米国株のPERランキングで割安株を見つけたいけれど、どう活用すればいい?
米国株投資を始めた方の多くが、「PERが低い株は割安なの?」「PERランキングを見てもどの株を選べばいいかわからない」「成長株のPERが高いのはなぜ?」といった疑問を持っています。
PER(株価収益率、Price-to-Earnings Ratio)は、株式投資で最も基本的な指標の一つですが、正しく理解して使わないと、誤った投資判断につながる可能性があります。特に、セクターによってPER水準が大きく異なるため、単純にPERが低い株を買えばいいというわけではありません。
この記事では、米国株のPERの見方、セクター別のPER水準、低PER株の注意点、PERを活用したスクリーニング方法まで詳しく解説します。
この記事のポイント:
- PERは「株価÷1株当たり利益(EPS)」で計算され、株価が利益の何倍かを示す指標
- S&P500全体の適正PERは15-20倍程度だが、セクターで大きく異なる
- テクノロジー株は25-35倍、金融株は10-15倍が一般的
- PERが低い株が必ずしも割安とは限らず、業績悪化のリスク(バリュートラップ)もある
- PERだけでなく、PBR・ROE・配当利回り・成長率など複合的に評価すべき
PER(株価収益率)とは何か【基礎知識】
(1) PERの定義と計算式(株価÷1株当たり利益)
PER(Price-to-Earnings Ratio、株価収益率)は、株価が1株当たり利益(EPS)の何倍かを示す指標です。
PERの計算式:
PER = 株価 ÷ EPS(1株当たり利益)
計算例:
- 株価: 100ドル
- EPS: 5ドル
- PER = 100ドル ÷ 5ドル = 20倍
この場合、「株価は1株利益の20倍」と表現します。
PERには以下の2種類があります。
- 実績PER(Trailing P/E): 過去12か月の実績利益を使用
- 予想PER(Forward P/E): 来期予想利益を使用
一般的には、予想PERの方が将来の業績を反映するため、投資判断に使われることが多いです。
(2) PERが示す割安・割高の判断
PERは、株価の割安・割高を判断する目安となります。
一般的な解釈:
- PERが低い: 利益に対して株価が安い(割安の可能性)
- PERが高い: 利益に対して株価が高い(割高の可能性、または高成長が期待されている)
ただし、「PERが低い=割安」とは限りません。業績が悪化している、成長性が低い、リスクが高いなどの理由でPERが低いこともあります。
(3) PER15倍の意味(投資回収年数)
PERは、投資回収年数としても解釈できます。
PER15倍の意味:
- 現在の利益水準が続くと仮定すると、15年で投資額を回収できる
例えば、PER20倍なら20年、PER10倍なら10年で投資額を回収できる計算になります。ただし、実際には企業の利益は変動するため、あくまで目安です。
米国株のセクター別PER水準【2025年版】
(1) テクノロジー株のPER水準(25-35倍)
テクノロジーセクターは、高成長が期待されるため、PERが高い傾向があります。
テクノロジー株の特徴:
- PER水準: 25-35倍(2025年1月時点の目安)
- 高成長が期待される(売上成長率20-30%以上)
- AI、クラウド、半導体などの成長分野が中心
代表的な銘柄(2025年1月時点の目安):
- NVIDIA(NVDA): PER 30-40倍程度
- Apple(AAPL): PER 25-30倍程度
- Microsoft(MSFT): PER 30-35倍程度
※上記は2025年1月時点の目安です。最新のPERは証券会社のウェブサイトやYahoo Financeでご確認ください。
テクノロジー株は、将来の高成長を織り込んでPERが高くなります。PER30倍でも、成長率が30%以上なら適正評価とされることもあります。
(2) 金融株のPER水準(10-15倍)
金融セクター(銀行、保険など)は、安定した利益を出すものの成長性が低いため、PERは低めです。
金融株の特徴:
- PER水準: 10-15倍(2025年1月時点の目安)
- 安定した利益だが成長性は低い
- 金利環境の影響を受けやすい
代表的な銘柄(2025年1月時点の目安):
- JPMorgan Chase(JPM): PER 10-15倍程度
- Bank of America(BAC): PER 10-12倍程度
- Wells Fargo(WFC): PER 10-12倍程度
金融株のPERが低いのは、成長性が低く、景気敏感株であるためリスクが織り込まれているからです。
(3) ヘルスケア・生活必需品のPER水準
ヘルスケアと生活必需品セクターは、ディフェンシブセクターとして安定した利益を出すため、PERは中程度です。
ヘルスケア株:
- PER水準: 15-25倍
- 医薬品、医療機器、バイオテクノロジーなど
- 安定した需要と高い利益率
生活必需品株:
- PER水準: 15-20倍
- 食品、飲料、日用品など
- 景気に左右されにくい安定セクター
(4) セクター比較の重要性
PERはセクターによって水準が大きく異なるため、同じセクター内で比較することが重要です。
セクター間比較の誤り:
- テクノロジー株(PER30倍)と金融株(PER12倍)を直接比較しても意味がない
- 金融株のPER12倍が「割高」ではなく、テクノロジー株のPER30倍が「割安」でもない
正しい比較方法:
- テクノロジー株同士で比較(NVIDIA vs. Apple vs. Microsoft)
- 金融株同士で比較(JPMorgan vs. Bank of America vs. Wells Fargo)
低PER株の見つけ方とスクリーニング方法
(1) Yahoo Finance・Finvizでのスクリーニング
米国株のPERランキングを調べるには、以下のツールが便利です。
Yahoo Finance:
- URL: https://finance.yahoo.com/screener/
- 「Stock Screener」→「P/E Ratio」でフィルタ
- 「P/E Ratio < 15」などの条件を設定
Finviz:
- URL: https://finviz.com/screener.ashx
- 「Valuation」→「P/E」でフィルタ
- より詳細な条件設定が可能
(2) 証券会社ツールの活用(SBI・楽天・マネックス)
日本の証券会社でも、米国株のPERスクリーニング機能を提供しています。
SBI証券:
- 「外国株式」→「米国株スクリーニング」→「PER」でフィルタ
- 日本語で使いやすく、初心者におすすめ
楽天証券:
- 「米国株」→「スクリーナー」→「PER」でフィルタ
- セクター別のPER比較機能あり
マネックス証券:
- 「米国株」→「銘柄スクリーニング」→「PER」でフィルタ
- 業種別PERランキング表示機能あり
(3) スクリーニング条件例(PER15倍以下・時価総額100億ドル以上等)
効果的な低PER株スクリーニングの条件例を紹介します。
おすすめのスクリーニング条件:
- PER: 15倍以下(または同セクター平均以下)
- 時価総額: 100億ドル以上(小型株リスクを避ける)
- 配当利回り: 2%以上(安定性の目安)
- ROE: 10%以上(収益性の確認)
- セクター: 特定セクターに絞る(同業種内比較)
この条件で絞り込むと、業績が安定しており、かつ割安な可能性がある銘柄を見つけやすくなります。
低PER株の注意点とリスク
(1) 業績悪化による低PER(バリュートラップ)
PERが低い株の中には、「バリュートラップ」(割安に見えるが実際は業績悪化で株価が下がっている株)が含まれることがあります。
バリュートラップの例:
- 業績が急速に悪化しており、来期のEPSが大幅減少する見込み
- 株価がすでに下落しているため、見かけ上PERが低く見える
- 買った後も株価が下がり続ける
見分け方:
- 過去3-5年の売上・利益の推移を確認(減少傾向なら要注意)
- アナリストの業績予想を確認(減益予想なら避ける)
- ニュースで経営上の問題がないか確認
(2) 成長性欠如による低PER
PERが低い理由が「成長性の欠如」である場合もあります。
成長性欠如の例:
- 成熟産業で今後の成長が見込めない
- 市場シェアを失いつつある
- 新規投資が少なく、縮小均衡の経営
成長性のない企業は、PERが低くても投資魅力に欠けることがあります。
(3) 一時的な利益増加による見かけの低PER
逆に、一時的な利益増加によって見かけ上PERが低く見えることもあります。
一時的利益増加の例:
- 資産売却益で当期利益が増加
- 税制上の一時的な利益
- コスト削減による一過性の利益増加
この場合、来期以降は利益が減少し、PERが上昇する可能性があります。実績PERと予想PERの両方を確認してください。
PERと他の指標を併用した総合評価
(1) PBR(株価純資産倍率)との併用
PERだけでなく、PBR(株価純資産倍率)も併用することで、より正確な評価ができます。
PBRの計算式:
PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)
PBRの目安:
- PBR 1倍未満: 資産価値より株価が安い(割安の可能性)
- PBR 1-3倍: 適正範囲
- PBR 3倍以上: 割高の可能性(または高ROEで正当化される)
PERとPBRの併用例:
- PER 10倍 & PBR 0.8倍 → 割安の可能性あり(要業績確認)
- PER 30倍 & PBR 5倍 → 割高の可能性(高成長で正当化されるか確認)
(2) ROE(自己資本利益率)との併用
ROE(自己資本利益率)は、企業の収益性を示す重要な指標です。
ROEの計算式:
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)
ROEの目安:
- ROE 10%以上: 優良企業
- ROE 15%以上: 非常に優秀
- ROE 10%未満: 収益性が低い
PERとROEの関係:
- 高ROE企業はPERが高くても正当化される(効率的に利益を生み出している)
- 低ROE企業はPERが低くても魅力に欠ける(利益を生み出す力が弱い)
(3) 配当利回り・成長率も考慮
配当利回りと成長率も併せて評価することで、投資判断の精度が上がります。
配当利回り:
- 2-4%が目安(高配当株は4%以上)
- 配当利回りが高すぎる場合は減配リスクに注意
成長率:
- 売上成長率10%以上が望ましい
- 成長率が低い場合、PERが低くても投資魅力に欠ける
(4) PEGレシオ(PER÷成長率)の活用
PEGレシオは、PERと成長率を組み合わせた指標です。
PEGレシオの計算式:
PEGレシオ = PER ÷ EPS成長率(%)
PEGレシオの目安:
- PEGレシオ 1倍: 適正評価
- PEGレシオ 1倍未満: 割安の可能性
- PEGレシオ 2倍以上: 割高の可能性
PEGレシオの活用例:
- PER 30倍、成長率30% → PEGレシオ = 30÷30 = 1倍(適正)
- PER 15倍、成長率5% → PEGレシオ = 15÷5 = 3倍(割高の可能性)
PEGレシオを使えば、成長株の評価がしやすくなります。
まとめ:PERランキングの正しい活用法
米国株のPERランキングは、割安株を見つけるための有力なツールですが、単純に「PERが低い=割安」と判断するのは危険です。セクター別の水準、業績の推移、成長性、財務健全性など、複合的に評価することが重要です。
PERランキングの正しい活用法:
- セクター内で比較する(テクノロジー株同士、金融株同士など)
- PERだけでなく、PBR・ROE・配当利回り・成長率も確認
- 過去の業績推移と今後の成長見通しをチェック
- バリュートラップ(業績悪化)に注意
- PEGレシオで成長率を考慮した評価を行う
次のアクション:
- 証券会社のスクリーニングツールでPERランキングを確認
- 気になる銘柄のPER・PBR・ROE・配当利回りをチェック
- 業績推移とアナリスト予想を確認
- 少額から投資を始めて、PERの変化を観察する
PERは便利な指標ですが、万能ではありません。複数の指標を組み合わせて、総合的に銘柄を評価する習慣をつけましょう。
※投資にはリスクが伴います。PERが低い株がバリュートラップである可能性、セクターによってPER水準が大きく異なる点、過去の実績が将来を保証するものではない点にご注意ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。