス証券: 同上

(3) 少額から始められる(1口単位)

ETFは1口から購入できるため、個別株より少額で分散投資が可能です。

主要ETFの1口価格(2025年時点の目安):

ETF 1口価格 円換算(1ドル=150円)
VOO 約500ドル 約75,000円
VTI 約250ドル 約37,500円
VYM(高配当ETF) 約110ドル 約16,500円

主要な米国株ETFの種類と特徴

(1) S&P500連動型(VOO・IVV・SPY)

VOO(Vanguard S&P500 ETF):

  • 経費率: 0.03%
  • 配当利回り: 約1.5%
  • 特徴: 低コストで米国大型株500社に分散

IVV(iShares Core S&P500 ETF):

  • 経費率: 0.03%
  • 配当利回り: 約1.5%
  • 特徴: BlackRock運用、VOOとほぼ同等

SPY(SPDR S&P500 ETF Trust):

  • 経費率: 0.095%(やや高め)
  • 配当利回り: 約1.5%
  • 特徴: 世界最古のETF、流動性が最も高い

どれを選ぶべき?

長期投資なら経費率が低いVOOまたはIVVがおすすめです。

(2) 全米株式型(VTI)

VTI(Vanguard Total Stock Market ETF):

  • 経費率: 0.03%
  • 配当利回り: 約1.4%
  • 構成銘柄: 米国株全体(大型・中型・小型株、約4,000社)
  • 特徴: S&P500より広範な分散、中小型株の成長余地も取り込める

S&P500 vs 全米株式:

長期的なパフォーマンスはほぼ同等ですが、VTIの方がより広範に分散されています。

(3) 高配当型(VYM・SPYD・HDV)

VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF):

  • 経費率: 0.06%
  • 配当利回り: 約3.0%
  • 特徴: 配当利回りの高い約400社に投資

SPYD(SPDR Portfolio S&P500 High Dividend ETF):

  • 経費率: 0.07%
  • 配当利回り: 約4.5%
  • 特徴: S&P500の中で配当利回り上位80社に均等投資

HDV(iShares Core High Dividend ETF):

  • 経費率: 0.08%
  • 配当利回り: 約3.5%
  • 特徴: 財務健全性の高い高配当銘柄約75社

配当重視の投資家向け:

定期的なキャッシュフローが欲しい場合、高配当ETFが適しています。ただし、値上がり益はS&P500より低い傾向があります。

(4) セクター特化型(QQQ、XLK等)

QQQ(Invesco QQQ Trust):

  • 経費率: 0.20%
  • 配当利回り: 約0.6%
  • 構成: NASDAQ100(ハイテク大型株100社)
  • 特徴: GAFAMなどの成長株に集中、高リターン・高リスク

XLK(Technology Select Sector SPDR Fund):

  • 経費率: 0.10%
  • 構成: S&P500のテクノロジーセクター銘柄
  • 特徴: テクノロジー分野に特化

リスク許容度が高い投資家向け:

セクター特化ETFは高リターンを狙えますが、ボラティリティ(価格変動)が大きいです。

(5) 全世界株式型(VT)

VT(Vanguard Total World Stock ETF):

  • 経費率: 0.07%
  • 配当利回り: 約2.0%
  • 構成: 米国・先進国・新興国の全世界株式(約9,000社)
  • 特徴: 1本で全世界に分散、地域リスクを抑える

米国集中 vs 全世界分散:

過去20年は米国株が高リターンでしたが、将来も同じとは限りません。全世界分散はリスク分散効果が高いです。

米国株ETFの選び方―経費率・分散・戦略

(1) 経費率(Expense Ratio)の比較

経費率の差は長期で大きな影響を与えます。

シミュレーション(月3万円、20年間積立、年率7%リターン):

経費率 20年後の資産額 差額
0.03% 約1,545万円 -
0.10% 約1,540万円 -5万円
0.50% 約1,480万円 -65万円

経費率が0.47%違うだけで、20年後には約65万円の差が生まれます。

(2) 分散効果と構成銘柄数

分散効果の比較:

ETF 構成銘柄数 分散効果
S&P500(VOO) 約500社 大型株に集中、安定
全米株式(VTI) 約4,000社 中小型株も含む、より広範な分散
全世界株式(VT) 約9,000社 地域分散、リスク最小

(3) 配当利回りと値上がり益のバランス

投資目的別の選択:

  • 値上がり益重視: S&P500(VOO)、NASDAQ100(QQQ)
  • 配当重視: 高配当ETF(VYM、SPYD、HDV)
  • バランス型: 全米株式(VTI)、全世界株式(VT)

(4) 投資目的に応じた選択(成長重視・配当重視)

20-40代(資産形成期):

  • 値上がり益重視: S&P500(VOO)、NASDAQ100(QQQ)
  • 長期的な資産拡大を目指す

50-60代(リタイア前後):

  • 配当重視: 高配当ETF(VYM、SPYD)
  • 定期的なキャッシュフロー確保

日本から米国株ETFを購入する方法

(1) SBI証券・楽天証券・マネックス証券での取扱

主要3社とも、米国株ETFを豊富に取り扱っています。

証券会社 取扱ETF数 特徴
SBI証券 約350銘柄 国内最多、米国主要ETFは網羅
楽天証券 約350銘柄 楽天ポイントで投資可能
マネックス証券 約350銘柄 米国株情報が充実

(2) 売買手数料と為替手数料

取引手数料:

  • SBI証券・楽天証券・マネックス証券: 約定代金の0.495%(上限22ドル、下限0ドル)

為替手数料:

  • SBI証券: 片道25銭(住信SBI銀行経由なら4銭)
  • 楽天証券: 片道25銭
  • マネックス証券: 買付時無料、売却時25銭

コストを抑えるポイント:

少額投資(10万円未満)なら円貨決済でOK。100万円以上なら外貨決済で為替コストを削減しましょう。

(3) NISA口座での購入(配当の米国課税10%は免除されない)

新NISA(成長投資枠)での米国株ETF:

  • 年間投資枠: 240万円
  • 日本の税金: 非課税(20.315%が免除)
  • 米国の税金: 10%源泉徴収(免除されない)

NISA vs 特定口座(配当100ドルの場合):

| 口座タイプ | 米国課税 | 日本課税 | 手取り | |---|---|---| | NISA | 10ドル | 0ドル | 90ドル | | 特定口座 | 10ドル | 約18ドル | 約72ドル | | 特定口座+外国税額控除 | 10ドル | 約8ドル | 約82ドル |

NISA口座なら、確定申告不要で手取りが増えます。

(4) 配当金の受取方法(自動再投資の有無)

米国株ETFの配当金は、証券口座に現金で振り込まれます。

再投資の方法:

  • 手動再投資: 受け取った配当金で再度ETFを購入(手数料がかかる)
  • 自動再投資: 米国の証券会社では可能だが、日本の証券会社ではサービスなし

投資信託との違い:

投資信託(eMAXIS Slim 米国株式など)なら、分配金を自動で再投資できるため、複利効果を最大化できます。

まとめ:米国株ETFで効率的な資産形成

米国株ETFは、低コストで分散投資でき、長期的な資産形成に適した金融商品です。しかし、選択肢が多く、初心者は迷いがちです。

初心者向けの選び方:

  1. まずはS&P500または全米株式: VOO(S&P500)またはVTI(全米株式)が低コストで分散効果が高い
  2. 経費率を重視: 0.1%以下のETFを選ぶ
  3. 投資目的で使い分け: 値上がり益重視ならS&P500、配当重視なら高配当ETF
  4. NISA口座を活用: 日本の税金20.315%が非課税になる
  5. 為替コストを抑える: 大口投資なら外貨決済、住信SBI銀行の外貨積立が有効

投資前のチェックリスト:

  • 為替リスクを理解しているか(円高で評価額が目減り)
  • 配当の二重課税を理解しているか(米国10%、日本20.315%)
  • 長期投資が前提(短期売買で儲けようとしない)
  • 生活資金とは別に、余裕資金で投資しているか

米国株ETFは1口から購入でき、VTIなら約3.5万円から始められます。まずは少額で始めて、操作に慣れることが成功への第一歩です。

投資は元本保証がありません。投資判断は自己責任で行い、必要に応じてファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。

よくある質問

Q1米国株ETFと投資信託の違いは何ですか?

A1ETFは株式のように取引所でリアルタイム売買できますが、投資信託は1日1回の基準価額で売買されます。ETFは経費率が低い(年0.03〜0.5%)傾向がありますが、売買手数料・為替手数料がかかります。投資信託は100円から積立でき、分配金の自動再投資も可能です。

Q2米国株ETFの配当金は二重課税されますか?

A2はい。米国で10%源泉徴収された後、日本で20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が課税されます。NISA口座では日本の課税は免除されますが、米国の10%は免除されません。特定口座で外国税額控除を確定申告で申請すれば、米国で課税された10%を日本の所得税から一部差し引けます。

Q3初心者におすすめの米国株ETFはありますか?

A3S&P500連動のVOO(経費率0.03%)やIVV、全米株式のVTI(経費率0.03%)が低コストで分散効果が高く、長期投資に適しています。ただし、投資目的により最適なETFは異なるため、ご自身のリスク許容度と投資目標に合わせて判断してください。

Q4米国株ETFは少額から買えますか?

A4はい。ETFは1口単位で購入できます。VTIは1口約250ドル(約37,500円)、VYM(高配当ETF)は約110ドル(約16,500円)から買えます。ただし、証券会社の売買手数料に注意し、少額投資では手数料負けしないよう工夫が必要です。

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