米国株が下落すると不安になる理由
保有している米国株が下落すると、多くの投資家が不安を感じます。「このまま下がり続けるのでは?」「売却した方がいいのでは?」といった疑問が頭をよぎるのは自然なことです。
この記事では、米国株が下落する主要な理由を5つに整理し、歴史的な下落事例、投資家がとるべき対応、やってはいけないことを詳しく解説します。
この記事のポイント:
- 米国株下落の主要因は金利上昇、インフレ、決算悪化、地政学リスク、為替変動の5つ
- リーマンショックやコロナショックでも市場は回復してきた歴史がある
- 短期的な変動と長期トレンドを区別し、冷静に対処することが重要
- 狼狽売りは避け、積立投資を継続することが長期投資の鉄則
- 下落局面は買い増しのチャンスでもある
米国株が下落する5つの主要因
(1) FRBの金利上昇政策
米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が政策金利(FF金利)を引き上げると、株価は下落圧力を受けます。
理由:
- 企業の借入コストが上昇し、利益が圧迫される
- 国債など安全資産の利回りが上がり、リスクの高い株式から資金が流出
- 消費者ローン金利も上昇し、景気減速懸念が高まる
過去の事例: 2022年、FRBはインフレ抑制のために急速な金利引き上げを実施し、S&P500は年間で約20%下落しました。
(出典: Federal Reserve、Bloomberg)
(2) インフレ懸念の高まり
物価上昇(インフレ)が過度に進むと、株価にマイナスの影響を与えます。
理由:
- 原材料費や人件費の上昇で企業利益が減少
- FRBが金利を引き上げる可能性が高まる
- 消費者の購買力が低下し、企業の売上が減少
適度なインフレは健全: 年率2%程度のインフレは経済成長の証とされますが、4%以上になると株価下落リスクが高まります。
(出典: Bloomberg)
(3) 企業決算の悪化
個別企業や市場全体の決算が市場予想を下回ると、株価は下落します。
理由:
- 売上高や純利益が予想を下回る→投資家の失望売り
- 業績ガイダンス(今後の見通し)が悪化→将来への期待低下
- セクター全体の業績不振→市場全体への影響
短期的な悪化と長期的な低迷を区別: 一時的な決算悪化なら、長期投資家にとっては買い増しのチャンスになることもあります。
(出典: Morningstar)
(4) 地政学リスク(戦争・貿易摩擦等)
戦争、貿易摩擦、政治的緊張などの地政学リスクは、株価を急落させる要因です。
具体例:
- ロシア・ウクライナ紛争(2022年)
- 米中貿易摩擦(2018-2019年)
- 中東情勢の緊張
短期的な下落が多い: 過去の歴史では、地政学リスクによる下落は短期的で、数ヶ月から1年で回復するケースが多いです。
(出典: 日本経済新聞)
(5) ドル高・為替要因
米国株は米ドル建てで取引されるため、為替変動も日本人投資家の資産評価に影響します。
円高の影響:
- 米国株価が横ばいでも、円高が進めば円ベースの評価額は減少
- 例: 100ドルの株を150円/ドルで購入(15,000円)→株価100ドルのまま、為替が140円/ドルに円高→評価額14,000円(-6.7%)
ドル高の影響:
- 米国企業の輸出競争力が低下し、業績悪化懸念
- 新興国からの資金流出が加速し、グローバル市場が不安定化
(出典: SBI証券)
歴史的な下落事例と回復パターン
(1) リーマンショック(2008年)の教訓
2008年のリーマンショックでは、S&P500は約57%下落しました。しかし、その後約5年で下落前の水準を回復し、さらに成長を続けました。
教訓: 大暴落時でも、売却せずに保有し続けた投資家は、長期的にはプラスのリターンを得ています。
(2) コロナショック(2020年)の急回復
2020年3月、コロナショックでS&P500は約34%急落しましたが、わずか5ヶ月で元の水準を回復しました。
教訓: パニック売りをせず、積立投資を継続した投資家は、その後の急回復で大きな利益を得ました。
(3) 調整局面と弱気相場の違い
- 調整局面(Market Correction): 高値から10%程度の下落。年に1-2回発生することもある
- 弱気相場(Bear Market): 高値から20%以上の下落。長期投資家にとっては買い増しのチャンス
(4) 長期投資家にとっての買い増しチャンス
歴史的に見れば、大きな下落局面は長期投資家にとって割安に買い増せる絶好の機会でした。
(出典: Morningstar、金融庁)
下落時に投資家がとるべき対応
(1) 短期的な変動と長期トレンドを区別
短期的な下落に過剰反応せず、5年、10年といった長期視点で投資を続けることが重要です。
(2) ポートフォリオの見直しと分散
特定のセクターや銘柄に集中していないか確認し、必要に応じて分散投資を強化しましょう。
(3) 余裕資金での買い増し検討
下落局面は、優良銘柄を割安に購入できるチャンスです。ただし、無理をせず余裕資金で行いましょう。
(4) 積立投資の継続(ドルコスト平均法)
つみたてNISAなどで毎月定額を積み立てている場合、下落局面でも継続することで平均購入単価を下げられます。
(出典: 楽天証券)
下落時にやってはいけないこと
(1) 狼狽売り(感情的な売却)
「これ以上損失を出したくない」という恐怖から、下落局面で売却してしまうと、損失を確定させてしまいます。過去の歴史では、売却せずに保有し続けた投資家が長期的に成功しています。
(2) 下落要因の過度な悲観
ニュースやSNSで悲観的な情報が溢れると、過度に悲観してしまいがちです。冷静に事実を確認し、長期視点を保ちましょう。
(3) 短期的な回復を期待した過剰な買い増し
「すぐに回復するだろう」と考えて、余裕資金以上に買い増すのは危険です。下落がさらに続く可能性もあるため、計画的に行いましょう。
(4) 為替変動の影響を無視した判断
米国株価は下がっていなくても、円高で評価額が減少することがあります。為替要因も考慮した総合的な判断が必要です。
まとめ:長期投資家の心構え
米国株の下落には様々な要因がありますが、歴史的に見れば市場は必ず回復してきました。短期的な変動に惑わされず、長期視点で投資を続けることが成功の鍵です。
次のアクション:
- 下落の主要因(金利、インフレ、決算、地政学、為替)を理解する
- 短期的な変動と長期トレンドを区別し、冷静に対処する
- 狼狽売りを避け、積立投資を継続する
- 下落局面を買い増しのチャンスと捉える(余裕資金で)
- ポートフォリオを見直し、分散投資を強化する
長期投資家にとって、下落は一時的な調整に過ぎません。投資判断は自己責任で行い、ご自身のリスク許容度に応じた戦略を選択してください。
