NISAで米国株に積立投資したいけれど、制度がよくわからない
2024年から始まった新NISA制度を使って、米国株に積立投資したいと考えている方は多いでしょう。「成長投資枠とつみたて投資枠はどう使い分ける?」「米国株の配当金は本当に非課税?」「どの銘柄を選べばいい?」といった疑問があるかもしれません。
この記事では、新NISA制度の基礎から米国株積立の具体的な方法、おすすめのETF・投資信託、税金メリットと注意点まで詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 新NISAは成長投資枠(年240万円)とつみたて投資枠(年120万円)を併用可能
- 米国株の配当金・売却益は日本の税金(20.315%)が非課税になる
- 米国での10%源泉徴収は避けられないが、外国税額控除も不要
- S&P500連動ETFや投資信託なら初心者でも分散投資できる
- 非課税期間は無期限なので長期保有が前提
米国株積立とNISAの相性
米国株への積立投資とNISA制度は非常に相性が良いと言われています。
(1) 長期成長が期待できる米国株市場
米国株式市場は過去数十年にわたり右肩上がりの成長を続けてきました。S&P500指数は過去30年で年平均約10%のリターンを記録しています(ただし、将来も同様のリターンが保証されるわけではありません)。
米国株市場の特徴:
- 世界最大の株式市場
- Apple、Microsoft、Amazon、Googleなどの成長企業が多数
- イノベーションと企業成長力が強い
- 株主還元(配当・自社株買い)を重視する文化
こうした長期的な成長が期待できる市場に、非課税で投資できるのがNISAの大きなメリットです。
(2) NISAの非課税メリットを最大化
通常、株式投資の利益には20.315%の税金がかかります。例えば、100万円の利益が出ても、税引き後は約80万円になってしまいます。
NISA口座で投資すれば、この税金がかかりません。
試算例(30年間、年平均7%リターン、年120万円積立):
- 課税口座: 積立元本3,600万円 → 約1億1,300万円(税引き後約9,500万円)
- NISA口座: 積立元本3,600万円 → 約1億1,300万円(非課税)
- 差額: 約1,800万円
長期積立では非課税メリットが非常に大きくなります。
NISA制度の基本と米国株投資への活用
新NISA制度の基本を理解しましょう。
(1) 成長投資枠:年間240万円まで
成長投資枠は、個別株・ETF・投資信託など幅広い商品を購入できる枠です。
項目 | 内容 |
---|---|
年間投資上限 | 240万円 |
対象商品 | 個別株、ETF、投資信託(一部除外銘柄あり) |
非課税保有期間 | 無期限 |
非課税保有限度額 | 1,200万円(簿価残高) |
米国株の個別銘柄やETF(VOO、VTI等)を購入する場合は、この成長投資枠を使います。
(2) つみたて投資枠:年間120万円まで
つみたて投資枠は、金融庁が指定した長期・積立・分散投資に適した投資信託を購入できる枠です。
項目 | 内容 |
---|---|
年間投資上限 | 120万円 |
対象商品 | 金融庁指定の投資信託(eMAXIS Slimシリーズ等) |
非課税保有期間 | 無期限 |
非課税保有限度額 | 1,800万円(成長投資枠と合わせて) |
米国株に投資する投資信託(eMAXIS Slim米国株式等)を購入する場合は、この枠を使います。
(3) 米国株・ETF・投資信託が対象
新NISAでは、以下のような米国株関連商品が購入できます:
成長投資枠で購入可能:
- 米国個別株(Apple、Microsoft、Amazon等)
- 米国株ETF(VOO、VTI、VYM等)
- 米国株投資信託(一部)
つみたて投資枠で購入可能:
- 金融庁指定の米国株投資信託(eMAXIS Slim米国株式(S&P500)等)
- 全世界株式ファンド(米国株が約60%含まれる)
成長投資枠とつみたて投資枠は併用できるため、合計で年間360万円まで投資できます。
米国株積立におすすめの銘柄・ETF
NISA口座で購入できる米国株関連商品の中から、初心者におすすめのものを紹介します。
(1) S&P500連動ETF(VOO、IVV等)
S&P500指数に連動するETFは、米国の主要500社に分散投資できます。
代表的なETF:
- VOO(Vanguard S&P 500 ETF): 経費率0.03%、最も人気のあるS&P500 ETF
- IVV(iShares Core S&P 500 ETF): 経費率0.03%、ブラックロック社が運用
- SPY(SPDR S&P 500 ETF Trust): 歴史のあるETF、取引量が多い
特徴:
- 米国の主要企業500社に分散投資
- 低コスト(経費率0.03%程度)
- 過去のリターンが高い(ただし将来を保証するものではない)
(2) 全米株式ETF(VTI)
全米株式市場をカバーするETFです。S&P500より広範囲に分散投資できます。
VTI(Vanguard Total Stock Market ETF):
- 経費率: 0.03%
- 投資対象: 米国株式市場全体(約4,000銘柄)
- 大型株から小型株まで幅広くカバー
S&P500よりもさらに分散効果が高いため、リスクを抑えたい人におすすめです。
(3) 投資信託(eMAXIS Slim米国株式等)
つみたて投資枠で購入できる投資信託は、自動積立設定が可能で初心者に最適です。
おすすめ投資信託:
ファンド名 | ベンチマーク | 信託報酬 | 枠 |
---|---|---|---|
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) | S&P500 | 0.09372% | つみたて |
楽天・全米株式インデックス・ファンド | CRSP USトータル・マーケット | 0.162% | つみたて |
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド | S&P500 | 0.0938% | つみたて |
メリット:
- 自動積立設定で手間がかからない
- 100円から購入可能(少額から始められる)
- 円建てなので為替を気にせず購入できる
(4) 高配当株ETF(VYM、SPYD等)
配当収入を重視する人には、高配当株ETFもおすすめです。
代表的なETF:
- VYM(Vanguard High Dividend Yield ETF): 配当利回り約3%、400銘柄に分散
- SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF): S&P500の高配当80銘柄
- HDV(iShares Core High Dividend ETF): 財務健全性の高い高配当株約75銘柄
注意: 米国株の配当金は、NISA口座でも米国で10%源泉徴収されます(後述)。
NISA口座での米国株積立の始め方
実際にNISA口座で米国株積立を始める手順を説明します。
(1) NISA口座の開設手続き
- 証券会社を選ぶ: SBI証券、楽天証券、マネックス証券などが人気
- 口座開設申込: オンラインで本人確認書類を提出
- NISA口座の申請: 税務署での審査に1-2週間
- 口座開設完了: メールで通知が届く
NISA口座は1人1口座しか開設できないため、証券会社選びは慎重に行いましょう。
(2) 証券会社の選び方(SBI・楽天・マネックス)
主要3社の比較:
項目 | SBI証券 | 楽天証券 | マネックス証券 |
---|---|---|---|
米国株取扱銘柄数 | 約5,600 | 約5,000 | 約5,000 |
取引手数料 | 約定代金の0.495%(上限22ドル) | 約定代金の0.495%(上限22ドル) | 約定代金の0.495%(上限22ドル) |
為替手数料 | 1ドルあたり25銭(住信SBIネット銀行で4銭) | 1ドルあたり25銭 | 買付時無料 |
ポイント投資 | Vポイント・Tポイント・Pontaポイント | 楽天ポイント | マネックスポイント |
選び方のポイント:
- 取扱銘柄数で選ぶなら: SBI証券
- ポイント還元を重視するなら: 楽天証券
- 為替手数料を抑えたいなら: マネックス証券
(3) 積立設定の方法(定額・定量)
米国株の積立方法には「定額積立」と「定量積立」があります。
定額積立(円建て):
- 毎月一定の金額(例: 月5万円)で購入
- 株価が高い時は少なく、安い時は多く買える(ドルコスト平均法)
- 投資信託の積立に適している
定量積立(株数指定):
- 毎月一定の株数(例: VOOを2株)で購入
- ETFの積立に適している
証券会社によって対応が異なるため、事前に確認しましょう。
(4) ドルコスト平均法の活用
ドルコスト平均法は、定期的に一定額を投資することで、平均取得単価を平準化する方法です。
メリット:
- 高値掴みのリスクを減らせる
- 市場タイミングを気にせず投資できる
- 精神的負担が少ない
長期積立投資では、ドルコスト平均法が有効です。
税金メリットと注意点
NISA口座での米国株投資には税金メリットがありますが、注意点もあります。
(1) 配当金・売却益が非課税(日本の税金)
NISA口座で購入した米国株の配当金と売却益は、日本の税金(20.315%)が非課税になります。
課税口座とNISA口座の比較:
口座種類 | 配当金 | 売却益 |
---|---|---|
課税口座 | 20.315%課税 | 20.315%課税 |
NISA口座 | 非課税(日本) | 非課税 |
(2) 米国での10%源泉徴収は避けられない
米国株の配当金には、米国で10%が源泉徴収されます。これはNISA口座でも避けられません。
配当金の課税イメージ:
- 配当金100ドル(為替レート150円 = 15,000円)
- 米国で10%源泉徴収 → 10ドル(1,500円)
- 手取り: 90ドル(13,500円)
NISA口座なら日本の税金(20.315%)は非課税ですが、米国の10%は課税されます。
(3) 外国税額控除は使えない
課税口座では、米国で課税された10%を日本の所得税から差し引ける「外国税額控除」が利用できます。しかし、NISA口座ではこの制度が使えません。
課税口座とNISA口座の実質税率比較:
- 課税口座: 米国10% + 日本20.315% - 外国税額控除 ≒ 約20%
- NISA口座: 米国10%のみ
配当金に関しては、NISA口座の方が有利です。
(4) 非課税期間は無期限(2024年以降の新NISA)
新NISA制度では、非課税保有期間が無期限になりました。旧NISAのように5年や20年の期限がないため、長期保有に最適です。
売却枠の再利用: NISA口座で保有していた株を売却すると、その分の枠(簿価)が翌年以降に復活します。これにより、何度でも非課税投資ができます。
まとめ:NISAで米国株積立を始めよう
新NISA制度を使えば、米国株への積立投資を非課税で行えます。成長投資枠で個別株やETF、つみたて投資枠で投資信託を購入し、長期的な資産形成を目指しましょう。
米国株積立の始め方:
- 証券会社でNISA口座を開設する
- 成長投資枠でETF(VOO、VTI等)、つみたて投資枠で投資信託を購入
- 月3-10万円程度から無理のない範囲で積立設定
- ドルコスト平均法で定期的に購入
- 10年以上の長期保有を前提に投資
次のアクション:
- SBI証券・楽天証券・マネックス証券のいずれかでNISA口座を開設
- 自分のリスク許容度に合わせてETFまたは投資信託を選ぶ
- 月額積立額を決めて自動積立設定する
- 一時的な株価下落に動じず、長期保有を続ける
米国株市場の長期的な成長とNISAの非課税メリットを活用して、着実に資産を育てましょう。