決算発表の直後に取引したいけど、プレマーケットって何?
米国株に投資していると、決算発表や重要ニュースが市場開始前に発表されることがあります。「このニュースを受けてすぐに取引したい」「市場が開く前に動きたい」と考えたとき、プレマーケット(市場前取引)という選択肢が頭に浮かぶでしょう。
しかし、プレマーケット取引は通常取引と異なる特性があり、リスクも大きいため、仕組みを理解してから利用する必要があります。この記事では、プレマーケット取引の時間、仕組み、リスク、日本の証券会社での対応状況を詳しく解説します。
この記事のポイント:
- プレマーケットは米国東部時間4:00-9:30、日本時間では標準時18:00-23:30(夏時間17:00-22:30)
- 流動性が低くスプレッドが広いため、価格変動が大きい
- 成行注文は使えず、指値注文のみ対応の場合が多い
- 日本の証券会社では対応が限定的(マネックス証券は対応、SBI・楽天は非対応または制限あり)
米国株のプレマーケット取引が注目される理由
プレマーケット取引が注目される理由は、主に以下の3つです:
決算発表が市場開始前に行われる: 多くの米国企業は、市場開始前(米国時間の早朝)に決算を発表します。好決算であれば株価が急騰することが予想されるため、市場開始前に買いたいという需要があります。
重要ニュースへの即時対応: M&A(企業買収)発表、FDA(米国食品医薬品局)の承認、経済指標の発表など、市場開始前に重要ニュースが出た場合、いち早く反応できます。
通常取引時間外でも売買可能: 日本時間の夕方から深夜にかけて取引できるため、日中忙しい投資家でも対応できます。
ただし、これらのメリットにはリスクも伴います。次のセクションで詳しく見ていきます。
プレマーケット取引の仕組みと取引時間
プレマーケット取引の基本的な仕組みを理解しましょう。
(1) プレマーケットとは(通常取引開始前の時間外取引)
プレマーケット(Pre-Market Trading)とは、NYSE(ニューヨーク証券取引所)やNASDAQの通常取引時間(米国東部時間9:30-16:00)よりも前の時間帯に行われる取引のことです。
時間外取引は、ECN(Electronic Communication Network:電子取引ネットワーク)を通じて行われます(出典: Investopedia「Pre-Market Trading Guide」https://www.investopedia.com/terms/p/premarket.asp)。
(2) 取引時間(米国東部時間4:00-9:30)
プレマーケットの取引時間は以下の通りです:
- 開始: 米国東部時間 4:00 AM
- 終了: 米国東部時間 9:30 AM(通常取引開始)
(出典: NASDAQ「Pre-Market Trading Hours」https://www.nasdaq.com/stock-market-trading-hours-for-nasdaq、NYSE「Extended Hours Trading」https://www.nyse.com/markets/hours-calendars)
(3) 日本時間での取引可能時間(サマータイム考慮)
米国東部時間を日本時間に換算すると、以下のようになります:
期間 | 日本時間(開始) | 日本時間(終了) |
---|---|---|
標準時間(11月-3月) | 18:00 | 23:30 |
夏時間(3月-11月) | 17:00 | 22:30 |
※サマータイム(夏時間)は3月第2日曜日-11月第1日曜日です。
日本の投資家にとって、プレマーケットは夕方から深夜にかけての取引時間となります。
プレマーケットのリスクと注意点
プレマーケット取引には、通常取引時間にはない特有のリスクがあります。
(1) 流動性の低さとスプレッドの広さ
プレマーケットは、通常取引時間と比べて参加者が少なく、流動性が低いです。そのため、以下のような問題が発生します:
- スプレッドが広い: 買値(Ask)と売値(Bid)の差が大きくなり、不利な価格で取引される可能性がある
- 約定しにくい: 希望価格で注文が成立しない場合がある
- 価格の信頼性が低い: 少数の取引で価格が大きく変動する
(出典: SEC「Extended Hours Trading Risks」https://www.sec.gov/)
(2) 価格変動の大きさとボラティリティ
プレマーケットでは、以下の理由で価格変動が激しくなります:
- 決算発表や重要ニュースに対する過剰反応
- 流動性の低さによる価格の乱高下
- 通常取引時間で価格が大きく戻る(調整される)可能性
例えば、プレマーケットで株価が10%上昇していても、通常取引開始後に利益確定売りで下落することがあります。
(3) 成行注文の危険性(指値注文推奨)
プレマーケットでは、成行注文は推奨されません:
- 不利な価格で約定: 流動性が低いため、想定外の価格で約定する可能性
- 指値注文のみ対応: 多くの証券会社では成行注文を受け付けていない
プレマーケットで取引する場合は、必ず指値注文を使い、許容できる価格を指定してください。
日本の証券会社でのプレマーケット取引対応状況
日本の主要ネット証券でのプレマーケット取引対応状況を確認します。
(1) SBI証券の時間外取引対応
2025年10月時点で、SBI証券は米国株のプレマーケット取引に対応していません。通常取引時間(日本時間22:30-5:00または23:30-6:00)のみ取引可能です(出典: SBI証券公式サイト https://www.sbisec.co.jp/)。
(2) マネックス証券のプレマーケット取引
マネックス証券は、米国株の時間外取引に対応している数少ない日本の証券会社の一つです。プレマーケット取引も利用可能ですが、取扱銘柄や注文方法に制限がある場合があります(出典: マネックス証券公式サイト https://www.monex.co.jp/)。
詳細は、マネックス証券の公式サイトまたはカスタマーサポートでご確認ください。
(3) 楽天証券の取引時間と制限
2025年10月時点で、楽天証券は米国株のプレマーケット取引に対応していません。通常取引時間のみ取引可能です(出典: 楽天証券「米国株 取引時間」https://www.rakuten-sec.co.jp/web/foreign/us/rule.html)。
プレマーケットでの注文方法と戦略
プレマーケット取引を利用する場合の注文方法と戦略を解説します。
(1) 指値注文の設定方法
プレマーケットでは、必ず指値注文を使用してください:
- 買い注文: 希望する最高価格を設定(それ以下で買える)
- 売り注文: 希望する最低価格を設定(それ以上で売れる)
例えば、現在の株価が100ドルで、決算発表後に110ドルまで上がると予想する場合、105ドルの指値買い注文を出しておくことで、想定外の高値掴みを防げます。
(2) 決算発表直後の取引タイミング
決算発表直後にプレマーケットで取引する場合の注意点:
- 初動の過剰反応を避ける: 発表直後は価格が乱高下しやすい
- 通常取引時間を待つのも戦略: 市場開始後に価格が落ち着くことも多い
- ニュースの詳細を確認: 株価の動きだけでなく、決算内容を精査する
焦って取引せず、冷静に判断することが重要です。
(3) ニュース反応を見極める方法
プレマーケットでの価格変動が通常取引時間でも続くかを見極めるポイント:
- 出来高: プレマーケットの出来高が少ない場合、価格の信頼性は低い
- 複数のニュースソース: 決算発表の内容を複数のメディアで確認
- アナリストの反応: プロのアナリストがどう評価しているか確認
プレマーケットの価格はあくまで「参考値」として捉え、通常取引時間での動きを見てから判断するのが賢明です。
まとめ:プレマーケット取引は初心者向きか
プレマーケット取引は、決算発表や重要ニュースに即座に対応できる一方、リスクも大きい取引方法です。
重要なポイント:
- プレマーケットは米国東部時間4:00-9:30、日本時間では標準時18:00-23:30(夏時間17:00-22:30)
- 流動性が低くスプレッドが広いため、価格変動が大きい
- 成行注文は不可、指値注文のみ対応が多い
- 日本の証券会社では対応が限定的(マネックス証券は対応、SBI・楽天は非対応)
プレマーケット取引が向いている人:
- 米国市場の決算発表タイミングを熟知している
- 時間外取引のリスクを理解し、許容できる
- 指値注文を適切に設定できる経験がある
プレマーケット取引が向いていない人:
- 米国株投資の初心者
- 成行注文で取引したい
- 価格変動リスクを避けたい
次のアクション:
- 利用している証券会社がプレマーケット取引に対応しているか確認する
- 時間外取引のリスクを理解し、通常取引時間との違いを把握する
- 最初は少額で試し、指値注文の設定方法を習得する
- 決算発表スケジュールを確認し、冷静に判断する習慣をつける
プレマーケット取引は便利な機能ですが、初心者は通常取引時間での取引から始めることをおすすめします。
※本記事の情報は2025年10月時点のものです。最新情報は各証券会社および米国取引所の公式サイトでご確認ください(出典: 日本証券業協会「時間外取引のリスク」https://www.jsda.or.jp/)。