米国株の為替差益計算と確定申告|税率20.315%

公開日: 2025/10/19

米国株を売ったけれど、為替差益の計算がわからない...

米国株を売却した際、株価の値上がり益だけでなく為替変動による損益も課税対象になります。「為替差益ってどう計算するの?」「証券会社が計算してくれる?」「確定申告はどうすればいい?」といった疑問を持つ方は多いでしょう。

この記事では、米国株売却時の為替差益の計算方法、証券会社別の確認方法、確定申告の手順を詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • 米国株の売却益には株価変動益と為替差益の両方が含まれる
  • 為替差益は(売却時レート - 取得時レート)× 売却ドル数で計算
  • 特定口座(源泉徴収あり)なら証券会社が自動計算・源泉徴収してくれる
  • 一般口座・特定口座(源泉徴収なし)では年間取引報告書をもとに自分で確定申告
  • 為替差損は他の株式譲渡益と損益通算でき、繰越控除も可能

米国株の為替差益とは?基礎知識

米国株を売却した際に発生する利益には、株価変動による利益と為替変動による利益の2つがあります。

(1) 為替差損益が発生する仕組み

米国株は米ドルで取引されるため、購入時と売却時の為替レート(円/ドル)の違いによって利益や損失が発生します。

例:

  • 購入時: 1ドル=110円で100ドル分の株を購入 → 11,000円
  • 売却時: 1ドル=150円で同じ株を100ドルで売却 → 15,000円
  • 為替差益: 15,000円 - 11,000円 = 4,000円

株価が変わらなくても、円安になれば為替差益が発生します。逆に円高になれば為替差損が発生します。

(2) 株価変動益との違い

米国株の譲渡益は、株価の値上がり益と為替差益を合算したものです。

計算例:

  • 購入: Apple株を1株150ドルで購入(為替レート1ドル=110円)→ 16,500円
  • 売却: Apple株を1株200ドルで売却(為替レート1ドル=150円)→ 30,000円

内訳:

  • 株価変動益: (200ドル - 150ドル) × 150円 = 7,500円
  • 為替差益: 150ドル × (150円 - 110円) = 6,000円
  • 合計譲渡益: 7,500円 + 6,000円 = 13,500円

※実際の計算式は複雑ですが、証券会社が自動計算してくれます(特定口座の場合)。

(3) 課税対象となる為替差益

米国株の為替差益は、株式の譲渡所得として課税されます。税率は一律20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)です。

為替差益だけを別計算する必要はなく、株価変動益と合算した譲渡益全体に課税されます。

為替差損益の計算方法

為替差損益の計算方法を詳しく見ていきましょう。

(1) 基本的な計算式

為替差損益は以下の式で計算できます:

為替差損益 = 売却代金(円) - 取得価額(円)
売却代金(円) = 売却ドル額 × 売却時為替レート
取得価額(円) = 取得ドル額 × 取得時為替レート

ただし、株価変動益も含まれるため、実際には証券会社の年間取引報告書で確認するのが確実です。

(2) 取得時レートの確認方法

取得時の為替レートは、株式を購入した日の為替レートです。証券会社の取引履歴や年間取引報告書に記載されています。

確認方法:

  • 証券会社の取引履歴ページにアクセス
  • 購入日の取引明細を確認
  • 「約定レート」または「為替レート」欄を確認

外貨決済(米ドルで購入)の場合は、円からドルに換えた時の為替レートが取得時レートになります。

(3) 売却時レートの確認方法

売却時の為替レートも同様に、証券会社の取引履歴に記載されています。

確認方法:

  • 売却日の取引明細を確認
  • 「約定レート」または「為替レート」欄を確認

円貨決済(円で売却)の場合は、自動的に売却時の為替レートが適用されます。

(4) 外貨決済と円貨決済の違い

証券会社によっては、外貨決済(ドルのまま保有)と円貨決済(円に換える)を選べます。

決済方法 為替差益の発生タイミング
円貨決済 株式売却時に円転 → 売却時に為替差益が確定
外貨決済 ドルのまま保有 → 円転時に為替差益が確定

外貨決済の場合、円転(ドルを円に換える)するまで為替差益は確定しません。

(5) 具体的な計算例

例: Apple株1株を購入・売却した場合

  • 購入: 150ドル × 110円 = 16,500円
  • 売却: 200ドル × 150円 = 30,000円
  • 譲渡益: 30,000円 - 16,500円 = 13,500円

この13,500円には株価変動益と為替差益の両方が含まれています。

証券会社別の為替レート確認方法

各証券会社の年間取引報告書で為替差益を含む譲渡損益を確認できます。

(1) SBI証券の年間取引報告書

SBI証券では、特定口座の年間取引報告書に以下の情報が記載されています:

  • 譲渡益(株価変動益 + 為替差益の合計)
  • 取得価額(購入時の円換算額)
  • 売却価額(売却時の円換算額)

確認方法:

  1. SBI証券にログイン
  2. 「口座管理」→「取引報告書」
  3. 「特定口座年間取引報告書」をダウンロード

(2) 楽天証券の年間取引報告書

楽天証券も同様に、年間取引報告書で確認できます。

確認方法:

  1. 楽天証券にログイン
  2. 「マイメニュー」→「電子交付書面」
  3. 「特定口座年間取引報告書」を選択

(3) マネックス証券の年間取引報告書

マネックス証券では、取引報告書に為替レートが明記されています。

確認方法:

  1. マネックス証券にログイン
  2. 「保有残高・口座管理」→「電子交付書面」
  3. 「特定口座年間取引報告書」を確認

(4) 取引履歴での確認方法

年間取引報告書以外にも、個別の取引履歴で為替レートを確認できます。

手順:

  1. 証券会社にログイン
  2. 「取引履歴」または「約定履歴」ページにアクセス
  3. 購入日・売却日の明細を確認
  4. 「為替レート」または「約定レート」欄を確認

特定口座と一般口座での処理の違い

口座の種類によって、為替差益の計算と申告方法が異なります。

(1) 特定口座(源泉徴収あり)の自動計算

特定口座(源泉徴収あり)では、証券会社が為替差益を含む譲渡益を自動計算し、税金(20.315%)を源泉徴収してくれます。

メリット:

  • 確定申告が不要(原則)
  • 為替差益の計算を自分でする必要がない
  • 年間取引報告書で確認できる

注意点:

  • 損失が出た場合、確定申告で損益通算・繰越控除ができる

(2) 特定口座(源泉徴収なし)の確定申告

特定口座(源泉徴収なし)では、証券会社が譲渡損益を計算してくれますが、税金の源泉徴収はされません。年間取引報告書をもとに自分で確定申告する必要があります。

手順:

  1. 年間取引報告書をダウンロード
  2. 確定申告書Bの「株式等の譲渡所得」欄に記入
  3. 譲渡益に対して20.315%の税金を納付

(3) 一般口座での自己計算

一般口座では、為替差益の計算も確定申告も全て自分で行う必要があります。

計算方法:

  1. 取引履歴から取得時・売却時の為替レートを確認
  2. 取得価額(円)= 取得ドル額 × 取得時レート
  3. 売却価額(円)= 売却ドル額 × 売却時レート
  4. 譲渡益 = 売却価額 - 取得価額

複雑な場合は税理士に相談することをおすすめします。

(4) NISA口座(非課税)

NISA口座で取引した米国株の譲渡益(為替差益を含む)は非課税です。確定申告も不要です。

確定申告での為替差益の記載方法

一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で取引した場合の確定申告方法を解説します。

(1) 確定申告書Bの記入箇所

確定申告書Bの以下の欄に記入します:

  • 第一表: 「株式等の譲渡所得」欄
  • 第三表(分離課税用): 株式等の譲渡所得の明細

(2) 譲渡所得の計算

年間取引報告書(特定口座の場合)または自分で計算した譲渡損益を記入します。

記入例:

  • 譲渡収入金額: 1,000,000円(売却代金の合計)
  • 取得費: 800,000円(取得価額の合計)
  • 譲渡所得: 200,000円
  • 税額: 200,000円 × 20.315% = 40,630円

(3) 為替差損の損益通算

為替差損が出た場合、他の株式譲渡益と損益通算できます。また、損失を翌年以降3年間繰り越すこともできます。

損益通算の例:

  • A株の譲渡益: +10万円
  • B株の譲渡損(為替差損を含む): -5万円
  • 課税対象: 10万円 - 5万円 = 5万円

(4) e-Taxでの申告方法

e-Tax(国税電子申告システム)を使えば、オンラインで確定申告できます。

手順:

  1. e-Taxにログイン
  2. 「確定申告書作成」を選択
  3. 「株式等の譲渡所得」を入力
  4. 年間取引報告書の数値を転記
  5. 送信して完了

まとめ:為替差益の計算と申告の流れ

米国株の為替差益は、株式の譲渡所得として課税されます。特定口座(源泉徴収あり)なら証券会社が自動計算・源泉徴収してくれるため、確定申告は原則不要です。

計算・申告の流れ:

  1. 特定口座(源泉徴収あり): 証券会社が自動計算・源泉徴収 → 確定申告不要
  2. 特定口座(源泉徴収なし): 証券会社が計算 → 年間取引報告書をもとに確定申告
  3. 一般口座: 自分で為替差益を計算 → 確定申告
  4. NISA口座: 非課税 → 確定申告不要

次のアクション:

  • 特定口座(源泉徴収あり)を利用して手間を省く
  • 年間取引報告書で譲渡損益を確認する
  • 為替差損が出た場合は確定申告で損益通算・繰越控除を活用する
  • 複雑な場合は税理士に相談する

為替差益の計算は複雑に感じるかもしれませんが、特定口座を利用すれば証券会社が自動計算してくれます。安心して米国株投資を続けましょう。

よくある質問

Q1為替差益の計算が複雑でわかりません

A1特定口座(源泉徴収あり)なら証券会社が自動計算してくれます。年間取引報告書で為替差益を含む譲渡損益が確認できます。一般口座の場合は自分で計算し確定申告が必要ですが、税理士への相談も検討しましょう。

Q2証券会社が為替差益を計算してくれますか?

A2特定口座(源泉徴収あり・なし)では証券会社が為替差益を含む譲渡損益を自動計算してくれます。一般口座では自分で計算が必要です。年間取引報告書を活用しましょう。

Q3為替差益の税率はいくらですか?

A3株式の譲渡所得として20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)が課税されます。為替差益も株価変動益と合算して課税されます。

Q4為替差損は損益通算できますか?

A4はい、可能です。米国株の為替差損は株式譲渡損として、他の株式譲渡益と損益通算できます。また、損失を翌年以降3年間繰り越す繰越控除も可能です。

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