NISAで米国株投資を始めたいが、何から手をつければいいのか
2024年から新NISA制度が始まり、米国株投資を非課税で行える環境が整いました。「成長投資枠で米国株の個別銘柄を買いたい」「つみたて投資枠でS&P500連動ファンドを積み立てたい」と考える投資家は増えています。
しかし、「成長投資枠とつみたて投資枠、どちらを使うべきか」「NISA口座での米国株投資にはどんなメリット・デメリットがあるのか」「配当金の税金はどうなるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、NISA口座での米国株投資の仕組み、成長投資枠・つみたて投資枠の違い、銘柄選定のポイント、注意点を解説します。
この記事のポイント:
- 新NISA制度では、成長投資枠(年240万円)で米国株個別銘柄、つみたて投資枠(年120万円)で投資信託・ETFが購入可能
- 売却益・配当金が非課税になる一方、米国の源泉徴収10%は避けられない
- 外国税額控除が使えないため、配当課税の実質負担は課税口座より不利になる場合も
- 長期保有前提で配当成長株や安定成長株が適している
- 個別銘柄名は情報提供であり、投資判断は自己責任で
1. 米国株をNISAで運用するメリット
NISA口座で米国株を運用する主なメリットは以下の通りです。
1. 売却益が非課税
課税口座では、米国株を売却して得た利益に対して20.315%の税金がかかりますが、NISA口座なら非課税です。例えば、100万円の売却益が出た場合、課税口座では約20万円が税金で引かれますが、NISA口座なら全額が手元に残ります。
2. 日本の配当課税が非課税
米国株の配当金は、通常、米国で10%源泉徴収された後、日本でさらに20.315%課税されます。しかし、NISA口座なら日本での課税は非課税です(米国の源泉徴収10%は避けられません)。
3. 長期投資に最適
新NISA制度には非課税期間の制限がないため、長期保有でも非課税メリットを享受できます。
2. 新NISA制度の基礎知識
(1) 成長投資枠とつみたて投資枠の違い
新NISA制度には、以下の2つの投資枠があります。
項目 | 成長投資枠 | つみたて投資枠 |
---|---|---|
年間投資上限 | 240万円 | 120万円 |
対象商品 | 上場株式・ETF・投資信託 | 金融庁指定の投資信託・ETF |
投資方法 | 一括・積立どちらも可 | 積立のみ |
米国株個別銘柄 | 購入可能 | 購入不可 |
米国株投資信託・ETF | 購入可能 | 購入可能(指定銘柄のみ) |
成長投資枠: 個別株やETFを自由に購入できる枠。米国株の個別銘柄を買いたい場合はこちらを使用。
つみたて投資枠: 金融庁が指定した低コストの投資信託・ETFを積立購入できる枠。S&P500連動ファンドなどが対象。
(2) 非課税限度額(年間360万円、生涯1800万円)
新NISA制度の非課税限度額は以下の通りです(2025年1月時点)。
- 年間投資上限: 成長投資枠240万円 + つみたて投資枠120万円 = 合計360万円
- 生涯非課税限度額: 1800万円(うち成長投資枠は1200万円まで)
つまり、毎年360万円ずつ投資すれば、5年で上限に達します。
(3) 対象商品(個別株・ETF・投資信託)
成長投資枠で購入できる米国株:
- 米国上場の個別株(Apple、Microsoft、Teslaなど)
- 米国株ETF(VOO、VTI、QQQなど)
- 米国株投資信託(eMAXIS Slim米国株式S&P500など)
つみたて投資枠で購入できる米国株:
- 金融庁指定の米国株投資信託・ETF(S&P500連動、全米株式連動など)
※具体的な銘柄名は情報提供であり、投資判断は自己責任で行ってください。
3. NISA成長投資枠での米国株投資
(1) 個別株の選び方(長期成長・配当成長株)
NISA口座は長期保有を前提とした制度のため、以下のような銘柄が適していると言われています。
長期成長株:
- 安定した収益基盤と成長性を持つ企業
- 例:テクノロジー企業、ヘルスケア企業(情報提供のみ)
配当成長株:
- 連続増配している企業(米国には25年以上連続増配している「配当貴族」と呼ばれる企業群がある)
- 配当利回りが高く、長期保有で配当収入を得られる
銘柄選定のポイント:
- 財務健全性(自己資本比率、フリーキャッシュフロー)
- 連続増配の実績
- 競争優位性(ブランド力、技術力)
(2) 米国株ETFの活用
個別株のリスクを避けたい場合は、米国株ETFを活用する方法もあります。
主要な米国株ETF:
- VOO(バンガードS&P500 ETF): S&P500指数に連動、低コスト(経費率約0.03%)
- VTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF): 全米株式に投資、約4000銘柄に分散
- QQQ(インベスコQQQ ETF): NASDAQ100指数に連動、ハイテク株中心
※具体的な銘柄名は情報提供であり、投資判断は自己責任で行ってください。
(3) 主要証券会社の取扱銘柄
NISA成長投資枠で米国株を購入できる主要な証券会社は以下の通りです。
証券会社 | 米国株取扱銘柄数 | 特徴 |
---|---|---|
SBI証券 | 約5000銘柄 | 取扱銘柄数が多い |
楽天証券 | 約4500銘柄 | ポイント投資可能 |
マネックス証券 | 約4500銘柄 | 米国株情報が充実 |
DMM株 | 約1500銘柄 | 手数料が安い |
※銘柄数は2025年1月時点の目安です。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。
4. つみたて投資枠での米国株投資信託・ETF
(1) S&P500連動インデックスファンド
つみたて投資枠では、金融庁指定の投資信託・ETFを積立購入できます。米国株投資では、S&P500連動ファンドが人気です。
主要なS&P500連動ファンド:
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500): 信託報酬0.09%程度
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド: 信託報酬0.09%程度
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド: 信託報酬0.16%程度
※具体的な銘柄名は情報提供であり、投資判断は自己責任で行ってください。
(2) 全米株式連動ファンド
S&P500(大型株500社)だけでなく、中小型株も含めた全米株式に投資するファンドもあります。
主要な全米株式連動ファンド:
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド(VTI連動)
- SBI・V・全米株式インデックス・ファンド(VTI連動)
(3) 積立投資のメリット
積立投資には、以下のメリットがあります。
- ドルコスト平均法: 定期的に一定額を投資することで、平均購入価格を平準化
- 時間分散: 株価の高値掴みリスクを軽減
- 自動化: 一度設定すれば自動で投資され、手間がかからない
5. NISA口座での米国株投資の注意点
(1) 米国源泉徴収10%は控除されない
NISA口座でも、米国株の配当金は米国で10%源泉徴収されます。日本での課税は非課税ですが、米国の源泉徴収は避けられません。
配当課税の比較:
| 口座タイプ | 米国源泉徴収 | 日本の課税 | 実質税率 | |---|---|---| | NISA口座 | 10% | 非課税 | 10% | | 課税口座(特定口座) | 10% | 20.315% | 約28% | | 課税口座(外国税額控除適用) | 10% | 約10% | 約20% |
NISA口座の実質税率は10%ですが、課税口座で外国税額控除を使えば約20%まで下がります。ただし、外国税額控除は手続きが複雑で、上限があります。
(2) 外国税額控除が使えない
NISA口座では、外国税額控除が使えません。外国税額控除とは、米国で源泉徴収された税金を日本の税額から差し引ける制度ですが、NISA口座は非課税口座のため適用外です。
(3) 為替リスクと手数料
米国株はドル建てで取引されるため、円高になると円換算の資産価値が減少します。また、ドルと円の交換時に為替手数料がかかります。
為替手数料の例:
- SBI証券: 1ドルあたり0.25円(住信SBIネット銀行経由で0.02円)
- 楽天証券: 1ドルあたり0.25円
- マネックス証券: 1ドルあたり0.25円(買付時無料キャンペーンあり)
(4) 損益通算・繰越控除ができない
NISA口座での損失は、他の口座の利益と損益通算できません。また、損失を翌年以降に繰り越すこともできません。
6. まとめ:NISAを活用した賢い米国株投資
NISA口座での米国株投資は、売却益・配当が非課税になるメリットがある一方、米国の源泉徴収10%は避けられず、外国税額控除も使えません。
NISA口座での米国株投資が向いている人:
- 長期保有前提で、売却益の非課税メリットを最大化したい
- 配当よりもキャピタルゲイン(売却益)を重視する
- 外国税額控除の手続きが面倒
課税口座(特定口座)が向いている人:
- 高配当株に投資し、配当収入を重視する
- 外国税額控除を活用して配当課税を軽減したい
- 損益通算・繰越控除を活用したい
次のアクション:
- NISA口座を開設し、成長投資枠・つみたて投資枠の使い分けを検討する
- S&P500連動ファンドをつみたて投資枠で積立開始
- 成長投資枠で米国株個別銘柄やETFを購入(長期保有前提)
NISA制度を活用し、非課税メリットを最大化しながら、長期的な資産形成を目指しましょう。