米国株PERランキング完全ガイド|セクター別水準解説

公開日: 2025/10/20

米国株のPERランキングで割安株を見つけたいけれど、どう活用すればいい?

米国株投資を始めた方の多くが、「PERが低い株は割安なの?」「PERランキングを見てもどの株を選べばいいかわからない」「成長株のPERが高いのはなぜ?」といった疑問を持っています。

PER(株価収益率、Price-to-Earnings Ratio)は、株式投資で最も基本的な指標の一つですが、正しく理解して使わないと、誤った投資判断につながる可能性があります。特に、セクターによってPER水準が大きく異なるため、単純にPERが低い株を買えばいいというわけではありません。

この記事では、米国株のPERの見方、セクター別のPER水準、低PER株の注意点、PERを活用したスクリーニング方法まで詳しく解説します。

この記事のポイント:

  • PERは「株価÷1株当たり利益(EPS)」で計算され、株価が利益の何倍かを示す指標
  • S&P500全体の適正PERは15-20倍程度だが、セクターで大きく異なる
  • テクノロジー株は25-35倍、金融株は10-15倍が一般的
  • PERが低い株が必ずしも割安とは限らず、業績悪化のリスク(バリュートラップ)もある
  • PERだけでなく、PBR・ROE・配当利回り・成長率など複合的に評価すべき

PER(株価収益率)とは何か【基礎知識】

(1) PERの定義と計算式(株価÷1株当たり利益)

PER(Price-to-Earnings Ratio、株価収益率)は、株価が1株当たり利益(EPS)の何倍かを示す指標です。

PERの計算式:

PER = 株価 ÷ EPS(1株当たり利益)

計算例:

  • 株価: 100ドル
  • EPS: 5ドル
  • PER = 100ドル ÷ 5ドル = 20倍

この場合、「株価は1株利益の20倍」と表現します。

PERには以下の2種類があります。

  • 実績PER(Trailing P/E): 過去12か月の実績利益を使用
  • 予想PER(Forward P/E): 来期予想利益を使用

一般的には、予想PERの方が将来の業績を反映するため、投資判断に使われることが多いです。

(2) PERが示す割安・割高の判断

PERは、株価の割安・割高を判断する目安となります。

一般的な解釈:

  • PERが低い: 利益に対して株価が安い(割安の可能性)
  • PERが高い: 利益に対して株価が高い(割高の可能性、または高成長が期待されている)

ただし、「PERが低い=割安」とは限りません。業績が悪化している、成長性が低い、リスクが高いなどの理由でPERが低いこともあります。

(3) PER15倍の意味(投資回収年数)

PERは、投資回収年数としても解釈できます。

PER15倍の意味:

  • 現在の利益水準が続くと仮定すると、15年で投資額を回収できる

例えば、PER20倍なら20年、PER10倍なら10年で投資額を回収できる計算になります。ただし、実際には企業の利益は変動するため、あくまで目安です。

米国株のセクター別PER水準【2025年版】

(1) テクノロジー株のPER水準(25-35倍)

テクノロジーセクターは、高成長が期待されるため、PERが高い傾向があります。

テクノロジー株の特徴:

  • PER水準: 25-35倍(2025年1月時点の目安)
  • 高成長が期待される(売上成長率20-30%以上)
  • AI、クラウド、半導体などの成長分野が中心

代表的な銘柄(2025年1月時点の目安):

  • NVIDIA(NVDA): PER 30-40倍程度
  • Apple(AAPL): PER 25-30倍程度
  • Microsoft(MSFT): PER 30-35倍程度

※上記は2025年1月時点の目安です。最新のPERは証券会社のウェブサイトやYahoo Financeでご確認ください。

テクノロジー株は、将来の高成長を織り込んでPERが高くなります。PER30倍でも、成長率が30%以上なら適正評価とされることもあります。

(2) 金融株のPER水準(10-15倍)

金融セクター(銀行、保険など)は、安定した利益を出すものの成長性が低いため、PERは低めです。

金融株の特徴:

  • PER水準: 10-15倍(2025年1月時点の目安)
  • 安定した利益だが成長性は低い
  • 金利環境の影響を受けやすい

代表的な銘柄(2025年1月時点の目安):

  • JPMorgan Chase(JPM): PER 10-15倍程度
  • Bank of America(BAC): PER 10-12倍程度
  • Wells Fargo(WFC): PER 10-12倍程度

金融株のPERが低いのは、成長性が低く、景気敏感株であるためリスクが織り込まれているからです。

(3) ヘルスケア・生活必需品のPER水準

ヘルスケアと生活必需品セクターは、ディフェンシブセクターとして安定した利益を出すため、PERは中程度です。

ヘルスケア株:

  • PER水準: 15-25倍
  • 医薬品、医療機器、バイオテクノロジーなど
  • 安定した需要と高い利益率

生活必需品株:

  • PER水準: 15-20倍
  • 食品、飲料、日用品など
  • 景気に左右されにくい安定セクター

(4) セクター比較の重要性

PERはセクターによって水準が大きく異なるため、同じセクター内で比較することが重要です。

セクター間比較の誤り:

  • テクノロジー株(PER30倍)と金融株(PER12倍)を直接比較しても意味がない
  • 金融株のPER12倍が「割高」ではなく、テクノロジー株のPER30倍が「割安」でもない

正しい比較方法:

  • テクノロジー株同士で比較(NVIDIA vs. Apple vs. Microsoft)
  • 金融株同士で比較(JPMorgan vs. Bank of America vs. Wells Fargo)

低PER株の見つけ方とスクリーニング方法

(1) Yahoo Finance・Finvizでのスクリーニング

米国株のPERランキングを調べるには、以下のツールが便利です。

Yahoo Finance:

Finviz:

(2) 証券会社ツールの活用(SBI・楽天・マネックス)

日本の証券会社でも、米国株のPERスクリーニング機能を提供しています。

SBI証券:

  • 「外国株式」→「米国株スクリーニング」→「PER」でフィルタ
  • 日本語で使いやすく、初心者におすすめ

楽天証券:

  • 「米国株」→「スクリーナー」→「PER」でフィルタ
  • セクター別のPER比較機能あり

マネックス証券:

  • 「米国株」→「銘柄スクリーニング」→「PER」でフィルタ
  • 業種別PERランキング表示機能あり

(3) スクリーニング条件例(PER15倍以下・時価総額100億ドル以上等)

効果的な低PER株スクリーニングの条件例を紹介します。

おすすめのスクリーニング条件:

  • PER: 15倍以下(または同セクター平均以下)
  • 時価総額: 100億ドル以上(小型株リスクを避ける)
  • 配当利回り: 2%以上(安定性の目安)
  • ROE: 10%以上(収益性の確認)
  • セクター: 特定セクターに絞る(同業種内比較)

この条件で絞り込むと、業績が安定しており、かつ割安な可能性がある銘柄を見つけやすくなります。

低PER株の注意点とリスク

(1) 業績悪化による低PER(バリュートラップ)

PERが低い株の中には、「バリュートラップ」(割安に見えるが実際は業績悪化で株価が下がっている株)が含まれることがあります。

バリュートラップの例:

  • 業績が急速に悪化しており、来期のEPSが大幅減少する見込み
  • 株価がすでに下落しているため、見かけ上PERが低く見える
  • 買った後も株価が下がり続ける

見分け方:

  • 過去3-5年の売上・利益の推移を確認(減少傾向なら要注意)
  • アナリストの業績予想を確認(減益予想なら避ける)
  • ニュースで経営上の問題がないか確認

(2) 成長性欠如による低PER

PERが低い理由が「成長性の欠如」である場合もあります。

成長性欠如の例:

  • 成熟産業で今後の成長が見込めない
  • 市場シェアを失いつつある
  • 新規投資が少なく、縮小均衡の経営

成長性のない企業は、PERが低くても投資魅力に欠けることがあります。

(3) 一時的な利益増加による見かけの低PER

逆に、一時的な利益増加によって見かけ上PERが低く見えることもあります。

一時的利益増加の例:

  • 資産売却益で当期利益が増加
  • 税制上の一時的な利益
  • コスト削減による一過性の利益増加

この場合、来期以降は利益が減少し、PERが上昇する可能性があります。実績PERと予想PERの両方を確認してください。

PERと他の指標を併用した総合評価

(1) PBR(株価純資産倍率)との併用

PERだけでなく、PBR(株価純資産倍率)も併用することで、より正確な評価ができます。

PBRの計算式:

PBR = 株価 ÷ 1株当たり純資産(BPS)

PBRの目安:

  • PBR 1倍未満: 資産価値より株価が安い(割安の可能性)
  • PBR 1-3倍: 適正範囲
  • PBR 3倍以上: 割高の可能性(または高ROEで正当化される)

PERとPBRの併用例:

  • PER 10倍 & PBR 0.8倍 → 割安の可能性あり(要業績確認)
  • PER 30倍 & PBR 5倍 → 割高の可能性(高成長で正当化されるか確認)

(2) ROE(自己資本利益率)との併用

ROE(自己資本利益率)は、企業の収益性を示す重要な指標です。

ROEの計算式:

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)

ROEの目安:

  • ROE 10%以上: 優良企業
  • ROE 15%以上: 非常に優秀
  • ROE 10%未満: 収益性が低い

PERとROEの関係:

  • 高ROE企業はPERが高くても正当化される(効率的に利益を生み出している)
  • 低ROE企業はPERが低くても魅力に欠ける(利益を生み出す力が弱い)

(3) 配当利回り・成長率も考慮

配当利回りと成長率も併せて評価することで、投資判断の精度が上がります。

配当利回り:

  • 2-4%が目安(高配当株は4%以上)
  • 配当利回りが高すぎる場合は減配リスクに注意

成長率:

  • 売上成長率10%以上が望ましい
  • 成長率が低い場合、PERが低くても投資魅力に欠ける

(4) PEGレシオ(PER÷成長率)の活用

PEGレシオは、PERと成長率を組み合わせた指標です。

PEGレシオの計算式:

PEGレシオ = PER ÷ EPS成長率(%)

PEGレシオの目安:

  • PEGレシオ 1倍: 適正評価
  • PEGレシオ 1倍未満: 割安の可能性
  • PEGレシオ 2倍以上: 割高の可能性

PEGレシオの活用例:

  • PER 30倍、成長率30% → PEGレシオ = 30÷30 = 1倍(適正)
  • PER 15倍、成長率5% → PEGレシオ = 15÷5 = 3倍(割高の可能性)

PEGレシオを使えば、成長株の評価がしやすくなります。

まとめ:PERランキングの正しい活用法

米国株のPERランキングは、割安株を見つけるための有力なツールですが、単純に「PERが低い=割安」と判断するのは危険です。セクター別の水準、業績の推移、成長性、財務健全性など、複合的に評価することが重要です。

PERランキングの正しい活用法:

  • セクター内で比較する(テクノロジー株同士、金融株同士など)
  • PERだけでなく、PBR・ROE・配当利回り・成長率も確認
  • 過去の業績推移と今後の成長見通しをチェック
  • バリュートラップ(業績悪化)に注意
  • PEGレシオで成長率を考慮した評価を行う

次のアクション:

  • 証券会社のスクリーニングツールでPERランキングを確認
  • 気になる銘柄のPER・PBR・ROE・配当利回りをチェック
  • 業績推移とアナリスト予想を確認
  • 少額から投資を始めて、PERの変化を観察する

PERは便利な指標ですが、万能ではありません。複数の指標を組み合わせて、総合的に銘柄を評価する習慣をつけましょう。

※投資にはリスクが伴います。PERが低い株がバリュートラップである可能性、セクターによってPER水準が大きく異なる点、過去の実績が将来を保証するものではない点にご注意ください。投資判断はご自身の責任で行ってください。

よくある質問

Q1米国株の適正PERは何倍ですか?

A1S&P500全体では15-20倍が歴史的平均とされています。ただし、セクターによって大きく異なります。テクノロジー株は25-35倍、金融株は10-15倍、ヘルスケア・生活必需品は15-25倍が一般的です。セクター間でPERを比較しても意味がないため、同じセクター内で比較することが重要です。

Q2成長株のPERが高いのはなぜですか?

A2成長株は将来の高成長を織り込んでいるため、PERが高くなります。例えば、PER30-50倍でも、売上成長率が30%以上ならPEGレシオ(PER÷成長率)は1-2倍で適正評価とされることがあります。成長株の評価では、PERだけでなくPEGレシオや売上成長率も併せて確認することが重要です。

Q3セクター間のPER比較は有効ですか?

A3無効です。テクノロジー株(高PER)と金融株(低PER)を直接比較しても意味がありません。セクターによってビジネスモデル、成長性、リスクが異なるため、PER水準も大きく異なります。正しい比較方法は、同じセクター内で銘柄を比較することです(例:NVIDIA vs. Apple vs. Microsoft)。

Q4PER10倍以下の銘柄は買いですか?

A4注意が必要です。PERが低い理由が「バリュートラップ」(業績悪化・成長性欠如)である可能性があります。PERだけでなく、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)、配当利回り、売上・利益の推移も併せて確認してください。過去3-5年の業績が安定しており、成長性もある銘柄なら投資候補になり得ます。

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